岸田文雄の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(岸田文雄君) 田名部匡代議員の御質問にお答えいたします。
 世界を分断、対立ではなく、協調に導くための対応についてお尋ねがありました。
 ロシアのウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナ情勢を始め国際社会が人道面を含め複合的な危機に直面し、その中で分断を深める今こそ、人間の命、尊厳が最も重要であるという、誰もが疑いようのない人類共通の原点に立ち返り、人間の尊厳、これを中心に据えた外交を進めていくことが必要だと考えています。
 具体的には、まず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化すべく、G7や日米豪印といった同盟国、同志国との連携を推進しつつ、同時に、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々を含む国際社会の幅広い支持と関与を得るため、多様性や包摂性を重視するきめ細かな協力を進め、経済活動の深化を含む多角的な外交、これを展開してまいります。
 また、G7を始めとする強く実効的な多国間主義を推し進めるとともに、安保理改革を含む国連機能の強化に取り組み、協調のための国連の実現を目指してまいります。
 御指摘のあった中東和平についても、二国家解決を支持する立場に基づき、平和と繁栄の回廊構想などの日本独自の取組を通じて、当事者間の信頼醸成に取り組んでまいります。
 旧統一教会による被害の救済等についてお尋ねがありました。
 被害者救済について、法テラスにおける電話相談から弁護団への紹介や民事保全申立てに際しての援助など、被害者に寄り添って適切に対応するとともに、海外への送金については、外為法の規制の履行状況等について情報収集、分析に努めてまいります。
 このように、政府としては、旧統一教会の資産状況を注視しつつ、速やかに被害者の救済が図られるよう、現行法上のあらゆる制度を活用し、被害者救済のために最大限取り組んでまいります。
 また、御党の議員立法の法案を含め、各党において様々な動きがあること、承知しております。こうした動きも注視してまいります。
 ライドシェアについてお尋ねがありました。
 ライドシェアについては、デジタル行財政改革会議の下、先日、十六日ですが、課題発掘対話での安全確保の課題も含め議論が行われたところであり、今後、規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキング・グループでも議論が行われることが予定されています。
 こうした議論を踏まえ、我が国で生じている地域交通の担い手不足や移動の足の不足といった深刻な社会問題に対応しつつ、我が国におけるライドシェアの課題について取り組み、方向性出してまいります。
 これまでの経済の振り返りや反省、検証の必要性についてお尋ねがありました。
 我が国経済は、一九九〇年代のバブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景にコストカット型経済が続いてきました。この間、アジア通貨危機、不良債権問題、ITバブルの崩壊、リーマン・ショックなど、様々な危機や困難に見舞われ、消費と投資の停滞を招きました。
 アベノミクスは、デフレではない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大し、企業収益の増加傾向につながりました。他方、一人当たりの平均の実質賃金は伸び悩んだと認識をしています。
 これまでの成果の上に立ちながら、しっかりと成長を実現した上で、成長の果実を国民に分配することで所得の向上につなげていく、こうした令和版所得倍増を始めとする新しい資本主義の二年間の取組が、三十年ぶりの三・五八%の賃上げ、過去最大規模の名目百兆円の設備投資、五十兆円ものGDPギャップの解消などにつながったものと認識をしております。
 こうして、三十年ぶりに新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスがめぐってきました。このチャンスをつかみ取り、持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済への変革、これを実現してまいります。
 ゼロゼロ融資への対応についてお尋ねがありました。
