小林鷹之の発言 (憲法審査会)
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○小林(鷹)委員 自由民主党の小林鷹之です。
先週の審査会では、森団長から、今回の海外調査で訪問したフランス、アイルランド、フィンランドの三か国とも、憲法上、緊急事態条項が規定されているという報告がありました。
本日は、自由討議ということで、これまで必ずしも深掘りした議論が行われていない緊急政令、緊急財政処分について、いついかなるときも国家の立法機能、財政機能を維持するという観点から、私自身の問題意識を述べさせていただきます。
イメージ先行でふわふわした議論とならないように、議論の土俵として、緊急政令、緊急財政処分とは何かを確認しておきます。
緊急政令とは、緊急時、あらかじめ国会が設定した枠の範囲内で、一時的、暫定的に内閣が立法権を行使できるようにし、事後的に国会が承認を与える制度です。また、緊急財政処分は、本来、国費の支出は、予算を始めとして国会の議決に基づくことが必要ですが、緊急時、あらかじめ国会が設定した枠の範囲内で、内閣に財政上の臨時の処分を行う権限を与え、事後的に国会が承認を与える制度です。
要するに、国会があらかじめ定める法律の枠組みの範囲内で、かつ事後的に承認を与えないと失効する限定的、暫定的な制度であることには留意が必要です。
もちろん、想定されるあらゆる事態に関し、あらかじめ法律を制定し、緊急時に講じることができる措置を整備しておくことは当然だと考えます。実際、我が国におきましても、国民保護法、災害対策基本法、感染症予防法など、それぞれの分野で緊急事態対応のための法律が整備されています。これらのうち、災害対策基本法、国民保護法や新型インフル特措法においては、法律上の緊急政令制度が規定され、緊急時に一時的、暫定的に内閣に立法権が与えられています。
しかし、この法律上の緊急政令制度は、国会の立法権を侵さないように、あらかじめ国会が設定した四つのメニュー、すなわち、一つ目は物資の配給、譲渡制限等、二つ目は物価等の統制、三つ目はモラトリアム、四つ目は海外支援の受入れというメニューに限定されたものであります。
緊急事態が発生し国会が機能不全に陥った場合に、この四つのメニュー以外に立法措置が必要になったとしたら、どうすればよいのでしょうか。内閣が超法規的な措置を行うというのであれば、それは、国会の事後的な承認という統制も働かない無秩序な世界であります。
この四つのメニューのうち、物資配給や譲渡制限、物価等の統制、モラトリアムの三つは、関東大震災や金融恐慌を始めとして、明治憲法下で実際に発出された緊急勅令を類型化したもので、これ以外に新たなメニューは想定できないと主張されることもありました。しかし、メニューの四番目である海外支援の受入れは、阪神・淡路大震災後の一九九五年改正によって災害対策基本法に追加されたものです。明治憲法制定から阪神・淡路大震災の発災までおよそ百年想定されなかった末に、初めて必要性が確認された緊急政令のメニューであります。
時代や社会の進展を踏まえて初めて必要性が発見されるメニューもあって、いざ緊急事態が発生したときに国会が機能不全で立法を行うことができないというのであれば、国民の生命と財産を守ることにはならないと考えます。国会があらかじめ法律を制定した枠組みの下で内閣に一時的、暫定的に立法権を与え、事後的に国会が統制する緊急政令制度を憲法に求めることは必須であると考えます。
財政支出に関して言えば、現行制度では、予算に掲げていない新たな費目の必要が生じたり金額に不足が生じたりしたときは、限られた予備費の中から支出するしかありません。今後、東日本大震災を凌駕するような自然災害、人類を脅かすほどのパンデミック、あるいは電力、通信、金融、運輸、医療等の基幹インフラへの大規模なサイバー攻撃、あるいは我が国を巻き込む大規模な紛争やテロなどが複合事態として生ずることも考えられます。国家の危機管理上は、いつ何どき生じるかもしれないこうした事態も想定しておかなければならないと私は考えます。
いついかなるときも国家機能を維持し、国民の生命財産を守り抜くためにも、緊急政令、緊急財政処分をめぐる議論も更に深めていくべきではないかということを申し上げまして、発言を終わります。