竹内純子の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(竹内純子君) 御紹介いただきまして、ありがとうございます。私の専門は、エネルギー、特に電力政策ということで、この問題についての難しさをまず述べたいというふうに思います。(資料映写)
この委員会の先生方には釈迦に説法でございますが、エネルギー政策はSプラス3Eというもののバランスをどう取るか、重心をどこに定めるかといったところが要諦ということになります。政府としてはSプラス3Eの同時達成というようなことを言いたくなるところではございますが、本質的に、まああちらを立てるとこちらが立たないというようなジレンマ、トリレンマの中で、どこに重心を定めるかといったようなところになります。また、昔より変化のスピードが上がっているとは申しましても、インフラの置き換え、これを必要としますし、供給側だけではなくて、需要側、使う側の取組も必要とするので、政策を描いてからそれが実現されるまでの期間が非常に長期掛かるといったようなところが特徴でございます。
これまでの歴史、簡単に振り返らせていただきますと、こちら、一九五二年、九電力体制と言われるような体制ができてからの、棒の高さが電力の需要、一年間で使った量、そして色分けがその電源構成なんですが、量の確保が最重要視された終戦直後、そして、オイルショックによってエネルギー安全保障の重要性を痛感して脱石油、脱中東のためにあらゆる取組を行った一九七〇年代、八〇年代、エネルギーの内外価格差が日本の産業の競争力をそいでいるとして発電事業の自由化に端を発して経済性を追求した一九九〇年代後半から二〇〇〇年代、そして、二〇〇〇年代以降は環境性への関心が急速に高まったと、重心も徐々に動いていたというところでございます。
今、各国のエネルギー政策、まあ我が国含めてですけれども、大きな影響を与えているのが、蟹江先生からもございました、一つの気候変動政策といったようなところでございます。ただ、この二つの政策の思考回路の違いというところをちょっとお話を申し上げたいというふうに思います。
エネルギーは究極の生活財、生産財と、極めて現実的に考えなければならない財でございます。その計画はフォワードルッキング、ある意味、足下の現実を見て策定する必要がある。一方で、気候変動政策というのは十八世紀の産業革命をも上回る社会変革です。その解決にはイノベーションが必要であるということはもうパリ協定でも認識をされており、その政策は、今お話にもありましたとおり、あるべき姿からバックキャストで考えるということが基本とされております。
この二つの思考方法はどちらがいい悪いというわけではないわけですが、全く異なる。しかも、これを非常に短い時間軸、今お示ししているグラフの中でも二〇二〇から二〇五〇という、ある意味、三十年弱の中でつなごうとすると、今大きな段差が生じがちになっているといったところが現状だというふうに思います。
こうした現状に直面する場として、気候変動をめぐる国際交渉、こちら私も長年拝見しておりますけれども、ここでは、直近のCOP27に参加したときに諸外国の産業界との情報で得た所感というところを一つにまとめさせていただいております。
ポイントだけ申し上げれば、先ほどの気候変動政策のあるべき姿とエネルギーの現実とのギャップといったようなものが、ウクライナ危機やエネルギー価格の高騰、こういったものによって鮮明にはなっているものの、COPの場ではあるべき姿を追求するという議論になるという状況になっております。ただし、新興国や途上国、こうした国々が排出の大宗を占めるようになっている。もう中国とインドが約世界の排出量の四割を占めようという勢いになっている中で、これまで欧州がリードしてきた規制強化や再エネだけを推進するといったようなこと、これでは達成が難しいということが明らかになりつつあるというふうに言えるかと思います。
少しそれますけれども、G7の議長国として日本が果たすべき役割といったようなものは、G7に参加する国を合意に導くということだけでは決してなく、G20あるいはそれ以外の国との懸け橋を果たすということではないかというふうに考えております。
国際交渉という場を離れて、各国がこの気候変動政策、どういうふうに施策として取り込んでいるのかといったようなところを見ていきたいというふうに存じます。
