伊藤孝恵の発言 (本会議)
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○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。
私は、会派を代表し、令和五年度補正予算案に賛成の立場から討論を行います。
野党の役割は、厳しい行政監視によって政府の問題点を指摘し、翻意や修正を迫るとともに、与党より優れた政策を提示し、実現し続けることで、次はこの人たちにやらせてみるかと、政権の選択肢たり得たる存在になることです。
今回、国民民主党が賛成するのは、ひとえにトリガー条項凍結解除によるガソリン価格を引き下げるためであり、交渉のテーブルに着くことを私たちは選びます。それが物価高に苦しむ家計を支えるとともに、企業のエネルギーコストを抑え、そうして生まれた利益こそが持続的賃上げの原資になるからです。
会計検査院は、今月七日に公表した令和四年度決算結果報告の中で、二〇二二年一月から導入された石油元売会社等への補助金一兆二千七百七十三億円のうち、およそ百一億円が消費者には届かず、ガソリンスタンドの利益に回った可能性を指摘しました。
事実、石油元売三社の連結決算は、いずれも純利益を上方修正しています。原油価格の上昇と円安による備蓄原油の在庫評価益が膨らんだことに加え、政府補助金による需要の下支え及び燃料油販売の利益率が改善したことが影響しているとのことです。
会計検査院は、さらに、資源エネルギー庁がおよそ六十二億円を掛けて実施した価格モニタリング調査、いわく、週一回、全国二万か所のガソリンスタンドに、政府の補助金でガソリン代って下がりましたと聞き回る事業の必要性に疑義を呈しています。
当初から懸念されていた石油元売会社への補助金は本当にその全てがガソリン価格の引下げに使われるのかに対しての結論は、もう既に出ています。
さりとて、この期に及んで、やはり補助金の方が使い勝手がいい、トリガーを解除すると年一・五兆円の減収が出るという声も聞こえてきますが、補助金は年一・九兆円を要します。
国民から税金を取って石油元売会社に配り、再び国民に戻そうとする過程で結局届かなかったり、税金の無駄遣いが現に発生しているのだから、もう取るのをやめてはいかがでしょうか。
トリガー条項凍結解除による減税の方が合理的な上、百六十円を三か月連続上回ったときという対策をする基準、やめる基準及びその手続が明確で、いつまで続けるのかが見通せない補助金より、出口戦略として筋がいいと思います。
最後は政治決断です。総理の決断を強く求めるとともに、本予算案に足らざる点についても、以下、具体的に指摘させていただきます。
第一に、消費と投資を下支えし、持続的賃上げを確実にするための生活減税が足りない点です。
デフレからインフレに経済が移行する中で必要となるのは、トリガー条項凍結解除のみならず、いわゆる暫定税率、二重課税の廃止と併せたガソリン減税、基礎控除、給与所得控除等の額を引き上げることで家計負担を軽減する所得税減税、賃金上昇率が物価上昇率を二%上回るまで、当分の間、税率を一〇%から五%に引き下げるインボイス廃止を含む消費税減税、少額減価償却資産特例の上限額を引き上げ、投資額以上の償却を認める法人税における投資減税、税額控除額の引上げや価格転嫁等への取引条件を改善し、赤字法人も対象となるよう減税項目を法人事業税、固定資産税、消費税にまで拡大した賃上げ減税です。
GDPの六割近くを占める個人消費と伸び悩む企業の設備投資に直接アプローチできる対策が必要です。
第二に、予備費や基金に対する国会の行政監視機能不全です。
コロナ禍以降、多額の予備費計上が常態化しています。予備費は、予見し難い予算の不足に充てるために認められた予算の事前議決原則の例外的制度であり、今回のようになし崩し的に使途をコロナから賃上げに変更し、拡大する政府の手法は、財政民主主義を有名無実化するものであります。
基金への予算措置と残高もまたコロナ禍を契機に膨張し続けています。