 ゼロゼロ融資の返済本格化を踏まえ、金融機関等に対し、現場の状況をしっかり踏まえて、据置期間延長等の申出に柔軟に対応するよう政府より要請し、応諾率は約九九%となっています。
 また、コロナ借換え保証制度により、返済期間の長期化と収益力改善、これを一体的に支援をしています。
 それでもなお増大した債務に苦しむ事業者に対しては、中小企業活性化協議会が個別事案に応じて再生支援を実施するなど、引き続き、事業者のニーズに合わせて柔軟にきめ細かい資金繰り支援等を講じてまいります。
 トリガー条項発動と中小企業の保険料負担軽減についてお尋ねがありました。
 トリガー条項の凍結解除については、灯油や重油などが支援の対象外となるほか、ガソリンの買い控えや、その反動により流通の混乱が生じる可能性があるなど、課題があるとも承知しています。このため、燃料油価格対策として、燃料油価格の激変緩和措置を今般策定する経済対策において来年春まで継続することとしております。
 また、社会保険料の事業主負担については、医療や年金の給付を保障することで働く人が安心して就労できる基盤を整備することが事業主の責任であり、働く人の健康保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資することから事業主に求められているものであり、その減免については慎重な検討が必要であると考えています。
 日本の財政の信認についてお尋ねがありました。
 近年、新型コロナや物価高騰等に対する補正予算による対応などもあり、我が国の財政状況がより一層厳しさを増していること、これは事実であります。
 他方、デフレから脱却することが財政にとっても重要であると考えています。我が国の経済は、三十年来続いてきたデフレを脱却できる千載一遇のチャンスを迎えているといえ、賃金上昇が物価高に追い付いておらず、これを放置すれば再びデフレに戻りかねません。
 このため、デフレ脱却のための一時的な措置として、国民の可処分所得を直接的に下支えし、物価高による国民の負担を緩和したいと考えています。私の経済財政運営の基本は、経済あっての財政です。デフレから脱却し、財政健全化を取り組むことで中長期的な財政の持続可能性への信認の確保にも努めてまいりたいと考えています。
 複数税率とインボイス制度、そして負担や再分配の在り方についてお尋ねがありました。
 軽減税率制度は、消費税の逆進性を緩和しつつ、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるという利点がある一方で、御提案の給付付き税額控除は、消費税そのものの負担が直接軽減されるものではなく、消費者にとって痛税感の緩和の実感にはつながらないと考えています。
 また、インボイス制度は、複数税率の下で課税の適正性を確保するために必要な制度であり、これを廃止することは考えておりません。
 その上で、負担や再分配の在り方については、公平、中立、簡素といった観点や経済社会の構造変化への対応など、様々な要素を踏まえて税制全体として幅広く検討をしてまいりたいと考えます。
 そして、介護保険制度の見直しについてお尋ねがありました。
 高齢化と人口減少という大きな社会の変化を迎えている中、介護保険制度が全ての世代にとって安心なものとなるよう、サービスの質を確保しつつ制度の持続可能性を維持する観点から、給付と負担のバランスを図ることが重要な課題です。
 こうした観点から、介護保険における給付と負担の在り方について、関係審議会において丁寧に議論を重ねているところです。
 そして、こうした中、来年度は介護報酬の改定があることから、この利用者負担や保険料の負担に与える影響も併せて議論を行うことが必要であるという考えの下、この骨太の方針二〇二三において年末までに結論を得ることとしている次第です。
 引き続き、様々な意見を丁寧にお聞きしながら検討を進めてまいります。
 介護従事者の処遇改善や仕事と介護の両立についてお尋ねがありました。
 岸田政権は、介護分野を始め公定価格の見直しを掲げ、これまで累次の処遇改善、講じています。引き続き、ICT機器の活用による生産性向上の取組や経営の協働化等を通じた職場環境改善に加えて、令和六年度の介護報酬改定に向けても、必要な処遇改善の水準の検討と併せ、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組み、これを構築してまいります。
 また、仕事と介護を両立できる環境整備のため、育児・介護休業法により、介護をする労働者が介護休業等を取得できる環境を整備するとともに、雇用保険法の介護休業給付について支援を行っています。
