岸田文雄の発言 (本会議)
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○内閣総理大臣(岸田文雄君) 玉木雄一郎議員の御質問にお答えいたします。
まず、賃上げについてお尋ねがありました。
賃上げは、言うまでもなく岸田政権の最重要課題であり、成長と分配の好循環が回っていく、物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げが行われる経済を目指してまいります。
今年の春闘で見られた賃上げの流れを来年の賃上げでも持続させていくことが重要であると考えています。あらゆる政策手段を集中的に講じていきたいと考えています。賃上げ税制の強化などの措置を講ずるとともに、三位一体の労働市場改革など、生産性を引き上げる構造的な改革を進めてまいります。
岸田政権として、持続的で構造的な賃上げの実現に向けて、全力で取り組んでまいります。
価格転嫁における優越的地位の濫用についてお尋ねがありました。
賃上げの原資を確保するためには、業界大手を始め、サプライチェーン全体で適正な価格転嫁を定着させていくことが重要です。
そのため、公正取引委員会において、昨年末、価格転嫁における優越的地位の濫用に関する緊急調査を行い、多数の取引先に対し協議することなく価格を据え置いていた業界大手を含む十三社の企業名を公表いたしました。
本年も、昨年より幅広い業種を対象に、業界大手を含む十一万社を超える企業への調査を実施中であり、年内をめどに結果を取りまとめることを予定しております。
加えて、下請Gメンによるヒアリングの情報も活用しながら、中小企業等が労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコスト上昇分を適切に転嫁できるよう取り組んでまいります。
税収に関する基本認識についてお尋ねがありました。
税収は、予算編成時点で経済状況や経済見通しなどを踏まえて見積もられ、その後の状況の変化により、決算までの間で変動するものと認識をしております。
令和五年度の税収が令和四年度決算の税収より低い水準となっているという御指摘、これは事実であります。これは、令和五年度税収は令和四年度決算が判明する前の昨年末の予算編成時点で見積もったものである一方、その後判明した令和四年度決算において予想以上に税収が伸びていたものであり、これは意図的に税収を低く見積もっているという御指摘は当たりません。
税収増の還元についてお尋ねがありました。
政府として、今後、国民への還元の具体化を早急に図ってまいりますが、税収の増収分の一部を還元すると申し上げたからには、分かりやすく納税者に還元することを検討してまいります。
所得税のインフレ調整をすべきという御指摘がありましたが、我が国経済は、三十年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えているとはいえ、現時点では、賃金上昇が物価高に追いついておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねない、こうした状況にあると認識をしております。
ですから、今、税制のインフレ調整を考える段階ではなく、むしろデフレ脱却を確実なものとする一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和することこそ必要であると考えております。
消費税減税についてお尋ねがありました。
消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません。
また、軽減税率制度については、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として導入され、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税負担を軽減することにより消費税の逆進性を緩和する効果があり、これを廃止して単一税率にすることは考えておりません。
ガソリン税の在り方についてお尋ねがありました。
まず、エネルギー価格高騰から国民生活やなりわいを守らなければならない、こうした思いについては共有をいたします。トリガー条項の凍結解除については、灯油や重油などが支援の対象外となるほか、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱が生じる可能性がある等の課題があると承知をしています。このため、燃料油価格対策として、燃料油価格の激変緩和措置を、今般策定する経済対策において来年春まで継続することとしております。
その上で、御指摘の揮発油税等の当分の間税率は、地球温暖化対策の観点や厳しい財政事情を踏まえて設定されているものであり、また、消費税の課税標準としての価格に個別間接税を含むという取扱いは国際的に確立したルールとなっているため、こうした税制上の扱いを変更することは考えておりません。
介護従事者の処遇改善についてお尋ねがありました。
昨今の高水準となる賃上げの動向や人手不足の状況を踏まえれば、介護分野における賃上げを始めとする人材確保への対応は重要な課題であり、岸田政権は、公定価格の見直しを掲げ、これまで累次の処遇改善を講じています。
