金子道仁の発言 (本会議)
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○金子道仁君 日本維新の会、金子道仁です。
私は、会派を代表して、国家安全保障戦略を始めとする安保三文書について御質問します。
我が国を取り巻く国際社会は、パワーバランスの変化、地政学的競争の激化に伴い、国際秩序が重大な挑戦にさらされており、対立と協調の様相が複雑に絡み合っています。そして、この様相を放置すれば、ますます対立と分断の方向に進みかねません。こうした国際環境の中で、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値や国際法に基づく国際秩序を再び堅固なものとして回復していくために、我が国として積極的かつ具体的な行動を起こす必要があります。
先般のWBCの決勝戦後、大谷翔平選手が、日本だけじゃなくて韓国や台湾や中国も、もっともっと野球が大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことがよかったと述べています。スポーツの世界でも、寛容、相互尊重という普遍的価値が人々に強く印象付けられた、すばらしい機会でした。一方、五月に予定されていたアンダー20サッカーワールドカップは、開催国のインドネシアがイスラエル代表の入国を拒否し、大会返上する事態になりました。残念ながら、スポーツの世界を含め様々な分野でも協調と対立が絡み合っており、普遍的価値を維持強化する努力が求められています。
岸田総理は、三月のインド訪問時のスピーチで、国際社会を分断と対立ではなく協調に導くという大目標を述べられましたが、今回はその大目標の実現のため、この安保三文書はどのように位置付けられるのか、総理の認識をお示しください。
普遍的価値や国際法に基づく国際秩序の回復という目標を単なるお題目、きれい事としてではなく、実効力を持って実現するためには、外交力、防衛力、経済力を含む総合的な国力を最大限活用していく必要があり、その戦略の最上位文書として国家安全保障戦略が位置付けられています。しかし、このほかの二文書は防衛力に関するものであり、外交や経済安保に対する戦略文書がなくバランスを欠いているのではないでしょうか。総理の認識をお聞かせください。
我が党は、将来世代を二度と戦争の惨禍に遭わせないための強固な抑止力を保持することを目的とし、他国の侵略を未然に防ぐに足る軍事、非軍事の防衛能力と、平和的な国際秩序を形成、維持する外交能力の総合力を積極的防衛能力と定義し、その双方を両輪として強化することを訴えています。
悪化する安全保障環境の中、平和憲法に基づき、国民の生命と財産を守るという国の責務を果たすために、自衛のための必要最小限度の実力を持つことは重要です。また、自衛のための必要最小限度の実力は、その時々の国際情勢や周辺国の軍備状況の流動的な要因に応じて変化せざるを得ないと考えます。今回の安保三文書に基づく防衛力の抜本的な強化は、我が国の領土保全、また国民保護という観点で必要かつ十分なものでしょうか。総理の認識をお伺いします。
防衛費の大幅増額に対して、安易な増税や安易な国債発行で対処することは許されません。安易な増税や国債発行は、安易な防衛費の増大をもたらす危険性があるからです。まずは徹底した歳出削減を行い、必要な防衛費を捻出していく努力を行うべきではありませんか。今から増税を念頭に置くのは歳出削減への諦めではないですか。歳出削減への覚悟が全く足りないと言わざる得ません。総理の見解をお伺いします。
国民の生命と財産を守るという観点からは、国民保護体制の強化が重要です。最悪のケースも想定し、迅速な住民避難の実施、避難施設の確保など訓練と準備が不可欠ですが、現状は全く不十分です。今後の訓練計画、国民保護体制の強化に対する総理の決意をお聞かせください。
次に、外交力の抜本的強化について質問と提言をいたします。
外交力と防衛力は我が国の安全保障の両輪です。しかし、今回の安保三文書を経て、防衛力の抜本的強化については施策、財源共に具体的に検討されている一方で、外交については従来の方針の確認にとどまり、抜本的な強化とはとても言えません。
外交力の抜本的強化として、四つの提案をさせていただきます。
