千葉一裕の発言 (文部科学委員会)

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○千葉参考人 皆様、おはようございます。東京農工大学学長の千葉でございます。
 本日は、国立大学法人法の一部を改正する法律案の御審議に当たり、このような機会をいただき、誠にありがとうございます。田野瀬委員長を始め、衆議院文部科学委員会の委員の皆様に厚く御礼を申し上げたいと思います。
 私からは、まず、東京農工大学がどのような大学であるかにつきまして最初に御説明した後、意見を述べさせていただきたいと思います。
 本学は、来年、二〇二四年に創基百五十周年を迎えます。すなわち一八七四年、明治七年に、大学の二本の柱である農学及び工学分野がそれぞれ別の教育研究機関として、共に現在の新宿御苑の地に生まれました。その後、両機関は組織の改編や設置場所の変遷を経て、今から七十四年前に現在の東京都府中市と小金井市にキャンパスを置く東京農工大学となって一体化し、発展を続けています。
 開学当時より、農学系では日本の食料や森林などの自然資源の生産、供給という極めて重要な課題を担い、工学系はその時代における日本経済の屋台骨の一つであった養蚕、生糸、織物生産の基盤となる学問領域をつかさどる役割を果たしました。そして、その後の織機の製造、利活用に端を発する高度な技術は、現在の日本の自動車、繊維、化学産業等としての発展にもつながったことは広く知られているところです。
 このような沿革の中、本学は現在、農学、工学分野が一体となり、さらには国際社会との強固な連携の中で、日本の産業力強化と、それを支え次世代を担う人材の育成に向け、常に先を見越した新たな取組を意欲的に進める国立大学の一つとなっています。
 私自身は、二〇二〇年に第十四代の東京農工大学の学長に就任しております。現在、学長としての役割に加え、文部科学省科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会の主査を拝命し、日本全体の大学の研究力の強化に向け、大学、研究機関等にとどまらず、企業経営者等を含む多くの有識者の皆様の協力を得ながら検討を進めているところです。
 さて、国立大学は法人化後、既に二十年を経過しようとしておりますが、この間、国立大学はその自律化に向け、更なる努力を重ねています。すなわち、学問の自由を重んじ、闊達な意見交換や柔軟な発想に基づく研究活動に邁進する中で、優れた学術成果を上げ、同時に、次世代を担い社会を牽引する人材を輩出するという大学本来の役割を、自らの意志と強い信念に基づき実行することに国立大学は全力で取り組んでいるところです。
 東京農工大学も、国立大学の一つとしてその使命を真摯に受け止め、教育、研究、社会とのつながりを基盤に鋭意取り組んでいます。
 第一に、教育に関する活動においては、学生の未来価値の拡張というビジョンを掲げ、知識社会の牽引者となる人材を輩出し、学生が生涯誇りに思える大学として発展し続けることを目指しています。大学が育てる人材は、人を引きつけ、一歩先の世界を見据え、共に目指す力を発揮できるよう、未来志向の教育研究基盤の強化に重点を置いています。
 第二に、研究力強化に向けて、世界を牽引する新分野、新概念を創生し、卓越した知の創造の推進に取り組んでいます。研究活動を通じ、世界とのネットワークを広げつつ、未来を担う人材の個性の尊重と才能の発見など、研究力と教育の質向上は不可分の関係にあることも強く認識しています。
 そして第三に、社会とのつながりを強く意識しています。大学は、社会のこれからのあるべき姿を提案、先導し、これを地域から全国、さらには世界に波及させるための中心的な役割を担っており、社会的インパクトにつながる科学的発見や技術革新への挑戦を連続的、発展的に推進しなければなりません。それは、単に学術的あるいは経済的な発展だけではなく、地球の持続性や心身共に豊かな社会の実現、生きがいの創出そのものにつながる、大変重要な目標にもつながるものです。
 このような大目標を実現するために、今、大学はガバナンスの強化と大学経営の自律化が極めて重要であると考えます。
 大学の自律化と経営基盤強化に関することですが、大学への期待と役割はますます大きくなる中、更に大学が未来を担う公共財としての位置づけを踏まえると、常に大学は、自ら何をなすべきかについて責任を持って考え、実行しなければなりません。私たちは、それこそが大学の自律的な姿勢そのものであると確信しています。当然のことながら、大学運営の観点からも、より強固な基盤の上に、教育研究環境の整備、質的向上を発展的に図る必要があります。
 すなわち、東京農工大学では、ガバナンス改革を全力で進めることの重要性を認識し、鋭意取り組んでいるところです。私たちが考えるガバナンスとは、社会に耳を傾け、大学全体で共有した決定事項や合意内容を速やかに組織全体の機動力に転換することです。自分の考えを正しく正確に伝える、教職員との丁寧な対話を重ねることによって、全体の理解や協力を引き出すなどの努力がそこに必要であることは言うまでもありません。
 当然のことながら、法人の長である学長はこの先頭に立つわけですが、同時に、ビジョンや目標を示して組織を牽引すること、すなわち、大学が教育研究や社会との関係性からあるべき姿を見据え、構想する力、提案する力が重要です。
