岸田文雄の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(岸田文雄君) 馬場伸幸議員の御質問にお答えいたします。
 補正予算による財政支出の正当性、成長の果実の還元についてお尋ねがありました。
 我が国の経済状況は、三十年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えているとはいえ、需要面では、賃金上昇が物価に追いついておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねないこと、また、供給面では、潜在成長率が、三十年来のコストカット型経済の下での低成長の結果、零%台半ばの低い水準にとどまっていること、これらに留意する必要があります。
 このような認識の下、今回の総合経済対策は、デフレ脱却のための供給力の強化と、物価高によりデフレに後戻りしないための一時的な措置としての国民への還元、これを車の両輪として取りまとめます。
 規模については、こうした政策の積み上げの結果であり、国民生活に高い効果のある具体的な政策を積み上げてまいります。
 そして、国民への還元については、今後早急に具体化を図ってまいりますが、政府としては、デフレ脱却を確実なものとする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和してまいりたいと考えております。
 経済対策、補正予算の緊要性についてのお尋ねがありました。
 賃金上昇が物価高に追いついていない現状を踏まえると、まずは物価高対策に万全を期すとともに、経済の熱量の源である賃上げの流れが継続、拡大するよう、切れ目ない対策を早急に講じていくことが必要です。
 また、GDPギャップが解消されつつある中、日本経済の供給力を強化し、中期的なインフレ圧力に強い経済体質をつくる必要があり、将来の成長に資する分野を厳選して対応してまいります。
 さらに、様々な社会課題の深刻化が懸念される中、デジタル技術を活用した社会変革の取組や、自然災害の激甚化、頻発化等に対して国民の安全、安心を確保する対策も速やかに講じていく必要があります。
 国民にとって真に必要で効果の高い具体的な政策を積み上げる中で、歳出構造の平時化を図ってまいりたいと考えます。
 低所得者層への給付と現役世代や子育て世帯の恩恵についてお尋ねがありました。
 物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々の不安に配慮し、寄り添った対応を図ることは極めて重要です。多くの自治体で、この夏以降、低所得者世帯に対して、一世帯当たり三万円を目安に支援を開始してきました。この物価高対策のための重点支援地方交付金の枠組みを追加的に拡大することとし、経済対策に盛り込みます。
 現役世代に対しては、賃上げ税制の強化など、構造的で持続的な賃上げが行われるための取組を進めるほか、子育て世帯に対しては、本年六月に策定したこども未来戦略方針に基づき、前例のない規模で政策を強化し、経済的支援の充実を図ってまいります。
 その上で、賃金上昇が物価高に追いついていない現状を踏まえ、政府として、今後、国民への還元の更なる具体化を早急に図ってまいりますが、税収の増収分の一部を還元すると申し上げたからには、現役世代や子育て世帯を含む納税者に分かりやすく還元することも検討してまいります。
 社会保険料の減免についてお尋ねがありました。
 年金、医療、介護など給付を行う社会保険制度については、現行制度においても、所得に応じて保険料負担を軽減する仕組みを設けております。社会保険制度の仕組みは、このように、低所得者の負担に配慮しつつ、相互扶助の考え方を基盤とし、必要な保険料を御負担いただくことを基本とするものです。
 御提案のように、可処分所得向上のため、幅広い者を対象に保険料の減免を行うことは、給付と負担の対応の関係をゆがめるなど、それぞれの社会保険制度に与える影響が大きく、保険者の実務上の負担など課題も多いことから、慎重な検討が必要であると考えております。
 ただ、御提案とは手法は異なるものの、政府として、デフレ脱却を確実なものとする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接に下支えし、物価高による国民の負担を緩和する、こうした取組は進めていきたいと考えております。
 消費税率の引下げについてお尋ねがありました。
 消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません。
 また、軽減税率制度については、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として導入され、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税負担を軽減することにより消費税の逆進性を緩和する効果があり、これを廃止することは考えておりません。
 エネルギー価格高騰対策の在り方についてお尋ねがありました。
 御指摘の激変緩和事業については、エネルギーコストに苦しむ国民の負担を抑制すべく、石油元売事業者や電気、都市ガスの小売事業者等を通じて、最終需要家である家庭等へ支援を実施しています。
 補助の効果が適切に価格に反映されるよう、ガソリンについては、元売が卸価格を引き下げたことを確認した上で事後精算とするほか、ガソリンスタンドに対して全数価格調査を行うなどの工夫をしており、電気と都市ガスについても、請求書等へ値引き表示をして需要家が直接確認できるようにするなど、透明性のある仕組みとしております。
 また、中長期的には、エネルギーコストの上昇に強い経済構造へ転換を進めるべく、徹底した省エネに加え、再エネ、原子力など、エネルギー自給率の向上につながる脱炭素電源の活用を進めていきます。
