新村毅の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(新村毅君) ありがとうございます。東京農工大学の新村と申します。
 私の方からは、アニマルウエルフェアの現状と課題について説明させていただきます。
 ページめくっていただきまして、スライド少し多いですので、前半飛ばしぎみで説明させていただきます。
 まず、アニマルウエルフェアとは何かというところなんですけれども、基本的な、いろんな考え方があるんですけれども、アニマルウエルフェアは基本的には人が動物を利用するということは許容しますということで、お肉も食べますし、ペットも飼うというのは許容します。だけれども、最終的に殺されるからといって何をしてもいいかというわけではなくて、生きている間は生活の質を高めてあげようというのが動物福祉の基本的な考え方になるということになります。
 主体は動物です。人ではないということで。ですので、人が動物をかわいそうだと思うというのは動物福祉ではなくて、動物の側から客観的に動物の状態を評価して、動物の状態を向上させていくというのがアニマルウエルフェアになります。ですので、客観的で科学によって動物の状態を理解していくということが非常に大事になってきます。科学ですので、やはりぶれにくい、基準になりやすい、ですのでグローバルスタンダードにもなりやすいという性質もあるかと思います。
 その下にありますスライド、右上に番号が振ってありますけれども、三枚目の鶏の、動物の状態と書いてある写真ですけれども、図ですけれども、動物福祉というのは、定義としては動物の状態という定義になります。ここに書いてあるマイナスの例えばストレスですとか、プラス、喜びですとか、そういったものをひっくるめて足し算した例えば二十点、四十点という点数を動物の状態、すなわち動物の福祉だという定義がすることができるというような定義になっております。
 ページめくっていただきまして、スライド番号四番目になりますけれども、じゃ、その動物の状態をどうやって理解するか。一つの動物の状態を五つに切り分けて考えるというのが五つの自由という考え方になります。五つの項目がありまして、例えば、餌をあげましょうですとか、痛みをなくしましょう、それから、動物が持っている正常行動を発現させましょう、こういった五つを満たすことが、動物の状態、すなわちアニマルウエルフェアにとって大事だということになります。
 その下の鶏の写真は、その動物の正常行動をやはりしっかり理解していくということが大事になってきます。これは行動学的な、オーソドックスな写真、行動学的な実験なんですけれども、こういった、例えば二十四時間おなかをすかせた鶏を右側に置いて、左側に餌をあげますと、この鶏はこの写真のように透明な扉をかなり重くてもぐいっと持ち上げることができますと。こういった形で行動欲求を調べることができると。
 今度は、例えば満腹な状態の鶏を右側に置いて、左側に止まり木を置いたとすると、例えば止まり木の場合ですと、先ほどの空腹の状態が百点だとすると、七十五点ぐらいの扉の重さを鶏は持ち上げて止まり木に止まろうとすると。つまり、鶏にとって、そういった止まり木に止まりたいという動機付けというのは、非常に行動欲求が強いということが言えるかと思います。
 ページめくっていただきまして、スライドナンバー六になりますけれども、こういった観点で、アニマルウエルフェア、家畜ごとにもうたくさんの課題があります。
 今日は、採卵鶏の中でも特に批判の的となっているケージについて中心に説明させていただきますけれども、このケージがまずなぜ問題かというと、先ほど申し上げたとおり、鶏が例えば巣箱で卵を産むとか止まり木に止まって休む、そういった行動欲求が満たされない環境だから批判の的となっているという状況になります。
 じゃ、ほかに代替になる飼い方、飼育システムとは何かというところで、写真でまとめてありますけれども、大きく分けますとケージとケージフリーということになります。ケージは、バタリーケージ、それからケージに止まり木などを入れたエンリッチドケージ。それから、ケージフリーは、いわゆる平飼いですとか放牧、そういったものがケージフリーになるということになります。
 スライドめくっていただきまして、ナンバー八になります。
 こちらは世界地図なんですけれども、家畜の福祉という観点から世界を評価した世界地図になります。緑になれば評価が高くなるわけですけれども、やはり一見してヨーロッパ、EUは評価が高い。一方で、アジア、それから南米、アフリカというものは評価が低くなっているという現状になっています。これはいろいろな見方ができると思うんですけれども、どちらかといえば、世界が一枚岩になって放し飼いに向かっているというよりかは、どちらかというと二分化しているような感じさえ見受けられると思っています。
