山崎光悦の発言 (文部科学委員会)
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○山崎参考人 皆さん、おはようございます。福島国際研究教育機構、F―REI理事長の山崎でございます。
本日は、国立大学法人法の一部を改正する法律案の御審議に当たり意見陳述の機会を頂戴し、誠にありがとうございます。田野瀬委員長を始め、委員会の皆様方に心より感謝申し上げます。
さて、まず、私のバックグラウンドを少し御紹介をさせていただき、意見陳述の糧としたいというふうに思います。
平成二十六年四月から昨年三月まで私が八年間学長を務めた、その大学改革の概要について最初に少し述べさせていただきます。
金沢大学は、各地域に設置されている国立大学と同様に、戦前のナンバースクール、第四高等学校を中核として、当時の医学専門学校、高等師範学校、高等工業学校などが母体となって昭和四十二年に設置をされました。現在では、収容定員約一万余名の中規模総合大学でございます。
国立大学法人化後、平成二十年には、社会のニーズを即応的に取り入れ、より戦略的に教育研究活動を展開するため、それまでの八学部二十五学科・課程から、文系、理系、そして生命系の三学域十六学類から成る学域・学類制の教育システムへと、また同時に、三研究域十四学系から成る教員組織へと、教教分離と言われる制度改革を行いました。
平成二十六年の学長就任後、グローバル人材育成のための教育改革と研究力強化、そしてそれらを支える徹底した国際化を目標に掲げて、その具体の改革プランの概要をYAMAZAKIプランとして公表をし、教職員とそのプランの共有に心を砕きながら日々の大学運営に当たっておりました。
教育改革では、共通教育改革、グローバル人材育成、そして教育組織改革を推進してまいりました。
特に教育組織改革では、文理融合型教育による総合知を獲得させるため、令和二年四月から四つ目の学域、融合学域をスタートをさせて、知識集約型社会を担う人材育成を開始いたしました。具体的には、アントレプレナーシップ教育をその中核に据え、社会の変革を先導するイノベーター養成を目指す先導学類、数理、データサイエンス、AIを観光ビジネスに生かす観光デザイン学類を設置をし、数理、データサイエンスを基盤としながらも社会科学も学ぶスマート創成科学類を設置をし、百名の入学定員増も実現しながら、文理融合教育を加速させております。
大学院教育にも力を注ぎました。
こうした教育システム改革をスピード感を持って実施するには、学生定員の移行や担当教員の配置換え、居住スペースの確保など、現場の教職員との納得感のある合意形成、ガバナンスを利かせた大学運営が必須でございます。
一方、研究力強化では、先鋭分野の強化と異分野融合研究を推進をし、ナノ生命科学分野において、世界トップレベル研究拠点プログラム、WPIに地方大学では初めての採択を受け、ここ六年半で八十名を超える研究者集団となるナノ生命科学研究所を拠点化いたしました。また、その後も、四研究所、三研究センターを新設して、研究グループ形成を戦略的に推進をし、金沢大学の強い研究分野を更に強くして研究所や研究センター化を進めることで、中規模大学ながら、特定の研究分野を次々と重点化、そして着実に支援していく、世界レベルの研究拠点化を目指すことができております。
こうした改革と同時並行で、研究に専念できるリサーチプロフェッサー制度の導入や、若手教員の積極的な登用、そして教員評価の処遇への反映など、教職員の待遇改善にも力を注ぎました。
これらの改革を遅滞なくスピード感を持って実施できた背景には、金沢大学が推進してきた教育組織、研究組織の大くくり化による柔軟な組織改編と、学長のリーダーシップの下での戦略的に大学を運営できるガバナンス体制構築が功を奏したと理解をしております。
さて、国立大学法人の成長と歴史、変遷を概観してみますと、平成十六年に国立大学法人に移行したことにより、最初は渡し切りの運営費交付金の独立した運営が始まって、その中期目標、中期計画期間の第一期では、目的積立金が、ちゃんと本当に次の年に送り込んで、各法人は、またもらえるのかどうか、使えるのかどうかということに一喜一憂したということを記憶しております。
また、第二期中目、中計の期間に入って、運営費交付金の毎年一律の予算カットとともに、競争的資金による事実上の補填が常態化をし、エネルギー費の高騰とも重なって、多くの国立大学では教育研究機能の低下を来し、それがボディーブローのように利いてきて日本の研究開発力低下を招いたと理解しております。
