齋藤健の発言 (本会議)

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○国務大臣(齋藤健君) 仁比聡平議員にお答え申し上げます。
 まず、平成二十九年の刑法改正に対する批判についてお尋ねがありました。
 性犯罪については、平成二十九年の改正法により罰則等の改正が行われましたが、国会審議の過程で御批判も含めた様々な御指摘があり、附則において、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることとされました。
 法務省においては、この附則に基づき、平成二十九年改正の対象とならなかった事項も含め、改めて幅広い観点から検討を重ね、その結果として、今般、二つの法案を提出したものであります。
 次に、強制性交等罪から不同意性交等罪に罪名を変更し、要件を改正することの意義についてお尋ねがありました。
 本法律案においては、現行の強制性交等罪及び準強制性交等罪について、より明確で判断のばらつきが生じない規定とするため、同意していないこと自体を要件とするのではなく、性犯罪の本質的な要素は自由な意思決定が困難な状態でなされる性的行為であるという点を、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件として規定し、これに伴い強制性交等罪と準強制性交等罪を一つの罪に統合することとしており、これにより、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになるものと考えています。
 そして、このような文言を用いた要件とすることに鑑み、いわゆる罪名については不同意性交等とすることとしています。
 次に、性犯罪に関し、ジェンダー平等の実現、性的行為についての積極的な同意の必要性などについてお尋ねがありました。
 まず、現行刑法の性犯罪に関する規定においても、行為者及び被害者の性別は問わないこととされています。
 性的行為について相手方の積極的な同意を必要とし、それがない限り性犯罪が成立するものとすることについては、法制審議会の部会等でも議論されましたが、現在の日本社会においては、性的行為を行うに当たってお互いの同意を明示的に確認することが一般的になっているとまでは言えないと思われ、そうであるにもかかわらず、同意が明示的でない場合を処罰する規定を設けることとすると、被害者が内心においては同意していた場合をも処罰対象に含んでしまうおそれがあるといった御指摘があったものと承知しています。
 性犯罪の保護法益については、改正後も性的自由又は性的自己決定権であると考えており、これを個人の尊厳と捉えることについては、その内実が明らかではなく、また、それを侵害するのは性犯罪に限られないことから、慎重な検討が必要であると考えています。
 次に、地位、関係性を利用して行う犯罪類型の創設についてお尋ねがありました。
 本法律案においては、例えば、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることにより、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせて性的行為をすることを処罰対象としています。他方、この状態に陥っていないのに、一定の地位、関係性にある者が性的行為をしただけで処罰対象とするような明確かつ限定的な要件を設けることは困難であると考えられます。
 そのため、本法律案においては、ただいま申し上げた処罰規定とは別に御指摘のような犯罪類型を設けることとはしていません。
 次に、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることなどの要件についてお尋ねがありました。
 本法律案においては、より明確で判断のばらつきが生じない規定とするため、性犯罪の本質的な要素である自由な意思決定が困難な状態で性的行為が行われたという点を、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件として規定した上で、御指摘のものも含め、その状態の原因となり得る行為や事由を具体的に列挙することとしているものであり、刑法上の他の規定と比較しても明確性に問題はなく、これにより、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになると考えています。
 その上で、安定的な運用と適正な処罰を実現するためには、こうした改正をするだけではなく、その趣旨及び内容を踏まえた適切な運用がなされることが重要であり、改正が実現した場合には、法改正の趣旨及び内容を適切に周知してまいりたいと考えています。
 次に、力関係の差に着目した更なる法改正についてお尋ねがありました。
 本法律案においては、例えば、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることにより、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせて性的行為をすることを処罰対象としています。他方、この状態に陥っていないのに力に差のある関係の者が性的行為をしただけで処罰対象とするような明確かつ限定的な要件を設けることは困難であると考えられ、本法律案においてはそのような処罰規定は設けていません。
 いずれにいたしましても、本法律案については、衆議院において附則の一部修正が行われ、政府において施行後五年を経過した場合に検討を行うこととされているところであり、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えています。
