齋藤健の発言 (本会議)
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○国務大臣(齋藤健君) 福島みずほ議員にお答え申し上げます。
まず、女性に対する暴力は人権侵害であるという考えについてお尋ねがありました。
女性に対する暴力は、その女性の人権を著しく侵害するものであって、我が国が男女共同参画社会を形成していく上でも政府一丸となって克服すべき重要な課題であると認識しています。
次に、女性に対する暴力を防止するための施策についてお尋ねがありました。
令和二年十二月に閣議決定された第五次男女共同参画基本計画には、女性に対するあらゆる暴力の根絶が掲げられており、法務省を含む関係府省庁においてこれに沿った取組が行われてきたものと承知しています。
特に、性犯罪、性暴力については、女性に対するものだけでなく、男性に対するものも含めてその対策を進めるため、性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議において、令和二年六月に性犯罪・性暴力対策の強化の方針が、令和五年三月に性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針が策定され、関係府省庁においてこれらの方針に沿った取組が行われてきたものと承知しています。
法務省においては、性犯罪に厳正かつ適切に対処できるよう所要の検討を進め、今般の二つの法律案を提出するなど、性犯罪・性暴力対策強化のための様々な取組を行ってきたところでございます。
次に、イスタンブール条約についてお尋ねがありました。
御指摘のイスタンブール条約は、女性に対するあらゆる暴力やドメスティック・バイオレンスの防止、被害者の保護、違反者の訴追等が規定されているものと承知しております。本条約の締結に関する所要の検討は、条約等の締結を所掌する外務省において関係省庁と連携しながら行われるものと承知しており、法務省としても必要な協力を行ってまいります。
次に、女性、女子に対する暴力、性暴力の根絶に向けた決意についてお尋ねがありました。
私としては、関係府省庁とも連携しつつ、先ほど申し上げた取組等を着実に実施し、女性に対する暴力や性暴力の根絶に向け、引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えています。
次に、同意のない性的行為についてお尋ねがありました。
性犯罪の本質的な要素は、自由な意思決定が困難な状態で性行為を行うことであり、そのような行為は被害者の性的自由や性的自己決定権を侵害するものであると考えています。
次に、一緒に飲食するなどの行為が性的行為についての同意があることを意味するかについてお尋ねがありました。
不同意性交等罪などの犯罪の成否は、個別の事案ごとに、収集された証拠に基づいて判断されるべきものですが、御指摘のような行為をする際に、その行為をすることに同意していただけであれば、それをもって性的行為についての同意があることにはならず、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態で性的行為が行われた場合には、不同意性交等罪などが成立し得ると考えられます。
次に、強制性交等罪から不同意性交等罪への改正の意味についてお尋ねがありました。
本法律案においては、現行の強制性交等罪及び準強制性交等罪について、より明確で判断のばらつきが生じない規定とするため、性犯罪の本質的な要素が自由な意思決定が困難な状態でなされる性的行為であるという点を、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件として規定し、これに伴い、強制性交等罪と準強制性交等罪を一つの罪に統合することとしています。そして、このような文言を用いた要件とすることに鑑み、いわゆる罪名については不同意性交等とすることとしています。
次に、何をもって性的行為の同意とするのかとのお尋ねがありました。
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではありませんが、本法律案におきましては、同意していないこと自体を要件とするのではなく、自由な意思決定が困難な状態で性的行為を行うことが性犯罪の本質的な要素であるとの考えの下、同意しない意思、すなわち、性的行為をしない、したくないという意思を形成、表明、全うすることが困難な状態であることを中核的な要件として定めることとしています。
次に、同意のない性的行為の処罰についてお尋ねがありました。
本法律案においては、先ほどお答えした性犯罪の本質的な要素を、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件として規定した上で、その状態の原因となり得る行為や事由を具体的に列挙することとしています。これにより、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになると考えています。
