道下大樹の発言 (憲法審査会)
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○道下委員 立憲民主党・無所属の道下大樹です。
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
私からは、憲法と地方自治について意見を述べたいと思います。
立憲民主党憲法調査会に地方自治分科会が設置され、私はその座長を拝命しております。我が党は、綱領において、地方自治について、「私たちは、多様な主体による自治を尊重し、地域の責任と創意工夫による自律を可能とする真の地方自治の確立をめざします。」と掲げています。地方自治分科会は、その目標と立憲主義に基づく論憲を基本的前提とし、憲法と地方自治との関係性や課題等について各界から意見を伺い、議員間討議を行い、中間報告をまとめました。その一部を御紹介いたします。
まず、日本国憲法の地方自治規定の意義についてです。
日本国憲法は、地方自治に関して独立した八章「地方自治」を設け、憲法上の根拠を与えています。これは、地方自治を憲法の統治機構の不可欠の要素として位置づけたものであり、地方制度に関する規定がなかった明治憲法と比べて高く評価すべきであり、戦後の地方自治の確立、発展に果たした役割は大きいと考えます。
一方で、憲法の地方自治規定は、四か条から構成され、条文数が少ないのみならず、法律への委任項目が多く、規律密度が低く、簡短概括型とされる日本国憲法の中でも特に規律密度が低いのが憲法八章の特色です。
地方自治の総則規定としての九十二条が「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。」という構造を取っていることは、地方自治制度全般について法律で具体化することを示しています。しかし、法律による具体化に対する歯止めは地方自治の本旨という抽象的な概念のみであり、地方自治の本旨に過度の負担がかかっていると言わざるを得ません。本来、国からの介入に対する防御的機能を担うべき九十二条が、逆に、法律に広範な委任を行うことによって国からの介入を許す根拠になっています。こうした規定構造こそが、地方自治に象徴される箸の上げ下ろしに至るまで国の介入を容認する基礎になっているとの指摘も多く、私たち国会議員も十分にそれを認識していると思います。
国の介入以上に地方自治を踏みにじる事例として、沖縄県民の総意を無視した辺野古基地建設強行と、辺野古沖の地盤改良工事をめぐり、国が県に代わって工事を承認する代執行に向けた訴訟があります。
二〇〇〇年の地方分権改革によって、職務執行命令訴訟制度は廃止されましたが、ほぼ同様の要件、手続の制度として、法定受託事務に関しては代執行訴訟制度が導入されました。地方分権とは相反する制度を政府が悪用することについて、沖縄のみならず、多くの批判が出ております。
地方自治の指導理念である地方自治の本旨の内容の具体化をどのように図るのか。憲法改正によるのか、それとも法律レベルで図るのか、この憲法審査会における新たな論点と考えます。
次に、地方自治を取り巻く現状から鑑みると、憲法制定時には想定されなかった諸問題が生じています。例えば、東京一極集中との言葉に象徴される都市部への人口集中と地方の過疎化の進展、幾度にもわたる分権改革の実施にもかかわらず依然として不十分な地方への権限、財源の移譲、全国どこでも均質的、同質的で個性が感じられない画一的な町づくりなど、枚挙にいとまがありません。
財源に関しては、二〇〇五年の三位一体の改革等の改革が行われてきました。しかし、現状は、国と地方の役割分担に応じた税の配分となっていないこと、各府省のひもつき補助金では事業内容に対する縛りが大きく、自治体の知恵と創意による効果的な財源の活用が難しいこと、現在の地方交付税制度では、必要な財政需要の捕捉、地方財政計画への適切な歳出の計上が必ずしも十分ではなく、しかも、地域間の財政力格差の是正も不十分なことなど、課題は多いです。地方自治の自主財源策として導入されたふるさと納税制度でありますが、様々な問題が指摘されており、抜本的な見直しが必要です。
人口、財政、自然、経済といった地域の多様性を尊重した自治体の自主的な取組を可能とし、真の豊かさを実感できる持続可能な分散型社会をつくるためには、自治財政権を確立しなければなりません。具体的には、一括交付金の復活、地方交付税の法定率の引上げ、予見可能性の向上、地方消費税の充実強化や地方交付税の財政調整機能の強化等による地域間の財政力格差の是正などが必要であります。
こうした課題については、私は、法律レベルで解決策を図ることが可能と考えますが、これについても憲法審査会で議論がされることを期待しております。
政府は、物価高対策として、所得税、住民税減税を実行しようとしていますが、住民税は地方税であり、地方行政に事務負担などが生じます。にもかかわらず、地方の意見を聞こうとしない政府の姿勢に、地方自治体からは懸念や反発の声が上がっています。法律に基づいた国と地方の協議の場があるのですから、逐次、地方から意見を伺い、施策に十分反映するべきです。
当分科会では、参議院の一票の格差についても議論いたしました。参議院での合区問題の議論を尊重していることを申し添えつつ、意見を述べたいと思います。
幾度の制度改正の結果、現状では合憲判断が下されているものの、その前提である合区制度には根強い批判があります。合区制度は、長年定着している都道府県の単位を超えて参議院議員を選出する仕組みであり、その存廃論議は地方制度の在り方と密接不可分であると言えます。
合区解消は必要であり、また、国政課題の大半が地方に関わるものである以上、地方の声を適切に国会に届けることも重要であります。これは、自治体の国政参加の側面も有する論点であり、具体的な制度設計を考える際には、両院の機能、権限分配に及ぶ広範な検討が不可欠であり、様々な方策を丁寧に検討する必要があります。
あわせて、今年二月から始まった衆議院の選挙制度をめぐる与野党協議会について意見を述べます。
七月には、衆議院議長の諮問機関として一票の格差の是正を検討する有識者調査会の座長を務められた元東京大学総長の佐々木毅氏が協議会に出席されました。議事録は公表されていませんが、報道によりますと、佐々木氏は、現在の選挙制度について、想定どおりに機能していると評価する一方、地方の人口が減少する中で、一票の格差を是正しながら制度の運用を続ければ、地方の選挙区の定数が減っていくことが見込まれると指摘し、地方の声を国政に反映させていくためには、議員定数を増やす選択肢も排除せず検討を進めるべきだという認識を示したと承知しています。
協議会は今月十八日に報告書をまとめることを決めたと伺っています。一票の格差問題や地方意見の国政への反映など、今後はその報告書も踏まえた衆参による憲法論議が必要になると考えます。
以上で私の討論を終わります。御清聴ありがとうございました。