齋藤健の発言 (経済産業委員会)
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○齋藤(健)国務大臣 第二百十三回国会における経済産業委員会の御審議に先立ち、経済産業行政を取り巻く諸課題及び取組につきまして、経済産業大臣、原子力経済被害担当大臣、GX実行推進担当大臣、産業競争力担当大臣、ロシア経済分野協力担当大臣、内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)として申し上げます。
冒頭、元日に発生した令和六年能登半島地震によって亡くなられた全ての方々に、心より哀悼の意を表します。また、被害に見舞われ厳しい生活を送っておられる被災者の方々に、改めてお見舞いを申し上げます。
経済産業省としては、発災以降、電力の復旧や燃料、日用品といった物資の供給に万全を期して対応してまいりました。引き続き、被災された事業者の皆様に寄り添いながら、被災者の生活となりわい支援のためのパッケージを着実に実行するとともに、更なる支援策の具体化を進め、なりわいの再建に全力を尽くしてまいります。
我が国経済は今、デフレ構造から新しい経済ステージへ移行する千載一遇のチャンスを迎えています。昨年は、賃上げや設備投資が共に三十年ぶりの高水準となるなど、明るい兆しが生まれました。今年は、こうした潮目の変化を大きなうねりに育て、コストカット型経済から投資も賃金も物価も伸びる成長型経済への転換を図っていく、まさに正念場というべきときです。日本経済にしみついたデフレからの完全脱却を必ずや実現してまいります。
そのためには、国民の実感を伴う形で生活が豊かになっていくことが重要です。物価高を上回る所得の実現。そのためには、賃上げが大きな鍵を握ります。
賃上げと経済の好循環を産業界全体に波及させなければなりません。企業の賃上げを強力に後押しすべく、政策を総動員して取り組んでいきます。
とりわけ、中堅・中小企業や小規模事業者も含めた賃上げを実現することが何よりも重要です。賃上げ原資を確保するための価格転嫁対策としては、価格交渉促進月間に基づく取組を行ってきています。足下、三月の月間においても、積極的な交渉、転嫁を呼びかけていくだけでなく、労務費の指針の取引現場での遵守を促進していきます。その上で、公正取引委員会を筆頭に各省とも連携し、規制法たる下請法の執行を強化することで、サプライチェーン全体での取引方針の改善と価格転嫁の実現を図っていきます。
また、赤字でも人材確保のために賃上げに挑戦する中小企業や、地域において賃上げと経済の好循環の担い手として期待される中堅企業を後押しすべく、賃上げ促進税制を抜本強化します。
さらに、中堅・中小企業が構造的な人手不足に直面する中でも生産性向上や事業規模の拡大を実現できるよう、即効性のある省力化投資や拠点新設等の大規模な設備投資、新商品、サービス開発に向けた設備投資等を支援します。
企業が賃上げの原資を生み出すためには、稼ぐ力を強化することも不可欠です。日本経済を反転させるまたとないチャンスを迎えている今こそ、一歩踏み込んだ産業政策を進めなくてはなりません。
GX、DXなどの社会課題解決分野を成長の源泉と捉え、官も民も一歩前に出て、大規模、長期、計画的に国内投資とイノベーションの促進に取り組んでいく。こうした取組を通じ、経済安全保障を確保した上で、日本経済の成長を実現します。
半導体については、生産拠点整備や研究開発支援等の取組を加速させるとともに、地域の理解を得ながら、産業立地の際の土地利用転換の迅速化や工業用水等のインフラ整備に取り組みます。既に半導体投資が進む九州地域で投資と賃上げの好循環が生まれつつある中で、この流れを成長型経済のロールモデルとしていきます。
加えて、蓄電池、重要鉱物など特定重要物資に係る国内生産設備の導入や海外権益獲得等によるサプライチェーン強靱化支援や、宇宙、バイオ、量子等のディープテック分野の研究開発支援といった点への投資にも取り組みます。
中でも、生成AIは、経済社会に革命的な変化をもたらす技術であり、規律、開発、利用促進を一体的に進めることが肝要です。AIの安全性評価の確立に向けた国際的な議論に積極的に貢献しつつ、計算資源の確保、開発力強化、利用促進等を強力に支援していきます。
これら今後の経済成長の種ともいうべき分野は、投資額の大きさゆえのリスクも内包しています。当該分野における国内投資、研究開発、人材育成等を政府として強力に支援する中で、政府支援を呼び水とした民間投資を呼び込み、官民による投資拡大を更に促していきます。
さらに、経済成長及びその先にある産業構造転換を実現する上で不可欠なイノベーションを促進する環境整備も進めます。
世界を変えるイノベーションを生み出し、様々な社会課題を解決する主体として、スタートアップに大いに期待しています。
今般の能登半島地震においても、使用した水を再生利用するシャワー設備等の供給、ドローンを活用した孤立集落への医薬品の運搬、砂防ダムの水を浄化した飲み水の提供等、技術力を有するスタートアップの活躍が被災地の復旧復興の助けになりました。
