山下ゆかりの発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
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○参考人(山下ゆかり君) 御指名ありがとうございます。日本エネルギー経済研究所の山下ゆかりと申します。(資料映写)
私の方からは、より俯瞰的な視点から三つのE、先ほど大橋参考人からも御紹介がありました三つのEの細かいところを御説明しながら、今後の日本のエネルギー政策を考えていただく視座を提供したいと思っております。よろしくお願いいたします。
本日は、国内外のエネルギー・環境分野の情勢の変化を踏まえた上で三つのEについてお話を進めさせていただきますが、まず最初に申し上げておきたいのが、二〇二一年末ぐらいまでの、パリ協定以来、パリCOP会議以後ですね、欧州を中心に、実は環境問題に非常に集中した考え方、あるいは議論の進め方、あるいは企業の事業の進め方といったものが認められました。その中には、御記憶にあるかと思いますが、COP26で行われましたグラスゴー会議では、実際にCCS設備のない石炭火力の廃止の連盟をつくるといったような具体的な動きもありました。
では、実際に世界の国々がCOPに向けて提出した各国の約束というのはどの程度だったかというのを示したのがこちらのIPCCの図になります。左側に示してありますが、二〇三〇年までの薄い水色の矢印というのは傾きがやや少ない、小さいです。ここまでがNDCと言われます各国から提出された二〇三〇年に向けたGHG排出削減の約束を積み上げたものなんですが、この量は非常に僅かでありまして、下、緑色の幅で示しました二度目標に向けて必要な削減、あるいは水色で示してあります一・五度目標に向けて必要な削減に比べますと、まだまだ上の方にあります。
したがいまして、仮に二〇五〇年近辺でカーボンニュートラリティーを達成するという大きな目標、あるいは二度目標、一・五度目標を達成するためには、右側の上に書いてあります青い矢印のように、急激に、加速度的に削減を進めなければいけないといった程度の約束が今各国からなされているわけです。
IPCCから出されました第六次報告書によりますと、今後、いろいろな機会を捉えて技術革新を進めて目標の達成に向かう、これはビジネスチャンスでもあり機会であるという前向きな論調で記述されておりますが、一方で、意思決定をするに当たって優れた政策デザインがあれば制御が可能であると言いつつも、まだまだ整合性のある統合的な政策群として各国の政策がデザインされていることはまれであって、ばらばらに策定されている政策をどうやってまとめ上げていくことが必要かという疑問を呈しています。これは、今、大橋参考人がおっしゃられた、日本の政策においても整合性、統一性が必要であるということにつながるかと思います。
既に大橋参考人からもお話がございましたが、新しい新電力の皆様は電源を持っていたとしても再エネ電源が多うございます。左側が全ての電気発電事業者、発電実績のある事業者の持つ電源の推移ですけれども、火力の伸びが緩やかであるのに対して、再エネ電源は非常に勢いよく入ってきております。
一方で、旧来から火力発電所を維持してきた元一般電気事業者を中心に、火力発電所のリタイアが続いております。
そのため、先ほども言及がございました電力需給の逼迫という事態が日本においても観測されておりまして、これは今年の冬の予備率をどのように高めてきたかということを六月推計、九月推計、それから容量の公募、キロワット公募をした上でどうなったかという推移を示したものでございます。日本においてだけでなく、実は世界各国で電力の逼迫というのがあったんですが、それは後ほど御説明させていただきます。
これからこの図をメインに御説明いたしますので、少しお付き合いをいただいて、色分けについて御理解いただければと思います。
大橋参考人からも御紹介ありましたように、日本のエネルギー政策はSプラス3Eを考えの基本としています。経済性、環境適合性、それからエネルギー安全保障、この三つのEのうち、先ほど申しましたように、ここ数年は環境に優先度を与えていたのがパリCOP会議以降の世界の潮流かと思います。