 次に、いわゆる性交同意年齢を引き上げる意義についてお尋ねがありました。
 本法律案においては、おおむね中学生である十三歳以上十六歳未満の者について、性的行為に関する能力のうち、相手方との関係において、性的行為が自己に及ぼす影響を理解し、対処する能力が十分に備わっておらず、対等な関係の下でなければ性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠けると考えられることから、いわゆる性交同意年齢を十六歳未満に引き受けた上で、十三歳以上十六歳未満の者に対する性的行為について、対等な関係がおよそあり得ず、有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠ける場合に限って処罰する観点から、五歳以上年長の者がした場合を処罰対象とすることとしています。これにより、十六歳未満の者に対する性的行為が的確に処罰されるようになると考えています。
 次に、いわゆる性交同意年齢の引上げに関し、更なる法改正の検討についてお尋ねがありました。
 本改正案においては、先ほど申し上げた理由から、十三歳以上十六歳未満の者に対する性的行為について、五歳以上年長の者が行った場合を処罰対象としているところであり、例えば、御指摘のように、十八歳以上の者が十六歳未満の者に対して性的行為を行った場合を一律に処罰対象とすることについては、性交同意年齢を引き上げる根拠と整合的か、処罰すべきでない者が処罰対象に含まれないかといった観点から、慎重な検討が必要であると考えています。
 いずれにしても、本法律案については、衆議院において附則の一部修正が行われ、政府において施行後五年を経過した場合に検討を行うこととされているところであり、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えています。
 次に、子供や若い女性を性的搾取等から守るための方策についてお尋ねがありました。
 子供などに対する性的搾取は、その心身に有害な影響を及ぼし、人権を著しく侵害する行為であり、決して許されるものではありません。
 こうした被害から子供などを守るべきという認識の下、本法律案においては、例えば、いわゆる性交同意年齢を十六歳未満に引き上げ、十三歳以上十六歳未満の者に対して五歳以上年長の者が性的行為をすることを処罰し得ることとしているほか、わいせつの目的で十六歳未満の者に対し不当な手段を用いて面会を要求する行為等を処罰し得ることとしているところです。
 次に、性犯罪の被害者が十八歳未満である場合に公訴時効期間を延長する意義についてお尋ねがありました。
 本法律案においては、性犯罪について、一般に、その性質上、被害申告が困難であることなどから、他の犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすいという特性を踏まえ、その公訴時効期間を五年延長することとしています。
 その上で、さらに、心身共に未熟である十八歳未満の若年者については、知識、経験が不十分であることなどから、性犯罪の被害に遭った場合、いわゆる大人の場合と比較して類型的に被害申告がより困難であると考えられることを踏まえ、被害者が十八歳未満の者である場合には、犯罪が終わったときから被害者が十八歳に達する日までに相当する期間を加えて、更に公訴時効期間を延長することとしています。
 これにより、性犯罪についての訴追可能性がより適切に確保されるようになると考えています。
 次に、性犯罪につき被害申告が可能となる前に公訴時効が完成する事態についてお尋ねがありました。
 本法律案による改正が実現した場合に御指摘のような事態が生じないとは言えませんが、本法律案においては、性犯罪の公訴時効期間の延長について、可能な限り実証的な根拠に基づいて定めるという観点から、一律に延長する期間は五年としています。
 もっとも、本法律案については、衆議院における御審議の結果、附則が修正され、政府において、施行後五年を経過した場合の検討や性的被害の申告の困難さ等についての必要な調査を行うことが定められるなどしたところです。
 法務省としては、こうした御審議の結果を踏まえ、本法律案が成立した場合には、関係府省庁とも連携し、適切に対応してまいりたいと考えています。
 最後に、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三について、裁判を誤らせる重大な危険があるのではないかとのお尋ねがありました。
 同条においては、信用性の情況的保障に関する要件として、誘導をできる限り避けることその他の供述の内容に不当な影響を与えないようにするための措置などが特にとられたこと、聴取の全過程を録音、録画すること、訴訟関係人に証人尋問の機会を与えることなどを定めています。そのため、聴取に当たって不当な誘導は防止されるとともに、そのような誘導があったかどうかは、録音・録画記録媒体の確認や証人尋問を通じて事後的に吟味し得ることとなります。
 したがって、同条について、御指摘のような裁判を誤らせる重大な危険があるとは考えておりません。(拍手)
   〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 121115254X03120230609_024

発言者: 齋藤健

speaker_id: 14267

日付: 2023-06-09

院: 参議院

会議名: 本会議