 その下の同じく世界地図なんですけれども、これは鶏のケージなのかケージフリーなのかという世界地図になりますが、これもやはり同様で、ヨーロッパはケージフリーが、たくさんオレンジ色のケージフリーが増えていますけれども、やはり、アジア、南米、アフリカというものはまだまだケージだというような状況になっています。
 めくっていただきまして、スライド十になります。
 こちらは、各飼育システムの長所、短所を端的に示したものです。福祉は五つの自由の観点から評価しておりまして、これ信号機をイメージしていただきまして、青は安全、赤はリスキーだということで理解していただきたいんですけれども、例えばケージを見てみますと、やはり病気のリスクというのは、ふんが全て下に落ちますので、衛生的な環境、それから物理環境も空気の質が高いような環境は維持できるということです。ただ、やはり正常行動の自由というところだけが非常にリスクだということになります。
 ケージフリーは、正常行動の発現の自由というものは十分満たされるわけなんですけれども、やはり自分のふんの上を歩くリスクも増えますし、たくさんの鶏がいるところに管理されるわけですので、病気のリスク、それから痛みのリスクというものは必然的に高くなってしまうというデメリットがあるということがあります。もちろん、リスクですので、こういったリスクが、病気のリスク、痛みのリスクが除くことがもしできれば、ケージフリーは全体として福祉レベルが高いということも言えると思います。
 ここで申し上げておきたいのは、もうとにかく完璧な飼育システムというのはないということですね。ですので、ケージフリーイコール動物福祉ということでもないということをここでお示ししたいと思っております。
 それから、生産性につきましては、やはりケージは一番生産性が高いです。ケージフリーはどうしてもその活動量が増えます。行動の自由も増えますので、同じ餌を食べても、どうしても卵、出てくる卵の、生産される卵の量というものは少なくなってしまう。ですので、卵の価格というものが必然的に高くなってしまう。これはそうかなと思います。下の例でも、今、卵の価格がかなり高くなっておりますので、これはちょっと前の話になるかもしれませんけれども、一年前の研究ですと二倍の価格に、ケージから放し飼いにすることで二倍の価格差になってしまいますということで、こういったときに、じゃ、アニマルウエルフェア、いいけれども、じゃ、価格が二倍になっちゃいますといったときに、やはりなかなか消費者に買ってもらえないという状況もあるのかなと思っております。
 スライドめくっていただきまして、国際基準になりますけれども、国際基準があります。OIEが制定しておりまして、日本も加盟しております。国際基準は基本的にはあらゆる飼育システムを認めているということで、日本は賛成の立場にありますと。
 その下のスライドはEUとアメリカの状況を端的に示したものですけれども、EUはもう五十年ほど前からファイブフリーダム、五つの自由というものを考え始めていまして、バタリーケージというものはもう十年前ほどから法律で禁止になっております。今後は完全に放し飼いに移行すると。ケージフリーに対する高い消費者ニーズというものも存在して、まあ高くても買いますよという消費者がほとんどです。
 アメリカは、州の法律もあるんですけれども、特徴的なのは、やはり投資というものを背景としまして、企業がケージフリーの卵を一〇〇%扱うという宣言をして、アニマルウエルフェアが進んでいるというのがアメリカの特徴になります。基本的にバタリーケージからケージフリーに、およそあと数年後で五〇%になるということが予想されております。
 めくっていただきまして、スライド十四枚目、これが非常にギャップに苦しむところなんですけれども、日本の現状になります。
 消費者アンケートの結果としまして、アニマルウエルフェア知っていますかという質問で、知らないと答える消費者が八二%、名前は聞いたことあるけど内容は知らないというのが一二%、合わせて九四%の日本の消費者というのはやはりアニマルウエルフェア知りませんと、これがやはり現状かなと思います。それから、生産者アンケート、これも採卵鶏ですけれども、ケージ飼いというものが今現状九四%になっております。ですので、ここもいろいろな見方ができるんですけれども、アニマルウエルフェアを知らない、安くて質のいい卵を求める消費者ニーズと供給のニーズというのがある意味でバランスが取れている現状だとも捉えることができるかもしれません。
 その下行きまして、まとめに少し入っていきますけれども、先ほど申し上げましたとおり、EU、アメリカ、オーストラリアはもうケージフリーに移行しているという一方で、やはり国によってはケージが主体でいるということで、世界が一枚岩になってケージフリーに向かっているということではないということになります。
 日本の現状としましては、アニマルウエルフェアの問題は、これまで説明させていただきましたとおり、もう間違いなく不可避であります。対応をもう絶対にこれはこれからやっていかなければいけないという現状にあるということだと思います。
