大島堅一の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
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○参考人(大島堅一君) 龍谷大学の大島と申します。(資料映写)
私、環境経済学を専門にしておりまして、この三十年間、エネルギー利用をめぐる環境経済学、環境政策論的な課題について研究してまいりました。気候変動問題につきましても、第一回の締約国会議、COP1から参加しております。
本日は、今日、このような貴重な機会をいただきましたこと、誠にありがとうございます。本日は、資源エネルギー問題、政策に関する御意見を申し上げたいと思います。
二枚目を御覧ください。
本日、二点申し上げたいと思います。まず第一点は、重要な施策として提起されているGX基本方針の内容に関する見解です。第二点は、原子力発電のコスト問題について申し述べたいと思います。
三ページに参ります。
GX基本方針決定に至るまでの経緯についても述べさせていただきます。
先日、GX基本方針が政府により閣議決定されました。これに至る経緯はお示ししているとおりです。
まず、二〇二二年七月二十七日に岸田総理決裁で第一回GX実行会議が開催され、エネルギー政策の変更が開始されました。これはエネルギー政策形成プロセスの中で極めて異例なことであります。通例であれば、エネルギー政策基本法に基づきエネルギー基本計画が策定されることになっております。第二回の会合は二〇二二年八月二十四日に開催されました。このとき、原発再稼働の推進、これは従来どおりですけれども、新しいこととしては、運転期間の延長、新型革新炉の建設の検討が首相より指示されました。
首相の指示は、事前の検討なく、結論ありきだったと考えております。なぜなら、翌日開催されました原子力小委員会で、GX実行会議での提案内容と原子力小委員会でのこれまでの議論についての関連性について質問を受けた事務局サイドが、原子力小委員会の議論を受けてのものではないとの趣旨の説明をしているからです。
その後、首相の指示を受けて原子力小委員会が開催されたのは九月二十二日で、十二月八日には取りまとめがされてしまっております。つまり、実質的に検討期間は二か月半、最大でも四か月程度であったということになります。
四ページ目に参ります。
以上を見ますと、GX実行会議の決定プロセスは異例尽くしということが言えます。
お手元資料で四点書かせていただきました。一つは、内閣総理大臣決裁で始まり、非公開の短期間の会議で進められたこと、短い審議期間であったこと、あと、国民世論を反映しない委員構成であったこと、意見公募期間も年末年始を挟んで一か月しかなかったことです。
また、一月十九日から国民に対する意見交換会を実施するようになりましたが、これは意見公募期間終了の数日前でした。意見交換会の開催通知も開催一週間前にウェブページで告知したのみでした。急ごしらえの感が否めません。さらに、意見交換会は、基本的に録音、録画禁止、また議事録作成の有無も不明です。
また、次に、五ページ目に参ります。
今後、ここでは今後と書いておりますが、既に基本方針は閣議決定されておりますので、その点について述べます。
既に申し上げたとおりですけれども、残念ながらパブリックコメントの結果が十分に反映されるだけの期間がなかったというふうに言わざるを得ません。また、一人の原子力規制委員会の委員の反対を押し切って運転期間の定めについての変更をする方針が伴っております。
GXは、本来、国民的取組が不可欠です。それに比して、政策決定プロセスは非常に雑で拙速だったと考えます。GX基本方針に示された政策内容も大ざっぱだと思います。効果も十分に検証されたものではないと考えます。
六ページに参ります。
GX実行会議で定められた内容で、差し当たっての問題はここで示したとおりです。
さきに申し上げましたとおり、原子力については、原発再稼働の推進、次世代革新炉の開発、建設、運転期間の延長の定めの変更、火力については、水素、アンモニアの導入拡大、CCS、CCUS事業開始のための事業環境整備をうたっております。
現実を申し上げますと、七ページに移ります。これ、二〇三〇年度の原発比率二〇から二二%を目標にしておりますけれども、これの実現はほぼ不可能だと言えます。
図について御説明します。
原発依存度二〇から二二%を達成するために必要な設備容量、およそ三千万キロワットということになります。ところが、①を御覧いただきますと、再稼働原発は一千万キロワット程度にすぎません。今後、運転期間が延ばされたとしても、②、③にありますように、いずれ廃止する原発の容量はどんどん増えてまいります。これは老朽化によるものです。そうなると、④、⑤の黒い点線にありますように、原発の設備容量は減る一方です。こういうのを衰退といいます。中長期的に見れば、原発はこれからこういった衰退の過程にあります。また、⑥にありますように、再稼働に向けた新規制基準適合性審査に未申請の原発が多数ありますので、実際の原発がどんなに再稼働しても三千万キロワットを大きく下回ります。二〇三〇年までに三千万キロワットを達成するのは計画策定当初から不可能です。