 なお、揮発油税等については、平成二十一年に道路特定財源は廃止されましたが、地球温暖化対策の観点や厳しい財政事情を踏まえ、それまでの税率が維持され、当分の間税率とされたものと承知をしています。こういった状況は現在も変わりはなく、特に気候変動が社会課題となる中、その廃止については慎重であるべきだと考えております。
 年収の壁についてお尋ねがありました。
 年収の壁については、労働者が壁を意識せず働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大に取り組んできたところです。
 今般、若い世代の所得向上や人手不足の解消の観点から、当面の対策として、年収の壁・支援強化パッケージを取りまとめたところであり、まずは本パッケージを着実に実行してまいります。
 その上で、第三号被保険者制度については、年収の壁に関する制度の見直しと併せて将来の検討課題の一つとして考えており、社会保障審議会年金部会において、関係者の意見を伺いながら丁寧に議論を進めてまいります。
 労働市場の流動化についてお尋ねがありました。
 日本的な雇用慣行については、その優れた面も大切にしながら、労使で納得いく対話を行った上で、時代の変化を踏まえた見直しを進めていくことが重要であると考えております。
 政府としては、成長と分配が持続的に回っていく、持続的賃上げが行われる経済を目指し、三位一体の労働市場改革などの生産性を引き上げる構造的な改革を進めてまいります。
 なお、解雇ルールについては、金銭を払えば自由に解雇できるという制度を導入することは考えておりません。
 ライドシェアの導入を含めた規制改革の必要性についてお尋ねがありました。
 コストカット型経済からの完全脱却に向け、供給力の強化を図り、生産性を引き上げていくためには、言うまでもなく、規制、制度の徹底した改革が必要です。
 デジタル行財政改革を強力に進める中で、御指摘のライドシェアの課題を含め、規制、制度の徹底した改革にスピード感を持って取り組んでまいります。
 地方創生臨時交付金による給食費無償化や高校授業料の無償化についてお尋ねがありました。
 学校給食費については、現下の物価高騰に対し、政府において重点支援地方交付金の活用を促し、ほとんどの自治体において値上げが抑制され、保護者負担の軽減が進んでいると承知をしています。今般策定する経済対策において、交付金の追加及び更なる活用を進めてまいります。
 また、学校給食費の無償化については、本年六月に決定したこども未来戦略方針では一年以内に全国ベースの実態調査を公表することとしております。その上で、小中学校の給食実施状況の違いや法制面等も含めた課題の整理を行ってまいります。
 そして、高校授業料については、限られた財源を有効活用する観点から、これまでに所得制限を設けることで捻出した財源により低所得世帯への支援を拡充するなど、より教育の機会均等に資する制度としています。少子化対策や教育の機会均等の観点から、引き続き、教育費の負担軽減に向けて、取組は進めてまいります。
 健康保険証の廃止方針についてお尋ねがありました。
 二〇二四年秋に健康保険証を廃止することについては、さきの通常国会に番号法等の一部を改正する法律案として提出をし、御審議の上、可決いただき、成立したものであります。
 政府としては、国民の皆様の不安払拭のための措置を着実に進めるとともに、マイナ保険証のメリットを実感いただけるよう、利用促進に向けた取組を積極的に行ってまいります。
 その上で、現行の健康保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提であるとの方針にのっとり、ひもづけの総点検とその後の修正作業の状況も見極めた上で、更なる期間が必要と判断される場合には、必要な対応を行います。
 医療DXの取組についてお尋ねがありました。
 医療DXは、我が国の医療の将来を大きく切り開いていくものであり、本年六月に、私を本部長とする医療DX推進本部において工程表を取りまとめ、政府主導により、取組を加速させているところです。
 具体的には、全国医療情報プラットフォームの構築等を通じ、医療だけでなく、保健や介護などの関連する分野の情報も共有可能とするよう取り組んでいます。こうした取組を進める中で、必要な規制改革にも取り組んでまいります。
 国民一人一人が安心して健康で豊かな生活を送ることができるよう、政府を挙げて医療DXを推進してまいります。
 経済対策における施策の緊要性と予備費についてお尋ねがありました。
 経済対策の第五の柱に掲げる、防災・減災、国土強靱化の推進、外交、安全保障環境の変化への対応、子供、若者の性被害防止、花粉症対策などの国民の安全、安心の確保、これらはいずれも喫緊の課題であり、経済対策の取りまとめ後、速やかに必要な経費を計上し、補正予算を編成したいと考えています。
 また、コロナ関係予備費の執行に関する会計検査院からの個別の指摘については、政府全体で重く受け止め、引き続き、各事業の所管省庁において適切な情報提供を行っていくことが重要であると考えています。
 一方で、予測困難な事態に対する万全の備えとして、一定の規模の予備費を計上し、臨機応変に、かつ時期を逸することなく対応を講じてきたこと、これは、国民や事業者を守るために必要な対応であったと考えています。
 その上で、現行のコロナ、物価予備費については、足下の物価に賃金上昇が追いつかない中で、賃上げ促進の環境整備に迅速かつ機動的に対応できるものへ見直すことが必要であると考えています。
 調査研究広報滞在費の扱いや国会議員の海外視察に係る情報公開についてお尋ねがありました。
 調査研究広報滞在費の扱いについては、議員活動の在り方に関わる重要な問題であり、国民の皆様の御理解を得られるよう、全議員共通のルールの策定に向けて、各党会派における真摯な議論を通じて合意を得ていくことが重要であると考えています。