 引き続き、介護サービスの基盤整備と併せて、介護休業等を利用しやすい職場環境の整備に取り組んでまいります。
 いわゆるワクチン後遺症やコロナ後遺症への対応についてお尋ねがありました。
 新型コロナワクチンによる健康被害の救済制度については、その趣旨や手続が市町村の申請窓口で御本人に伝わるよう、国の手引において分かりやすくお示しをしています。また、同制度の審査結果を御本人に通知する際に理由を付すなど、丁寧な説明に努めているところです。
 また、新型コロナの罹患後症状については、研究等により引き続き科学的知見を集積するとともに、罹患後症状に悩む方の診療を行う医療機関リストの公表や、傷病手当金、労災保険給付等の支援制度の周知、これに努めてまいります。
 また、御指摘の診療報酬については、次期改定に向けた議論の中で検討してまいります。
 健康保険証の廃止についてお尋ねがありました。
 マイナ保険証には、患者本人の健康、医療に関するデータに基づいたより良い医療の提供が可能となるなど多くのメリットがあり、我が国の医療DXを進める上で基盤となる仕組みです。
 このため、資格確認書の円滑な交付など、国民の皆様の不安払拭のための措置を着実に進めるとともに、マイナ保険証のメリットを実感いただけるよう、利用促進に向けた取組を積極的に行ってまいります。
 その上で、現行の健康保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提との方針にのっとり、ひも付け総点検とその後の修正作業の状況も見定めた上で、更なる期間が必要と判断される場合には必要な対応を行ってまいります。
 そして、不登校対策についてお尋ねがありました。
 先日公表された調査結果では、小中学校の不登校児童生徒数が過去最多になるなど、極めて憂慮すべき状況です。更なる実態分析として、児童生徒本人等への調査を行っていると承知をしています。
 今月開催された不登校対策等に関する合同会議の場において、緊急的に対応すべきものについては経済対策にも盛り込むなど、私から文部科学大臣に指示をしたところであり、校内教育支援センターの設置促進等について速やかに実行するとともに、フリースクール等の民間団体とも緊密に連携を行いながら、多様な学びの確保、これを進めてまいります。
 政府としては、不登校に関する対策を強化し、子供の安全、安心確保に万全を期してまいります。
 そして、自殺対策についてお尋ねがありました。
 我が国の自殺者数は依然として毎年二万人を超える水準で推移をしており、男性が大きな割合を占める状況が続いているものの、新型コロナの影響等により、女性は三年連続の増加、小中高生は過去最多の水準となっています。
 こうした状況を踏まえ、昨年十月、今後五か年で取り組むべき施策として自殺総合対策大綱を取りまとめたところであり、学校や地域の支援者が連携して対策に当たることができる仕組みの構築、妊産婦を始め女性に対する支援の強化、SNSによる相談体制の充実など、総合的な対策を推進しているところです。
 今後とも、政府として、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指し、現場で自殺対策に取り組まれている皆様の御意見も伺いながら取組を進めてまいります。
 教職員の処遇改善や給食費の無償化、そして教育費の負担軽減についてお尋ねがありました。
 教師を取り巻く環境整備については、中央教育審議会の議論を踏まえつつ、公教育の再生に向け、働き方改革、処遇の改善、学校の指導、運営体制の充実、そして育成支援、これらを一体的に進めてまいります。
 学校給食費の無償化については、本年六月に決定したこども未来戦略方針では、全国ベースでの学校給食の実態調査を速やかに行い、一年以内にその結果を公表することとしています。その上で、小中学校の給食実施状況の違いや法制面を含め、課題の整理を行ってまいりたいと考えます。
 教育費の負担軽減については、これまで幼児期から高等教育段階まで切れ目のない負担軽減策を行ってきたところです。その上で、高等教育段階について、給付型奨学金等の多子世帯や理工農系の学生等の中間層への拡大等に取り組むとともに、更なる支援拡充を検討し、年末までに具体化、進めてまいります。
 国連気候野心サミットへの参加と我が国の温室効果ガス削減目標の検討についてお尋ねがありました。
 まず、国連気候野心サミットの首脳級セッションについて、多くのスピーチ要望が国連事務局に寄せられていた一方、私自身も同じ時間帯にウクライナ情勢に関する安保理の首脳級会合のほか、複数のバイ会談等への出席が予定されていたため、国連事務局によるアレンジと私の日程との調整がかなわず、最終的に今回は参加しないということになりました。
