新藤義孝の発言 (憲法審査会)

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○新藤委員 自由民主党の新藤義孝です。
 ただいまの衆議院法制局の論点整理を踏まえ、緊急事態条項について、改めて私の考えを述べたいと思います。
 審査会では、昨年の常会、臨時会を経てこの常会に至るまで、一年半にわたって緊急事態条項に関する討議が積み重ねられてまいりました。
 昨年の常会では、緊急事態条項に関して計十回、延べ九十八人が発言、秋の臨時会では、計四回、延べ三十四人、そしてこの常会では、先週まで計十四回、延べ百九人が発言しており、合計で二十八回、延べ二百四十一人が発言をしております。この膨大な議論を整理したものが先ほどの論点整理資料であり、この論点整理資料を参考に、今後更に議論を深め、絞っていく必要があると私は考えています。
 主に議員任期の延長を議論する際に、今国会で最も重要な論点となりましたのは、現行憲法上における参議院の緊急集会の位置づけであります。
 これまでの討議で明らかになりましたのは、参議院の緊急集会は、衆議院解散後の一定期間内に総選挙の実施が予定され、新しい衆議院議員が選出されることを前提とした制度であり、衆議院の一時的な空白を埋める平時の制度であるということであります。つまり、現行憲法の参議院の緊急集会は、有事を含むあらゆる事態に対応することを想定しておらず、このことは、内閣総理大臣の指名や条約締結の承認、内閣不信任決議などの権限は行使できないといった権限の限定があること、また、内閣が示した案件とそれに関連する案件しか処理できないといった案件の限定があることといった二重の限定が付されていることに端的に表れています。
 更に具体的に申し上げれば、衆議院の解散後に緊急事態が発生し、国家機能を最大に発揮し国民の生命や財産を守らなければならない状況に直面したと仮定します。この場合の内閣は、総理を始め、衆議院出身の閣僚は議員身分を失った状態であり、かつ、内閣の性格は、総選挙後の国会で次の新しい総理が指名されるまでのいわゆる職務執行内閣となっているわけであります。このような内閣にどこまでの権限を持たせられるのか、思い切った危機対応ができるのかといった疑問が湧いてきます。
 国民の生命、財産を守り、安心、安全を確保するための最も重要な危機対応を講ずるためには、正当な民主的基盤を持った内閣が必要であり、衆参そろった二院制国会の原則どおりの国会を構成する必要があることは言うまでもありません。ところが、緊急事態により、全国一斉の総選挙ができない状態に陥っております。だからこそ、解散中であれば議員の身分を復活させ、任期満了であれば議員の任期を延長し、正当な民主的基盤を持った内閣によって危機対応に当たらせることがふさわしいのではないかと私は考えているわけであります。
 これに対して、選挙を延期して任期を延長することは、国会議員を固定化し、内閣の独裁を生むおそれがあるので、それを避けるために参議院の緊急集会で対応すべきという主張があります。あわせて、できるところから順次選挙を実施し、定足数の三分の一を超えた議員が選出されれば新しい衆議院が構成されるので、その新しい国会で緊急事態に対応すればよいという意見が出されています。
 しかし、これには幾つかの問題があります。仮に、選挙が実施できた地域の衆議院議員のみと参議院議員によって構成される新しい国会で内閣総理大臣を選出するとなると、選挙が実施できていない地域からは、総理はもとより閣僚も一切選出されないということになります。
 さらに、選挙が実施できるところから新たな衆議院議員を選べばよいとの考え方に立てば、新議員が選出されるごとに閣僚を任命し直したり、総理を指名し直すようなことも、理論上想定されてしまいます。
 そもそも、緊急事態に陥っても選挙実施可能なところから新しい衆議院議員を選べばよいとの考え方は、新しい衆議院議員を全国一斉に選ぶという総選挙の意義を見失った議論であり、国民の民意が反映されたものとは言えず、非現実的な理論にすぎないのではと指摘をしておきます。
 東日本大震災の経験や、高い確率で発生が予想されている首都直下型、南海、中南海トラフ巨大地震を考えると、緊急事態が発生する蓋然性は高まっており、今や現実の脅威です。あらゆる事態において二院制国会を維持し、民主的統制の下に国の運営を行っていくために、憲法を改正し、緊急事態条項を整備し、二院制国会を機能させるための措置を講じておくことは、喫緊かつ必須であり、立憲主義の観点からも極めて重要と考えております。