次に、暴行又は脅迫を用いてとの要件を改めることとした趣旨についてお尋ねがありました。
現行の刑法第百七十七条の暴行又は脅迫を用いてとの要件につきましては、判例上の解釈として、抗拒を著しく困難にさせる程度であることを要するとされていることなどから、個別の事案において犯罪の成立範囲が限定的に解されてしまう余地がある、安定的な運用を確保する観点からは、処罰すべき行為を適切に捕捉しつつ、判断にばらつきが生じない規定とすることが重要であるといった指摘がされています。
そこで、本法律案においては、より明確で判断にばらつきが生じない規定とするため、この要件を改め、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態と規定した上で、その状態の原因となり得る行為や事由を具体的に列挙することとしています。
次に、不同意性交等罪の要件について、分かりやすさと明快性の観点からお尋ねがありました。
本法律案においては、不同意性交等罪について、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態であることを中核的な要件として規定した上で、その状態の原因となり得る行為や事由を具体的に例示列挙することとしており、これにより、個別具体的な事案ごとに、どのような場合に同罪が成立するかの判断が容易かつ安定的に行い得ると考えています。
そして、原因となり得る行為、事由において、その他これらに類する行為又は事由と規定していますが、同罪の成否は、中核的な要件である先ほど申し上げた状態にあるかどうかによって決せられるものである上、その他これらに類する行為又は事由とは、列挙された行為、事由ごとに見たときに、それぞれに類する行為、事由という意味であり、その範囲は不明確ではないことから、構成要件の明確性に問題はないと考えています。
次に、不同意性交等罪の趣旨等の広報についてお尋ねがありました。
本法律案については、衆議院における御審議の結果、附則について一部修正が行われ、政府は、改正後の規定等の趣旨及び内容について国民に周知を図るものとされています。
法務省としては、本法律案が成立した場合には、附則の趣旨を踏まえ、不同意性交等罪の趣旨や内容についても、関係府省庁、機関や団体と連携しつつ、適切に周知広報してまいりたいと考えています。
次に、配偶者間においても不同意性交等罪が成立するとしている趣旨についてお尋ねがありました。
現行の刑法の下においても、婚姻関係の有無は強制性交等罪の成立に影響しないとする見解が一般的であり、実務においてもそのように理解されています。もっとも、この点は条文上明示されておらず、学説の一部には、配偶者間における性犯罪の成立を限定的に解する見解もあります。
そこで、本法律案においては、不同意性交等罪が配偶者間においても成立することを条文上明確にするため、改正後の刑法第百七十七条第一項において、婚姻関係の有無にかかわらずこの罪が成立し得ることを確認的に規定することとしています。
次に、配偶者間において不同意性交等罪が成立する範囲についてお尋ねがありました。
先ほど申し上げましたとおり、改正後の刑法第百七十七条第一項において婚姻関係の有無にかかわらずとしているのは、婚姻関係の有無が不同意性交等罪の成立に影響しないことを条文上確認的に明確化するものであり、配偶者間であっても、同項の要件を満たすものであれば同罪が成立し得ることとなります。
次に、十六歳未満の者に対する性交等をそれ自体として処罰対象とする理由についてお尋ねがありました。
十六歳未満の者は、性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠けると考えられ、そのような者に対する性的行為は、暴行等の意思決定に影響を及ぼすような状況がないとしても、性的自由、性的自己決定権という保護法益を侵害すると考えられます。そこで、改正後の刑法第百七十七条第一項、第二項の要件を満たさなくても、性的行為をしたこと自体で処罰対象とすることとしています。
次に、いわゆる性交同意年齢を引き上げる改正における年齢差の要件についてお尋ねがありました。
十三歳以上十六歳未満の者は、おおむね中学生の年齢層であり、性的行為に関する能力のうち、相手方との関係において、性的行為が自己に及ぼす影響を理解し、対処する能力が十分に備わっておらず、対等な関係の下でなければ、性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠けると考えられます。
そして、一般に、相手方との年齢差が大きくなるほど、両者の社会経験等の差異により対等な関係でなくなると考えられるところ、いわゆる性交同意年齢の規定は、性的行為をしたこと自体で性犯罪が成立するものとする規定であることから、その年齢差要件については、刑罰の謙抑性の観点から、双方の年齢が要件を満たすだけでなく、例外なく対等な関係はおよそあり得ず、有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠けると言えるものであることが必要と考えられます。
