伊藤孝恵の発言 (本会議)
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○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問いたします。
質問に先立ち、本法律案の起点となった議員立法、日本語教育推進法を生み出した超党派日本語教育推進議員連盟の先達の御努力に心からの敬意をささげます。
議連案を拝見した際、どうしてこの法案条文には児童生徒は書いてあるのに幼児はないのでしょうか、就学前の柔らかな脳と心を持つ子供たちにこそ日本語教育が必要です、恐る恐る述べたその言葉を、確かにねえと受け止め、第三条及び第十二条に幼児を追記してくださった中川正春議連会長代行らの顔が今浮かびます。
言葉は何かを変えることができる。言葉は思いを伝え、仲間をつくり、孤独、孤立から救ってくれる。言葉の力はこの国で生きていく力そのものだから。
共生社会の実現に資する日本語教育の推進を願い、以下質問いたします。
本法律案は、一定の要件を満たした日本語教育機関を国が認定することで、日本語学習者が適切な日本語教育機関の選択ができるようにするとともに、その質保証を行うことを目的としています。これまで質に関する共通の指標が存在せず、日本語教育の水準を確認することが困難だった状況の改善が期待されます。
ただし、当該認定制度が我が国に居住する外国人の日常生活及び社会生活の円滑な営みに有益なものとなるか否かの鍵は、現在国内にある多種多様な日本語教育機関のうち、どのような機関にどういった要素を求め、何を物差しとして評価し認定の是非を決めるか、その基準です。
文化庁の有識者会議では、認定日本語教育機関の類型として、主に留学生が通う日本語学校は留学類型、企業と連携して日本語教育を提供する機関は就労類型、生活者を対象とした地域の日本語教育の一端を担う機関は生活類型として認定を行うことが示されておりますが、その認定基準は文部科学省令で定めることとなっており、詳細は明らかにされておりません。今後、どのような類型及び基準を設けるのか、文科大臣のお考えを伺います。
類型について付言すれば、本法律案には、学校等における児童生徒に対する日本語指導に関する言及が一切ありません。近年、日本語指導が必要な幼児、児童生徒は増加の一途をたどっており、学校等における日本語指導体制の急速な整備拡充が求められていることに加え、議員立法、日本語教育推進法では、幼児、児童、生徒に対する日本語教育についても充実を図るため、必要な施策を講ずるとされています。
また、令和三年に日本語教育機関の類型等を検討した文化庁の有識者会議では、日本語指導が必要な子供の就学のための日本語教育についても類型を設けることが必要ではないかといった意見が出され、最終報告書に、就学等のその他類型についても今後検討を行う必要性が明記されました。
就学前教育を含む学校等における日本語指導の体制強化について文科大臣はどのように考えているのか、また、認定日本語教育機関の類型の一つとして就学を今後検討する予定はあるのか、伺います。
本法律案は、認定日本語教育機関において、日本語教育を行うために必要となる新たな国家資格として登録日本語教員を設けることとしています。専門的な知識及び技能を有する人材の育成と確保は、日本語教育の根幹と言える要点です。
そこで、一九九〇年代より指摘されてきた日本語教員の雇用条件や労働環境の悪さ、ボランティア五割、非正規四割と言われる他分野では考えられない職務構成、若者の日本語教育離れ、高齢化、非熟練労働とみなされる地位、女性に偏るジェンダーバランスの悪さ等の改善に向け、どういった具体の取組を行うのか、文科大臣に伺います。
また、一定の要件を満たす現職の日本語教員には、筆記試験や教育実習の免除を含めた経過措置を設けると伺いましたが、重要な差配であると評価する一方、容易に新資格への移行ができるのであれば教育水準の向上という制度の趣旨が揺らぎます。質の向上と担い手の確保をどのように両立させていくか、文科大臣、御所見をお聞かせください。