各国の政策を見ると、気候変動、これを産業、雇用政策として明確化している事例が出てきております。特に、米国で二〇二二年八月に成立したインフレ抑制法、略称でIRAとも言われますけれども、こちらが各国に与えたインパクトは非常に大きなものだったということでございます。
詳細は御説明できかねますけれども、まず二〇二二年から二〇三一年の十年間で約三千億ドルの財政赤字を削減する。要は現世代から捻出した原資で重点分野に将来投資をするというものですが、投資分野の八五%がエネルギー安全保障と気候変動の分野です。化石燃料を豊富に持つ、原子力も再エネもたくさん持っているアメリカにとって、エネルギー安全保障というのはそれほど重要な目指すべきターゲットではないということになると、要は気候変動への投資ということになります。投資する原資を現世代の財政見直しによって捻出しているという点に加えて、投資の振り向け方、お金の使い方についても、社会実装を確実にする税額控除を多用している点や、技術ごとの支援のガイダンスを、これ多分相当産業界と政府側がコミュニケーションを持って策定しているなど、参考にすべき点が多々ございます。
そして、米国という世界最大の経済大国が、カーボンプライシング、これ後で御説明申し上げますが、これを導入、基本的にせずにこうした多額の支援をする。ある意味、北風と太陽でいえば、太陽方式でこの分野をリードしているという点は、欧州など規制型でこの問題に対処しようとしていた国に大きな衝撃を与えました。製造拠点をアメリカに移そうという産業界の動きも多発して、他国から米国を保護主義として批判するという向きも出ておりますが、欧州が先に言い出しておりました国境調整といったようなものも、中国やインド等からは緑の皮をかぶった保護主義と批判をされてきたところでございます。
WTOが十分機能しない中で、各国が気候変動、言わば盾といいますか、みのといいますか、表現難しいところでございますけれども、保護主義を強める動きがある中で、我が国がこれはどう動くのかといったようなところは相当の戦略が必要になるかというふうに思います。
さて、ここで、我が国の戦略を議論する場として設定されたGX実行会議、私も委員を拝命して参加をさせていただきましたが、こちらで示された基本方針及び本国会で審議されている束ね法案、GX束ね法案に対する私なりの評価と課題を整理したいというふうに思います。
政府が、CO2を減らすと、脱炭素という言葉にとどまるカーボンニュートラルではなくて、成長戦略としてGXに取り組むというふうに明確化したことはまず評価を申し上げたいというふうに思います。GXというのは、基本方針では省エネですとか再エネ、水素などを含めて網羅的に書かれているわけですけれども、主要な論点であったと私が認識をしているこの緑に囲まれた三つの点について補足を申し上げたいというふうに思います。
まず一点目、電力システム改革、自由化の修正でございますけれども、今、エネルギー供給側が投資判断を非常にしづらい状況にございます。
その理由、まず四点申し上げますが、一つ、一点目申し上げると、電力需要というのは、今までほぼ人口や経済成長、要はGDPとリンクをしてきました。今後、人口減少が進めば、二〇五〇年には一三年比で八割程度の電力需要になるというような可能性がございます。しかし一方で、温暖化対策を進めるということになりますと、大きな柱は需要の電化、例えば、ガソリン車を電気自動車に乗り換えるといったようなことと電源の脱炭素化、これを同時に進めるということになります。電化が進むということになると、電力需要は増えるということになる。ここに加えて、デジタル化が加わりますので、二〇五〇年カーボンニュートラルを実現するには現状比一・五倍の電力需要になるという試算もございます。
〇・八か一・五になるというのが非常に不透明な中で、設備が余るのか不足するのか分からない、非常に長期の投資回収を必要にするといったようなところもあり、投資判断が付きづらいというところがございます。
加えて、気候変動、これに真剣に取り組むという日本の方針は変わらないと考えられるわけですが、ただ、目標年限が前倒しにされる、例えば、今二〇五〇年カーボンニュートラルって言っているけど、四五年にしよう、四〇年にしようとなったときに、今投資をした、例えば石炭火力からLNG火力に投資をしてCO2を減らすという投資、これの投資回収がおぼつかなくなってしまうということが起き得ます。
