岸田文雄の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(岸田文雄君) 玉木雄一郎議員にお答えいたします。
 今年の賃上げに向けた具体策、物価高騰策、政労使会議についてお尋ねがありました。
 賃上げは、新しい資本主義の最重要課題です。まずは、この春の賃金交渉に向け、物価上昇を超える賃上げに取り組んでいただくべく、政策を総動員して環境整備に取り組んでまいります。
 政府としても、賃上げ税制や補助金等における賃上げ企業の優遇などの取組に加え、公的セクターや政府調達に参加する企業で働く方の賃金引上げなどに取り組みます。
 また、中小企業における賃上げ実現に向け、生産性向上などへの支援を一層強化するとともに、公正取引委員会、中小企業庁において下請Gメンを大幅に増員し、下請取引の適正化、そして価格転嫁を促進してまいります。
 非正規雇用労働者等の賃上げについては、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金の遵守の徹底、希望する方の正社員化支援等に取り組んでまいります。
 また、価格転嫁が進むことで物価上昇が進むことも考えられますが、足下でのエネルギー高騰対策や低所得世帯への支援などの取組と併せ、物価上昇を超える賃上げ、さらには、その先に、構造的賃上げを実現することによる家計の所得を通じ、持続的な消費の拡大につなげてまいります。
 そして、政労使会議の御提案ですが、賃上げを進めるに当たって、政府として、経済界、労働界とコミュニケーションを取りながら進めていくことは大切であると考えています。新しい資本主義実現会議においても、経団連会長、日商会頭、そして連合会長をお招きして議論をしており、賃上げについても、過去三回、テーマとして取り上げ、御意見をいただきました。今後もしっかりと労使の方とコミュニケーションを取って進めてまいりたいと考えております。
 金融政策についてお尋ねがありました。
 金融政策については、具体的な手法は日銀に委ねられるべきと考えておりますが、政府と日銀は、密接に連携しながら、経済、物価情勢に応じて機動的な政策運営を行い、構造的な賃上げを伴う経済成長と物価安定目標の持続的、安定的な実現を図っていくとの認識で一致をしています。日銀には、引き続き、政府との連携の下、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、適切な金融政策運営を行われることを期待しております。
 また、新しい日銀総裁が決まっていない現時点で、共同声明を見直すかどうかについて申し上げることは控えなければならないと思います。
 防衛力強化のための税制措置と賃上げについてお尋ねがありました。
 防衛力強化と経済財政政策に対する考え方、これはよく整理して論ずる必要があると考えております。
 私は一貫して経済あっての財政との立場であり、だからこそ、多額の国債を発行して三十九兆円の総合経済対策を講じ、足下の物価高、円安への対策、構造的賃上げに向けた支援、七兆円の投資支援などを盛り込んだところです。賃上げは、新しい資本主義の最重要課題であり、労働市場改革を通じて構造的な賃上げの実現に全力で取り組んでまいります。
 他方、国民の生命、暮らし、事業を守るために我が国の防衛能力を抜本的に強化するためには、責任ある財源を考えるべきであり、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が対応すべきであると考えております。
 今般、法人税の御負担をお願いすることとしておりますが、その際にも、雇用を支える中小企業への配慮を大幅に強化し、全法人の九四%は対象外としております。防衛力強化は、シーレーン確保、サプライチェーンの維持、抑止力強化による市場攪乱リスクの低減など、円滑な経済活動に直接資する面も多く、御理解をいただきたいと考えております。
 こうした内閣の方針について、国民の皆様に御理解を深めていただけるよう、国会での議論を含め、引き続き、丁寧な説明を行っていく考えです。いずれにせよ、何についてどのように国民の信を問うかということについては、時の内閣総理大臣の専権事項として適切に判断をいたします。
 電気料金の値下げ支援についてお尋ねがありました。
 電気料金支援の水準については、春以降に想定される、全国の御家庭における平均的な負担増が二割程度と見込まれることを踏まえ、その水準と同程度の値下げとしています。これまでに値上げ申請があった七社の申請値上げ幅は電力会社ごとに異なっていますが、今回の電力料金支援を行うに当たっては、公平性や迅速性の観点から、全国一律の値下げ幅としたものです。
 また、今回のエネルギー高騰対策は、価格転嫁することができない最終消費者である家計など低圧需要家を中心とし、転嫁が困難な中小企業等が多く含まれる高圧需要家まで対象を広げ、実施をしております。
 その上で、昨年九月の物価対策において措置をした電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金では、自治体の判断により、地域の実情を踏まえたきめ細かい対応ができることとしており、特別高圧契約の需要家への電気料金支援が行われている例もあると認識をしております。
