北神圭朗の発言 (憲法審査会)

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○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
 国民投票法は、古い法律で、今から十六年前の二〇〇七年五月に公布されています。十六年前といいますと、フェイスブックがこれまで学生に限定していたサービスを一般にも開放した時期です。また、ユーチューブがそのサービスを本格的に開始した時期でもあります。初代のiPhoneが発売されたのも、この年です。つまり、いわゆるテック企業の黎明期に当たります。以降、この分野で激しく情勢が変化していることは言うまでもありません。
 私がこれまで何度も訴えてきたSNS等を利用した偽情報の流布や選挙介入も、この後に盛んになっていくので、国民投票法には当然想定されていません。同様に、同法十四条に規定される国民投票広報協議会の事務にも、偽情報対策は明確には含まれていません。
 一方で、これまでも諸外国の事例を紹介していますが、今年に入ってからも、カナダのトルドー政権では、二〇一九年と二一年の総選挙における中国の選挙介入、具体的には、候補者十一人に対する資金提供や野党の香港系議員に対する威嚇について、独立した特別調査官を任命し、調査を行っています。なお、この議員への威嚇をめぐっては、在トロント中国総領事館の館員を国外追放としています。
 また、EU議会では、今月、中ロを念頭にした選挙介入を阻止するための政治広告に対する規制を大筋で合意しています。具体的には、選挙又は国民投票の三か月以内にEU域外の団体が政治広告に資金を出すことを禁止する内容が盛り込まれました。繰り返し違反したプラットフォーム企業には、年間売上高の最大六%の制裁金が科される罰則も設けられています。
 さらに、来年一月の台湾の総統選挙では、昨年から既に多くの偽情報が出回っているとの報道が出ています。台湾の国家安全局によれば、昨年七月以降、約千七百件にも上る偽情報が出回っているとのことです。台湾のある民間ファクトチェック団体は、登録された二千四百人ものボランティアを使って、こうした偽情報のファクトチェックに励んでいるようです。
 このように、諸外国では、外国の介入によって選挙や国民投票において国民の意思がゆがめられないよう、様々な対策が今なお講じられてきています。
 この点、去る六月に、東京大学先端科学技術研究センターが「カナダの偽情報対策にみる成果と課題 日本へのインプリケーション」と題する報告書を発行しています。著者の桑原響子研究員によれば、カナダやEUでは、偽情報に対して政府及び社会の両面での協力が必要とされていることを指摘しています。
 例えば、カナダでは、選挙妨害を阻止するための政府タスクフォースを設置し、政府機関が自ら偽情報の監視結果を公表する一方で、民間の偽情報対策への政府助成など、官民両面で対応している事例を示しています。
 また、同報告書では、ここから引用ですけれども、日本の偽情報に対する脅威認識の高まりや政府によるイニシアチブは、カナダのそれと比較すれば数年単位の遅れがあると言える、それは、日本が文化、経済、言語といった障壁の存在により、欧米諸国と比較して致命的かつ深刻な外国からの偽情報キャンペーンの脅威に直面しなかったためだと我が国の現状を分析しています。
 確かに、我が国は、これまでは致命的かつ深刻な外国からの偽情報の脅威に直面していません。しかし、何もわざわざ致命的かつ深刻な脅威に直面するのを御丁寧にお待ち申し上げている必要もありません。どうも我々はいつも、この分野に限らず、事が起きてから騒ぐのが得意であるように思います。現に、ALPS処理水の放水に際しては、中国発の偽情報が多く出回りました。今も人工知能の翻訳機能が飛躍的に進歩していることなどを踏まえると、もう少し危機感を持つべきだと思います。
 こうした視点から、国民投票法第十四条に規定される国民投票広報協議会の事務に偽情報対策を追加し、規程案等にも関連内容を盛り込む手当てをすべきだと考えます。
 国民投票広報協議会の事務局体制を充実させた上で、政府や民間団体と連携して、少なくともファクトチェックを行える仕組みを構築することが求められます。日本の民間ファクトチェック団体の数が少なく、規模も小さく、機能が弱いのみならず、欧州における制裁金等の規制もなく、プラットフォーム事業者との本格的な連携も機能しているとは言い難い。よって、国民投票広報協議会も自らファクトチェックを行うことで、氾濫する偽情報に対応する必要があると考えます。
 なお、アイルランドを参考にして、偽情報に対する監視や調査を行い、プラットフォーム事業者などに対し、削除通知やアクセス遮断を命じる制度を導入することも検討に値します。
 もちろん、一般国政選挙でも同様の対策が求められると思います。しかし、これがなされるのをじっと待つ必然性もないように思います。時代の要請にもはや沿っていない十六年前の法律等を差し迫った課題に応じて改正することに、何か本質的な問題があるのでしょうか。手続上の障害があるのでしょうか。むしろ、民主主義の根幹に関わるこの問題に危機感すらない政府に対して、先鞭をつけて警鐘を鳴らすくらいの気概で臨むべきではないかと申し上げて、私の意見といたします。
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発言情報

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発言者: 北神圭朗

speaker_id: 4662

日付: 2023-11-30

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会