森雅志の発言 (国土交通委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(森雅志君) おはようございます。
こういう機会をいただきまして、まず冒頭、心からお礼を申し上げます。
富山大学客員教授などと御紹介いただきましたが、私は研究者ではございませんので、富山市長として十九年間、特にLRTを中心とした取組をしてきましたので、現場の実務者としての経験を基にお話をしていきたいというふうに思っております。
最初に、全国の地方都市あちこちで陥りがちなんですが、交通政策と都市政策というのは本来融合されるべきだと思っておりますけれども、しばしば交通担当セクションと都市、まちづくり担当セクションとの意思がなかなかきちっと交換されていないという例を見受けます。ここがすごく大事なポイントだと思っております。
先般、ニュースで知りましたが、北海道の北広島市の新しくできたエスコンフィールドという球場、何か試合が終わって札幌まで行くバスに乗るのに九十分掛かったとか、駐車場から出れなかったということなどもあって新駅を検討するなどという報道を見て、それは最初からやっておけばどうだったのかと、よその都市のことでちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういうことがしばしば起きております。
どことは言いにくいんですが、昨年、呼ばれて静岡県のある市に行きましたが、そこへ行くときは東京から新幹線で三島駅に降りなきゃいけないわけですけれども、そこの都市マスタープランを読んでみますと、三島駅との交通アクセスの改善などというのは全く書かれていないんですね。そういう少し俯瞰した視座に立って交通を論ずることが大変大事です。
しかし、なぜそうならないかというと、一つは、明治以来、交通というのは本来民業で、更に単体で採算が合うことを求められ続けてきているわけです。右肩上がりの時代には奇跡的に日本の交通というのはそれでもっていましたけれども、人口減少、さらには様々な社会的要因の変化でもたなくなってきているというのが、もう二十年も前から分かっていたことだと思います。
したがいまして、大事なポイントは、都市政策を中心に考えていく、そして、交通というのは都市政策、まちづくりの重要なツールの一つなんだということにスタンスを置くことが大事だというふうに思っています。こうしないと、公費投入の妥当性をなかなか議論できないということになってきます。
私どもが最初に、JR西日本の富山港線という短い枝線ですが、これを引き受けて富山ライトレールというLRT化を最初にやったときには、まさにドン・キホーテみたいに言われていました。また三セクをつくって赤字の垂れ流しだという批判も大きかったわけです。
そもそも、当時は交通政策基本法もありませんし、地域公共交通活性化法もなかった時代ですので、市費を投入することの妥当性というのは議会で予算を議決してもらったことしか根拠がなかったわけですけれども、今、そういう環境も変わってきました。
今回の改正の中で、まず冒頭に、その共創という言葉などを使いながら、つまり、ステークホルダーがみんな集まっていい方向、最適化というものを模索しようという考え方が示されたことは大変重要な意味があるというふうに思っています。
例えば、先ほど申しました富山ライトレールの事業は総事業費五十八億でしたが、富山駅の連続立体交差事業の支障補償という側面もあって、市の単費の負担は七億円でした。有利な財源を様々に利用することができました。
国の制度として、当時はまち交ですとか今の社会資本整備総合交付金とか、使い勝手のいい制度がたくさんあります。問題は、基礎自治体が思い切って前へ出るかどうかということなんですね。多くの自治体はどうしても腰が引けています。
例えば、その路線を使わない地域に住んでいる市民の理解が得られない、否定的なことを言う方の論拠としてこれがしばしば使われます。僕は、しかし、子供のいない家庭であっても少子化対策に予算を使うことに誰も反対しません。それは社会の宝だからですね。交通というのはまさに公共財だというふうに思います。海の灯台ほどの公共性は強くありませんが、しかし、あえて言えば準公共財なので、なくすと復活はなかなか難しい、将来市民にとっても大切な公共財だというふうに思いますので、公費投入の妥当性ということをしっかり議論していくことが求められてきましたが、地域公共交通活性化法ができて、法定協議会その他、少しずつそのことについて制度が充実してきたと思っておりまして、そういう中で今回の再構築事業化というものは大変意味があると思います。
何となく腰が引いている自治体にとっても、こういったことを根拠に、交通事業者としっかりテーブルに着こうということを後押しできるというふうに思います。その結果どういう結論が出るかはケース・バイ・ケースだろうというふうに思います。しかし、まずテーブルに着くというところから始めないと、持続性というのは出てこないというふうに思っています。今まではそこのところが少し希薄で、何となく前に出にくいというところが多かったですね。
さらに、市町村をまたぐ交通については、それぞれ意見が違うということなどもあります。ですが、近江鉄道の滋賀県知事の三日月さんのおやりになったような例のように、やっぱり県も一緒になって旗を振ることによって、交通事業者と一緒に最適な道というのは探ることができるんだろうというふうに思っております。