 政府としては、まずは、電気料金の値引き支援を需要家に確実にお届けできるよう、予算執行に取り組みます。その上で、今後も、経済状況を注視し、必要な政策対応にちゅうちょなく取り組んでまいります。
 エネルギー安全保障と電力の安定供給についてお尋ねがありました。
 昨年二月のロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギーの安定供給の確保が世界的に大きな課題となっており、我々は、歴史上初の世界エネルギー危機に直面していると言われています。
 我が国は、世界最低水準のエネルギー自給率、世界最高水準の中東依存度であり、しかも、山と深い海に囲まれ、再エネ適地が限られているという実態を踏まえ、いわゆるSプラススリーEの原則の下、徹底した省エネの推進に加え、再エネ、原子力など、エネルギー自給率を高める脱炭素電源への転換を推進することにより、エネルギーの安定供給を確保してまいります。
 今後の電力の安定的かつ安価な供給を確保していくに当たっては、原子力発電所の再稼働は重要です。特に、柏崎刈羽電力発電所については、一連の核物質防護事案を受け、現在、東京電力において、体質の再構築と組織改革に取り組んでいるところであり、政府としても、不断の安全向上に取り組む組織文化の醸成に向けて、しっかりと指導を行ってまいります。
 また、電力システム改革においては、災害や事故など不測の事態が発生した場合にも、全国大での迅速かつ円滑な電力の融通が行われるよう、広域的な電力供給システムが構築されました。加えて、電気料金については、小売全面自由化以降、家庭向け自由料金が規制料金よりも安価な価格水準で推移してきた実績があると認識をしております。
 一方で、足下では、採算性の悪化による既設火力発電所の休廃止の増加や、市場価格の高騰を受けた小売電気事業からの相次ぐ撤退など、新たな課題も生じているところです。
 このため、発電事業者の投資回収の予見性を高め、将来必要となる供給力を確実に確保するための市場の整備を実施するとともに、新規参入時の審査や撤退時における消費者への告知ルールの強化など小売電気事業の規律確保を進めてまいります。引き続き、大きな状況の変化に伴い生じる新たな課題に対して、制度を不断に見直すことにより、安定的かつ安価な電力供給を実現してまいります。
 十万円のインフレ手当についてお尋ねがありました。
 政府は、これまで、物価高の主因たるエネルギー、食料品等に的を絞り、きめ細やかな対策を実施してきました。
 特に、家計への影響が大きい低所得世帯に対しては、昨年六月から低所得の子育て世帯に対し児童一人当たり五万円を給付し、昨年十月頃から住民税非課税世帯への五万円の給付が開始され、現時点で対象世帯の約七割に給付金が支給されるなど、重層的な支援策を切れ目なく講じてきました。なお、こうした給付金は、低所得世帯に対して迅速にお届けする観点から、現金給付としているところです。
 加えて、現金給付以外にも、電気、都市ガス料金の負担緩和策によって、今月使用分より家庭において電気料金の二割程度を値引きすることなどにより、燃料油価格の対策と併せて、来年度前半にかけて標準的な世帯において総額四万五千円、エネルギー価格高騰の負担を軽減いたします。
 こうしたきめ細やかな対策を迅速かつ着実に実行することで、物価高から国民を守り抜いてまいりたいと考えております。
 消費税減税や社会保険料の減免についてお尋ねがありました。
 消費税については、急速な高齢化に伴い、社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられています。このように消費税は社会保障制度を支える重要な財源であるため、減税は考えておりません。
 また、社会保険料の事業主負担は、医療や年金の給付を保障することで働く人が安心して就労できる基盤を整備することが、事業主の責任であるとともに、働く人の健康の保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資する、こういった観点から、事業主に求められているものであり、これを国が肩代わりすることは適当ではないと考えております。
 保育、介護職員や公立学校の教師等の処遇改善についてお尋ねがありました。
 保育、介護職員の処遇改善については、給付を恒久的に三%程度引き上げるための措置など、これまで累次の処遇改善を講じてきたところです。今後も、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、見える化を行いながら、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、また負担軽減、これらを進めてまいります。
 また、国家公務員及び地方公務員の給与については、人事院勧告等に基づき、民間準拠を基本とすることが適切であると考えております。
