櫻井周の発言 (本会議)
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○櫻井周君 私は、立憲民主党・無所属を代表し、ただいま議題となりました鈴木俊一財務大臣の不信任決議案について、その趣旨の弁明を行います。(拍手)
まず、決議文を朗読いたします。
本院は、財務大臣鈴木俊一君を信任せず。
右決議する。
〔拍手〕
以上であります。
以下、その理由を申し上げます。
昨年末に岸田総理が打ち出した防衛費倍増は、二〇一五年の集団的自衛権行使容認の安全保障関連法と併せて、戦後七十年の我が国の安全保障政策を転換するものです。
こうした流れに対して、二月八日の衆議院財務金融委員会において、鈴木財務大臣は、大臣所信として、「財政は国の信頼の礎であり、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保していくことが不可欠であると考えております。」「二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革を着実に推進してまいります。」と表明しました。これまでの財務大臣所信は毎年同じような文言でありましたが、今通常国会の財務大臣所信には、これまでなかった、「有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないように」「平素から財政余力」という言葉が入っており、私は、大いに期待しました。
しかし、この私の期待は見事に裏切られました。大臣所信で約束した二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標の達成をほとんど不可能にする、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案、以下、防衛財源確保法案と言います、を提出したからです。
大臣所信と相反する法案を提出する財務大臣は、信任することはできません。
鈴木財務大臣が担当大臣として提出した防衛財源確保法案は、我が国の安全保障の根幹となるべき法律案であるにもかかわらず、問題だらけの欠陥法案です。
まず、防衛財源確保法案の第一の欠陥は、法案の名称に「我が国の防衛力の抜本的な強化等」とあるのに、防衛力強化につながるかどうかが不明なことです。
防衛財源確保法案の前提として、五年後の防衛費をGDP比で二%とすること、すなわち、二〇二三年度から二〇二七年度までの五年間で四十三兆円の防衛費を予定し、二〇二七年度には防衛費を八兆九千億円程度としています。しかし、防衛費がなぜGDP比で二%なのか、なぜ五年間で四十三兆円なのか、不明です。
そもそも、防衛省が提出した資料では、例えば、スタンドオフ防衛能力について約五兆円としているものの、主な事業を合計しても四兆円余りにしかなりません。その差額の一兆円はどこに行くのか不明です。さらに、スタンドオフ防衛能力については、外国製を三種類購入する上に、国産ミサイルを同時に五種類も開発します。なぜスタンドオフミサイルが八種類も必要なのか、極超音速誘導弾や高速滑空弾など本当に開発できるのかなども不明です。
また、イージス・アショアについては、これまでも問題を指摘してまいりました。政府は、当初は、一基当たり千二百億円、二基で二千四百億円と説明していましたが、陸上配備が困難ということでイージスシステム搭載艦に変わり、二隻で五千億円、三十年の維持整備費を含めると九千億円のコストがかかるということで、大幅に膨れ上がることになっております。
イージス・アショアをめぐる迷走については、海上自衛隊司令官を務めた香田洋二元海将は、衆議院財務金融委員会安全保障委員会連合審査会に参考人として出席をいただき、「目的を維持しようとしたんじゃないんです、自分たちのシステムを生かすためにどうするかということで、そこでもう日本の防衛を離れちゃったんです。ということは、我が国を防衛すべき防衛省・自衛隊が、実は自分たちの選択を守る政策に走ってしまった。 私は自衛隊のOBとしてこんなことを言うのは本当につらいんです」と発言されました。
この発言を私なりに要約すれば、防衛省・自衛隊が国土防衛ではなく組織防衛に走ってしまったということです。防衛省の組織防衛が強化されても、国土防衛が強化されなければ、国民の命を守ることはできません。
沖縄県名護市の辺野古に建設中のアメリカ海兵隊基地については、大浦湾に海面下約九十メートルの軟弱地盤が確認され、土木工学的に相当な難工事となります。政府が当初三千五百億円と説明した建設費は、既に九千億円に膨れ上がっております。今後、更に増加することが懸念されております。これは、当初の見通しと予算査定が甘過ぎたと言わざるを得ません。