その上で、様々な取組をしてきましたけれども、一つは、鶏と卵の議論にどうしてもなっていってしまうんですが、私どもは、思い切って最初に公費投入をする、運行頻度を上げる、あるいは始発も終電も時間を動かす、更に駅舎を直す、様々なことに取り組んできたわけですが、どれもしっかり結果が出ております。これは、二〇〇五年と二〇一八年の私鉄も含む地方鉄軌道の輸送密度の増加率を富山大学の中川先生がお調べいただきましたが、上位二十五の中に富山市が関わった路線が六線入っています。やっぱり手を掛けると人は乗るんですね。
とりわけ高山本線の富山駅と越中八尾に関して、JR西日本さんと協力をしてかなり思い切った増発実験をやりました。五年間の社会実験をやりました。それまでは一日三十四本走っていたものを最大六十本にまで増やしました。この費用は全て富山市が負担しました。五年終わった後、現在、ずっとそれ以降四十一本で抑えていますけれども、平成十七年と比べると三一%利用者が伸びています。六十本、五十九本だった時代から五年だけ増やして、四十一本まで落としたんですけど、利用者はまだ伸びているんです。
したがって、例えば通学に母親に車で送ってもらっていたというような高校生活を送っていた高校生たちが、通学時間帯に何便も出るということになるとやっぱり電車で行こうということに変わってくる。それは高校生自体の生活に変化をもたらしますので、引き継がれていくということだろうと思います。
何よりも、公共交通を使うことに慣れて、東京や都会の人は当たり前のことですけど、地方都市に住んでいる者は一人一台の車で、それもドア・ツー・ドアの暮らしをしていますから、いろんなことで仕掛けて、公共交通を使うことの心地よさとか、例えば飲食を伴うときに便利だとか、コンサートへ行くときにはマイカーで行くよりも公共交通で行くことによって幕間でワインも楽しめるとか、そういう生活の質を上げる大変大事なツールだと位置付けることが大事です。
あちこちで、交通への支援というのは赤字補填だと、後ろ向きの支援という発想ばっかりが議論されていますけれども、もっと積極的に、ポジティブに社会資本の質を上げるために公費投入するという論理でこの交通への公費投入を議論していくことが大事だろうというふうに思っております。全国に、あちこちに、質を上げると利用者がそのまま推移する、あるいは増えるという実例、事例は幾つもあるわけですので、後ろ向きな議論ばっかりに終始しないで、思い切ってまずは前に出てみるということを各自治体が思い切ってやれるような環境づくりをしてもらうことが大事だというふうに思っています。
そういう意味で、今の改正に伴って社会資本整備総合交付金についても新しい制度をつくってもらったり、使い勝手のいいものとなってきたように思っております。予算の限度があるんだろうと思いますけど、やっぱりこれ、先ほども言いましたが、公共財である交通がこれ以上衰退しないように、更にブラッシュアップするように、先生方にもしっかり力を入れていただいて、様々な形での予算確保ということについてお願いをしたいというふうに思っております。
関西大学の宇都宮先生とかよくお話しですが、ヨーロッパでは当たり前のことですし、三日月知事も交通税というようなことをお話を始められました。そこまでいかないにしても、基礎自治体、そもそもほとんどは限度額目いっぱいの課税していますね。上限に達しているわけです。ですから、そこのところも少し制度を触って、目的をはっきりさせることによって新しい歳入を得るという方法というものについて総務省とも御議論いただきながらやっていただくことが大変大事だというふうに思います。
去年、国土交通省鉄道局の検討会に参加させてもらいました。あのとき、最後に局の次長さんの御挨拶で私はこれはすばらしいなと思ったのは、独り鉄道局だけではなくて、道路局も都市局も総合政策局も挙げてみんなでやるんだという御発言がありました。それをもう一歩越えて各省庁も一緒になって、関係する皆さんが協力をしていただいて交通の持続性というものをしっかり上げてほしいというふうに強くお願いしたいと思います。
そのためにも、今回のこの改正、大変有意義なものになったというふうに思っております。エリア一括というのは、議論としては私も何度も議論に参加してきましたが、実現するとなるとかなり難しいと思いますが、方向としてはしかしこれしかないのかなというふうに思います。福祉の輸送、運送事業であれ、高齢者の移送であれ、様々なことを極端に小規模な事業者がやっているところを、一つのサービスにとどまらず一括である事業者が責任を持つというやり方は、まさに、零細な人たちをどうするかという問題は残りますけれども、そういうことが実現するとすれば、まさに持続性を発揮できるだろうというふうに思っております。
早口で分かりにくい説明になったかとも思いますが、申し上げたかったことをもう一度申し上げますと、交通政策と都市政策というものが連携しなきゃいけない。そして、民業だから公費投入ということに尻込みするということを変えていかないといけない。あくまで交通は公共財なのだから公費を妥当な範囲で投入するのは当たり前で、それは交通の赤字補填ではなくて、交通の質を変えて、都市生活そのものの質を変えて、QOLを上げて市民のシビックプライドを上げる、そういうための大変大事な出発点となるツールだということをもう一度申し上げて、意見の陳述とさせていただきます。
ありがとうございました。