こうした中で、エネルギーをめぐる国際動向も非常に激しく変化をしているといった中で、CO2の価値、あるいはエネルギー安定供給や安全保障といった市場で、マーケットで可視化することが非常に難しい価値、この実現を市場任せにするということが果たして日本という特にエネルギーの安定確保が難しい国において適切であったのかという議論が必要であるかというふうに思います。
需要側も投資が必要で、それの投資判断が難しいということをスライド十の方で補足をしておりますが、ここは割愛させていただきます。
スライド十一において、もう少し解像度高く、電力安定供給に必要な要素を見てまいります。
電力安定供給には、発電設備、言わば工場です、燃料確保、言わば原材料、そして送配電網、ロジスティクス、この三つがそろう必要がございますが、設備投資が確保される規制料金制度、この下では、発電、①ですね、発電設備あるいは送配電設備といった設備投資が問題になるということは基本的には余りなかったので、長年我が国にとってのエネルギー政策というのは、②の燃料確保に向けた資源外交や多角化、多様化といったようなところでございました。
それが今どういう状況かと申しますと、発電設備は原子力が長期を停止している、加えて火力発電、これが再エネの増加や自由化市場に置かれているといったようなことで休廃止が増加をしております。そして、燃料の契約といったようなものも長期契約が難しくなってきている。送配電網といったようなところも、再エネ大量導入に向けた投資も必要ですけれども、人口減少、過疎化によってネットワーク型のインフラの維持が既に難しくなっているという状況がございます。
スライド十二は、先ほど申し上げた供給力が減少しているといったような点。右下にお示しをしているように、再生可能エネルギーは相当の勢いで増えています。この十年間、我が国が増やした太陽光のスピードというのは世界に類を見ないスピードでございましたが、一方で、原子力や火力が減っている供給力の減少というようなところを補足したのがスライド十二。
そして、スライド十三は、燃料調達の長期契約が自由化や再エネ大量導入等によって減ってきてしまっているといったようなところをお示ししたものでございます。インフラ中のインフラといったような電力、かつ、ためることができずに同時同量を果たさなければいけないといったようなものの電力システムの在り方、これを考え直す必要があるといったようなところでございます。
スライド十四、十五は、ちょっと補足のスライドでございますので割愛をいたしますが、今申し上げた、スライド十六であるべき電力システムの姿とは何かといったところを申し上げたいというふうに思います。
我が国の電力システムが確保すべきやっぱり要件というものを最初に三つ定義をさせていただいております。やはり、一つのエリア、特に小さく、北海道、本州、本州も幾つかの島、そして九州といったように分断された状況の中で、かつ国内に化石燃料資源を持たないといったようなところも踏まえ、一定の冗長性を持った供給力の確保。そして、電力を安価にするのであれば、電力コストの大宗を占める資源市場、ここでバーゲニングパワーを持つといったようなこと。そして、リスク分散をする投資が可能であるといったようなこと。こうしたところのあるべき要件から、あるべき姿、ここを導き出していくことが極めて今求められているといったようなところ、ここを書かせていただいております。後で御覧をいただければと思います。
次いで、大きな論点となりましたのが、原子力の立て直しでございます。
GX実行会議では、ほとんどの委員から、原子力の必要性や事業の立て直しを迅速に進めるべきとの指摘がございました。しかし、原子力というのは、次のスライドに行っておりますが、発電事業の一つと技術として扱うには余りに特殊性が高い。初期投資が巨大で、事業期間、投資回収期間が長期にわたるということと、事故時の賠償やバックエンド事業などの不確実性、資金調達コストの抑制や高い稼働率を維持すれば安価な電力を供給するポテンシャルを持ちますけれども、それらが十分でないと高コストになってしまうと。
私が損益分岐点となる設備稼働率を試算すると約七割というふうに出ました。粗い試算でございますが、海外では九五%を超える原発稼働率というのは全く珍しくないわけですが、日本では何かあれば止めるといったようなことになりがちで、民間事業者のリスクで対処すべきリスクを超えるリスクが大きく存在するという技術でございます。
スライド二十では、原子力事業といったものの健全性を確保するには、制度、政策、安全の規制、そして社会及び立地地域の理解などが、事業のフェーズ、それこそフロント、バック、リスク対応、ここにおいて面的にそろっていないとどこかで事業が行き詰まってしまうということをお示しをしております。