着工時の財務大臣は麻生太郎前大臣ではございますが、その後も甘い査定を続けている鈴木財務大臣を信任することはできません。
航空自衛隊は、宇宙航空自衛隊へ改組するとしています。また、サイバー防衛隊も拡充するとしています。しかし、自衛隊の定数は増やさない、人件費も増やさない。一体、どうやってサイバー分野の人材を確保するのか、不明です。サイバー分野の人材は、民間部門でも大幅に不足をしています。民間から採用するのは困難であるだけでなく、仮に自衛隊の中で人材を育成しても、民間に高い給料で引き抜かれる可能性があります。
私は、サイバー防衛能力を強化する必要があると考えますが、政府の進め方ではサイバー防衛能力が強化できないのではないのか、看板倒れになるのではないのか、懸念をしております。
そもそも、自衛隊の隊員は慢性的に不足をしています。現在の定員は二十四万七千百五十四人ですが、充足率は九三・四%です。特に、前線に立つ若い世代が不足をしています。そうした中で装備を充実させても、その装備を運用する人材がいなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。
こうした素朴な疑問に対して、政府の答えは、先生からの御指摘をいただきながら、よりしっかり前に進めていきたいという、答弁にならない答弁でございました。
アメリカからの武器購入の有償軍事援助、FMSでは、代金を支払い、納入期日が経過したにもかかわらず、納品されない事例が相次いでいます。この点は、二〇一八年度の会計検査で指摘されていますが、十分には改善されていません。代金を支払ったのに装備が届いていないのでは、お金だけかかって我が国の防衛力の強化には全くつながらないということになります。
政府は、防衛機密だからと詳細を説明しないことが少なくありません。例えば、トマホーク購入に二千億円とあるのに対して、何発購入するんですかという質問をしても、安全保障上適切でないとして、答弁を拒否されてしまいました。しかし、FMSでの購入はアメリカ連邦議会での承認が必要です。アメリカ連邦議会の審議の過程で公表されると分かった途端に、四百発との説明がありました。
本当に安全保障上適切でないなら、どうしてアメリカは公表するんでしょうか。日米同盟というのはその程度のものなんでしょうか。それとも、安全保障上公表しても問題ないものであるにもかかわらず、日本政府は説明しないのでしょうか。説明なしには、国民は防衛費を負担するのは嫌がるでしょう。実際、防衛増税に対して、世論調査では約七割が反対という結果が出ております。
政府の説明責任については、香田洋二元海将は、委員会の参考人質疑において、私は自衛官として、本当にこれで最後に現場で戦う自衛隊は、あんたらは国民に何も説明せずにいきなりやってきて弾ばっかり撃っているねと言われるのが一番つらい、これは結果的に日本の防衛にならないんです、ありきたりの国会答弁で私は済むような話ではない、このように発言をされました。
安全保障の現状と必要な防衛予算について国民に丁寧に説明することが、国民に当事者意識を持っていただくことにつながり、ひいては防衛力の強化につながります。岸田内閣はそうした基本が欠けているというのが、香田洋二元海将の指摘でした。政府は重く受け止めるべきです。
なお、防衛予算の中には防衛機密として本当に答弁できないものがあることは、私も承知をしております。だからこそ、他の分野以上に、防衛予算の審議においては、財務大臣の役割は重要でございます。財務省主計局は、防衛予算について、防衛機密を含めて事実を確認した上で査定をしているからです。だから、財務大臣には、厳しく査定をしています、防衛予算に一円の無駄遣いもありませんと、説得力を持って説明責任を果たしていただきたいのです。
しかし、鈴木俊一財務大臣は、二〇二一年十二月に、森友学園問題に係る財務省決裁文書改ざん問題で自殺した近畿財務局の元職員の赤木俊夫さんの妻による国に対する損害賠償請求訴訟において、国は認諾をして約一億円の賠償請求を認めました。私は、この損害賠償の一億円を、佐川宣寿元理財局長などに対して求償権を行使して請求するように提案をいたしましたが、鈴木財務大臣はこの提案を無視しました。
重大な不祥事を起こした財務省職員に対して求償権を行使しようとしなかった鈴木俊一財務大臣は、到底、信任することができません。
次に、防衛財源確保法案の第二の欠陥は、法案の名称に「財源の確保」とあるのに、財源が確保できていないということです。
防衛力強化資金を設置し、税外収入をかき集めて三・四兆円を確保したとしています。しかし、二〇二八年度以降に毎年必要となる〇・九兆円の財源のめどは立っていません。
