伊藤孝恵の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)

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○伊藤孝恵君 十八世紀のスコットランドの哲学者トマス・リードはこんな言葉を残しました。鎖の強度というのはその一番弱いところの強度に等しい、なぜなら、その鎖は一番弱いところから崩れ去って、やがて全体が崩れ去るからだ。これは、鎖ではなくて社会に置き換えると非常によく分かります。社会の強度というのはその一番弱いところの強度に等しい、なぜなら、そこから崩れ去って、やがて社会全体が崩れ去るからだ。
 今回のコロナ禍の中で、ステイホームの中で、児童虐待認知件数、対応件数というのは最大になりました。言わずもがな、児童虐待で亡くなる子供のうち一番多いのはゼロ歳児、中でもゼロ歳ゼロか月ゼロ日ゼロ時間です。また、DV認知件数というのも最大になりました。それから、孤独な育児、孤育で自殺するお母さん、これも筑波大学の調べで二倍です。さらには、今七人に一人の子供が貧困です。ヤングケアラーは十万人、不登校児童生徒は二十四万人です。
 とりわけ、今回我々が取り組むべきだという示唆を受けたのは、カタリバ代表理事の今村久美参考人やライフリンク代表の清水康之参考人の話にもあった子供の自殺です。統計開始一九七八年ですけども、その開始以来、小中高生の自殺数が最大になりました。子供が死んでいく国に未来はありません。子供は大きくなっていく過程で生きる方法を学ぶんです。死ぬ方法など探してはいけない。そこに対して我々が何ができるか、それを考える調査会でありたいと思いますし、大正大学の小峰参考人から指摘された現下の民主主義の欠点及び少子化の原因認識というのは、これ、大変示唆に富んだものでありました。
 先ほど委員から、高木委員からも指摘がありましたけども、社会的な認識ラグとそれに引きずられて後手を踏む政策、こういったもののほかに、政策を先導しようとする政治家自身の認識の問題というのもかなりあると思います。問いの立て方はいいのに着地を間違える。
 例えば、今や、今二人に一人が奨学金を払っていますけども、この若い人たちの奨学金返済というのは重い負担になるんだけども、それが少子化の原因にもなるというのは恐らく合っているでしょう。だけど、その解が、例えば地元に帰って結婚したら二分の一チャラで、そして、さらに子供を一人産んだら四分の一チャラでと、あっ、三分の一チャラ、三分の一チャラで、二人産んだら全部チャラにしますというような、そういった解はないです。その女性認識には、その言葉には呪いの響きがあることに気付かないということは大変課題だと思います。
 それから、参考人、こんなこともおっしゃっていました。少子化はそのものが病なのではなくて、ほかのもっと大きな病があって、それの合併症にすぎないのではないかという指摘です。
 具体的には、私も実質賃金の低下と出生数の低下というのを、この相関係数を調べたことあるんですけども、これ〇・九三です。これ、完全に相関している。給料が四半世紀上がらないことに加えて、ジェンダーイクオリティー、例えば多様な家族の許容、それからコスパ、タイパのがんじがらめの職場、平等で流動的な雇用システム等々実現してこなかったことで、そこに少子化は連なっているという認識です。
 最後に、今後、本調査会で議論していきたいなと思う点、三点申し上げます。
 先ほど上月理事の方からも指摘がありましたけども、この格差、これ、ますます我が国で拡大していくものだと思います。この所得格差の問題よく取り上げられますけども、これは個々人の自由な経済活動の結果として生じた不平等、結果の不平等ではなくて、世代間移動が固定化する機会の不平等によってもたらされたものであり、そこが問題であると。じゃ、それを是正するために何が、どんな政策が必要なのかというのを議論していきたいというのが一つ。
 それから、中間層クライシスです。賃金は下がる、社会保険料や税負担は上がる、公的支援はない、取るもの取られてもらうものもらえないという中間層クライシスというのが現実としてあります。
 また、子供保険という新たな社会保険料の負担増を政府が検討しているやに聞いておりますけれども、この二十年で、国民年金二・二倍になりました。介護保険料二倍になりました。国民健康保険一・六倍になりました。こういったものが、また子供を産み育てにくい社会をつくっているというふうに思います。
 そして、少子化は問題なのかという点です。人口一億人も出生率一・八も実現不可能であります。こういった人口減少は不可避という認識の下に、人口が減少しても社会や福祉をどういうふうに維持をしていくか、そのための準備というのも当然議論すべきでありますけれども、それを掲げて議論している調査会等はございません。もちろん、子供を産み育てやすい社会をつくる、子供を増やすというのも一つのゴール、そのトラックを走るのも必要です。ただ、もう一方で、そうではなかった場合のこの国の未来、この国の着地というのを今後議論していかなきゃいけない。
 今この国で一番幸福を感じていないのは子供です。結果、自分の行動で国や社会を変えられると思っている十八歳は二六・九%、三割にも満たない。子供たちがせめて、この国で生まれ育ち、そして未来を感じられるために、この調査会で議論を尽くしていきたいと思います。

発言情報

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発言者: 伊藤孝恵

speaker_id: 17711

日付: 2023-04-26

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済及び地方に関する調査会