九ページ目に参ります。
次に、次世代革新炉について述べます。
これは、第五回GX実行会議で示された資料を抜粋し、加筆したものです。これを見ますと、革新軽水炉、小型炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉が次世代革新炉ということになっております。
ところが、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉はいずれも実証炉、原型炉にすぎません。商用炉ではありませんので、二〇五〇年のカーボンニュートラルには役に立ちません。また、核融合炉に至っては、原型炉を二〇三〇年代に製作、建設と書いてあります。これは絶対に不可能です。なぜなら、実験炉ですら世界にはありません。ですので、元々不可能な計画があたかも実現可能なように書かれているということになります。
一番上の革新軽水炉については、二〇三〇年代に数年で製作、建設するかのように書かれております。しかし、これも他国の例からすれば非常に達成が難しいものです。イギリスで計画されているサイズウェル原発Cというものがありますが、これは計画段階で九年から十二年の建設期間が掛かり、建設費用は総額四・二兆円です。百万キロワット当たりにすれば、大体一兆から一兆三千億円ぐらいになります。これは、日本が今後持つことは不可能です。今後、このような原発を次々に建てていくことも現実性がありません。
次に水素についてですが、ごく簡単に述べますと、日本は先進国の中でも水素、アンモニア利用の推進に熱心な国ですが、水素、アンモニア利用で決定的に重要なのはその起源になります。ここで示しましたように、水素にはグリーン、それからブルー、ブラック、ブラウン、グレー、ピンク、イエロー、ターコイズというものがあります。この中で欧州各国を含む先進国が強調するのはグリーン水素です。グレー水素やブラック、ブラウン水素は絶対に許されません。しかし、日本は水素の起源を問わないことになっております。気候変動対策として水素利用を進めることが、かえって二酸化炭素排出を増大させることにつながりかねない状況にあります。
十ページに参ります。
GX基本方針、GX関連法案の重要な要は、GX経済移行債、カーボンプライシング、またGX経済移行推進機構の創設と考えます。GX経済移行債を二十兆円発行し、その償還財源として炭素賦課金が創設されます。詳細は未確定の部分があり、ここでは詳しくは述べられません。カーボンプライシングや政府財政支出は日本社会に大きな影響を与えるため、その基本設計が極めて重要です。
十一ページに参ります。
特に注目されるカーボンプライシングについてですが、何より賦課金、排出量取引の導入が遅過ぎます。EUの二十年遅れです。また、賦課金は財源調達型となっており排出削減を目的としておりませんので、削減効果は期待できません。排出量取引については、目標となる排出総量を定め、これを毎年減少させていかなければ効果がありません。導入されるとされる排出量取引は自主的で緩いものになる可能性が高く、そうなればカーボンニュートラルの達成は難しくなってしまいます。また、環境保全が目的であるにもかかわらず、環境省が主管になっていないところも違和感を覚えます。
十二ページに参ります。
GX経済推進機構、GX経済移行債自体の問題です。
GX経済移行債は、グリーンボンドの一種として位置付けられる可能性があります。本来、グリーンボンドは特定のプロジェクトとの間で高い透明性が求められますが、GX経済移行債がそのようなものになるかは不透明です。また、支援対象がグレー水素やアンモニア混焼、CCS、CCUSとなれば、脱炭素に貢献はしません。
次に、ガバナンスの問題です。十二月のGX基本方針案に添付されていた資料によりますと、極めて総花的であり、ばらまきになる可能性が高いと考えます。特に原子力、水素、アンモニア、CCSは大変問題です。また、将来の国費がGX経済推進機構の進める事業の財源であるにもかかわらず、国会が直接関与できない仕組みとなっているのは大変問題だと考えます。
十三ページに行きます。
GX実行会議に示された参考資料ですが、いずれも目的、用途、金額の根拠が極めて曖昧で、金額のみが大ざっぱに決まってしまっております。
十四ページに参ります。
原子力発電と再エネ、CO2排出削減の関係について補足いたします。
これについては、国際科学雑誌にイギリス・サセックス大学のソバクール氏らが書いた論文が出されています。これによれば、世界百二十三か国、二十五か年の分析により、再エネ、原子力、CO2排出削減の関係が明らかになっております。分析結果はここで示したとおりです。
まず、原子力発電の導入量にCO2排出に負の影響がないということです。つまり、原子力発電が増えてもCO2排出が減らなかったということになります。これに対して、再エネが増えればCO2排出削減に対し負の影響が与えられる、つまり、再エネが増えるとCO2が減るということが分かっております。
