石橋通宏の発言 (本会議)

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○石橋通宏君 立憲民主・社民の石橋通宏です。
 私は、会派を代表し、法務大臣齋藤健君問責決議案について提案の趣旨を説明いたします。
 まず、決議の案文を朗読します。
  本院は、法務大臣齋藤健君を問責する。
   右決議する。
 以下、問責の理由を具体的に申し述べます。
 問責理由の第一は、齋藤大臣が、二年前に国際人権機関から国際法違反だと批判され、多くの国民の反対の声によって廃案となった入管法改悪案を、その骨格を変えないまま、つまりは国際法違反の問題を解消しないまま再び国会に提出してきた暴挙の責任者であることです。
 そもそも、現在の出入国管理行政や難民認定行政は、これまでに何度となく国際人権機関から国際法違反であるとの批判を受け、改善を求められてきました。しかし、政府はそれを今日まで無視し続けてきたのです。
 二年前に廃案になった政府案も、二〇二一年三月、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会や移住者の人権に関する特別報告者らの共同書簡で法案は国際的な人権基準を満たしていないと批判されましたが、政府はその批判も無視しました。
 そして、今回の政府案に対しても、本年四月十八日、特別報告者らの共同書簡が出され、二年前の法案から基本的に変更されておらず、国際人権基準を下回る、政府に対し、国内法制を国際人権法の下での日本の義務に沿うものにするため、改正案を徹底的に見直すことを求めると要請されているのです。
 それに対する齋藤法務大臣の対応は極めて恥ずかしいものでした。大臣は、特別報告者の個人の資格として述べられたもので、国連や人権理事会としての見解ではない、また、我が国への法的拘束力もないと断じ、共同書簡を批判して、国際法違反と指摘された法案をそのまま押し通そうとしているのです。
 特別報告者らの共同書簡は、政府案が国際人権諸条約に違反している問題を指摘し、日本政府に対話を通じて改善を求めているのに、法務大臣がそれを批判し、無視する態度は、人権理事会の理事国を何度も務めてきた日本として全くふさわしくありません。
 岸田総理を先頭に、政府は盛んに他国に対して、法の支配だの、人権の尊重だのと訴えています。しかし、他国に対して人権の尊重を求めていながら、自国においては国益が優先だなどといって普遍的価値であるはずの国際人権法を守ろうとしない態度を取るのは、完全なるダブルスタンダードであり、二枚舌外交との国際的なそしりを免れ得ません。日本政府が国際人権機関からの国際法違反との指摘を無視するのであれば、もはや日本は他国に対して国際法や人権の尊重を訴えることはできなくなります。言っても誰も相手にしてくれないでしょう。
 憲法九十八条第二項に明記されているとおり、我が国が締結した条約及び確立された国際法規は誠実に遵守されなければなりません。人権の尊重において私たちが守るべきルールは、日本が批准し、締約国になっている国際人権諸条約であり、私たち立法府が問題視しなければならないのは、その国際人権諸条約に日本の国内法制度が合致していないという極めて深刻な問題なのです。その状態を放置しているということは、我が国において、本来守られるべき人権が守られていないことを意味します。それにもかかわらず、国際法違反の状態を更に悪化させる入管法改悪案を強引に成立させることは、良識の府参議院として断じて容認してはなりません。
 今回、私たちは、野党四会派共同で、国際基準に合致した難民等保護法案及び入管法改正案を参議院に提出し、法務委員会では閣法と並べて審議をいただき、私も筆頭発議者として答弁にも立たせていただきました。委員会では、齋藤大臣の隣で大臣や入管庁の答弁を間近に聞きましたが、その人権意識の希薄さに何度も唖然とさせられました。
