石川大我の発言 (本会議)
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○石川大我君 立憲民主・社民の石川大我です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案について、強く反対の立場から討論をいたします。
昨日の法務委員会では、委員長職権による強行採決が行われました。隠蔽され続けてきた新事実が次々と明らかになる中、杉久武委員長の強権的な姿勢は極めて遺憾です。立法事実が完全に崩壊し、人の命を奪いかねない法案を強行採決したことに満身の怒りを持って抗議をしたいと思います。
この法案は、普通の法案とはその性質が異なります。人の命が、人権が懸かっている法案です。この法案が成立すれば、迫害を受けた母国に強制送還され、逮捕、投獄、拷問、虐殺、そうした迫害が待っている母国に強制的に送還される。このような恐怖におびえ、震えている人たちが、現に私たちの身近に、そして皆さんの身近にいることを知ってほしいのです。
政府・与党、そしてこの法案に賛成する他会派の皆さんと私たち立憲野党の違いは何か考えました。それは、この法案で失われてしまう命が見えているかいないかではないでしょうか。
私たちは、多くの難民申請者に会ってきました。全国の入管施設で苦しむ収容者と面会を重ねてきました。これまでの審議で政府・与党は、入管収容者やいわゆる送還忌避者を数字で扱うことはあっても、決して固有名詞で扱うことはありませんでした。もしその具体的な人間の生きる営みが見えていれば、人の命を奪う入管法改正案に賛成できるはずがありません。改めて、衆議院で参考人として意見陳述を行った一橋大学大学院の橋本直子准教授の言葉を引用し、死刑執行のボタン、これを押すなと強く訴えたいと思います。
二年前の三月六日、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管で亡くなるという大変悲しい事件が起きました。本日も御遺族が傍聴にいらしていますが、改めて心よりお悔やみを申し上げます。
ウィシュマさんの死後二か月がたった五月の日曜日、私はウィシュマさんの葬儀に参列をさせていただきました。ひつぎの中のウィシュマさんは、遺影に写った笑顔がすてきなウィシュマさんではありませんでした。防げたはずの死亡事案を二度と起こしてはならないという強い思いから、私たちは、入管行政、難民行政の在り方を繰り返し検討してきました。そして、私たちの議員立法、難民等保護法案、入管法改正案の二本の法律案を参議院に提出するに至ったのです。
法務委員会では、閣法と併せ、この議員立法も一括審議が行われ、我が会派からは議員立法の採決を求めましたが、与党理事の反対から採決を認められませんでした。ますます我が国の入管行政は国際基準から遠のいたと断じざるを得ません。
政府案の収容施設内の医療体制については、廃案になった二年前の政府案とほぼ同じ規定であり、ウィシュマさんの死に対する反省がどこにも見られません。
先日、大阪入管では、常勤医が泥酔状態で診察していたことが明らかになりました。この医師への入管庁の対応は、調査中として明らかになっていません。ウィシュマさんの非業の死から入管庁は何も学んでいないのではないでしょうか。
そして、驚くことに、昨日、大阪入管が弁護士グループの質問状に答え、泥酔医師の後任について募集しないと回答したことが報道されました。大阪入管の常勤医は、結局このままこの泥酔医師に任せるというのでしょうか。
難民認定手続の一次審査は入管庁が行いますが、外国人の不法入国や不法滞在を防ぐ仕事をしている入国審査官が、難民の受入れを認めるという正反対のことを適切に行えるとは思いません。難民認定は必ず法務省、入管庁から独立をさせるべきです。
本法案は衆議院で可決されてしまいました。衆議院の参考人、橋本准教授の言葉を借りるならば、実に多くの衆議院議員が間接的に死刑執行のボタンを押すことに賛成をしたということになります。この後の採決で、ここ参議院の本会議場では、無辜の人にその死刑執行ボタンを押すことに賛成する議員がいないことを願ってやみません。
柳瀬房子難民審査参与員の、難民はほとんどいないという発言が政府案の重要な立法事実になっている点も極めて問題です。
弁護士の伊藤敬史難民審査参与員は、二〇二一年、二〇二二年の二年間、常設班として計四十九件の審査を担当し、九件の難民認定、八件の人道上配慮の在留特別許可を求める意見を出したとし、難民はそれなりにいると述べています。柳瀬氏の発言は、難民審査参与員制度の在り方や参与員の資質そのものに疑念を生じさせるものです。
入管庁の発表によると、いわゆる送還忌避者の中に十八歳未満の未成年の子供が二百九十五人います。こうした子供やその家族には速やかに在留特別許可が与えられるべきです。在留特別許可の考慮すべき事情として子供の利益を明確に規定すべきですけれども、政府案では、在留特別許可の考慮すべき事情として、家族関係と曖昧に規定するのみです。これでは、日本政府は子供の権利利益について関心がないと思われても仕方ありませんし、現に子供とその家族を救うことなどできるはずもありません。
難民の地位に関する条約、いわゆる難民条約では、その前文に、締約国は、国連憲章及び世界人権宣言が、人間は基本的な権利及び自由を差別を受けることなく享有するとの原則を確認していることを述べています。一九八一年に難民条約に加入した我が国にとっても、難民の保護は遵守すべき責務であることは言うまでもありません。
政府案の入管法改正案では、保護すべき者を確実に保護するということは絶対に不可能です。
八十三年前、日本には命のビザの杉原千畝がいました。今朝の東京新聞で北丸雄二さんは、杉原千畝に感動し、謝罪したはずの日本が今、死のビザの国になるのですかと問いかけています。
私たちは、難民の皆さんや日本が当然守るべき人権を守る当たり前の国になることを望み、私たちの野党案こそ実現してほしいと願ってくれている多くの国民の皆さん、つないだ手を決して離しません。この決意を申し上げ、私の反対討論といたします。
どうか皆さん、この法案は多くの人々の生死が懸かった命の問題です。一人一人の命に目を向け、私たちの隣人の命を自分事として考え、採決に臨んでいただきたくお願いを申し上げます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)