では、原子力と再エネにどのような関係があるのかという点も重要です。この点も興味深い内容となっており、原子力発電に熱心な国は再エネの導入量が少なくなる傾向があり、また、再エネに熱心な国は原子力発電が少なくなるという傾向があるというふうに指摘しております。つまり、ごく簡単に申し上げれば、原子力発電が増えると再エネが抑制されてしまい、結果的にCO2が減らないということが示唆されております。
更に興味深いこととして、再エネは、導入量が増えるとコストが下がるというポジティブラーニングという特徴があります。これに対して、原子力は、次世代技術が導入されるとかえってコストが上昇するというネガティブラーニング効果があるというのです。
これから得られることは、経済的効率性の面でも、温暖化対策という面でも、何より求められるのは再エネの拡大であり、原子力ではないということです。
次に、十五ページに参ります。
原発のコストについて述べさせていただきます。
政府においても、発電コスト検証ワーキンググループにおいて、原子力発電を新しく建設した場合のコストが再エネを上回ることになってきたことが示されました。ここでは、新設ではなく既に建設された既設の原発についてどうなっているのかということについて述べます。これについては、発電期間を通して平準化したときのコストと福島原発事故以降に発生した費用のみを見た場合のコストについて、すなわち二つについてお話しします。
十五ページの表は、福島原発事故後に生じた追加的安全対策費や原発事故の費用などを加えて、さらに発電量を実績値に合わせ、二〇二三年四月から全基再稼働した場合の発電コストを計算しております。すると、一九七〇年代に建設された原発を除いて軒並み発電コストが非常に高くなっていることが分かるかと思います。特に東京電力柏崎刈羽原発六、七号機、東北電力女川二号機、中国電力島根二号機といった、再稼働すると政府自身が示している原発は特に高くなっています。これらの原発は、建設費を上回る投資を行ってしまっているためです。経済性を無視してしゃにむに再稼働のための投資を行ったことは、経済的に見て誤りであったことが分かります。
次に、福島原発事故後に生じた原子力発電関連の費用のみで考えて、原発の発電コストを日本の全体で見た場合の試算結果をお示しいたします。考慮した費用は、電力各社の原子力発電費、国費投入額、事故対策費用です。これを合わせると、原子力発電費は、福島原発事故後十年で十七兆円、二〇二二年度までの十二年間で二十兆円になります。国費は、同じ時期に四・三兆円と五・三兆円となります。事故費用は、政府により廃炉費用に八兆円とされております。つまり、これらを合計すると、これまでに生じた、あるいは生じると分かっている費用は合計で三十三兆円です。これは一人当たり二十七万円となり、一世帯当たり六十五万円程度になります。これから考えると、原子力発電は日本経済にとって電気料金の底上げをしてきたというふうに言えます。原子力発電を廃止しておけば、電気料金の負担はその分下がっていた可能性が高いと考えます。
十七ページは、今申し上げた国費の投入額でございます。割愛させていただきます。説明は割愛させていただきます。
十八ページは、電力各社の原子力関連費用です。
これらを足した総額二十一・三兆円を、合計十七兆円プラス国費投入額、二十一・三兆円を原子力発電量三千二百六十七億キロワットアワーで割ると、福島原発事故後に生じた費用だけで見た発電コストで五十二円となっております。キロワットアワー当たり五十二円となっております。もはや、既設原発も非常に高い電源になっていることが分かります。
将来、原発のコストは増え続けます。例えば、福島原発事故費用には放射性廃棄物処分費用は含まれておりません。
次のページに行きます。
この費用は政府によっても計算されていませんが、これまでの処分費用単価を掛け合わせて合計してみると、およそ八・五兆円となります。この費用は最低限の費用と考えるのが妥当です。
二十ページ、最後に結論を申し上げます。
まず、GX基本方針は、政策決定プロセスが異例で拙速であり、国民の理解が得られておりません。投資先とみなされている案件には数々の問題があります。さらに、GX経済移行債、GX経済推進機構といった経済的メカニズムは、将来世代を縛るものになりかねません。また、ガバナンス上の問題も非常に大きいと思います。
原発のコストについて見れば、既にある既設のコストについても非常に上がっていることが分かりました。原発事故後、再稼働を選択してしまった結果、原発は電気料金の底上げ要因となりました。全体として見れば、原子力発電は日本経済にポジティブな貢献をしていません。むしろ、そうではなく、国民が原子力のコストの負担を強いられていると言えます。
以上、私なりの御意見を申し上げました。
このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。心より感謝申し上げます。