 また、大学執行部内での緊密な連携によって、法令遵守、研究倫理、研究成果の発信や情報、安全管理など、社会から信頼を得る基盤を強化するとともに、大学運営参画意識を広く組織全体に徹底することも不可欠です。
 これらの活動を支える極めて重要な要素の一つが、財政基盤構築に対する自律的な取組です。大学が独自のビジョンを示し、それを教職員ほか社会のステークホルダーと共有しながらしっかりそこに向かうためには、自らの構想に基づく中長期的な財政戦略が明確でなければなりません。
 学問の自由を確固たるものとする中、研究力や経営力の基盤となる人材の確保は教育の質保証や大学ミッション達成のために必須ですが、これも財政的な見通しがなければ、挑戦的、発展的な取組が困難となります。そのために、知を新たな価値として具現化する取組は重要ですが、目の前に見える短期的なもの、あるいは目的が限定的なものだけでは、大学の中長期的な経営基盤強化という観点では必ずしも十分ではないと考えます。
 すなわち、大学の財政基盤強化に向け、私たちは、大学の研究力を駆動力として、総合知による国際社会的課題の解決に邁進する大学群を形成し、ここで生まれる知を世界の産業、社会実装へと展開することによる外部資金の大幅な拡大を、大学の教育研究基盤の持続発展的な強化につなげたいと考えています。これは、これからの国際社会の求める産業や人材の次なる姿を見極め、日本あるいは海外の大学が連携してその中核となる事業開発や事業運営にも直接関与し、ひいては日本全体の国際的求心力を更に飛躍的に高めることにつながるものと考えます。
 この先進的、波及的取組を着実に、そして迅速に進めるためには、時代の変化を先取りした新たな制度の改革は是非ともお願いしたいことだと思います。
 例えば、東京農工大学では、今年度から、一部の規制緩和をしていただいたことを受け、認定ファンドを組成することが可能となり、民間のみからの出資によるファンドを独自に発足することができました。また、大学からの直接出資によるコンサルティング企業の創設もできるようになったことを受け、私たちは、これまでにはない全く新しいスキームの国際事業開発体制を提案し、国内外の企業、海外の大学や政府関係者に理解を求め、具体化できる運びとなりました。
 長期借入金や債券発行できる費用の範囲拡大も大変ありがたいことです。同時に、社会から多様な形で財政的な支援をお受けする道が開かれることは、大学としても今まで以上に強い覚悟と責任感を持たなければならないことを認識すべきであると考えます。
 すなわち、様々な形で財政的にも御支援いただく関係者との強い連帯と目標を共有し、オープンな意思決定のプロセスによる信頼と求心力の獲得は必須です。
 そして、この新たな体制をより実効性の高いものにするためには、大学が目先の利益だけを考えることや、事なかれ主義、周囲に流されるような判断基準を避ける勇気も必要です。時代の流れ、社会の動きを感知しながら、大胆な発想と行動を許容する、法人の長としての覚悟も本当に重要なことであると改めて感じている次第です。
 今般、このような背景の中、更なる緩和措置を御検討いただけることは、まさに社会のニーズと大学の自律的な発展を促す上で非常に有用なことであると思います。
 大学は、国、国民からの期待にしっかり応えることを基軸に、更に活力を増し、国際社会の中でより大きな役割を長期的にしっかり果たすため、大学が経営力強化、財源確保の観点でも最大限努力しなければならないと考えます。
 このような大きな使命とともに困難な課題が山積する中、学長としての思いは、最終的には、やると決めたらやり抜く覚悟、ぶれない精神に基づく決断によって結果責任を負わなければならないということです。多くの選択肢の中から、あるいは全く新しい考えを生み出し、その実効性を検証するためには、これまで述べた大学経営の困難、課題点を共有できるネットワークの構築や、客観的な観点から忌憚のない意見交換ができる、より柔軟で機動的な体制整備、人間関係の構築も重要であると思います。
 私自身も、決して自分の経験や価値基準だけで判断することのないよう、日頃から教職員や学生、大学執行部、経営協議会、学長選考・監察会議、監事、あるいは外部有識者との意見交換を重視して大学経営に注力しています。そして、大学が社会の変化に対応しながら、よりよい方向に発展できるかどうかは、最終的には、その法人の長である学長の信念と責任ある判断、行動こそが重要であることを認識しています。社会の変化に柔軟に対応した大学経営をより適正、公正に進めるための体制整備は有効なものとなりますが、それにも増して何よりも、その有効な運用には、責任を負う者のビジョンや信念に基づくことが必須です。
 よりよい大学づくりに向け、様々なお立場や分野等で御協力いただいている関係の皆様にはここに改めて感謝申し上げるとともに、一大学の学長としては、大学人として、社会の期待に応えられる大学であり続けたいとの思いをますます強めているところです。
 以上、まとめますと、国立大学経営力強化に向け、法人の長である学長等がより広い観点から大学の方向性を明確化し、さらには、自律性を高めた経営裁量の拡大により財政基盤強化を図ることを目指した今回の制度改革は、時宜を得たものであると考えます。
 以上、本案について、私の考えるところを申し述べさせていただきました。
 本日は、大変貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 千葉一裕

speaker_id: 2727

日付: 2023-11-14

院: 衆議院

会議名: 文部科学委員会