外国為替特別会計の剰余金の扱いとして、財務省は、特別会計ガイドブックにおいて、「剰余金のうち、外国為替資金への組入れに必要な金額としては、外国為替相場や市場金利の変動等があっても、保有外貨資産に発生する評価損を概ね下回らない水準であるところの保有外貨資産の百分の三十が目安となり、中長期的にはこの水準まで組入累計額が達することが望ましい」としています。
現状は一八・六%で、目安の三〇%を大きく下回っています。外国為替特別会計の健全性を確保できていない状況であるにもかかわらず、令和四年度剰余金一・九兆円に加え、令和五年度決算を待たずに一・二兆円、合計三・一兆円を防衛力強化資金に繰り入れることとしました。財務省が自ら設定した基準を自ら踏みにじることについて、鈴木財務大臣は、外為特会の財務状況でありますとか一般会計の財務状況を勘案いたしまして一般会計への繰入額を決定することとしておりますと、答弁にならない答弁をしました。
説明能力がないのであれば、財務大臣として不適任です。説明できないようなことをやっているのであれば、これまた財務大臣として不適任です。どちらにしても、鈴木財務大臣を信任することができないことに変わりはございません。
決算剰余金について、過去十年間の平均が一・四兆円であり、その半分の〇・七兆円を防衛費に充てるとの説明でございました。ですが、二〇二〇年度は新型コロナウイルス感染症の影響で税収見込みが大きく外れてしまいまして、四・五兆円もの決算剰余金を計上しました。財務省主税局が税収見込みを大きく外した問題は、昨年二月四日の衆議院財務金融委員会で、自民党の中西健治議員が指摘したところでございます。
財務省主税局の大失態に基づいて防衛費に充てる決算剰余金の金額を水増しするのは、国民に対する二重の背信行為です。したがって、せめて、二〇二〇年度の決算剰余金は平均額の算出から外すことを提案しました。そして、二〇二〇年度を外した過去十年の平均の約一兆円に基づくことを提案いたしました。
これに対して、鈴木財務大臣は、先ほどの繰り返しになりますけれども、過去十年間の実績に基づくという一貫した考え方の下で、私ども、こうした数字を出させていただいていると、また答弁にならない答弁を繰り返しました。平均額の算出において異常値を強引に組み入れてかさ上げするというような、的確な計算能力を有しない人物に、国家の金庫番たる財務大臣を任せるわけにはいきません。
決算剰余金を当てにすることは、結局は、決算剰余金を恣意的に生み出すことになりはしないか、本来であれば赤字国債の発行を抑制するべきときに恣意的に発行抑制を行わないことにつながるのではないのか、財政規律を破壊することにつながると懸念するところです。
防衛財源確保法案の説明の中で提案されている所得税増税、これは、実態は復興特別所得税の流用です。東日本大震災の復興財源を確保する復興特別所得税をその目的外の防衛費に流用することは、国民との約束違反です。また、被災地に対する裏切り行為です。被災地から選出されている鈴木財務大臣がこのような暴挙に出ることは、本当に信じられません。
以上のとおり、防衛財源確保法案は、その法案名称とは裏腹に、防衛力の強化につながるかどうかも定かでありませんし、財源を確保できているものでもございません。このような看板に偽りありの法案を提出する鈴木財務大臣を信任することはできません。
我が国が抱える主要な課題は、安全保障上の脅威のほかに、感染症、地震、火山噴火、台風、洪水などの災害、そして少子化、人口減少など様々ございます。これらのリスクをゼロにしようと多額の予算を充当すれば、予算が巨額となり、今度は財政破綻のリスクが高まってしまいます。したがって、予算制約の中でリスクに応じて予算を的確に配分し、リスクを全体として最小化するべきです。
したがって、予算編成を担当する財務大臣の責任は重大です。
新型コロナウイルス感染症については、五月八日から、感染症法上の二類相当というものから五類に格下げとなりました。ただしかし、コロナウイルスが消えてなくなったというわけではなく、常に毒性と感染力の強い変異株が登場するリスクがあります。また、新型インフルエンザ等、他の感染症のリスクもあります。
したがって、次の新型感染症に備えるために、医療機関の体制を強化する必要があります。しかし、防衛財源確保法案では国立病院機構と独立行政法人地域医療機能推進機構から国庫に納付させることとしているのは、政策の方向性として真逆です。国立病院機構などの傘下で赤字経営の病院は少なくありません。病棟の改修や医療機器の更新、医療スタッフの処遇改善などが十分にできていない状況です。これでは、新型コロナウイルス感染症の第九波がもし起こってしまった場合に医療崩壊してしまうのではないのか、新型の感染症に対応できないのではないのか、このように懸念するところです。これで、防衛費を増額しても国民の命を守ることができないということになりますと、これは、国民の命を守ることができない財務大臣は、到底、信任することはできません。