 また、国会議員の海外視察が適切に行われるべきであるということ、これは言うまでもないことであります。そのためにどうあるべきかについては、自民党においても、今後検討してまいります。
 選挙制度の見直しについてお尋ねがありました。
 議員定数の削減については、平成二十五年に衆議院の定数五削減を実現し、その後、平成二十八年には衆議院の定数十削減が実現したところであり、その取組は続けられてきたところであります。
 その上で、議員定数の在り方については、民主主義の根幹に関わる重要な問題であり、国民の政治に対する信頼を維持していくためにはどうあるべきか、こうした観点から議論を行っていくべきだと考えております。
 国連安保理の改革についてお尋ねがありました。
 ロシアのウクライナ侵略等によって傷ついた国連への信頼を回復するため、安保理改革を含む国連の機能強化がますます重要になってきています。
 本年の国連総会一般討論演説でも、私から、安保理改革に向けて、二〇二四年の未来サミットや二〇二五年の国連創設八十周年を見据え、具体的な行動に移っていくべきだということを強調いたしました。
 特に重要なのは、安保理の構成が現在の国際社会の現実を反映するよう、常任及び非常任双方の議席を拡大するということです。この考えは、日本、ドイツ、インド、ブラジル、いわゆるG4、あるいは米英仏、あるいはアフリカ等を含む多数の国が支持をしているところです。
 このような情勢の下、御指摘の準常任理事国という案があるということは承知をしておりますが、現時点では、我が国としてそうした案を検討しているということはありません。
 また、ゼレンスキー・ウクライナ大統領が、国連等の場において、安保理改革の必要性を強調するとともに、日本の常任理事国入りを支持する趣旨の発言をしたことを歓迎いたします。
 各国の利害も複雑に絡み合う安保理改革は決して簡単ではありませんが、引き続き、G4、米英仏、アフリカを含む多くの国々と連携しつつ、粘り強く取り組んでまいります。
 サイバー安全保障及びセキュリティークリアランスについてお尋ねがありました。
 我が国のサイバー対応能力を向上させることは、現在の安全保障環境を鑑みると喫緊の課題であり、国家安全保障戦略を踏まえ、様々な角度から政府全体で検討を進めているところです。可能な限り早期に法案をお示しできるよう、引き続き取り組んでまいります。
 また、セキュリティークリアランスは、経済安全保障分野の情報保全強化の観点から非常に重要です。本年二月には有識者会議を設置し、制度設計に必要な議論をしていただいており、同会議での議論を踏まえ、次期通常国会における法案の提出に向けて準備を進めてまいります。
 自衛隊員の処遇改善及び防衛出動手当についてお尋ねがありました。
 防衛力の中核は自衛隊員であり、防衛力の抜本的強化のためには、全ての隊員が高い士気と誇りを持ち、能力を発揮できる環境の整備が必要不可欠です。こういった観点から、三文書にも給与を始めとする隊員の処遇の向上を盛り込んでおり、これを着実に実現してまいります。
 そして、防衛出動手当は、防衛出動時の戦闘などの著しい危険性や困難性等を評価して支給する手当です。よって、実際に有事が生起した時点における諸情勢を総合的に勘案し、適切な支給額を決定するものであると考えています。
 今後とも、第一線で防衛の任務に精励する自衛隊員に対し、ふさわしい処遇の実現に努めてまいります。
 憲法改正についてお尋ねがありました。
 憲法改正は、先送りのできない重要な課題であり、日本維新の会が、国民民主党、有志の会と連携して具体的な改憲案を示し、建設的な議論を呼びかけておられることに、まず敬意を表したいと思います。
 内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての議論の進め方等について直接申し上げることは控えなければならないと考えておりますが、憲法改正は、最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、国会の発議に向けた手続を進めるためにも、国会においてこれまで以上に積極的な議論が行われることを心から期待いたします。
 また、自民党総裁としてあえて申し上げれば、総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いにいささかの変わりもありません。党内の議論を加速させるなど、憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意であります。
 安定的な皇位継承の確保についてお尋ねがありました。
 所信表明演説で申し上げたとおり、安定的な皇位継承を確保するための諸課題等、とりわけ、皇族数の減少への対応については、国の基本に関わる重要な課題であると考えており、政府としては、皇族数確保のための具体的な方策等を取りまとめ、国会に報告をいたしました。
 内閣総理大臣の立場からは、国会における具体的な議論の進め方について直接申し上げることは差し控えますが、立法府の総意が早期に取りまとめられるよう、衆参両院議長の下で、国会における積極的な議論が行われることを期待いたします。
 また、自民党総裁としてもあえて申し上げれば、自民党においても、国会での議論に資するよう、責任ある政権与党として活発な議論を率先して行っていく決意であります。(拍手)
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発言情報

speech_id: 121205254X00420231025_005

発言者: 岸田文雄

speaker_id: 6324

日付: 2023-10-25

院: 衆議院

会議名: 本会議