今般の経済対策における対応は、御指摘があった金額を含め、具体的な内容が今固まっているわけではありません。引き続き、ICT機器の活用による生産性向上の取組や、経営の協働化等を通じた職場環境改善に加え、令和六年度の介護報酬改定に向けても、必要な処遇改善の水準の検討と併せて、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組み、これを構築してまいりたいと考えております。
医薬品の安定供給及び薬価制度についてお尋ねがありました。
医薬品の流通は、国が定めた薬価を踏まえつつ、市場で自由に取引していただくという医療保険制度の下で行われているものであり、企業に増産していただけるよう、経済対策などにより着実に支援をしてまいります。
せき止めやたん切り薬などの医薬品の需給は、感染症の流行状況などにより左右されることから、見通しを立てることが難しい面がありますが、関係者と連携の下、国民に必要な医薬品を確実にお届けできるよう、今後ともあらゆる手だてを講じてまいります。
また、薬価制度については、国民皆保険制度の持続性とイノベーションの推進、この両立を図りながら、薬価の維持や引上げを行う仕組みも活用しつつ、令和六年度薬価改定に向けて議論を進めてまいりたいと考えます。
柏崎刈羽原子力発電所の再稼働と電力自由化の検証についてお尋ねがありました。
柏崎刈羽原子力発電所については、一連の核物質防護事案等を受け、現在、東京電力において、再稼働に向けて体制の再構築と組織改革に取り組んでいるところです。
原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合のみ、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針です。その上で、政府としても、東京電力に対し、しっかりと指導を行うとともに、地元の理解を得られるよう、前面に立って原子力の必要性や意義を丁寧に説明してまいります。
これまでの電力システム改革を通じて、広域的な電力供給システムの構築とともに、小売全面自由化が進められ、需要家の選択肢が拡大はいたしました。一方で、足下では、主に輸入燃料価格の高騰の影響を受けて電気料金が上昇し、大手電力会社による規制料金の値上げも行われています。
これに対して、激変緩和措置を講じつつ、中長期的には、省エネ対策の徹底に加え、再エネ、原子力など脱炭素電源への転換の促進を通じて、エネルギーコストの上昇に強い経済構造への転換、これを進めてまいります。
引き続き、これまでの取組や新たな課題について検証を行い、制度を不断に見直すことにより、安定的かつ安価な電力供給を実現してまいります。
年収の壁についてお尋ねがありました。
年収の壁については、労働者が壁を意識せず働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大に取り組んできたところです。
今般、若い世代の所得向上や人手不足の解消の観点から、当面の対応策として、年収の壁・支援強化パッケージを取りまとめたところです。まずは本パッケージを着実に実行し、特定の見通しに基づいて対象人数を画することなく、年収の壁に近づく可能性のある全ての方が壁を乗り越えられるようにしてまいりたいと考えています。
その上で、被用者保険の更なる適用拡大などの制度の見直しに取り組むこととし、次期年金制度改正に向けて社会保障審議会年金部会において議論を開始しており、今後も関係者の意見を伺いながら丁寧に議論を行ってまいります。
伴走型支援についてお尋ねがありました。
本年六月にまとめたこども未来戦略方針に基づき、妊娠期から切れ目のない支援を行うための伴走型相談支援を実施しており、その継続的な実施に向け、制度化の検討を進めることとしています。
伴走型相談支援の担い手については、保健師などの専門職や、一定の研修を受講した上で行うこととしていますが、制度化の検討を進める中で、地方自治体の取組状況などを踏まえつつ、御指摘の点も含め、実効的な支援を提供するための方策について検討してまいります。
障害児福祉の所得制限についてお尋ねがありました。
障害児福祉の所得制限など各制度の所得制限の在り方については、各々の制度の目的や支援方法に応じて、それぞれの制度において定められているものであると考えています。
一方、こども未来戦略方針においては、全ての子供の育ちを支える経済的支援の基盤を強化する観点から、児童手当の所得制限撤廃などに取り組むこととしております。これは、障害児の家庭の経済的負担の軽減にもつながるものであると考えております。
同時に、障害児支援については、支援基盤の拡充に重点を置きながら取り組むこととしており、児童発達支援センターの機能強化を始めとして、速やかにその具体化を進めてまいります。
年少扶養控除についてお尋ねがありました。
政府は、本年六月に策定したこども未来戦略方針に基づき、当面の集中的な取組を進め、我が国の子供一人当たりの家族関係支出をOECDトップのスウェーデンに達する水準とする予定です。このように、主として歳出面の取組で前例のない規模で子供、子育て政策の強化を図る中、かつて子供手当の創設に合わせて廃止された年少扶養控除の復活は検討課題としてはおりません。
また、高校生の扶養控除については、こども未来戦略方針において、児童手当の支給期間の高校生年代までの延長に際して、中学生までの取扱いとのバランス等を踏まえ、高校生の扶養控除との関係をどう考えるか整理するとされています。