そこで、エネルギーミックス、すなわち代表的な発電技術に絞って、環境を含む三つのE、これについて簡単な評価を試みました。なお、ガスと石炭の火力発電に全てCCSを付けておりますけれども、二〇五〇年頃までに全ての設備に入っているというよりは、一部の設備に入っているイメージでございます。
図を遠目から見ますと、上から、上半分は評価が比較的良いグリーンの色目、下半分は評価が比較的悪い赤や茶色の色目が増えていることが分かります。
様々な技術がありますが、代表的な発電方法として、上から、再生可能エネルギーと水素や揚水発電を含むエネルギー貯蔵技術、既存及び新増設の原子力技術で、この二つの技術では全ての要素でグリーンの評価であることが見て取れます。さらに、下の方にガス火力、それから石炭火力が続きますが、この部分で赤や茶色が上半分より多くなっているということが見られるかと思います。
次に、左から右に三つのEについて個別に見てまいります。
左端の経済性につきましては、上半分の再生可能エネルギーや、あるいは真ん中の原子力で、プラス面としてはいわゆるグリーン雇用の創出あるいは企業の裾野産業の広さに期待がされます。他方、マイナス面としましては、蓄電池等としてあるバッテリーや水素につきましてはクリティカルミネラルや水素の輸入によるコストの増加、新増設の原子力についてはコスト面の負担の大きさが想像されます。下半分の火力発電は、全てが輸入されまして、輸入コストが掛かるために経済性の評価が赤と低くなっております。
真ん中の二列は環境性になります。
上半分の再生可能エネルギーは、左のCO2排出の少なさで高い評価ですけれども、右側の地域の環境問題では、いわゆるNIMBY問題、太陽光あるいは風力における騒音や地元の反対問題、漁業問題などがあります。また、原子力には放射能の受容レベルへの認識が広く共有されていないなど課題があるため、一部濃いグリーンの低めの評価になっています。下半分の火力発電は、技術によって色に違いがあります。ガス火力も石炭火力も、先端技術ではCO2排出量が減少して評価が高まります。硫黄酸化物ですとか窒素酸化物などの大気汚染物質については対応が進んだため、おおむねグリーンの評価です。
右二列が、今回もきっかけになっておりますエネルギー安全保障の評価です。
左側の安定供給については、国産エネルギーの再生可能エネルギーはグリーン、ガスと石炭は、石油ほどの資源の偏在性がないため、供給源の多様性に応じたグリーンの濃淡になっています。右端の国産エネルギーについては、再生可能エネルギーや特にエネルギー貯蔵ではクリティカルミネラルの課題、あるいは揚水ではポテンシャル制約があるため一部評価が低くなりますが、下半分の火力については全て輸入のため赤色になります。
まず、ここで取り上げている発電技術、これについて、それぞれの特性によって一旦どんなようなものがあるかというのを示したいと思います。
下から、固定電源、それから風力発電、バイオマス発電、そして変動性のある太陽光発電との親和性のある火力発電ということで、これらの技術を表にまとめてあります。
カーボンニュートラルを達成するために、世界の多くの国はどの国もここに示したイメージにあるような段取りで取組を考えています。まず第一に、必要なエネルギー量を可能な限り抑える、省エネルギーの最大限の活用、次に、最大限の電化で多くの経済社会活動を電力で賄うようにシフト、さらに、発電技術の脱炭素化、クリーン化、そして最後に、残る化石燃料の利用について、CCSやCCUSによる可能な限りの脱炭素化、それでも大気中に排出されてしまうCO2についてはDACCSやBECCSなどの除去技術でカーボンニュートラルを目指すということです。
次に、経済性について、もう一度図で示したいと思います。
経済性については、先ほども申しました、いわゆるグリーンジョブと称される雇用創出効果が期待されます。これは、再生可能エネルギーあるいは原子力でも産業の裾野が広いために新増設による雇用創出の効果が期待されます。他方、昨今のようなガス価格の国際的な高騰は、輸入エネルギーに依存する日本ではコスト上昇要因になりますので、下半分に示してあるような国富の流出という問題が気になります。