年一兆円前後で推移していた予算額は二〇二〇年度に十一・五兆円に増え、二兆円台だった基金残高も二二年度末には十六・六兆円と増加の一途をたどっています。
成果の数値目標を持たない基金はおよそ二〇%、活動実態がなく、支出が人件費や管理費のみであるいわゆる休眠基金も全体の一五%を占めています。
この異常とも言える事態に対し、河野行政改革担当大臣は各府省の全基金を見直す方針を明らかにしましたが、結局、今般、十分な見直しも行われないまま四・三兆円を計上し、新たな基金の造成や積み増しを行っています。財政法第二十九条における緊要性を鑑みれば、なおさらこれらの基金に対する取扱いは不適切と言わざるを得ません。
最後に、総理の少子化対策に対する基本認識に一言申し上げます。
予算委員会の審議の中で、総理が、子育て世帯の受益部分を拡大する、スウェーデン規模にまで引き上げると繰り返されているのを聞いて、今更ながら、なぜ総理が子育て世帯が心底望んでいる年少扶養控除の復活について検討もしてくださらないのかがよく分かりました。家族関係社会支出には控除はカウントされないからですよね。
総理は、さきの通常国会で、OECD定義による家族関係社会支出を、二〇二〇年度のGDP比二%から倍にする、先進国最下位レベルから、スウェーデンの三・四%をベンチマークとして、先進国最高位レベルまで引き上げると言明されました。
十六歳から十八歳の扶養控除を削り、社会保険料を引き上げて支援金制度をつくり、それらを児童手当として現金給付すれば、家族関係社会支出の机上の数字は跳ね上がります。日本の順位も確実に上がります。
しかし、総理、今見るべきは、机上の数字でも順位でもなく、可処分所得です。とにもかくにも、子育て世帯の、これから子育てをする次世代の可処分所得をどう増やすかを考えていただきたいのです。
政府は、現在、高校生がいる世帯に児童手当を年一律十二万円給付する代わりに、所得税で三十八万円、住民税で三十三万円としている扶養控除の水準を一律で引き下げ、縮小する案を検討しているといいます。
少子化対策に必要なのは、給料を上げ、税負担を下げ、社会保険料負担を下げ、給付、控除、無償化などの法的支援を拡充することです。
扶養控除の縮小は撤回の上、年少扶養控除を復活してください。各種子育て支援制度の所得制限を撤廃し、教育の完全無償化を目指してください。そうしてようやく我が国は少子化対策のスタートラインに立つことができます。
以上、本補正予算案の課題について申し述べました。
昭和五十二年、野党民社党は、異例の予算案賛成に回りました。同党は、長期化、深刻化する経済不況対策として一兆円減税を提起し続け、やがてそれは一政党の訴えの枠を超え、野党共通の要求となりました。その要求に対し、政府が一定の譲歩を示したのだから、予算案に賛成するのは当初より提起し続けてきた党としての責任の表明なのだと述べられています。
参議院で賛成討論に立った三治重信議員が残した議事録にはこうあります。およそ議会制民主政治を確立しようとする立場に立つならば、時には多少の不満を残しつつも、可能な限り国民の要求を現実的に満たすための不断の努力を積み重ねていかなければならない、国の経済政策の目標は雇用の安定、すなわち完全雇用の維持と物価の安定にある。
国民民主党は、衆参たった二十一人の政党です。我々が予算案に賛成したとて、大勢に影響はないと思われるかもしれません。それでも、トリガー条項凍結解除にこだわり、食らい付き、我々の行動を批判するその人の暮らしにも必ず利とならん政策を実現したいと思っています。
総理の御決断を重ねて強く要望するとともに、財務省などは決してもろ手を挙げて賛成しないこのトリガー条項凍結解除。苦渋の決断を最後に支えるのは、与野党を超えた議員たちが地元で拾い集めてきた声であり、その発露としての賛意です。
三十年ぶりの持続的賃上げを何としても実現する。そのために今最も効果的だと思われるトリガー条項凍結解除に対する理解を議場に切に呼びかけて、私の討論を終わります。(拍手)