ちなみに、二〇〇八年から二〇〇九年にかけて、新型インフルエンザが大流行いたしました。このときの自民党麻生太郎内閣はなすすべがなく、この感染症の流行が収まったのは民主党に政権交代してからでありました。
このときの新型インフルエンザは幸いにも毒性が強くなかったので事なきを得ましたが、強毒性の新型感染症のリスクを認識して、民主党の野田佳彦内閣のときに、新型インフルエンザ等対策特別措置法を成立させました。そして、国と地方は、新型インフルエンザ対策行動計画を策定し、様々な備品を備蓄してまいりました。もし、民主党政権がなかりせば、そして新型インフル特措法がなかりせば、今回の新型コロナ感染症への対策はどうなったでしょうか。それこそ悪夢です。政治の役割は、民主党内閣のように、将来のリスクにしっかりと備えることではないでしょうか。
昨年、アメリカの著名な実業家のイーロン・マスク氏が、当たり前のことを言うようだが、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろうというツイートをしたことが話題になりました。実際、二〇二二年の出生数は八十万人を割り込むなど、少子化は一段と進んでしまいました。マスク氏に指摘されるまでもなく、三十年前から、少子化による人口減少、さらには日本衰亡の危機について指摘され続けてまいりました。
二〇〇九年の政権交代で、民主党政権は、少子化対策と子ども・子育て支援として、高校授業料の無償化、それから子ども手当を創設しました。そして、実は、このとき、私のような団塊ジュニア世代がちょうど三十代後半に差しかかっておりましたので、あともう一人子供を産めるかどうか、そういうときでした。実際、我が家も、民主党政権の子ども・子育て支援の恩恵を受けることができました。
しかし、その後、野党自民党により所得制限が設けられ、少子化対策は大ブレーキがかけられてしまいました。今になって、自民党は、異次元の少子化対策や次元の異なる子育て支援と言っていますが、我が国の少子化対策は十年は遅れ、少子化と人口減少は進んでしまいました。
そして、この十年の遅れは、次元の異なる少子化対策は更に遅れるかもしれません。
三月一日の参議院予算委員会において、立憲民主党の辻元清美参議院議員の防衛財源確保についての質問に対して、鈴木財務大臣は、「結論から申し上げれば、ぎりぎりかき集めた」「防衛力整備に向けてのこの財源確保については、極めて異例な措置も含めまして、ぎりぎり確保した」と答弁しました。
つまり、子ども・子育て支援に充てる財源はもう残っていないということです。子育て支援予算の倍増は、岸田総理が昨年の通常国会で、こども家庭庁設置法案の審議において表明したことです。少子化と人口減少は我が国の存亡に関わる重大な課題であるにもかかわらず、そのための財源確保の見通しが立っていないということでありますと、これは、財務大臣として到底信任することができません。
経済、財政の失敗についても指摘をいたします。
四月二十一日に総務省が発表した三月の消費者物価の上昇率は三・二%でした。また、二〇二二年度の消費者物価上昇率は三・二%でした。岸田インフレで国民の生活はもう本当に苦しい状況です。おとといの、五月十六日の物価問題に関する閣僚会議において、電気料金の大幅値上げが了承されました。また、九月以降に電気などのエネルギーへの補助金が順次打ち切られれば、電気料金などの負担は更に重くなります。岸田インフレはまだまだ続くことになります。
岸田インフレ、物価上昇の最大の原因は悪い円安です。そして、大幅な円安の原因は、アベノミクスを漫然と続けることなどの財政と金融政策の失敗にあります。これは財務大臣の責任です。国民生活を困窮させている財務大臣は、信任することはできません。
岸田総理は、賃上げと繰り返し発言しています。
先週五月九日に厚生労働省が発表した毎月勤労統計の三月分では、実質賃金はマイナス二・九%でした。つまり、賃金上昇が物価上昇に追いついていません。日本の労働者はどんどん貧しくなっています。この点からも、岸田内閣の経済政策は大失敗です。
ちなみに、今春の春季生活闘争、いわゆる春闘で、賃上げ率が三・七%との数字が報道されていますが、これには定期昇給分の約二%が含まれています。定期昇給分は賃金総額の増額にはつながりません。定期昇給分を差し引いて考えれば、今年の春闘は物価上昇に全く追いついていないということになります。