こうして、全大学の改革を促進するため、国立大学法人法の改正によって学長権限の強化を図ってきた結果、残念ながら、複数の大学で、学長の独断専行に起因し、大学運営が機能不全の状態に陥ったことは皆さんも御承知のとおりでございます。それがまた発端となって、前回の、監事やそれから学長選考・監察会議に学長への一定の牽制機能を持たせる法人法の改正が行われてまいりました。
同時並行的に、多様なステークホルダーから信頼されるガバナンスを構築するための、国立大学法人のガバナンスコード策定も行われました。私自身、当時、国立大学協会副会長のお立場にあって、このガバナンスコード策定に自ら関わってまいりました。そこでの大きな論点の一つは、学長選挙を実質的に廃止する議論でございました。
直近の動きは、皆さんも御承知のとおり、十兆円ファンドの運用益を原資に国際卓越研究大学数大学を選定、支援して、二十五年間の間に複数大学を世界ランキングトップテンあるいはトップファイブに食い込ませようという施策でございます。私自身も、その選定や、選定後の成長、改革ぶりを見守る十名のアドバイザリーボードメンバーの一人を務めております。
もう一つは、この施策と両輪を成すと言われる、地域中核、特色ある研究大学支援総合パッケージによって、おおよそ二十五大学を選定、支援して、十年間伴走支援するという取組でございます。こちらの方は、公表されておりますとおり、事業推進委員会委員長も務めさせていただいております。
これらの事業に関わる機会を通して、教育そして基礎研究の重要性を改めて認識させていただくとともに、加えて、それらの成果を生かした産業界との連携や社会貢献が大学活動の充実に非常に重要な意味を持つということを改めて実感をしているところでございます。例えば、大学がステークホルダーとともに産学共同研究やスタートアップ創出に取り組むことによって大学を発展させ、そしてまた社会課題を解決していくことは、大学の活動やリソースの充実に直結するといった取組を継続的に発展させ、学外のパートナーとの信頼関係を深め、継続的な関係を築いていくことの重要性をまた改めて実感して認識しているところでございます。
こうした経験を踏まえまして、今回の法改正、特に私は運営方針会議設置に関する意見を述べさせていただきます。
国際卓越研究大学の制度設計に関する検討の中で、合議体が必要という議論が発端となって今回設置が法制化される運営方針会議というのは、多様な知見、経験を有する者が大学運営に参画して意思決定する仕組みでもあり、学長のガバナンスあるいはリーダーシップを支援する方策として有効に機能するものと期待をいたします。学長一人だと実現しにくい大胆な改革を後押しするという意味で、学長のリーダーシップを支え、国立大学法人の発展を加速するというために必要であると考えます。
大学統治の現場では、大胆な組織改編などを伴う大学改革は、たとえ大学の発展を目指す内容であっても、既得権を守ろうとする部局の責任者やその構成員の反対を伴うのが通常でございます。逆に、部局や構成員がこぞって賛同する施策は、もはや改革施策ではなく、周回遅れの施策である可能性もございます。
大胆な改革案であればあるほど、学長や役員は、現場の構成員やいろいろなステークホルダーとの意見交換などを通して、構成員の改革への理解促進に努めねばなりません。役員会決定を経て強権的に改革を先導することは制度上不可能ではありませんが、現場がついてこなければ、その改革は効果を発揮せずに徒労に終わってしまうことでありましょう。
大切な改革であればあるほど、わくわくする目標を掲げ、構成員の理解を得て、大きなエネルギーを生かし、その改革を推進したいものであります。運営方針会議で大方針を示し、その意義、効果を構成員と共有することで初めて、学長の真の統率力、リーダーシップが発揮できて、ガバナンスの利いた大学運営が可能になるというふうに考えます。
最後に一つだけ、今回の改正で懸念事項を申し上げます。
運営方針会議の設置が義務づけられる特定国立大学法人は、国際卓越研究大学だけに限定するのではなく、ある一定規模以上の総合大学を対象とするとございますが、その線引きが国立大学群を将来にわたって二分する可能性があるなということを心配しております。
一方で、必要に応じて運営方針会議の設置を文部科学大臣に申請することも併せて可能とする、それを準特定国立大学法人と呼称するとございます。この名称は、かつての一期校、二期校の区分を想起させ、国立大学群を更に区分する可能性も否定できません。
線引きをどこにするかを政策上定めるとしながら、それでいて、自ら申請も可能とするならば、国立大学群を将来にわたって分断するリスクを抑制するために、運営方針会議を設置する大学群全てを一つの名称、特定国立大学法人と呼称するということを御提案申し上げて、私からの意見陳述とさせていただきます。
御清聴ありがとうございます。(拍手)