高校生の扶養控除については、このような切り口から整理を進める必要があるとしても、子供、子育て政策の強化のための財源確保を目的として見直すことは考えておりません。また、高校生の扶養控除の廃止を前提として、議論、検討している事実はありません。
給付型奨学金の対象拡大についてお尋ねがありました。
高等教育の無償化については、低所得世帯を対象に、授業料等の減免と給付型奨学金の支給を併せて実施してきたところであり、さらに、令和六年度から、負担軽減の必要性の高い多子世帯や理工農系の学生等の中間層へ対象を拡大することとしております。
これに加えて、多子世帯の学生等に対する授業料等減免について、執行状況や財源等を踏まえつつ、対象年収の拡大も含め、更なる支援拡充を検討し、年末までに具体化を進めてまいります。
教育国債による大学の無償化についてお尋ねがありました。
御指摘のHECS債は、令和六年度から修士段階の学生を対象として導入する授業料後払い制度の財政基盤を強化するため、学生等の納付金により償還が見込まれること等から導入することとしたものです。
教育国債については、安定財源の確保や財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要があると考えております。
クリーンエネルギー自動車やインフラの導入補助金についてお尋ねがありました。
脱炭素に不可欠な電動車の普及に向けて、消費者の需要や企業の投資意欲を継続的に喚起していくことは重要であり、これらの補助金について経済対策に盛り込むことを検討していきます。
また、現在の導入補助金では、生産国ではなく、車両の性能を踏まえて購入費用を補助しています。御指摘の国内メーカーや国内生産された自動車の優遇については、WTOルール上の課題もあると承知しておりますが、自由貿易の維持とGX実現の二つのバランスを取る観点から、引き続き、適切な補助制度を検討してまいります。
セキュリティークリアランス及びサイバー安全保障についてお尋ねがありました。
セキュリティークリアランスは、経済安全保障分野の情報保全強化の観点から非常に重要です。本年二月には有識者会議を設置し、制度設計に必要な議論をしていただいており、同会議での議論を踏まえ、次期通常国会における法案の提出に向けた準備を進めてまいります。
また、我が国のサイバー対応能力を向上させることは、現在の安全保障環境を鑑みると喫緊の課題であり、国家安全保障戦略を踏まえ、様々な角度から政府全体で検討を進めているところです。可能な限り早期に法案をお示しできるよう、引き続き取り組んでまいります。
農産物の価格転嫁についてお尋ねがありました。
燃料、肥料、飼料等の価格が高騰する中、安定的な食料供給を実現していくためには、生産に加え、流通、加工、小売等の各段階を通じた持続可能性を確保していく必要があります。こうしたことから、現在、農林水産省において、これら食料供給を担う各段階の関係者による協議会を設け、適正な価格形成の仕組みを議論しているところです。
フランスのエガリム法についてお話がありましたが、我が国では中小の小売業者が多数存在するなど食品の流通構造等にフランスとの違いがあり、今申し上げた協議会の議論も踏まえ、消費者の理解を前提として、我が国の実態に即した価格形成の仕組みづくりを進めてまいりたいと考えます。
ALPS処理水の海洋放出に伴う中国等による輸入規制強化を踏まえた水産業者への支援についてお尋ねがありました。
ALPS処理水の海洋放出以降の一部の国による輸入規制強化を踏まえ、国内水産業を守るため、総額一千七億円の水産業を守る政策パッケージを取りまとめました。
風評影響を受けた水産物の保管については、既に用意した三百億基金による支援に加え、予備費の使用により、中国等への輸出減が顕著な品目であるホタテ等に対する重点的な支援も開始したところです。
また、ALPS処理水の海洋放出に伴い、新たに放射性物質検査証明書の提出を義務づけた国や地域はありませんが、引き続き、科学的根拠に基づかない措置についてはその即時撤廃を求めていくとともに、全国の水産業支援に万全を期してまいります。
憲法改正についてお尋ねがありました。
憲法改正は先送りできない重要な課題であり、国民民主党が日本維新の会、有志の会と連携して具体的な改憲案を示し、建設的な議論を呼びかけておられることに、まず敬意を表したいと思います。
内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての議論の進め方等について直接申し上げることは控えなければならないと考えておりますが、憲法改正は、最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、国会の発議に向けた手続を進めるためにも、条文案の具体化等、国会においてこれまで以上に積極的な議論が行われることを期待いたします。
また、自民党総裁としてあえて申し上げれば、総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いは、いささかの変わりもありません。党内の議論を加速させるなど、憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意です。(拍手)
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