仁比聡平の発言 (本会議)
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○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平です。
会派を代表して、性刑法、刑事訴訟法改正案について関係大臣に質問いたします。
一九〇七年の明治刑法においては、家父長制の下、強姦罪を始めとした性犯罪の規定は、男、すなわち夫、父親の財産に対する犯罪として位置付けられ、命懸けで抵抗したが圧倒された抗拒不能の場合でなければ強姦罪は成立しないとされ、そうした抵抗をしなかったとされた女性は、逆に非難の対象とされました。
戦後、家制度は廃止され、女性も子供たちも憲法十三条のとおり個人として尊重されることになったにもかかわらず、これらの明治刑法の規定は特段の議論なく引き継がれました。
六年前の二〇一七年改正は、性被害者団体が、嫌よ嫌よは嫌なんです、ノー・ミーンズ・ノーと訴える深刻な声に後押しされ、実に百十年ぶりの抜本改正になりました。強姦罪を強制性交等罪と改め、性的自己決定権を脅かすものと捉え直す重要なものでしたが、抗拒不能要件はそのままとされるなど、重要課題が持ち越され、附則九条で定めたはずの三年後の見直しもなかなか進みませんでした。嫌よ嫌よも好きのうちなどという男性優位の身勝手な観念を取り払わなければなりません。
その間、幾つもの裁判所が、被害者の同意はないと事実認定しながら、被告人は無罪とする判決が相次ぎ、日本中にフラワーデモが広がりました。それは、性暴力、セクシュアルハラスメントの根絶を求める世界のミー・トゥー運動と響き合い、更なる法改正を進める力となってきました。本改正案はこうした運動の成果であり、日本学術会議が求めてきた方向にも沿うもので、基本的に歓迎するものです。
法務大臣、二〇一七年改正に対してなされた、世界から五十年遅れという強い批判をどう考えますか。
法案が罪名そのものを強制性交から不同意性交へと変え、同意の有無を中核とする構成要件としたことは前進です。法務大臣はその意義をどう考えますか。さらに、性的自由を脅かすジェンダー不平等を一切取り払い、イエス・ミーンズ・イエス、性的行為には相手の積極的同意を必要とし、広く個人の尊厳を保護するよう捉え直すべきではありませんか。
一方で、教師と生徒、上司と部下、施設職員と入所者、宗教指導者と信者など、二〇一七年改正で設けられた監護者等性交等罪では処罰できないとされる者同士、大人同士でも、対等でない関係は少なくありません。にもかかわらず、法務大臣、本改正でも、地位関係性を利用し、その優位に乗じて行う犯罪類型の創設を見送ったのはなぜですか。
法務省は、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させるとの規定で捉えていくと言いますが、それでは同意しない意思を全うすることが困難という要件と相まって、構成要件として不明確ではありませんか。
〔副議長退席、議長着席〕
個別事件に当たる裁判官、検察官、警察官の価値観に左右されかねず、処罰されるべき性暴力が処罰されない懸念があるとの指摘にどう答えますか。
力関係の差という現実を正面から直視する更なる改正を検討すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
次に、性的同意年齢の引上げについて聞きます。
現行法上の十三歳という低過ぎる性的同意年齢を改め、十六歳への引上げを明記して、中学生まで原則保護することを宣言したことは極めて重要です。その意義を法務大臣はどう考えますか。
一方で、政府案が、保護すべき十六歳未満の者に対する性的行為について処罰する対象を被害者と五歳以上年が離れた者に限定する、いわゆる年齢差要件は疑問です。
十八歳成年以上の者と保護すべき十六歳未満の被害者には明らかな非対等性があり、それは中学生と十八歳の年長少年という関係でも変わりません。とりわけ深刻なのは、子供たちに対する性的搾取です。法務大臣、性的搾取から子供を守るという立場に立ち、十八歳以上の者からの性的行為を処罰するなど、更なる法改正を真剣に検討すべきではありませんか。
コロナ下、家にも学校にも居場所のない子供たち、若年女性の孤立と困難があらわになりました。親からの虐待、性的被害を含むいじめなどから逃れ、繁華街で性的搾取や性売買業者に絡め取られる被害、近年急増するSNSを通じての被害、また、わいせつ目的を隠して親切を装った卑劣なグルーミングなどから子供たち、若年女性を守るためにどうするか。法務大臣、厚生労働大臣、こども政策担当大臣、それぞれの認識を伺います。
次に、公訴時効の特例について、十八歳に達するまで公訴時効を停止する特例を設けることは極めて重要です。その意義を法務大臣に伺います。
この点、内閣府男女共同参画局の調査によれば、被害者の約一割が相談に五年以上掛かったと回答し、相談もできなかったと回答した方は、女性で約六割、男性で約七割に上っています。
さらに、性被害者、支援者でつくる一般社団法人Springによる二〇二〇年実態調査では、挿入を伴う本来重大な性被害を被害と認識するのに二十六年以上掛かったという方が三十五人、三十一年以上掛かった方も十九人ありました。被害の記憶そのものを長期にわたって喪失しておられた被害者もいらっしゃいます。
さらに、NHKが昨年三月から行ったアンケートでは、僅か一月半の間に三万八千三百八十三件の回答が寄せられ、うち十代のうちに被害に遭った方が五四・三%、十歳未満で被害に遭った方が二〇・三%、合わせて七四・六%が二十歳未満の被害であり、全体を平均しても被害年齢は十五・一歳という驚くべき深刻な実態が明らかとなっています。その多くの方々がここで初めて被害を伝えますとの言葉を寄せておられることに、幼少期、思春期に加えられる性被害がどれほど深く人を傷つけるかを私たちは学ぶべきです。
法務大臣、本法案によっても、被害をようやく認識し、捜査機関に相談した時点で公訴時効が成立しているという事態が起こるのではありませんか。
男女共同参画担当大臣、ドイツでは、被害実態調査を行い、三十歳に達するまで時効を停止するなどの法改正が行われてきました。我が国でも、政府として実態調査をすべきではありませんか。
最後に、刑事裁判を誤らせる危険から伝聞証拠を排除する大原則に対し、重大な例外となる被害者等の聴取を録音、録画した記録媒体について伺います。
こども政策担当大臣、今、児童相談所などで取り組まれている司法面接、代表者聴取はどのようなものですか。それは、本来、専門的な訓練を受けた面接者が、誘導、暗示に陥りやすい子供の特性に配慮し、児童虐待などの被害を受けた子供らに対し、その供述結果を司法手続で利用することを想定して実施する事実確認のための面接であり、専門性の高い技法に基づくべきものと考えますが、いかがですか。
厚生労働大臣、障害児者からの聞き取りにおいても同様の取組が必要ではありませんか。
ところが、法案では、伝聞例外を認めようとする被害者等からの聞き取り主体に限定はなく、面接技法についての定めもありません。また、その対象は性犯罪に限られず、あらゆる犯罪類型に適用されます。このままでは、検察官や警察官などの捜査機関が供述を誘導し、その録音、録画が事実上反対尋問をさせない有力証拠として裁判を誤らせてしまう重大な危険があります。