原子力事業の立て直しについて持つべき視点につきましてはスライド二十一でお示しをしておりますが、規制の最適化や体制整備に向けて、補足のスライドをスライド二十二、二十三に添付をさせていただいておりますので、後で御覧をいただければというふうに存じます。
最後に、重要な点として成長志向型カーボンプライシングについて触れたいというふうに思います。
スライド二十四、二十五は、政府が提示された案の図なので詳細は割愛いたしますが、将来的な制度導入を前もってアナウンスすることで前倒しの投資を促す、負担が増えないように再エネ賦課金等のピークがアウトに沿う形で導入をする、また、電力など多排出産業には排出量取引を、その他の化石燃料には賦課金をといったような案が示されております。
ここで、カーボンプライシングのあるべき姿を考えてみたいと思います。このカーボンプライシング、国民の生活、経済に与える影響というのは極めて大きいと考えられるんですけれども、このあるべき姿といったところから考えてみたい。
カーボンプライシングというものが論理上うまくやれば、このカーボンニュートラルを費用対効果高く進めることに貢献する制度であるということは議論の余地はほぼないと考えております。しかし、この制度は様々なところに悪魔が潜みがちな制度でもあります。このポイントを五つ指摘しております。
まず、エネルギー間中立であるということと、国際的な公平性、負担の適切性、五つ書かせていただいておりますが、ここではポイントを絞って一と三について補足をさせていただきます。
エネルギー間で中立であるということなんですが、スライド二十七、お目通しください。
これから脱炭素化を進めていく上でのセオリーは、先ほども申し上げたとおり、需要の電化と電源の脱炭素化です。ただ、事業者の数のコントロールのしやすさ等から、電気は電気で排出量取引を導入し、その他の化石燃料は別の賦課金を導入するということになりますと、この負担の違いが出てきてしまって公正な電化を阻害するおそれがある。
実は今、再エネ発電賦課金といったようなものは、あれは再生可能エネルギーを導入してCO2削減をするという点におきましてある意味カーボンプライシングなんですが、電気にだけ賦課をされているということで、電化を阻害する要因になっているといったようなところで我が国では最初の一歩が進まないということになりかねないというところでございます。
もう一つの、補足すると申し上げました負担の適切性でございます。
消費者の行動変容を起こさなければいけませんので、負担に気が付かないような金額、小さな負担では意味がないわけですが、代替手段を確保せずにエネルギーという究極の必需品にカーボンプライスを掛けると生活に大き過ぎる痛手ということになります。二〇五〇年のカーボンニュートラルをこうしたカーボンプライシングだけで実現しようとすると天文学的コストが必要とされる。SDGsもそうした面を、負担という面を極めて小さくしていく努力が必要ではありますが、カーボンニュートラルといったようなところも投資、負担、痛みを全く伴わないというわけでは決してないといったところ、これを政治がまず認識する必要があるかと思います。
カーボンプライシング、これは制度、様々な方法がございまして、我が国はオイルショック以降、様々な規制等で対応してまいりました。ただ、これは、欧州が言うような明示的、すなわち法目的にCO2排出量に見合うコスト負担になるといったような要件を満たすとか、法目的にCO2削減をうたっているといったようなカーボンプライシングではないというところでございます。
ちょっと飛ばさせていただきますが、我が国のカーボンプライシング、我が国の特徴というのは、暗示的なカーボンプライシングの負担といったようなものが極めて大きいということです。再エネ発電賦課金と自動車関係燃料諸税だけで七兆円程度の負担をさせている。これを国際的にカーボンプライシングとして認めていただくということは非常にハードルも高いというふうに認識をいたしますけれども、ただ、こうした負担を国民、産業界がしていることを前提として制度設計しないと負担が非常に大きくなるといったようなことを私は懸念をしております。
こうしたところから、こうした制度設計をするに当たっての提案といったようなところをスライド三十三に最後にお示しをさせていただいて、私のお話をこちらで終えさせていただきたいと思います。
御清聴いただきまして、ありがとうございました。