 入管庁は、難民申請者はあたかも全員が制度の濫用者であるかのように答弁し、送還忌避者や仮放免者の逃亡事案を殊更に強調して、彼らが罪人、悪人であるかのような印象操作をしています。完全なレッテル貼りです。また、前科のある非正規滞在外国人が皆悪人であって、一刻も早く強制送還する必要があるというような乱暴な主張に齋藤法務大臣が同調していたことも極めて残念です。あたかも、一たび犯罪を犯した外国人は、その罪を償って社会への復帰を願っても、全員が再び罪を犯す可能性のある危険人物であり、強制送還しなければならないのだと言わんばかりの主張です。法務省、入管庁が偏見や差別や排外主義の助長をしてどうするんですか。
 しかし、政府案では、一定の罪を犯した難民申請者を一律に送還停止効の例外の対象とし、一次審査すら受けさせずに強制送還することを可能としています。これは極めて問題で、さきに述べた国際人権機関からも国際法違反だと指摘をされているのです。
 このように、齋藤法務大臣は、人権を正しく理解していないとしか思えないような答弁を繰り返しており、法務大臣としての適性を欠くと糾弾せざるを得ません。即刻その職を辞するべきです。
 問責理由の第二は、齋藤法務大臣が、これまで国会答弁等で立法事実として引用してきた政府案の根拠を自ら否定し、立法事実を崩壊させ、衆議院段階を含めた国会審議の前提条件を失わせたことです。
 入管庁は、今回の政府案の提出に当たって作成した現行入管法の課題という法案説明資料において、二〇二一年四月二十一日の衆議院法務委員会参考人質疑における柳瀬房子参与員の発言を引用し、立法事実として使っています。
 そこには、参与員が入管として見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見付けることができません、難民の認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということを是非御理解くださいなどと書かれています。
 そもそも、二年前に廃案となった政府案、そして今回の閣法の根拠になっているのは、二〇一九年六月、大村入管においてナイジェリア人男性がハンストの結果餓死した事件を受け、その後立ち上げられた専門部会が二〇二〇年六月に出した報告書でした。
 その専門部会の委員であった柳瀬氏は、二〇一九年十一月の第二回会合で、私は約四千件の審査請求に対する裁決に関与し、そのうち約千五百件では直接審尋を行いました、その中で難民認定がなされたのは四人です、それが現実ですと発言しています。この柳瀬発言を受けて、専門部会の部会長が、難民審査参与員として審理に関与されていらっしゃる委員から現場の生の御意見を御紹介いただいた、本部会としては、送還を回避する目的で難民認定申請をする人たちにどう対応するかということが論点となりますと述べ、その後の議論の方向性が決められてしまったのです。
 つまり、柳瀬参与員の発言に基づいて、日本で難民申請する者の中には難民はいない、だから送還忌避者をいかに強制送還するかが大事なのだという流れが決められ、その結果、強制送還を実現するための送還停止効の例外措置を含む乱暴な改悪法案が作られたのです。
 しかし、柳瀬氏の二〇一九年の専門部会での発言と二〇二一年の衆議院法務委員会での参考人としての公述を比較したとき、その信憑性に重大な疑義が生じました。その発言が事実なら、何と僅か一年半の間に柳瀬氏は五百件もの対面審査を行っていたことになるからです。
 私たちは、今回の審議でも、この柳瀬参与員の発言に重大な疑義を呈してきました。しかし、そのたびごとに齋藤法務大臣は柳瀬氏の発言を擁護し、長年現場で活躍をした専門家の発言で、重く受け止めなければならないと答弁を続けてきたのです。
 ところが、五月三十日の大臣会見でとんでもない事実が明らかになりました。柳瀬参与員が一年半で五百件もの対面審査を行うことが可能だったかを問われた法務大臣が、朝の会見時には可能だと明言していながら、夜になって不可能を可能だと言い間違えたのだと訂正してきたのです。
 実は、その前日の野党ヒアリングで、入管庁の審判課長が、参与員による対面審査は月に最大十件、年間で百件程度と答弁していたのです。つまり、一年半で五百件は不可能だということを入管庁が既に認めていたわけです。その説明と大臣答弁が矛盾してしまったので、入管庁が慌てて訂正したのでしょう。しかし、その結果、齋藤大臣自身が、そして入管庁がそれまで立法事実として使ってきた柳瀬氏の発言、証言の信頼性を完全に否定してしまったのです。