そこで、本法律案におきましては、心理学的、精神医学的知見も踏まえ、五歳以上年長であることを要件としているものであります。
次に、性犯罪の公訴時効期間を延長する趣旨についてお尋ねがありました。
本法律案において、性犯罪について、一般に、その性質上、恥の感情や自責感により被害申告が困難であることなどから、他の犯罪と比較して類型的に犯罪が潜在化しやすいことを踏まえ、訴追可能性を適切に確保するため、公訴時効期間を延長することとしています。
次に、個別の事案を前提とした現行法及び本法律案による改正後の条文の適用についてお尋ねがありました。
個別の事案における犯罪の成否については、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であり、法務大臣として言及することは差し控えたいと思います。
その上で、あくまで一般論として申し上げれば、現行の刑法においては、暴行又は脅迫を用いたり、抗拒不能に乗じるなどして性的行為をした場合のほか、十三歳未満の者に対して性的行為をした場合、強制わいせつ罪、強制性交等罪などが成立し得ることとされています。
また、本法律案による改正後の刑法においては、所定の原因行為、事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて性的行為をした場合のほか、十三歳未満の者に対して性的行為をした場合、十三歳以上十六歳未満の者に対して五歳以上年長の者が性的行為をした場合に不同意わいせつ罪、不同意性交等罪が成立し得ることとなります。
次に、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三第一項の対象者の範囲についてお尋ねがありました。
同条は、聴取を受けた者が更に公判期日において供述する場合に生じる心理的、精神的負担の軽減を図るため、いわゆる司法面接的手法による聴取の結果を記録した録音・録画記録媒体を公判に顕出するための新たな伝聞例外を設けるものです。
そして、このような負担軽減の必要性があり、かつ司法面接的手法を用いることにより信用性が担保されるのは、お尋ねのような性犯罪の被害者等に限られるものではないと考えられます。
そこで、対象者の範囲については、性犯罪の被害者のほか、さらに、公判準備又は公判期日において供述するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者も対象としているものであります。
次に、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三第一項が伝聞例外を不当に拡大しないかとのお尋ねがありました。
いわゆる伝聞証拠には原則として証拠能力が認められず、その理由については、一般に、伝聞証拠が供述内容の真実性を吟味、確保するための要素を欠くことにあるとされていますが、現行の刑事訴訟法においても、証拠としての必要性と信用性の情況的保障の強弱の兼ね合いにより、伝聞例外として証拠能力を認める要件が定められています。
改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三においては、証拠としての必要性に関する要件として、性犯罪の被害者等の供述であることを定めるとともに、信用性の情況的保障に関する要件として、司法面接的手法の中核的な要素である所定の措置が特にとられたこと、聴取に至るまでの情況その他の事情を考慮し相当と認められること、聴取の全過程を録音、録画すること、訴訟関係人に証人尋問の機会を与えることを定めており、これらの要件の兼ね合いにより、証拠能力を認める要件として十分なものとなっており、伝聞例外の範囲を不当に拡大するとは考えていません。
最後に、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三の運用における聴取主体についてお尋ねがありました。
同条における証拠能力の要件においては、聴取主体がどのような立場であるかではなく、司法面接的手法において求められる措置がとられたことこそが重要であり、かつそれで足りることから、聴取主体の限定はしていません。
現在の運用においては、検察、警察、児童相談所が連携し、代表者が聴取を行うなどの取組を実施しているものと承知しており、これらとは別の者が聴取主体となることについては、司法面接的手法による聴取を効果的に行うためには福祉と捜査の双方に習熟している立場の者が聴取することが適切であるとの指摘がある中で、これにふさわしい者が具体的に想定できるのかといった点などが課題になると考えられます。
そのため、御指摘の点については、今後の運用状況も踏まえて慎重に検討すべきものと考えています。(拍手)
〔国務大臣小倉將信君登壇、拍手〕