中川正春の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○中川(正)委員 立憲民主党の中川正春です。
私たちは、立憲民主党の憲法調査会で憲法議論をここ数年重ねてまいりました。今日は、その基本を整理をして少しお話をしたいというふうに思います。
私たちの基本姿勢は、立憲主義に基づく論憲であります。議論の出発点は、憲法が実際に守られているかどうかということを検証するということであります。
時代とともに変化している現実があります。その現実と憲法とのそごが出てきたとすれば、そのそごはどのように解決されるべきなのか。現実を正すのか、それとも憲法を改正するのか。社会の求める新しい価値観が憲法に明記されるべきだとすれば、それは何か。こうした議論をこの憲法審査会でも一つ一つしていくということが大切だと思っております。
私たちの進める論憲は、議論の前提として、この憲法の持つ普遍的な基本理念、それは、国民主権、基本的人権の尊重と平和主義、これを変わることなく貫いていくということを確認をしています。
その上で、憲法議論にもこれを反映をさせて、論憲における基本姿勢を三つ確認をしております。一つ、権力の拡大に対しては、立憲主義に基づいて、それが暴走しないように適切なコントロールが必要であるということ。第二に、時代の変遷の中で人権を守るための新しい課題は、憲法の規範に明記することも含めて積極的に議論をしていくべきだということ。三番目に、平和主義は日本の国の重要課題としてこれからも堅持をしていくということ。この三点であります。
これに基づいて具体的な憲法課題を抽出すると、私たちとして、次のような議論の方向性になります。
まず、国家権力の統制ということについては、具体的に、緊急事態条項の問題、それから自衛隊の憲法への明記、そして衆議院の解散権の濫用という問題であります。これまでの議論で各委員からこれは提起をされていますが、権力の拡大に関わるこれらの論点に対しては、抑制的な規範を維持して、法に基づく適切なコントロールをしていくことが必要だというふうに考えています。
無原則な国家権力の発動を可能とする緊急事態条項については、憲法に明記する必要はないと考えております。戦争、内乱、大災害、パンデミックなど、それぞれの緊急事態の内容によって、日本では既にきめ細やかな法律で権力行使の限界とチェック機能が保障をされております。実際の災害などを経て、改良が必要な部分は、憲法よりも法律の方が現実に合った柔軟性が確保できると言えます。
これから派生して、今議論になっている選挙困難事態における議員任期の延長については反対であります。それより、参議院の緊急集会で対応すべきだと考えます。
理由は、過去に戦争継続を正当化するために利用された例などがあるように、選挙困難事態を故意に引き延ばし、議員任期の延長が時の政権の延命のために悪用されるおそれがあるということであります。大切なことは、選挙をすることであります。そのために、できない言い訳の種を摘むということであります。臨時的な要素を待つ参議院の緊急集会は、議員任期の延長と比較をして、選挙をしなければならないという圧力をより強く持続させます。
さらに、自衛隊の明記についても、その必要がないと考えます。自衛隊の存在が合憲であるという解釈も、また世論も、既に定着をしています。
国家権力の統制という課題については、さらに、解散権の濫用の問題があります。
衆議院の解散は総理大臣の専権事項だというのは間違っています。与党の都合のいいときを選んで大義もないのに解散することは、民主主義をゆがめ、国民を愚弄することにもなります。少なくとも、解散の大義については、国会や国民が納得することが必要であります。私たちは、そのための法律を提起をしていきたいと思います。
さらに、究極には、七条解散を禁止して六十九条の内閣不信任を前提にする解散へと、憲法改正も視野に入れて検討する必要があり、解散権の行使は正常化されるべきであります。
次に、第二の課題、時代や社会の変化に対応して人権保障をアップデートしていくという問題があります。
情報に関連する国民の諸権利、AIと人間社会の関係など、新たな課題が押し寄せています。表現の自由と人権擁護の相克、AIがつくり出す世界と自己決定権との相克など、法的に早急な整理が必要な分野であります。基本的な権利擁護として、私たちは次の三つを挙げています。
まず、一、自分に関する情報について適正な取扱いを求める自己情報コントロール権。その二、国家の情報などに関する知る権利としての情報アクセス権。その三、多種多様で健全な情報に接する環境を保つよう国家等に求める情報環境権であります。
こうした情報に関する諸権利は、制定当時には想定されていなかった新しい権利です。憲法に明記をしていくということで関連の法律が迅速に整理できると考えることから、審査会で早急に議論すべき課題として提案をしていきたいというふうに思っています。
この課題に関連して、憲法改正の必須要件となっている国民投票法の見直しも必要です。コマーシャル規制、インターネット規制など新たな課題を加味した改正を求めています。同時に、憲法改正に限られた国民投票だけでなく、一般的に国民の意思を直接確認する必要のある事柄について国民投票ができる環境をつくるべきであります。
一票の格差と合区問題の解決や地方分権への流れを加速させる議論も必要であります。投票価値の平等をどのように考えるのか。一票の格差問題は、現在の人口比例のみを基準とする裁判所の判断により、度々の違憲状態判決を招いています。現行の解釈、人口比例のみの平等規範だけで判断し、区割り変更により解消していくだけで、これでよいのか。地方分権、統治の基本を変えていく議論とともに、人口だけでない新たな規範を必要とするのか、まさに審査会で話し合うべき課題であると考えています。
教育の無償化については、幼児教育から高等教育まで国が責任を持ってこれを行うという理念には賛成であります。しかし、教育の機会均等については、十四条の第一項、二十六条第一項に既に記されているところでもあり、もし政府がそれを本気になって実現をするという意思があるなら、現行憲法に基づいて教育基本法を改正し、責任を持って予算化をしていくということで実現可能であります。私たちも賛成します。なぜ憲法の改正の必要があるのか、その意図が理解できません。
そして、平和安全保障についての憲法論議です。私たちは、戦後、日本国の安全保障議論で、武力の保有と行使に対して、憲法九条がこれを抑制的なものとして基本的な貢献をしてきたこと、これを評価していきたいと思います。現行憲法の解釈、個別的自衛権への限定、専守防衛と必要最小限の防衛力、これは、これからも日本の平和主義を貫く原則として堅持をしていくべきだと考えています。
最後に、改めて指摘をしておきたいと思います。憲法議論は、党派を超えた合意形成、国民の広い理解がないままに強引な進め方をすれば世論の分断を招く、そういうことがヨーロッパでも指摘をされ、そして、私たちもその合意の下にこの憲法審査会を開いているということであります。この審査会の議論が国民的議論になっているかといえば、しかし、ほど遠い現実があるのではないかと思っております。
私たちも充実した議論にすべく努力をしたいと思っていますが、それだけに、岸田総理の、自分の任期の間にというような発言は、我々の議論の分断を助長し、混乱を招くものと考えます。発議権は総理にはないということを肝に銘じるべきだということをあえて指摘をして、私の発言を終わります。