 ただ一方で、やはり消費者意識が低いということですとか、日本の生食文化ですね、非常に独特な、生卵を食べるという文化がありますので、本当に、衛生的に少しリスキーなケージフリーというものが本当に日本の食文化に適合したものなのかというのは、やはりまだまだ検討の余地があるだろうと考えております。
 めくっていただきまして、スライド十六枚目です。
 こちらは、じゃ、どこを目指していけばいいのかというところで、私も答えは持ち合わせていないんですけれども、一つのポイントとしましては、ケージフリーイコール動物福祉ではありませんので、どの飼育システムで飼うのかというよりかは、その飼育システムの中でどうやったら動物の状態を向上させるかというところが重要だということで、それぞれの飼育システムの管理の最適化、これが一つ、目指すべきポイントの一つじゃないかなと考えております。
 この下の、何か二次関数のようなグラフがあるんですけれども、こちらでちょっと説明させていただきますと、これは横軸が生産性で縦軸が福祉レベルになっております。生産性と福祉のレベルの関係性を表しますと、おおよそラージ点AからB、C、ラージ点Dの曲線になると考えられます。
 重要なのは、まず、ラージ点A、ラージ点Bのところはバタリーケージ、ラージ点C、ラージ点Dはケージフリーと理解していただきまして、重要なのは、まず、そのケージの中でも福祉も生産性も向上させることができるポイントというのがあると。それがラージ点Aからラージ点Bだということで、例えばラージ点Aは、やはり、まだケージの中でも非常に過密な飼い方をしている生産者はやはり一定数います、二割、三割いますので、ラージ点Aからラージ点B、最適な密度、最適な羽数、そういったものを完全に最適化することによって、生産性も福祉もその両方が上がるポイントというのがあると。なので、ケージの中ではまたラージ点Bをまず目指していくというのが一つのポイントかなと思っています。
 同様に、ケージフリーも、ずさんな管理をしている農家さんもいらっしゃいますけれども、やはりラージ点Dではなくてラージ点C、ここは生産性と福祉レベルが両方上がるポイントですので、まず目指していただくというところかなと思います。
 それから、ラージ点Bからラージ点Cのところにつきましては、なかなか、右上にあります、やはり需要と供給のバランスを見ながら、ラージ点Bからラージ点Cを少しずつ微増させながら目指していくというところが重要になってくるかなと考えております。
 めくっていただきまして、これは課題になりますけれども、まず重要なのは、EUは五十年にわたるいろいろな研究、教育の上に今の現状がありますので、日本は、やはり今のその畜産体系を基盤として、きめ細やかな管理の上に日本版の動物福祉というものを少しずつ確実に導入していく必要があると考えています。
 で、五つ、少し書いたんですけれども、まず一つは研究ですね。科学的なエビデンスというものがないに等しいですので、当然、そのヨーロッパの研究を見てこの研究がこうなんだけどと言われても、温暖湿潤な気候の日本で本当にそれがそのとおり起こるんですかと言われても、やはり分からないですね。現状も把握し切れていないということで、やはり、じゃ、どういう方向に進むべきかという、そもそものそのエビデンスがないんですね。やはり議論になかなか進みにくいというところがありますので、研究費を確保をしていただきたいというのが、できれば研究センターをつくりながら、研究費を継続的に額も増やしながらやっていただくというのが重要かなと思います。
 めくっていただきまして、対話の場ですね。これは、やはりこういった場も本当に非常に重要で、農水省の方でもいろいろなステークホルダー間の対話の場を設けておりますので、これは非常に画期的で、是非継続して分科会なども検討していただきたい。
 その上で、やはり重要なのはガイドラインの制定になります。こういった国際基準を満たすようなガイドラインの制定をしていくということです。具体的に、何年後に例えば過密な生産農場を何%減らすですとか、具体性も示していただく。
 それから、四番の認証制度は、統一的な認証制度をつくって、で、ヨーロッパ、写真のように、韓国のように一つ一つの卵に印字するような方法によって消費者への理解を増やしていく。
 それから最後に食育ですね。そもそも、子供たちがどうやって自分たちが食べている動物が飼われているかって知らないですね。なので、やはり動物福祉の重要性に気付けない。EUはもうほとんどの人が知っている。ですので、こういった中長期的に見て重要になる食育というものを推進していただく場を提供していくことが重要と考えます。
 以上です。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 新村毅

speaker_id: 8811

日付: 2023-06-01

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会