真ん中の環境については、CO2などの気候変動問題とSOx、NOxなどの大気汚染関連に分けてあります。右上の図は北九州市の一九六〇年代の図だそうでございますが、その当時は大気汚染や公害問題への対応が大きな課題でした。現代では、課題の中心はCO2排出量の抑制であり、火力発電で脱炭素化をすることは急務です。そのために必要なCCSは、現時点ではまだ技術開発あるいは法制度の設定途中であり、このため、ここではCCSは一部の設備に導入されている想定をしています。CCSの付いていない火力発電からのCO2発生量は右下の図のとおりです。
エネルギー安全保障につきましては、日常生活や経済産業活動に必要なエネルギー供給を適正価格で確保するという定義がございます。日本では、エネルギーのほとんどを輸入に依存しているため、二度の石油危機以降は、LNGや原子力の利用を拡大したほか、輸入石炭の活用も進めて、利用するエネルギーと輸入元の国の両方の多様化を図りました。原油についても輸入元の多様化を図っていますが、中東への依存度は時代とともにまた戻りつつありまして、二〇二一年度の統計では九二%になっています。
今回、問題になりましたウクライナ侵攻、ロシアのウクライナ侵攻で問題になりましたのは、欧州のロシアへのエネルギーの依存度の高さです。この表の右、ごめんなさい、右下二つ、ドイツとイタリアでは特に多くのエネルギー源で、天然ガスに限らず多くのエネルギー源で依存度が高かったことが影響をしています。
もう一つ、実はウクライナ侵攻の前に、先ほど大橋参考人からも言及がありました、電力の需給逼迫が非常に様々な国々で起きておりました。
先ほど言及がありました日本では二一年の一月に寒波、それから欧州では、七月から九月にかけて、英国、スペイン、ドイツで風力が足りないという現象からスポット市場で天然ガスを調達する動きがあり、そこで欧州の天然ガス価格が上がり、さらにアジアにもそれが及んでしまったという、ウクライナ侵攻前の天然ガスの事情があります。
もう一つ、右の方で、テキサス州、こちらは風力も主力電源として活用している州でありますけれども、ここでは非常に強い寒波が来たために、風力がない中、天然ガスのパイプラインが凍ってしまうといったことがあって、大規模な停電の、輪番停電ですね、輪番停電が起きました。
で、今申し上げたようなことが影響しましたのがこちらの図、十四枚目の資料で点線で囲みました青いところですけれども、アジア市場でのスポットガス価格の高騰、それから欧州市場での夏と冬、二回にかけて起きていたスポット価格の高騰です。これに加えて、ウクライナ侵攻が起きまして右端のような高騰が起き、世界中に天然ガスの不足感も加わって、エネルギーの安全保障への警戒感が高まったわけです。
再エネルギーにつきまして、実はここの右側に示してありますのが平地面積当たりの太陽光設備の容量でございます。日本はドイツとほぼ同じ国土面積を持っていますが、平地面積はドイツの半分しかありません。しかし、それにもかかわらず、太陽光の設備容量はドイツよりも二五%ほど多い設備容量を設置しており、発電量でも四割増しでございます。過去十年間の導入速度、太陽光につきましては世界一ということで、最近では建設用地の限界に近づいております。
もう一つ、風力につきましては、右下にありますように気候的にも限界があり、欧州のようなすばらしい風がなかなか吹かないというのがアジアの状況でございます。
次に、電化を進める場合あるいは再エネ電力を導入する場合に昨今問題になっておりますのが、十六枚目に示してあるようなクリティカルマテリアルの偏在性と需給の逼迫になります。
蓄電池で必要なコバルト、それから風力でよく使われますネオジム、ジスプロシウム、そしてさらに蓄電池で使われるバナジウムにつきましては、二〇二〇年半ば、二〇三〇年半ばに供給が不足、需要に足りないというような推計結果も私どもの試算で出しております。また、究極的に、全て今確認されている埋蔵量とリサイクルで供給できる、追加的に供給できる量を含めましても、コバルトにつきましては足りないのではないかという危機感がございます。
一方、そういったクリティカルミネラルにつきましても、中国は着々とその処理能力、精製能力をこれまで蓄積をしておりましたので、右側の図にありますように、世界全体でのクリティカルミネラルの処理能力では非常に多くの鉱物において中国が相当量占めているということが確認できるかと思います。