 そして、公立学校の教師の処遇を定めた給特法上の措置等については、本年度実施の勤務実態調査の結果等を踏まえ、教職員の処遇見直しを通じた質の向上に取り組んでまいります。
 毎年の薬価改定についてお尋ねがありました。
 毎年の薬価改定については、国民負担の軽減の観点から実施をしています。
 令和五年度改定では、市場実勢価格を踏まえて薬価を見直すとともに、原材料費の高騰と安定供給問題に対応するため、不採算となっている医薬品の薬価を引き上げ、イノベーションに配慮する観点から、革新的な新薬の薬価を従前の薬価と遜色ない水準とすることといたしました。
 今後も、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性が両立するように、両者のバランスを取りながら取り組んでまいります。
 いわゆる年収の壁についてお尋ねがありました。
 配偶者控除については、これまでの見直しにより、配偶者の収入増による税負担の増が世帯全体としての収入の増を上回ることがない仕組みとなっています。なお、その廃止については、配偶者控除が一定の収入以下の配偶者がいる方の税負担能力の減少を調整する仕組みであること等を踏まえれば、丁寧に議論する必要があると考えています。
 また、いわゆる百三十万円の壁については、これを意識せず働くことが可能となるよう、その解消に向けて、短時間労働者への被用者保険の適用拡大を進めているところです。
 いずれにせよ、少子化対策を強化する上で、男女共に働きやすい環境の整備は重要であり、いわゆるL字カーブの解消、男女間の賃金格差の是正などの課題に対し、女性の就労の壁となっている制度の見直しに取り組んでまいります。
 少子化対策についてお尋ねがありました。
 これまでの自公政権においては、保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化など、ライフステージに応じた支援を進めてまいりました。少子化対策関係の予算額は大きく増加をし、例えば、いわゆる保育所待機児童は平成二十九年の約二・六万人から昨年は三千人まで減少するなど、一定の成果があったと考えています。
 一方で、少子化の背景には、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因があり、いまだに多くの方の子供を産み育てたいという希望の実現に至っていないということも認識をしております。
 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。個々の政策の内容や規模はもちろん重要ですが、地域社会や企業の在り方も含めて、社会全体で子ども・子育てを応援するような、社会全体の意識を高め、年齢、性別を問わず皆が参加をする、次元の違う少子化対策を実現したいと考えております。
 様々な御提案もいただきました。まずは、こども政策担当大臣の下、子ども・子育て政策として充実する内容を具体化し、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示していきたいと考えております。
 子育て、教育施策の所得制限撤廃等についてお尋ねがありました。
 特別児童扶養手当を始めとする各制度において所得制限を設けるかどうかは、個々の制度の目的や支援方法などに応じてそれぞれ判断されると考えております。
 所得制限の撤廃を含め、様々な御提案をいただきました。こうした国会での議論も踏まえつつ、子ども・子育て政策の強化について、こども政策担当大臣に指示をした基本的方向性に沿って具体策の検討を進めてまいりたいと考えています。あわせて、学生への経済的支援の充実のため、給付型奨学金等の対象拡大、出世払い型の奨学金制度の導入にも取り組んでまいります。
 子ども・子育て政策は、最も有効な未来への投資です。これを着実に実行していくため、まずは、子ども・子育て政策として充実する内容を具体化してまいります。
 N分N乗方式についてお尋ねがありました。
 いわゆるN分N乗方式については、共働き世帯に比べて片働き世帯が有利になることや、高額所得者に税制上大きな利益を与えることなど、様々な課題があるということも承知をしております。
 いずれにせよ、子ども・子育て政策は我が国の経済社会の持続性と包摂性を考える上で最重要政策であり、制度、予算、税制など幅広く必要な対応を検討してまいりたいと考えます。
 学生への経済的支援の充実や、その財源としての教育国債についてお尋ねがありました。
 給付型奨学金等については、多子世帯や理工農系の学生等の中間層への対象拡大とともに、出世払い型の奨学金制度の導入に令和六年度より取り組むこととしております。
 その上で、今般、子ども・子育て政策を最重要政策と位置づけ、まずは、今の社会において必要とされる子ども・子育て政策の内容を具体化いたします。そして、高等教育の負担軽減に向けた出世払い型の奨学金制度の導入にも取り組みます。
 また、財源について御提案がありました。まず内容を具体化し、財源についても、その内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいります。