 さらに、先週になって、当の柳瀬氏本人が自らのこれまでの発言に根拠がなかったことを認める事実も明らかになりました。弁護団の皆さんが入手をされ、公開された柳瀬氏本人の電話音声で、対面審査は一年間に九十人ぐらい、百人までに行くか行かないか、年間八十人、九十人は必死ですと発言していたのです。そうであれば、これまでの一連の柳瀬氏の公的な場での発言もその信頼性が完全に失われることになります。
 さらに、参議院法務委員会の質疑で、入管庁はようやく柳瀬参考人が担当した審査件数を明らかにしてきました。報告されたのは二〇二一年、二二年分だけで、私たちが求めた二〇〇五年以降の審査件数はいまだに報告されていませんが、その限られた過去二年間の審査件数は驚愕に値するものでした。
 柳瀬参与員に対し極めて異常な審査件数の割り振りが行われていたのです。二〇二一年は全体の約二〇%、二二年に至っては何と約二五%の審査を柳瀬参与員が担当していました。稼働日数と時間から計算すると、一件当たりの審査件数は六分。たった六分で分厚い審査資料を基にした三人の参与員による丁寧な審査など、できるはずがありません。一握りの参与員によって極めてずさんな審査が行われた疑いが明らかになったのです。
 そして、先ほど述べた音声録音の中で、柳瀬参与員は極めて重大かつ深刻な発言をされています。どこの国だって、日本にとって、その国にとって都合のいい方だけ来てください、都合の悪い人は困ります、どこの国もそうしていますと発言しているのです。
 入管庁が選んだ難民問題の専門家と称される参与員の方がこのような姿勢で難民認定の審査に当たっていたのであれば、極めて重大な問題であり、一連の事実によって、参与員制度が正しく機能しておらず、国際基準にのっとった審査など行われていないと断ぜざるを得ません。
 つまり、齋藤大臣の発言と柳瀬氏本人の発言、そして入管庁の提出資料によって、政府案の立法事実は完全に崩壊したのです。と同時に、参与員制度の正当性が否定されたことで、齋藤法務大臣が主張してきた、難民申請者に難民はいない、だから強制送還してもいいのだという根拠は完全に崩れ去ったのです。
 それにもかかわらず、この国際法違反の、ノン・ルフールマン原則にも違反する政府案を成立させれば、本来、国際人権法にのっとって保護すべき方々を強制送還してしまうことになります。
 衆議院の参考人質疑で橋本参考人が訴えたことをここで改めて引用します。このまま政府案を通すのは、無辜の人に間接的に死刑執行のボタンを押すということに等しい。
 同僚議員の皆さん、私たちは、一人たりとて、本来保護すべき方々を誤って母国に強制送還するわけにはいきません。立法事実が完全に失われた今、政府案は廃案にするしかありません。国際法に準拠した野党案をこそ成立させるべきなのです。それをしようとしない齋藤法務大臣には、即刻お辞めいただくしかありません。
 問責理由の第三は、大阪入管で発覚した常勤医師の泥酔問題を、齋藤大臣が二月の時点で報告を受けていながら、その事実を国会に対して隠し続け、あたかも大阪入管でいまだ常勤医師が医療行為に従事し続けているかのような虚偽の答弁を行った疑いが極めて濃くなったことです。
 入管庁は、いまだに、二年前に名古屋入管で発生したウィシュマさん死亡事件の原因究明も責任追及もすることなく、ビデオの全容開示にも応じず、国会が求めた数々の証拠資料の提出も拒否し続けています。
 事件後に入管庁が行った調査なるものは、結局、内部調査にすぎず、今に至るまで死因すら明らかにされず、誰一人責任を取っていません。極めて異常です。
 そして、入管庁は、ウィシュマさん死亡事件の真相究明を行わないまま、その後の改善策で収容者への医療提供体制は充実してきたと説明を繰り返してきました。
 ところが、先週、大阪入管で昨年七月に採用された常勤医師が、昨年九月頃から不適切な医療行為を繰り返し、今年一月二十日には、勤務中のアルコールチェックでほぼ泥酔状態にあったことが判明し、医療行為から外されていた事実が発覚しました。
 大阪入管は、一月二十一日には詳細な報告書をまとめ、二十三日は本庁に報告し、入管庁はその事実を二月下旬には齋藤法務大臣に報告していたことが明らかになっています。つまり、法務大臣は、そのような重大な事実を隠したまま法案の閣議決定を主導し、国会に法案を出して審議を続けてきたことになります。