政府は、登録日本語教員のうち、特に児童生徒向けの日本語教育研修を受講した者を小中高等学校等において活用したいとする方針を示しています。登録日本語教員を日本語指導補助者等の外部人材として学校現場に迎え入れることは、日本語指導の質を高めるとともに、多忙を極める学校教員にとっても歓迎される内容です。しかし、現状、学校教育法施行規則に日本語指導補助者についての規定はなく、必要に応じて配置、資質、待遇、業務内容などの要件は雇用する設置者の判断とされています。
横浜市のように、日本語指導が必要な児童生徒が五人以上いる小中学校には原則としてクラス担任もいる国際教室を設置する方針と併せ、放課後学習支援、母語支援ボランティア等、手厚く伴走している地域はまれで、日本語指導が必要な子供の四割が居住するのは支援が極めて手薄な散在地域です。
就学義務はないからと、その取組を怠ってきた外国ルーツの子供たちの学びや育ちの問題は既に臨界点を超えています。自治体任せの国の姿勢が地域間の大きな対応格差も生んでいます。
しかして、地方公共団体は、議員立法、日本語教育推進法により、日本語教育の推進に関し、地域の状況に応じた施策を策定し、実施する責務を有するとされているにもかかわらず、同法施行から四年がたとうとしている今も、地域の日本語教育が全く実施されていない空白地域となっている市区町村が全国でおよそ五割存在しています。
今後、地域間格差の解消に向け、数値目標を定めるとともに、期限を区切って目標の達成に向けた財政支援を行うことが有効であると考えますが、文科大臣のお考えを伺います。
あわせて、教員養成課程や教員研修に日本語教育学を多層的に組み込むことを御提案いたします。
通達一本で、ただ登録日本語教員の登用を促すだけでは不足です。指導対象となる子供の日本語能力や学習環境等のスクリーニングの適切な方法をより具体的に助言し、求められる指導内容や人員体制を例示し、どのような場合に登録日本語教員の専門性が発揮されるかを示した上で、配置に係る追加的な財政支援を行わなければ絵に描いた餅になるのではないでしょうか。文科大臣、お答えください。
さて、外国をルーツとする方々は、この絵に描いた餅が役に立たないことを意味する言葉だと理解しづらいかもしれません。日本語はとにかく語彙が豊富で、漢字に音読み訓読みがあり、指示語も助詞も丁寧語も方言も極めて難解なのです。翻訳アプリのみならず、今後は生成系AI、特に翻訳AIを利用する場面が想定されますが、これらが日本語教育に与える影響について文科大臣の御見解を伺います。
最後に、特別支援学級に在籍する外国ルーツの子供たちについて伺います。
公立小中学校で日本語を教える体制が整っていないために、本来は障害のある子供たちが学ぶ場であると学校教育法で定められている特別支援学級に、障害ではなく、日本語が不得意だという理由で外国ルーツの子供たちが在籍しています。それに対し、文科省は、法令違反のおそれがあるといいながら、ガイドラインを改定するのみで、対策は自治体や学校任せです。
言わずもがな、特別支援学級で行う教育と日本語教育の指導内容は全く別物であり、両者にとって適切な教育が受けられず、子供たちの不利益になりかねない異常事態です。
今、日本語指導が必要な小中学生のおよそ五・一%、二十人に一人が特別支援学級で学んでいます。日本人を含む全小中学生の一・四倍です。検査を母語で受けられない地域では何と八人に一人、十人に一人に上るといいます。文科大臣に今後の対応を伺います。
言葉の問題を軽視して、場当たり的に労働力としての外国人を受け入れれば、やがて社会の分断を生むことは諸外国の歴史が証明しています。だからこそ、先進国の多くは、国が主体となって公用語の教育プログラムを進めています。我が国の移民政策は取らないという建前のいかんにかかわらず、外国人市民が定住者であることは間違いありません。多文化共生政策や総合的、包括的な政策がどうしても必要です。
私の住む愛知県犬山市には日本初の外国人市議会議長がおります。日本初の赤十字救急法指導員も、自治会役員だっています。外国人市民は、支援される側だけでなく、支援する側、地域づくりの担い手となっていることも多くの方に伝えねばなりません。
本法律案が、この国で共に暮らし、学び、働くその人たちに、かけがえのない言葉の力を贈る法案となることを切に願い、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣永岡桂子君登壇、拍手〕