志位和夫の発言 (本会議)
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○志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。(拍手)
新型コロナ感染症の第八波による医療崩壊が深刻です。死者数は過去最悪、救急搬送困難事案も過去最悪、高齢者施設でクラスターが多発し、多くの犠牲者が出ています。第七波で起こったことが、より深刻な形で繰り返されているのです。総理、その原因はどこにあると認識していますか。政府の責任は極めて重いと考えますが、その自覚はありますか。
このあしき連鎖を断ち切る上で決定的に重要なのが、余りに脆弱な医療体制の抜本的強化です。地域医療構想の名での急性期ベッドの削減計画をきっぱり中止し、危機に対して余裕のある強靱な医療体制をつくるべきではありませんか。
総理は、新型コロナを季節性インフルエンザと同じ五類に引き下げる方針を表明しました。しかし、医療体制の強化抜きにこの方針を実行すれば、医療現場の大混乱は避けられません。医療費を自己負担にすることは、ただでさえ高くなっている医療へのハードルを更に引き上げ、犠牲を拡大することになります。犠牲者が最悪という深刻な事態の下、医療への公的責任を放棄する方針を推進することは断じて認められません。総理の答弁を求めます。
物価高騰からいかにして暮らしと経済を立て直すか。総理は、施政方針で、物価上昇を超える賃上げが必要と述べました。ところが、その方法はといえば、経済界にお願いするというだけで、政治の責任で賃上げを図る具体策が全く見えません。
総理、経済界へのお願いだけで賃上げが進むと考えているのですか。そうはいかないことは、政府がこうしたお願いを安倍政権以来十年間にわたって繰り返しながら、この間に労働者の実質賃金が二十万円も下がっているという事実が証明しているではありませんか。
大体、総理は、働く人の七割を占める中小企業が、抜本的支援なしに賃上げができると考えているのですか。城南信用金庫と東京新聞のアンケートに、中小企業の七割以上が今年賃上げの予定なしと回答しています。原材料費の高騰、コロナ危機による経営難、過剰債務という三重苦にあえぐ中小企業が、言葉だけのお願いで賃上げができるわけがないではありませんか。答弁を求めます。
政治の責任で、賃上げを推進する具体策の実行が必要です。私は、二点に絞って提案します。
第一は、アベノミクスで大企業の内部留保が五百兆円まで膨れ上がった、この膨れ上がった部分に五年間の時限的課税を行って十兆円の税収を確保し、これを中小企業の賃上げ支援に充てて最低賃金を時給千五百円に引き上げる、大企業が賃上げを行った場合には課税を控除し、大企業で働く人の賃上げも促進するという提案です。企業内部に滞留した巨額の資金を、経済、特に賃上げに還流させることの重要性は、総理も否定されないと思います。ならば、それを政治の責任で進めるべきではありませんか。我が党の提案はそのための最も合理的な提案だと考えますが、いかがでしょうか。
第二に、昨年十月の最低賃金引上げは、全国加重平均で三・三%にすぎません。これは、実質賃金の計算に用いる帰属家賃を除く消費者物価の上昇率四・八%に遠く及びません。最低賃金は実質ではマイナスなのです。総理、物価上昇を超える賃上げが必要というなら、最低賃金を少なくとも物価上昇を超える水準に引き上げるために、中小企業への直接支援と一体に最低賃金の緊急の再改定を行うことは、最小限の責任ではありませんか。答弁を求めます。
加えて、物価高騰への最大の効果的対策となる消費税五%への緊急減税と、インボイスの中止を強く求めます。
インボイスが導入されれば、財務省の試算でも、年間売上げ五百五十万円、利益百五十万円の事業者に十五万円もの増税になります。一か月以上の所得が増税で消える。これでは仕事が続けられないという悲鳴が、中小・小規模事業者、クリエーター、フリーランスなどから続々と上がっています。総理、この声にどう応えますか。答弁を求めます。
総理は異次元の子育て支援を掲げていますが、そのメニューを見ますと、一番大事な問題が抜け落ちています。
政府が二〇二〇年に行った意識調査では、育児を支援する施策として何が重要かという設問に対して、断トツ一位は教育費の軽減で、六九・七%に上っています。総理、異次元と豪語するほど子育て支援に力を入れるというなら、その柱に教育費負担の抜本的軽減を据えるべきではありませんか。