まず、首脳外交、外相外交の大幅な強化です。我が国は、今年、G7議長国として広島サミットを主催、また安保理非常任理事国としての役割もあり、総理や外務大臣が外交に充てる時間はどれほど確保しても十分とは言い切れません。他方、G7諸国の中で我が国の首脳ほど国会に出席する日数が多い国はなく、これが首脳外交の足かせになっていることは否定できません。
外務大臣も同様です。先月インドで開催されたG20サミットも国会日程のために参加できず、続くクアッド参加も、僅か半日インドに滞在するだけで遠路往復しておられます。外務大臣が国益を懸けた外交交渉の場に、気力、体力共に充実した状態で臨めるよう配慮すべきではないでしょうか。平成十一年に成立した国会審議活性化法の趣旨、副大臣制度の原点に立ち返り、副大臣が国会審議を分担することで外務大臣の負担を軽減、図るべきではないでしょうか。総理の見解をお伺いします。
第二に、ODAの拡充です。現在、大きな軍事力や経済力を持つ国の意見が国際法を超えて国際社会を支配するのではないか、そのような懸念が広がっています。こうした中で、例えば、我が国の周辺国が領海侵犯事例が多発しても、我が国がこれを看過し、何ら具体的な支援行動を取らなければ、我が国の訴える国際法遵守は机上の空論、絵に描いた餅であり、周辺国の支持を広げることはできません。こうした点で、我が国がフィリピン沿岸警備隊に巡視艇を提供し、フィリピンの領海保全に寄与した事例は、ODAの戦略的な活用の好事例と言えます。我が国にとって最も重要な外交ツールの一つであるODAの戦略的な活用を更に拡大するため、また、我が国は外交力も抜本的に強化したと胸を張って言えるように、ODAの二〇一五年の開発協力大綱から実現していない国際目標であるODAの量、対GNI比〇・七%の拡充について、例えば五年以内に実現するという年限を設けるなど、今年改定する開発協力大綱に一層踏み込んだ記載をすべきです。総理の見解をお聞かせください。
第三に、民間外交の強化です。米国の国家安全保障戦略には、アメリカは中国共産党とは大きな違いを有する、しかし、それは政治システムの違いであり、国民レベルの違いではない、米中間の家族的なきずな、友人関係は変わらず続くとあり、国家と国民を切り分け、民間のつながりの重要性を強調をしています。現下の不透明な国際社会の中で、国家間の外交関係に限らず、民間外交も含めて様々なチャンネルを持つことは非常に有益です。
こうした観点から、市民社会組織を経由した二国間援助の拡大をすることは、我が国の顔の見えるきめの細かい草の根の援助、現地のニーズを的確に把握したオファー型の援助が増えるという開発協力面でのメリットと同時に、市民レベルの交流が一層活発化し、友好関係が広がることも期待できます。開発協力の大綱に、CSOを経由した二国間援助の割合、DAC諸国平均であるODAの一五%という数値目標を明記することを提案します。
最後に、人権外交の強化です。今般のウクライナ侵略において、国際法秩序自体にも混沌が及んでいます。昨年九月のロシアによるウクライナ四州併合宣言により、ロシアとウクライナ両当事国の主張する国境線が異なり国土が重複する状態となり、いずれの国も領土保全という国際法に基づき相手国を非難するという混沌です。これに対して、国際人道法に関しては、両当事国が共に法の遵守を認めつつ、事実認定について対立しています。事実関係の客観的な認定を行うためには、ICC、国際刑事裁判所の管轄権を認めることが最も有効な手段であり、ICC管轄を通した紛争地域の透明性の確保が国際紛争の抑止にもつながります。
国際人道法に基づき人道危機を解決するため、ロシア、中国、またアメリカに対しても、ICCへの加盟若しくは管轄権の受諾を促し、人道問題に関するダブルスタンダードの排除を世界に訴えるべきではないでしょうか。総理の見解をお聞かせください。
国家安全保障戦略の基本原則の中に、国際協調を旨とする積極的平和主義の維持が挙げられています。受動的に平和を享受できた時代から平和維持のための積極的な行動が求められる時代に変化する中で、どのようにしたら平和をつくることができるのか、我が国が平和をつくる者となれるようにこれからも忌憚なく議論していくことを期待し、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