牧山ひろえの発言 (本会議)

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○牧山ひろえ君 立憲民主党の牧山ひろえです。
 私は、立憲民主・社民を代表し、ただいま議題となりました齋藤健法務大臣の問責決議案に対し、賛成の立場から討論をさせていただきます。
 まず、問責の理由の第一は、この通常国会最大の争点の一つとなっている出入国管理改正法をめぐっての大臣の対応です。
 難民審査参与員の柳瀬氏の、これだけの件数の審査を行ったのに難民として保護に値する人はほとんどいなかったという趣旨の発言が政府案の立法事実となっていたのですが、その発言の信頼性を大臣自ら否定されたわけです。根拠は示せないが信じられるという今までの強弁は何だったんでしょうか。そして、虚偽の情報を基に国会審議を行わせた責任をどのように取るおつもりなのでしょうか。辞任していただく以外はないと思います。
 大臣の発言による政府案の立法事実の破綻について、大臣からは、立法事実はこの一件ではなく、ほかにも様々あるという答弁が繰り返しありました。ですが、私は、このそごは政府案全体に影響を及ぼしていると思っています。なぜならば、柳瀬参与員の、本当の意味の難民は日本にほとんどいないという趣旨の発言が今回の政府・与党案のまさに根幹となっており、救うべき難民がいない前提で、逆に言うと、我々が救わなければ、かけがえのない命が失われるかもしれないという切迫感なしにあらゆる制度設計が行われているからです。
 一昨年まで在留資格のない仮放免者だったトルコ国籍のクルド人青年ラマザンさんが、参議院法務委員会の参考人として招かれ、法案が通ったら家族が送還され、一家がばらばらになるのではないかと不安で、とても怖いと語りました。そして、繰り返しこう訴えています、私たちの立場になって考えてほしいと。
 これは、ここにいらっしゃる齋藤大臣にも向けられた願いですが、今回の法案審議における齋藤大臣の言動は、命のかけがえのなさに思いを致すことなく、生まれ育った国を捨てねばならない人々の訴えを真摯に受け止めることなく、そして、国と国のはざまで苦しんでいる人の立場を想像することもない、当事者の苦しみに寄り添い、自らの言葉で語ることなく、法務省と入管庁の組織の論理から紡ぎ出されたものばかりです。
 例えば、大臣は、難民認定に関する直近の行政訴訟の百九件のうち、国が勝訴をしたのが百四件だったということをもって自らの主張の裏付けとされておられます。そもそも、行政訴訟については、我が国の場合、国際的にも国の勝訴率が異常に高く、それ自体が問題点として指摘されているのですが、それをおいたとしても、五件については入管庁の判断が間違っていたと裁判所がしっかりと認定しているわけです。これらの方々は支援者なども付いて裁判所に持ち込めたので良かったのですが、困窮した難民申請者、皆が皆、裁判を受けられるわけではないんです。裁判を断念し、そして危険な母国に戻らざるを得ず、結果、生命や人権に危害が加えられることはなかったとどうして言えるのでしょうか。得々と勝訴率の高さを誇る想像力のなさに危機感を覚えます。
 私は、今回の法案に関する本会議質疑で、難民認定の最終決定を行う法務大臣として、難民を間違って難民と認定しないことと、難民でない人間を間違って難民と認定すること、そのどちらを優先しますかとお聞きしましたけれども、大臣からは明確な答弁をいただけませんでした。ですが、大臣の勝訴率に関する御発言などに鑑みますと、一人ぐらい難民を間違って不認定としてもやむを得ないとお考えのように思えます。衆議院の参考人質疑での一橋大学院の橋本直子准教授からの、このまま法案を通すのは無辜の人に間接的に死刑執行のボタンを押してしまうことに等しいという警告も大臣の胸には響かなかったのでしょうか。
 問責の理由の二つ目ですが、大阪出入国在留管理局に勤務する女性医師が、お酒に酔った状態で診察した不祥事が発覚しました。ウィシュマさんのように、入管収容施設内で心身や人権が害されるような悲劇は決して繰り返してはなりません。そのためには、ウィシュマさんが亡くなった原因を究明し、そして入管収容施設内における処遇はもちろん、日本の入管、難民制度全体の問題点を解明し、徹底的に見直すことが不可欠です。政府が今回改めて法案を出したということは、ウィシュマさんの事件に関し真相を究明し、それに基づき抜本的な改善を行ったことが当然前提となるはずなんです。
 この点につき、入管は、政府案の審議の前提として医療体制の改善を打ち出してきました。今年四月に入管庁が公表した改善策の取組状況という資料には、改善の成果として、大阪入管の常勤医師の欄に一名と記されています。ですが、この一名はアルコールが検出された医師と同一人物であり、その段階では診察から外され、勤務実態のない状況でした。勤務実態がない医師を医療提供体制の改善の根拠としたわけです。審査件数に引き続き、またしても立法事実に関わる虚偽です。どれだけ立法事実に関する虚偽を積み重ねれば気が済むんでしょうか。また、ほかの立法事実も虚偽ではないとどうして言えるのでしょうか。
 更に問題なのが、入管庁ではこのような重大な事実を二〇二三年一月に把握しながら、四か月以上も公表していないことです。大臣も二月下旬には事態を把握していたと答弁しています。法務省は調査をしていたと言っていますが、信頼を失った入管が事態を抱え込むのに、正直四か月はいかにも長過ぎます。報道されなければいつまで抱え込むつもりだったんでしょうか。
 李下に冠を正さずと申しますが、隠蔽したという懸念を抱かせないためには、少なくとも衆参両院の入管法の審議に間に合うように公表すべきでした。法案審査に密接に関連する不祥事を把握しながら公表せず、当局に都合のいい、虚偽も含んだ情報のみを国会審議の基礎資料として提示していたということは、国会審議と国民に対する冒涜と言えます。
 そもそもウィシュマさんの事件は、入管庁が主張するような医療提供体制の脆弱さなどに矮小できるものではありません。ウィシュマさんの死亡事件の最終報告書には、ウィシュマさんの仮放免を不許可にした理由について、一度仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要ありと記されているんです。収容を、日本にとどまることを諦めさせるための苦痛を与える道具として用いていたと明言されているのです。
 続発する入管不祥事の背景には、半世紀以上前に法務省入国管理局参事官が外国人は煮て食おうが焼いて食おうが自由と述べた外国人差別のメンタリティーそのものがあります。
 最終報告書が出されたのは齋藤大臣の就任前ではありますが、根本的な原因から目を背け、このような非人道的な認識を放置し、今回の事件に至らしめた責任を大臣は免れることはできません。
 これによりまして、齋藤健君が法務大臣の責務を果たすどころか、国会を欺く対応を繰り返していることを御指摘申し上げて、法務大臣問責決議案に対する賛成討論とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 牧山ひろえ

speaker_id: 9631

日付: 2023-06-07

院: 参議院

会議名: 本会議