世界で最高水準の学費、日本独自の高過ぎる大学の入学金、若者に数百万円もの借金を背負わせる貧しい奨学金制度、憲法で無償とされている義務教育での給食費などの重い負担、この中の一つでも抜本的に改善のメスを入れる意思はありますか。
日本の教育費への公的支出は、対GDP比で、OECD三十七か国中三十六位と最低水準です。にもかかわらず、来年度予算案の文教費の増加額は僅か百二億円、率にして〇・三%。物価高騰の下、実質ではマイナスです。異次元の子育て支援というなら、教育予算の抜本的な増額が必要ではありませんか。答弁を求めます。
総理は、昨年十二月、原発回帰への大転換の方針を決めました。
しかし、自民党は、昨年の参議院選挙で、原発の新規建設は考えていないと公約していたではありませんか。選挙が終わると手のひらを返して新規建設推進の方針を決めるのは、文字どおりの公約違反ではありませんか。
さらに、自民党は、二〇一一年三月の東京電力福島第一原発の大事故を受けて原子炉規制法が改定された際、経年劣化による安全上のリスクが増大するため、原発の運転期間は四十年を基本とすることで民主党、公明党と合意していたではありませんか。総理は老朽原発の六十年を超える運転を認めるとしていますが、経年劣化による安全上のリスクがなくなったとでも言うのですか。
原発事故の教訓を忘れ、被災者の苦しみを忘れた、新たな安全神話の復活と言うほかないではありませんか。
総理はグリーンを理由としていますが、原発こそ、一たび事故を起こしたら最悪の環境破壊を引き起こし、核のごみの処分方法もありません。原発頼みを続けてきたことが、再生可能エネルギー、省エネルギー普及の障害になっています。原発ゼロを決断することこそ脱炭素を進める道だと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。
総理は、昨年十二月、安全保障三文書を閣議決定し、反撃能力の名での敵基地攻撃能力の保有と、五年間で四十三兆円もの大軍拡を進めることを宣言しました。
私は、次の七つの問いを総理に提起したいと思います。
第一は、勝手に決めるなということです。
安保三文書自身が戦後の日本の安全保障政策の大転換だと認めているにもかかわらず、総理は、昨年の参院選でも臨時国会でもその内容を示さず、一片の閣議決定で大転換を決め、米国のバイデン大統領に報告して既成事実化した上で、ようやくこの国会に臨んでいます。順序が逆ではありませんか。民主主義を無視したやり方だと考えませんか。お答えください。
第二は、日本国憲法との関係をどう説明するのかという問題です。
政府は、一九五九年の伊能防衛庁長官の答弁で、敵基地攻撃について、法理的には可能としながら、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。」と述べています。政府は、近年でも、この答弁について、現在でも当てはまると答弁しています。
総理、敵基地攻撃は法理的には可能だが、その能力を保有することは憲法違反という憲法解釈を変更したのですか。お答えください。
第三は、専守防衛と両立し得るかという問題です。
安保三文書は、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならないと述べています。
しかし、今やろうとしていることは何か。GDP比二%以上の軍事費となれば、日本は、米国、中国に次ぐ世界第三位の軍事費大国になります。長射程のトマホークミサイルなど、相手国の脅威圏の外からミサイルを撃つスタンドオフミサイルを大量に導入し、それを搭載する戦闘機、護衛艦、潜水艦を大増強するなど、強大な敵基地攻撃能力を保有することになります。
それがどうして他国に脅威を与えるような軍事大国でないと言えるのか、説明いただきたい。専守防衛に徹しといいながら、専守防衛を完全に投げ捨てる。これが正体ではありませんか。お答えください。
第四は、敵基地攻撃能力保有は自分の国を自分で守るためのものという言い訳が成り立つかという問題です。
安保三文書は、集団的自衛権を行使する場合も敵基地攻撃能力を行使できると明記しています。