 温室効果ガスの二〇二三、失礼、二〇三五年以降の各国排出削減目標については二〇二五年までの提出が国連から奨励をされています。我が国としては、この検討開始時期について、現行の二〇三〇年度目標に向けた進捗や各国の動向を踏まえつつ検討をしていくこととしております。
 なお、二〇二一年に行った前回の地球温暖化対策計画の策定に当たっては、若者からもヒアリングを行いました。次回以降の取組プロセスにおいても、こうした事例も踏まえつつ検討を行ってまいります。
 そして、食料安全保障における水産業の位置付けについてお尋ねがありました。
 国民への食料の安定供給において、水産物は特に動物性たんぱく質の供給の面で大きな役割を有しています。現在、食料・農業・農村基本法の見直しに向けた検討を進めておりますが、食料には当然水産物が含まれ、我が国水産業の持続的な発展は食料安全保障の観点からも極めて重要です。我が国の水産業が海洋環境の変化、燃油価格の高騰等の課題を乗り越えて持続的に発展していけるよう、現場の声をしっかり聞きながら、資源管理の着実な実施や燃料価格高騰対策等による漁業経営の安定、そして、養殖業の成長産業化、国内外の市場開拓、スマート水産業の導入等に関する各種支援、これを展開してまいります。
 食品アクセスについてお尋ねがありました。
 食料安全保障の考え方としては、国全体で必要な食料を確保するというだけでなく、平時から国民一人一人が食料にアクセスでき、健康な食生活を享受できるようにすることが重要であり、こうした社会の実現に向け、政府を挙げて取り組んでまいります。
 そして、今月十三日に取りまとめた食料安定供給・農林水産業基盤強化に向けた緊急対応パッケージにおいては、フードバンク、子供食堂等に対して未利用食品の供給に向けた支援や政府備蓄米の全国的な提供体制の整備を進める、こうしたこととした次第です。
 これらを今般の経済対策に盛り込み、全国各地で円滑な食品アクセスの確保に向けた支援が広がるよう後押しをしてまいります。
 副大臣、大臣政務官の人事等についてお尋ねがありました。
 副大臣、大臣政務官の人事については、本人の人格、識見を踏まえ、適材適所の考え方で行っており、閣僚、副大臣、大臣政務官、総理補佐官など、全体として適材適所を徹底して行った結果として、このような老壮青、男女等のバランスになったと考えております。
 そして、杉田議員については、私の内閣の総務大臣政務官を務めていた時代に、今般の認定に係るSNSへの投稿に傷つかれた方々に謝罪をした上で、その表現を取り消したものと承知をしております。政治家として、必要に応じて説明責任を果たしつつ、国民の負託に応えていただきたいと考えております。
 そして、木原防衛大臣の演説についてお尋ねがありました。
 今回の木原防衛大臣の発言については、木原防衛大臣本人が、自衛官とその家族への敬意と感謝を述べたもの、自衛隊を政治的に利用するような意図はない旨説明をした上で、撤回をしたものと承知をしております。
 自衛隊が政治的に中立の組織であるということを本人も十分に認識をし、その旨会見でも説明をしたと承知をしており、木原大臣については、引き続き職務に当たっていただきたいと考えております。
 そして、所信表明演説における憲法改正に関する私の発言についてお尋ねがありました。
 御承知のとおり、憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣が、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼びかけることは禁じられているものではなく、三権分立の趣旨に反するものではない、これが従来からの政府の見解であります。
 その上で、憲法改正の議論の進め方等については、国会でお決めいただくことであり、内閣総理大臣の立場から直接申し上げることは控えますが、いずれにせよ、国会の発議に向けた手続を進めるためには条文案の具体化が必要であり、議論を期待することの一例としてこれを述べることについても三権分立の趣旨に反するものではないと考えております。(拍手)
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発言情報

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発言者: 岸田文雄

speaker_id: 6324

日付: 2023-10-25

院: 参議院

会議名: 本会議