玉木雄一郎の発言 (憲法審査会)
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○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
私、昨年の、ちょうど一年前、十一月十七日の憲法審査会で次のように述べました。昨年の通常国会以降の議論の中で、緊急事態条項、とりわけ議員任期の延長規定の必要性については、スピード感を持って合意を得るべきテーマとして認識されたと思われる、そこで、会長にお願いがあります、法制局に論点整理をしてもらい、論点ごとに合意点をピン留めしていきたいと述べました。
そして、この提案を受けて、法制局が議員任期の延長についての論点整理を行い、あのきれいな表を作っていただきました。自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党、有志の会の四党一会派ではあらあらのコンセンサスが得られたと認識しています。
さらに、我が党は、本年六月十九日に、日本維新の会、有志の会とともに憲法改正条文案を取りまとめ、八月十九日には、三会派合同で公開シンポジウムまで行いました。これがここまでの経緯です。
しかし、肝腎の自民党の取組が遅過ぎるのではないでしょうか。昨年の臨時国会では実質的な討議を五回行いましたが、今臨時国会での実質的審議は、今日を除けば十一月三十日と十二月七日の二回のみです。
先ほど維新の岩谷さんからもありましたが、岸田総理は来年の九月の御自身の総裁任期中での憲法改正の意欲を示されましたけれども、それであれば、来年の通常国会末には発議しないと間に合いません。逆算すると、今臨時国会で具体的な改正案についての成案を得ないと、公約を果たすことができません。その作業があと二回でできるのか。少し強い言葉で申し上げますと、失礼があったら申し訳ありません、自民党の憲法改正は、保守層をつなぎ止めるためのやるやる詐欺になっているのではないでしょうか。自民党の憲法改正に対する熱意と本気度が感じられません。
中谷筆頭幹事に確認をします。
岸田総理が表明した、今の総裁任期中に憲法改正を実現する気はあるのかどうか、そのための具体的なスケジュールはどのようなものを想定しているのか、これを明らかにしていただきたいと思います。
今日もそうなんですが、残念ながら、自由討議という名の言いっ放し大会に審査会が先祖返りしています。議論するテーマを明確にし、合意点を確実にピン留めしていく運営を是非お願いしたいと思います。
今のスケジュールや運営では、到底、来年九月までに改憲などはできません。本当に任期中に改憲をしたいのであれば、これまで意見の集約が図られてきた緊急事態における議員任期の延長規定の創設に絞って成案作りを進めるしかないんじゃないでしょうか。その際、私たち二党一会派の条文案をベースにしていただきたいと思います。これは自民党や公明党の意見も踏まえた内容になっているからです。
今からほかのテーマに手を広げても、到底、岸田総理の公約を達成できないと思います。例えば、九条の改憲を主張する方もいらっしゃいますが、とても任期中には間に合わないと思います。
確かに九条改憲は極めて重要で、我が党も二〇二〇年十二月にまとめた論点整理を基に積極的に議論を提起していきたいと思っていますが、ただ、現在の自民党案では、この審査会でも何度も申し上げました、戦力不保持を定めた九条二項を存置した上で、自衛隊の行使する自衛権についてはこれまでの九条二項の解釈の範囲にとどめる、その範囲内とする内容となっており、できることは何も変わりません。何も変わらないので、自衛権をめぐる違憲論争も解消されません。そんな労多くして益なしの改憲を本気でやるつもりなのか。
我が党は、九条二項を削除するか、仮に残す場合であっても、その九条二項の例外として自衛権を位置づけるべきと提案しています。
わざわざ改憲したのに違憲論が残り続ける内容では、危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務める自衛隊の皆さんの期待に応えることはできません。中途半端な九条改憲案は将来に禍根を残します。自衛権の範囲を複雑な解釈に依存する今の現状を改める、いわば解釈の迷宮、ラビリンスから抜け出すことのできる本質的な議論が必要です。
そこで、改めて自民党に確認したいのは、岸田総理の今の総裁任期中に九条改憲まで考えているのか、併せて御教示いただきたいと思います。
次に、共産党さんに一言申し上げたいのは、毎回、赤嶺先生の信念に満ちた発言には敬意を表したいと思います。ただ、共産党さんが、我が党を含む四党を悪政四党連合と呼び、悪の枢軸みたいなんですが、改憲と戦争国家づくりをあおっていると批判されているのは、極めて残念であります。不毛なレッテル貼りは、冷静で真摯な議論の妨げにしかなりません。
私は、この場で何度も、我が党の考える緊急事態条項は、権力の行使を容易にする条項ではなく、有事において、いや、有事だからこそ、権力を適切に統制するための条項であることを申し述べてきましたし、そうした考えに基づいた条文案になっています。私たちの緊急事態条項が成立してもナチスは出てきません。どうか緊急事態条項イコール戦争国家づくりとのレッテルはやめていただければ幸いです。
次に、野党第一党である立憲民主党さんにもお願いがあります。憲法改正絶対反対ではなく、前向きに是非議論に参加していただきたいと思います。党内に様々な意見があることは承知しておりますが、有事における権力行使の適正な統治の在り方については、イデオロギーを超えて、一緒に考えていただけないでしょうか。
特に、任期満了時に選挙が困難な場合に、一定期間は参議院の緊急集会で対応できると思います。ただ、それはあくまで一時的、暫定的であるべきだし、この点については認識を共有できると思います。
また、議員がお手盛りで任期を延ばす懸念についてはもっともであり、だからこそ、私たちも司法の関与を提案しています。どのような司法の関与の在り方が適切か、是非、立憲民主党さんからも建設的な意見を伺い、それに基づいて成案を作っていきたいと思います。
最後に一言申し上げたいと思います。
東京大学の境家史郎先生は、憲法改正という争点を軍国主義か民主主義かというイデオロギー的問題として捉える枠組みから日本人が解放されない限り、この国の戦後が終わることはないだろうと著書「戦後日本政治史」で述べておられます。戦後、護憲派の野党は、過半数の獲得による政権交代よりも三分の一の議席獲得による改憲阻止を優先してきたために、憲法改正をめぐって野党が分断され、逆説的に自民党の一党優位体制を支え続けている。この境家先生のネオ五五年体制論に私も同感であります。立憲民主党には、野党第一党として、是非、この戦後の憲法問題の呪縛を解いてほしいと思います。
憲法改正をやるやると言ってやらない与党自民党と、一字一句憲法を変えてはならないとこだわる野党第一党との間の奇妙な共闘関係が続く限り、憲法改正も、また政権交代も実現しないのではないでしょうか。自民党、立憲民主党の双方に前向きな憲法改正論を求めるとともに、私たち国民民主党も幅広い合意形成に貢献し、ネオ五五年体制を打破していく決意を申し上げて、発言を終わりたいと思います。