すなわち、日本が武力攻撃を受けていない下でも、米国が海外で戦争を開始したら、自衛隊は米軍と一体に、敵基地攻撃能力を使って相手国の領土に攻撃を加えるということです。その結果は何か。日本への報復攻撃による国土の焦土化です。日本を守るではなく、日本を米国の戦争に巻き込み、国土を廃墟と化す。これが正体ではありませんか。
現に、大軍拡の最前線に立たされようとしている沖縄では、万一、有事となった際に甚大な犠牲を被るとして、沖縄県や石垣市議会は敵基地攻撃兵器の配備に強く反対しています。沖縄を再び捨て石にするな。総理は、この声にどう応えますか。お答えください。
第五は、敵基地攻撃能力保有は先制攻撃にならないという言い訳が成り立つかという問題です。
安保三文書は、敵基地攻撃能力の柱に統合防空ミサイル防衛能力の強化を据えています。
統合防空ミサイル防衛、IAMDとは、アメリカが地球的規模で構築している、敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化したシステムですが、このシステムに自衛隊が米軍と完全に融合する形で参加しようというのであります。
極めて重大なことは、米軍が二〇一七年に作成したドクトリンには、統合防空ミサイル防衛は先制攻撃作戦を含むことが公然と明記されていることです。そうなると、米軍がこの方針に即して先制攻撃で戦争を開始したら、自衛隊も一体に戦うことになるではありませんか。憲法違反であるだけでなく、国連憲章に違反する先制攻撃の戦争に、米軍の指揮下で自衛隊が参戦することになるではありませんか。しかとお答えください。
第六は、五年間で四十三兆円もの大軍拡の財源をどう賄うのかという問題です。
復興特別所得税の一部を軍事費に流用して期間を延長する軍拡増税に対して、我が党はもとより断固反対ですが、問題はそれにとどまりません。政府は歳出改革といいますが、どこをどう削るのかは明らかにされておらず、社会保障大削減の危険があります。さらに、軍事費を国債で賄うという、歴史の教訓を無視した暴挙に手を染めようとしています。
結局、大軍拡を大前提とする限り、大増税、社会保障大削減、国家財政破綻、軍事栄えて民滅ぶの日本に行き着くことは明らかではありませんか。お答えいただきたい。
最後に、第七は、東アジアに平和をつくる外交戦略についてです。
東南アジア諸国連合、ASEANは、二〇一九年の首脳会議で、ASEANインド太平洋構想、AOIPを採択し、ASEANと日米中など十八か国で構成する東アジア・サミットを地域の全ての国を包み込む平和の枠組みとして強化し、行く行くは東アジア規模での友好協力条約を展望するという壮大な構想を提唱しています。
日本共産党の提案は、憲法九条を持つ日本こそが、ASEANと協力し、ASEANインド太平洋構想を共通の目標として、この地域の全体をASEANのような戦争の心配のない地域にしていく先頭に立とうというものであります。
そこで、総理に聞きます。
一月十三日の日米共同声明では、ASEANインド太平洋構想への支持が明記されています。しかし、ASEANインド太平洋構想は、対抗ではなく対話と協力のインド太平洋地域をつくることを最も重要な構成要素として明記しています。対抗ではなく、これが要の精神なんです。この構想への支持を確認しながら、日米同盟の抑止力、対処力の強化によって地域の軍事的緊張と対抗を激化させる。これは根本的に矛盾していると考えませんか。お答えいただきたい。
亡くなった評論家の加藤周一さんは、戦争の準備をすれば、戦争になる確率が大きい、もし平和を望むなら戦争を準備せよではない、平和を望むならば、平和を準備した方がいいという言葉を残しています。今、日本がなすべきは戦争の準備ではなく平和の準備であるということを私は心から訴えたいのであります。
敵基地攻撃能力保有と大軍拡は、日本国憲法に違反し、専守防衛をかなぐり捨て、日本を戦争国家につくり変える歴史的暴挙です。日本共産党はその撤回を強く求めます。
そして、この大軍拡を強行するというなら、主権者である国民の審判を仰ぐべきです。
統一協会との底なしの癒着、政治と金の問題でのモラル破壊、これらの問題を含め、もはや岸田政権に日本のかじ取りを任せるわけにはいきません。
解散・総選挙で国民の信を問うことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