 衆議院での四月十八日の審議で、入管庁は、主要六官署のうち、五官署においてそれぞれ一名の常勤医師を配置している状況にありますと答弁し、さも大阪入管でも常勤医師が引き続き医療行為に従事しているかのような答弁を行っています。明らかに虚偽答弁です。
 入管庁は、四月に出した改善策の取組状況という収容施設における医療体制の改善報告でも、大阪入管で常勤医師が今も医療行為を行っているとしか読めない一覧表を掲載し、常勤医確保により被収容者に関する継続的な体調把握や相談が容易になったとの説明を行っていました。これも明らかに虚偽報告であり、その説明を信じ込まされた与党の皆さんこそ怒るべきです。
 常勤医師は国家公務員であり、国家公務員としての法令に従って任務を遂行する必要があるはずです。泥酔して医療行為を行った事実は、明らかに懲戒処分の対象になるはずです。しかし、処分すれば、その事実が明るみに出て、政府案の審議に影響が出ることを恐れ、入管庁は隠蔽しようとしたのではないでしょうか。
 しかし、人事院の懲戒処分の指針には、監督責任も明記されており、非行の隠蔽や黙認も懲戒処分の対象になるとされています。もし齋藤大臣が、常勤医師による非行の報告を受けていながら、適切な処分を指示することなく、むしろその隠蔽に加担したのであれば、それだけで十分に大臣問責に値する行為です。
 同僚議員の皆さん、結局、問題の根源にあるのは、この入管庁の姿勢なのです。入管庁のこの特権意識と隠蔽体質、そして難民や庇護希望者を保護するのではなく、犯罪者だとして追い返そうとする姿勢が、日本の難民認定、収容問題の根源であり、この根源的問題を根底から変えない限り、日本の難民認定、収容問題は解決し得ないのです。だからこそ、難民認定行政を入管庁から完全に切り離し、国際基準にのっとった難民認定を行う第三者専門機関の創設が必要なのです。
 重ねて申し上げます。立法事実が崩壊した今、政府案はもはや廃案にするしかなく、人権を守る気のない齋藤法務大臣は、即刻、その任から退いてもらうしかありません。
 以上、齋藤法務大臣の問責理由を数ある中から三点に絞って申し述べました。
 私たちは、国益あっての人権だなどという暴論にくみするわけにはいきません。普遍的な価値である人権が全ての人に守られてこそ国民の利益であり、それこそが国益なのです。
 私たちが尊重義務を負うている日本国憲法の前文には、こう書かれています。
 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」。
 同僚議員の皆さん、残念ながら今、世界では、戦争や紛争、内乱や軍部の独裁による深刻な人権侵害で、難民の数が増大し、既に一億人を超えています。国境を越えて他国に保護を求めることができない国内避難民の数は、恐らくその何倍にもなるでしょう。極めて深刻な命と人権の問題であり、私たちはこのような危機的状況に直面している国際社会において、積極的な難民保護をこそ行い、命と自由、人権と民主主義を守るための国際的な努力において名誉ある地位を占めようではありませんか。
 当然守るべき難民の権利を守り、当然保護すべき補完的保護対象者や、日本で生まれ育った子供たちの権利、幸福追求権を守る、そのために今こそ、私たち参議院がその責務を果たそうではありませんか。
 これ以上、日本が世界に人権無視の国として恥をさらし続けることがないよう、政府提出の入管法改悪案を即刻取り下げて廃案にし、私たち野党四会派が共同で提出した難民等保護法案こそ成立させるべきであることを重ねて強く訴え、私の齋藤健君問責決議案の趣旨説明といたします。
 議員各位の御賛同を何とぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。(拍手)
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発言情報

speech_id: 121115254X03020230607_009

発言者: 石橋通宏

speaker_id: 20059

日付: 2023-06-07

院: 参議院

会議名: 本会議