 イージスシステム搭載艦の有用性についてお尋ねがありました。
 まず、御党からは、昨年末、安全保障政策に関する提言をいただき、大いに参考にさせていただきました。
 その上で、イージス・アショアの配置プロセスにおいては、反省すべき点も多かったと認識をしております。契約済みのイージス・アショアの高性能のレーダー等を利活用することで、イージスシステム搭載艦の整備を進めていくこととしております。
 ミサイルに関する技術は急速なスピードで変化、進化し、迎撃はより難しくなってきており、この傾向は、イージス・アショアの配備プロセスを停止した二〇二〇年と比べてもより顕著になっています。
 こうした中で、ロフテッド軌道で打ち上げられた弾道ミサイルや同時複数の発射などに対応するための高い迎撃能力を持つイージスシステム搭載艦は非常に有用な装備品であると考えております。
 省人化あるいは居住性の向上、こうしたものを図り、海上自衛隊の負担軽減にも留意しつつ、整備を進めてまいりたいと考えています。
 外為特会についてお尋ねがありました。
 外為特会が保有する外貨資産は、外国為替相場の安定を目的として将来の為替介入等に備えて保有しているものであり、その運用は安全性と流動性に最大限留意して行っています。
 他方、御指摘のあったシンガポールのテマセクは、長期的なリターンを得ることを目的としてシンガポール内外の企業に投資を行う運用機関であり、保有する外貨資産が為替介入に使われることは想定されていないと承知をしています。
 このように両者の目的が異なる中で、外為特会の外貨資産をテマセクと同様の手法で運用することは適切ではないと考えております。
 暗号資産の課税方式についてお尋ねがありました。
 暗号資産の取引への課税については、国際的な動向や、国内の所得税制全体の中でのバランス等を踏まえた対応が必要であると考えています。
 こうした考えに基づき、令和五年度税制改正において、ウェブ3に関する環境整備として、自らが発行した暗号資産で、発行したときから継続して保有しており、一定の技術的な譲渡制限がついているものについては、期末時価評価を不要とする見直しを行うこととしております。
 防衛産業の基盤強化、セキュリティークリアランス及びサイバーセキュリティーについてお尋ねがありました。
 国内防衛産業は、いわば防衛力そのものであり、基盤強化が急務です。適正な利益の確保、サプライチェーンの強靱化、事業承継など、装備品の安定的な製造のため、防衛産業基盤を強化してまいります。これらを令和五年度から実施するため、必要な予算措置や法整備などの措置を講じたいと考えております。
 セキュリティークリアランスについては、重要な課題の一つであると認識をしております。現時点で具体的なスケジュールは定まっていませんが、民間を含む幅広い関係者から更に御意見を伺いながら、議論を前に進めてまいります。
 能動的サイバー防御を含むサイバー安全保障分野については、政府としては、総合調整する司令塔となる新たな組織を立ち上げることとしております。あわせて、御指摘の法整備についても議論を進めてまいります。
 水田活用の直接支払交付金に関してお尋ねがありました。
 今後五年間に一度も水張りを行わない農地を支援の対象外とする見直しは、主食用米の需要が毎年減少すると見込まれる中、食料安全保障の強化を図りつつ、稼げる農業としていくために必要なものです。
 同時に、見直しに伴う現場の課題を検証し、総合経済対策において、畑地化の推進につなげるため、畑作物の産地形成に必要な一定期間の畑地化支援の創設など地域に応じた柔軟な対応ができるよう、対策を講じたところです。
 今後とも、こうした対策を丁寧に説明し、離農や耕作放棄地の発生を抑制しつつ、主食用米から輸入依存度の高い麦そして大豆や野菜など需要のある作物への本格的な転換を一層進めてまいります。
 最後に、憲法改正についてお尋ねがありました。
 昨年の臨時国会では、衆議院の憲法審査会において、御指摘の緊急事態条項をめぐって各党の主張に関する論点整理が行われるなど、与野党の枠を超え、活発に議論いただいたことを歓迎したいと思います。
 内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての議論の進め方あるいは内容について直接申し上げることは控えなければならないと思いますが、御指摘のように、緊急事態において、議員任期の延長を含め、国会の権能をいかに維持するかについては重要な論点であると考えております。
 憲法改正は、最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、そのための発議に向け、今国会においても、与野党の枠を超えて、更に積極的な議論が行われることを心から期待をいたします。(拍手)
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発言情報

speech_id: 121105254X00320230126_011

発言者: 岸田文雄

speaker_id: 6324

日付: 2023-01-26

院: 衆議院

会議名: 本会議