原子力につきましては、御案内のとおり、利用期間の延長、既に、今朝の報道も、昨日の報道もございましたが、あるいは新増設が必要ということでGX会議から示されております。これは、六十年運転を仮に想定したとしても、二〇五〇年を越えた時期でのクリーンな電源として期待される原子力の容量が極端に減ってしまう、この右側の図からも想像ができることですけれども、再生可能エネルギーのパートナーとして原子力を使うという選択があるのではないかと思います。
カーボンニュートラルと原子力の利用動向ということで、世界では実際にこれまで原子力からの脱却を述べていた韓国が利用に向くなど、多くの国で原子力の利用を再考する動きがあります。フランスでは、マクロン大統領が六基の新設、さらに様子を見て八基の新設といった発表もされております。
二十枚目、ここから先は、ここまで述べてきた3Eの議論の中で、特に赤い色が多かった化石燃料をどうやって脱炭素化するか、あるいは、ここまで電力部門について述べてまいりましたが、今後課題が残る非電力部門の脱炭素化をどうやって進めるかといったときに、水素、ブルー水素、グリーン水素とこの二つがありますが、日本にとっては輸入されてくればどちらもクリーンな水素、カーボンフリーな水素になりますので、この水素への期待について少し述べて終わりにしたいと思います。
右側、こちらは私どもで毎年作っておりますエネルギー長期見通しの結果からの引用でございますが、右側にありますように、実は、最大限の技術の導入あるいは最大限の政策投入をした場合も、発電部門の脱炭素化は非常に有効に機能するものの、非発電部門の更なる脱炭素化というのが非常に難しい状況の中、水素を利用することで、あるいは水素から作るアンモニアを利用することで非発電部門のCO2削減が進むこと、その利用の下には、CCS、CCUSを使った化石燃料からの水素、いわゆるブルー水素を活用することで、再生可能エネルギーからのグリーン水素だけでなくて、より大きな水素市場へ、水素需要への供給が賄えるということを分析結果として示しました。
さらに、最後に、全ての技術を動員して脱炭素化を進めたとしても、それでも大気中に排出されてしまうCO2を除去する技術、いわゆるCDRという技術が今後必須になるということはIPCCの報告書にも言及されております。御参考までにどのような技術があるかというものをお示ししておきました。
以上述べてきたように、二〇五〇年についても、五〇年頃につきましても、技術がより早く導入されれば、この下の化石燃料による火力発電の部分も実はグリーンになる可能性がございます。さらには、クリティカルミネラルにつきましても、代替技術ですとか、あるいは節約をする、リサイクルを進める、別の資源を開発するといったことから右上の部分の赤も消えてくる可能性がございます。
最後の結論を申し上げたいと思います。
現実はより厳しいわけでございますけれども、実際には、多様性を確保すること、それから、原子力や化石燃料の脱炭素化も含めて、単一のエネルギーではなく多様なエネルギー源を使った各国によって様々な道を進むことでポートフォリオを組んでいくということが大事かと思います。その際に、エネルギーの利用でも必要になる土地、それは実際には食料ですとか水ですとかの供給との関連性が出てまいりますので、その辺りもよく検討した上でサステナブルなエネルギーポートフォリオを組んでいくということが必要になります。
何度も申しましたけれども、化石燃料を脱炭素化して水素にして、アンモニアにして活用するためには、CCS、CCUS技術が欠かせません。これらの技術の更なる進展、あるいは更なるコスト削減が今後重要になります。その際に、我々の視野に入ってまいりますのは、近隣にあります新興国のアジアを中心に、あるいはアフリカ、さらにはラテンアメリカの国々でも、今後クリーンなエネルギー利用、さらには、今トランジションに短期的に必要な天然ガスの利用を進めることが必要になります。そのために、化石燃料の上流投資を禁止するような動きというのを、実はそれは間違っているといったようなことをアジアから周囲に主張していくことも重要だと考えております。
最後に、エネルギーのシステムの部門だけでなく、需要側とも協調をした、今後、大規模な連携をしていくことが必要なことになっていくかと思います。我々消費者も、エネルギーを大切に使いつつ、脱炭素化を目指すことに関与していくことになるかと思います。
以上、長くなってしまいましたが、私からの陳述を終えさせていただきます。ありがとうございました。