打越さく良の発言 (本会議)

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○打越さく良君 立憲民主・社民の打越さく良です。
 私は、会派を代表し、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。
 討論に先立ち、五月五日に石川県能登地方で発生した震度六強の地震によって亡くなられた方に心より哀悼の意を表します。けがされた方の一刻も早い御回復をお祈り申し上げます。また、その後の大雨もあり、避難生活を余儀なくされている方々にお見舞いを申し上げます。政府に対しては、激甚災害指定を含むあらゆる復旧復興策に早急に取り組まれることを望みます。
 昨日未明には、千葉県南部を震源とする地震が発生しました。けがをされた方の御回復をお祈り申し上げます。
 これら地震の余震も心配されます。この一週間で震度一以上の地震は九十八回、震度四以上の地震は八回観測されていることから、政府におかれては万全の対策を取られることを求めます。
 さて、法案に反対する理由の第一は、立法府を軽んずる束ね法案であることであります。
 束ね法案は、立法府を軽んじ、国会の審議を制約し、与野党の対立点を覆い隠し、審議時間をも省略しようとするものであり、政府・与党にとっては誠に都合の良い法形式でありましょう。しかし、それゆえ、これは法形式の堕落であり、禁じ手であると断じざるを得ません。政府・与党の猛省を促すものであります。
 今国会における原発の運転期間の延長を盛り込んだGX脱炭素電源法案も国民に争点を隠す悪質なものであり、このような政府の姿勢こそがまずただされるべきなのであります。
 本法案の名称からして問題です。
 揺り籠から墓場までを対象とする社会保障制度において全世代対応型をうたうとは、頭痛が痛い、登山に登るというような根本的な語義矛盾なのであり、このような名称の法案を提出した厚生労働省、内閣法制局の見識を疑います。
 さて、私は、令和三年六月四日の本会議において、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案に対する反対討論を行ったところであります。本法案の名称は、これに「持続可能な」が追加された長過ぎるものであり、もはや言葉遊びとしか言いようがありません。
 ただし、その内実はどちらも後期高齢者に一方的に負担増を押し付ける点で一致しており、それで法案名が酷似しているのであれば、一貫していると言えるかもしれません。
 加藤厚生労働大臣は、委員会質疑において、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、年齢に関わりなく全ての国民がその能力に応じて社会保障制度を公平に支え合う、こういった仕組みにしていく、それが基本コンセプトであると答弁しています。したがって、本法案は、幅広い国民が負担を分かち合う仕組みという名の下に、高齢者中心の給付を見直し、高齢者に新たな負担を押し付けるための社会保障制度改革法案なのです。しかも、物価高騰の中、後期高齢者の家計を支援する仕組みは何ら考えられておらず、負担増ばかりが優先されているのであります。
 委員会質疑でも指摘してきたところでありますが、負担能力別は、経済成長期であればその効果が期待できるとしても、現在のような人口減少下における縮小再生産の局面ではサービス低下を食い止める要因にはなりません。負担能力別とは単なる負担の付け替えであり、改革の手法とは到底言えるものではありません。
 非常に疑わしいのは、全世代対応型よりも持続可能な社会保障制度の構築に重きがあるのではないかということです。今後の更なる少子化、高齢化に向けて、制度の存続そのものが自己目的化しているのではないでしょうか。こうした懸念に本改正は応えていないのです。たとえ制度が財政的に均衡して存続し得たとしても、加入者である国民に対するサービスを満たせないのであれば、その使命を果たせないのであります。
 反対の理由の第二は、これまで三年ごとに行われてきた介護保険制度改革が全くの脇役に追いやられている点であります。
 厚労省は、昨年末までに介護保険の給付と負担の見直しについて結論を出すことにしていましたが、自民党が後期高齢者医療制度の負担増と介護保険の負担増が重なることを嫌ったため、社会保障審議会介護保険部会の議論の取りまとめができなかったと伝えられています。介護保険部会においても、先送りは許されない、具体的な取りまとめに至らず非常に残念だ等の厳しい意見が出されていたのです。
 このように、選挙対策に矮小化された本法案においては、国民のための介護保険制度改革など全く顧みられていないのであります。
 反対の理由の第三は、理念なき出産育児一時金の増額であります。
 出産育児一時金は二〇〇九年から据え置かれたままであり、増額は遅きに失したものであります。出産費用の増額の根拠について、厚労省は、その上昇要因を一概に定量的にお答えすることは難しいと答弁しています。これまでの積算根拠も将来見通しについてもはっきりしていない中では、岸田総理の言う見える化などは到底困難です。今後も無責任で場当たり的な施策が続いていくことは明々白々です。
 地域間格差や公私間格差を解消せず、増額の積算根拠も将来の見通しについても曖昧なまま全国一律で五十万円とすることは、選挙前のばらまきのそしりは免れ得ないでありましょう。地域間のばらつきに対してきめ細かな対応を行わなければ高止まりに向かうであろうことは、医療保険部会等でも懸念されているところであります。しかも、この間、とりわけコロナ禍における合計特殊出生率の低下により大した支出増にもならないというのが政府の本音ではないでしょうか。
 その財源として、後期高齢者医療制度に負担が求められています。後期高齢者医療制度が創設された際、出産育児一時金の費用負担は対象外とされました。にもかかわらず、今回後期高齢者医療制度に拠出を求めることは、子育て世帯に金銭的にも社会的にも罰を与える子育て罰に続く、老人罰と言わざるを得ません。
 反対の理由の第四は、国民や患者が全く理解できないかかりつけ医機能の概念です。
 政府は、かかりつけ医機能とは、医療機関の機能として、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能と説明していますが、かかりつけ医とかかりつけ医機能はどう違うのかについて納得のいく答弁はついになされませんでした。かかりつけ医機能の定義の法定化とは、患者本位の医療制度改革とは全く相入れないものでありましょう。
 そもそも、旧厚生省は一九八五年に家庭医に関する懇談会を設置し、一九八七年に報告書を取りまとめましたが、日本医師会の反発で挫折した経緯があります。かかりつけ医とは、旧厚生省の家庭医構想を嫌う日本医師会の側から提案された概念です。すなわち、かかりつけ医機能の定義の法定化とは、医療提供側と政府の調整のみが優先され、患者不在のまま進んだ生煮えの議論なのであります。
 衆参の審議を通じて、患者にとってのメリットはついに示されませんでした。患者不在のかかりつけ医機能の定義の法定化は見切り発車に過ぎるのです。医療は誰のものか、健康保険制度は誰のためにあるのか、政府は原点に立ち返って考えなければなりません。
 看板倒れの全世代対応型を掲げ、その内実は利用者不在の制度の財政的存続と高齢者への手当てなき負担増をもくろむ本法案に対し、賢明なる議員各位には反対されることを強くお願い申し上げ、私の反対討論といたします。(拍手)

発言情報

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発言者: 打越さく良

speaker_id: 26780

日付: 2023-05-12

院: 参議院

会議名: 本会議