賃金は厚生労働大臣の所掌であり、物価は日本銀行総裁の所掌であるので、財務大臣の不信任の理由に当たらないという反論があるかもしれません。しかし、賃金上昇が追いつけないような物価上昇となった最大の原因は、やはり大幅な円安であり、アベノミクスを漫然と継続している財務大臣の責任です。国民の生活を困窮させている財務大臣は、信任することはできません。
五月十五日の経済財政諮問会議では、有識者から、インフレ率が一から二%に定着すれば、量的・質的緩和は解除するのが望ましいと提案がありました。しかし、政策金利を仮に一%でも引き上げれば、日本銀行は、保有国債の評価損で実質的に債務超過に陥ってしまいます。政府は、国債の利払い費の増大で財政が圧迫されることになります。
しかも、コロナ対策で巨額の国債を発行してまいりましたけれども、これは、利払いを抑えるために短期の国債を大量に発行しています。つまり、大量に借り換える必要があります。具体的には毎年約二百兆円もの国債を発行しておりまして、金利の引上げということになりますと、利払い費の増加に即座に跳ね返ってまいります。そうなると、もう防衛費の倍増どころではなくなります。
国際通貨基金、IMFも、日本の財政について懸念を表明しています。三月三十日に公表されましたIMF対日審査報告書では、以下のような懸念が指摘をされています。
GDPに対する政府負債は既に高い水準。安全保障などの特定の政策分野で政府支出の圧力が高まり続けている。予算のシーリングは実際の政府支出を制限していない。公的債務対GDP比率は中長期的に着実に増加。内閣府が半年ごとに予測するGDP成長率と財政収支の中長期の経済財政に関する試算は、歴史的に楽観的過ぎる。公的債務の対GDP比率が上昇傾向にあると、金利が急激に上昇し、ソブリンストレスが発生する可能性がある。
これらの指摘は、いわばIMFによる日本の財務大臣に対する不信任のようにも受け止められます。IMFが、大口の出資国である日本に対して、なぜここまで厳しいことを言うのか。
私は、大学を卒業した後に銀行に勤めておりました。アジア向けの融資を担当しておりました。一九九〇年代後半のことです、アジア通貨危機を経験しました。資本市場というのは一旦動き出すともうどうにもならない、そういう恐ろしさを経験いたしました。このとき、IMFと日本が中心となって、韓国、タイ、インドネシアなどの国々を支援しました。このときのアジア諸国の経済規模は今よりもはるかに小さかったので、何とか救済することができました。
しかし、今、日本がもし二十五年前のアジア通貨危機のようなことになってしまったら、どうでしょうか。IMFの力をもってしても日本経済は大き過ぎて助けられない、だから今のうちに改善してください、そういうIMFの悲痛な叫びでもあるように受け止められます。
なお、岸田総理は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面というふうに言っています。確かに、隣国の中国の軍事費は大幅に増加しています。ただし、中国の場合にはGDPが大きく成長しており、少なくとも、公にされている範囲では軍事費はGDP比では増加傾向にはありません。日本は、既に巨額の公的債務を抱える上に、毎年、財政赤字を積み増ししています。そんな中での防衛費の倍増は財政を破綻させかねません。
ちなみに、大学教育について、二〇一九年十月に、当時の萩生田光一文部科学大臣は、身の丈に合わせてと発言をしました。大学進学を目指す受験生に身の丈に合わせることを求める自民党政権ですから、防衛費についても身の丈に合わせてはいかがでしょうか。
加えて、この十月から、財務大臣は、適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度を導入しようとしています。しかし、インボイス制度は小規模零細事業者にとっては負担が極めて重く、これを契機に廃業を考えている事業者も少なくありません。インボイス制度の導入はやめてもらいたいという多くの声を無視して、インボイス制度導入に突き進む財務大臣を信任することはできません。
防衛予算を倍増すれば安全になるという単純なものではありません。また、敵基地攻撃能力を保有すれば安全になるという単純なものでもありません。例えば、現在、ウクライナが世界各国から支援を受けていますが、その前提として、ウクライナがロシア領内を攻撃しないということがあります。国際世論を味方につけて、支援してもらえる関係を持つことが重要であります。
しかし、日本政府は逆のことをしてしまっています。極めて残念なのが、二年前にスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管で死亡した事件です。
スリランカでは、日本の、移民に対する無慈悲な扱いがスリランカ国民に衝撃を与えた、日本人は人間としての感情が希薄、日本に行くときは、受け取るお金だけでなく、その国の法律にも注意する必要があると報道されています。こうした事件が、我が国に対する国民感情を損ない、国益を損なう可能性があります。