 今回の論点整理資料にありますように、二の議員任期延長の必要性については、自民、公明、維新、国民、有志の五会派において完全に一致をしております。
 これに加え、三の議員任期延長の要件及び効果に関する論点についても、幾つかの点を除いて、ほぼ意見は一致しております。
 残る幾つかの論点とは、裁判所の関与の問題があります。この点については、維新は憲法裁判所の設置を、国民と有志は最高裁による勧告を主張しておられます。
 しかし、憲法裁判所については、憲法裁を設置すること自体、我が国の司法制度を根本から改めようとするものであり、何より憲法改正を必要とする大きな論点です。憲法裁判所の設置を前提に新たに創設する緊急事態の認定の関与を議論することは、理論的にまだ困難があると考えております。
 また、最高裁による勧告についても、勧告権限の付与や対応した組織についての憲法改正が行われていることを前提とした主張であり、これまた理論的に難しいことがあるのではないかと考えます。
 私とすれば、新たな権限を最高裁に付与しなくても、現行の司法制度を前提に裁判所の関与の在り方を検討した方が、より合理的かつ現実的な方策が取れるのではないかと考えているわけです。例えば選挙訴訟のように、別に法律で要件や手続等を定め、制度が適正に運用されることを保障する客観訴訟の創設により、同様の効果を得ることができるとも考えられます。
 いずれにせよ、選挙困難事態の認定は、様々な状況を勘案した上で行う極めて政治的な判断であり、一義的には政治部門である内閣と国会が責任を負い、その判断に対する信任は民主主義の根幹である次の総選挙で示されることになると考えるべきではないでしょうか。
 また、議員任期延長により国会機能維持を図ろうとしてもできないような場合、すなわち、議員が参集できない、国会が物理的に開会すらできないような究極の事態も想定しておかなくてよいかという問題が残ります。このような事態が想定される以上、究極の事態において内閣が一時的に国会機能を代行する緊急政令、緊急財政処分の制度についても議論が必要ではないかと考えています。
 改めて申し上げますが、この制度は積極的に活用しようとするものではありません。あくまで究極の事態に備えた一時的、暫定的な国会機能の代行であり、国会機能が回復した時点で速やかな国会の同意を必要とすることなども併せて措置するべきものと考えます。
 最後に、なぜ日本国憲法に緊急事態条項を創設するべきなのか、その基本的な意義を改めて申し上げます。
 国家の最大責務は、国民の生命と財産を守り、自由で幸せな社会生活を提供することです。国家の基本法である憲法には、真っ先にそのことが定められているべきです。にもかかわらず、日本国憲法には、七十七年前の制定以来、緊急事態という国家の根本概念が規定されておらず、緊急事態においても平時の延長線上での国家運営を行わざるを得ないわけです。仮に緊急事態が発生したとしても、平時を想定した一般法の延長線での対応を強化するか、後追いでいわばパッチワークのような特例法を作り、問題の箇所をその都度塞ぐような対応しかできないのが現状であります。
 緊急事態に際し、国家の責務と権限を明確にし、国民を守り抜くための最大機能を発揮させるためには、平時モードから有事モードに切り替える概念を憲法に定めておくことが必要不可欠であり、これこそが国家の責任だと考えているわけであります。
 緊急事態条項については、今後、これまで積み重ねた議論を最終的にどのように仕上げていくかが焦点になっていくと考えております。かねてより申し上げておりますように、議員任期延長を始めとする緊急事態条項については、例えば幹事会などで一定の取りまとめの方向性を議論する時期に来ているのではないかとも考えております。
 昨年より、憲法審においては、毎週審査会が開催され、濃密な議論が積み重ねられてまいりました。真摯な討議が行われていることに対し、幹事会メンバー及び委員各位に敬意を表したいと思います。
 あるべき国の姿を追求し、国の形を整える憲法改正は、未来に対し、今を生きる私たちが果たすべき大いなる責任であることを踏まえ、今後も憲法審査会が安定的に開催され、活発な議論が交わされるよう念願し、私の発言といたします。

発言情報

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発言者: 新藤義孝

speaker_id: 16290

日付: 2023-06-15

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会