さらに、先週、参議院本会議でこの入管法案の審議が始まりましたけれども、維新の会の議員の発言をめぐって、ウィシュマ・サンダマリさんの遺族が、詐病は事実無根、死者を冒涜していると抗議しました。こうしたことが我が国の国益を損なっています。(発言する者あり)ここから関係があるんです。
財務大臣は、先週も、G7財務大臣・中央銀行総裁会議において、スリランカの債務救済問題について取り組んだと承知をしております。これは何百億円かかるか分かりませんが、日本は、スリランカに対して相当の支援をすることになろうかと思います。
しかし、こうした財務大臣の努力、私はこれに敬意を表します。ですが、せっかく日本国民の税金を投じて外交努力をしても、ウィシュマ・サンダマリさんのようなこうした事件、こういうまずい対応があれば、帳消しになってしまいます。
入管法は財務大臣の所掌ではないから関係ないと思われるかもしれませんが、財務大臣の担当業務にも関わってくることです。内閣の一員として、国の国益を損なわないように働きかけるべきだったと申し上げておきます。
明日からG7首脳会議が広島で開催されます。日本は議長国になっています。
近年、日本政府は、価値観外交を掲げています。人権、民主主義、法の支配などの普遍的価値の重要性を岸田総理は繰り返し言及しています。
しかし、人権侵害に対する制裁法、いわゆるマグニツキー法を制定していないのは、G7の中では日本だけです。サプライチェーン等における人権尊重のための法制度、いわゆる人権デューデリジェンス法を何ら制定していないのも、G7の中では日本だけです。価値観外交という看板は、掲げるだけではなく、それを実現させるための具体的な法制度を整備すべきです。
岸田総理は中国や北朝鮮を脅威と発言していますが、これらの国が脅威である原因の一つは、人権、民主主義、法の支配などが不十分であることです。財務大臣は、人権は所掌でないというふうに思われるかもしれません。ですが、マグニツキー法は外為法と入管法による取組です。外為法を所掌する財務大臣として取組が不十分、G7の議長国としてマグニツキー法を制定しなかったのは誠に恥ずかしいことだというふうに言わざるを得ません。
今月のアメリカのタイム誌の表紙には岸田総理の顔写真が掲載され、「ジャパンズチョイス」、日本の選択というタイトルで、岸田総理は、数十年にわたる平和主義を放棄し、日本を真の軍事大国にしたいと望んでいると記載されました。アメリカの権威ある雑誌が、今まさに日本は歴史の転換点にあるという見方をしています。
令和四年、二〇二二年十一月二十八日に、防衛費の大幅増額について、岸田総理大臣と鈴木財務大臣、浜田防衛大臣で会議を行い、令和九年度において防衛費とそれを補完する取組を併せて現在のGDPの二%に達するよう予算措置を講ずることが決められたと承知をしています。
実は、似たような会議が過去にもございました。今から九十年前、昭和八年、一九三三年十月に、斎藤実総理大臣、高橋是清大蔵大臣、荒木貞夫陸軍大臣、大角岑生海軍大臣、広田弘毅外務大臣の五大臣会議が開催されました。この会議において、高橋是清大蔵大臣は、軍事予算の膨張はいたずらに外国の警戒心を刺激し、外交工作の機会を少なくするばかりでなく、予算の内容の国防へんぱが国民経済の均衡を破ることになると主張しました。
また、高橋是清大蔵大臣は、昭和九年、一九三四年一月二十七日の貴族院本会議において、「而シテソレガ為ニ国防ノ充実ハ必要デアルガ、其程度ニ至ッテハ、成ルベク之ヲ最小限度ニ止メナケレバ国ノ財力ガ堪ヘ切レヌ、」と発言しました。これがために、高橋是清大蔵大臣は軍部から恨みを買い、結果、この貴族院本会議での発言後に、二・二六事件で凶弾に倒れました。
高橋是清大蔵大臣は、軍部からの圧力に屈することなく、命懸けで軍事予算を抑制し、国民生活を守ろうとしました。財務大臣に必要なのは、こうした姿勢と、そして覚悟ではないでしょうか。
中国の孫子の兵法によれば、戦わずして勝つが上策とされています。岸田内閣は、孫子の兵法の逆で、財政破綻により、戦わずして負けるということになりはしないのか、このように懸念するところです。そして、そのような政策を主導する鈴木俊一財務大臣は、信任することができません。
以上が、財務大臣鈴木俊一君不信任決議案の趣旨であります。
本院議員の皆様方の御賛同を切にお願い申し上げて、趣旨弁明を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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