スタートアップを我が国経済成長の起爆剤とすべく、世界で戦えるスタートアップを生み育てるためのエコシステムの構築に全力で取り組みます。
国内投資の促進、賃上げ、イノベーション。これらの重要な政策課題に対応していくために、新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案を今国会に提出しました。電気自動車やグリーンスチール等といった戦略分野への国内投資を促進する減税措置や、知的財産から生じる所得に関して減税を行うイノベーション拠点税制、成長発展を図る中堅企業等が複数の中小企業をMアンドAした場合の税制措置、スタートアップがストックオプションを機動的に発行できる仕組み等の制度整備に取り組みます。
本年は、GX実現に向けた具体化とともに、エネルギー基本計画の見直しに向けた議論を開始する、我が国のGX、エネルギー政策にとって重要な年です。
昨年末に産業、暮らし、エネルギー等の重点分野において取りまとめられた分野別投資戦略に基づき、二十兆円規模のGX経済移行債を活用した投資促進策を実行していきます。さらに、カーボンプライシング制度の本格導入に向け法定化を進めていくなど、GXの実現に向け包括的な取組を加速させます。
エネルギー分野については、エネルギー危機にも対応できるエネルギー安全保障や安定供給を確保することも重要です。
資源外交や国産資源開発、徹底した省エネ、地域との共生を前提とした再生可能エネルギーの最大限導入、蓄電池の導入を進めます。
原子力の活用に当たっては、高い緊張感を持って安全最優先で万全の対応を行うことを大前提に、原発再稼働や運転期間の延長、次世代革新炉の開発、建設等を進めます。
二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、鉄鋼や化学等の脱炭素化が難しい分野においてもGXを推進していくことが不可欠です。このため、こうした分野における低炭素水素等の活用を促進すべく、日本技術を活用した先行的で自立が見込まれるサプライチェーンの創出等を目指す、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案、そして、排出された二酸化炭素を回収し、これを地下の地層に貯留するCCSに関する事業環境を整備するための、二酸化炭素の貯留事業に関する法律案を今国会に提出しました。
GXについては、アジアの同志国も巻き込んだ取組にしていくことも重要です。初の首脳会合を開催したアジア・ゼロエミッション共同体を通じ、各国の事情に応じた多様な道筋の下、日本の技術力、金融力をかけ合わせ、経済界も交えて成長の果実を共有していきます。
これらの総合的な取組を通じ、エネルギーの安定供給を大前提に、GXに向けた取組を着実に推進していきます。
進む人口減少に適応していくためにも、DXによる省力化、システムの高度化が不可欠です。デジタルの恩恵を全国に行き渡らせるべく、共通規格に準拠した、ハード、ソフト、ルールにわたるインフラであるデジタルライフラインの全国的な整備や、二〇二五年度に全国五十か所程度での自動運転の社会実装実現に向けた一般道での通年運行事業の倍増等に取り組みます。
インターネット取引の拡大に伴い、国内外の事業者がオンラインモール等を通じて国内消費者に製品を販売する機会が増大しており、海外から国内の消費者に直接販売される製品の安全確保や、子供用の製品による事故の未然防止が重要です。こうした観点から、国内消費者が製品を安全に使用する環境を整備すべく、消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案を今国会に提出しました。
デジタル化の進展に合わせ、サイバー攻撃への強靱化を図ることも不可欠です。セキュリティークリアランスや産業界全体でのサイバーセキュリティー強化に取り組み、経済安全保障の抜本的強化につなげていきます。
ロシアによるウクライナ侵略、深刻化する中東情勢など、我が国を取り巻く環境は日に日に厳しさを増しています。我が国の経済社会、サプライチェーンにも大きな影響が生じる中、経済安全保障の重要性もますます高まっています。そのような中で、経済安全保障を確保しつつ自由で公正な貿易体制を発展させるという難しいかじ取りをしなければなりません。
自由で公正な経済秩序の維持強化、サプライチェーンの強靱化に向けても、WTOなどの多国間の枠組みやCPTPP等の経済連携協定、G7、IPEFなどの同盟国、同志国との枠組みを活用することが引き続き極めて重要です。
昨年のG7における合意を議長国イタリアに引き継ぎ、サポートしつつ、産業、技術、デジタル、気候、エネルギー、環境、経済的威圧や非市場的措置への対応を含む貿易といった分野で議論を更に深めます。
本年大統領選挙を迎える米国との連携は、引き続き対外経済政策上の最重要課題です。日米経済版2プラス2などの枠組みを活用し、経済安全保障や産業協力などの議論を深め、更なる関係強化を進めます。
成長著しいグローバルサウス諸国との連携も重要です。強靱で信頼性のあるサプライチェーン構築の重要性について、認識共有を図ります。加えて、アジア有志国との連携により、自由で開かれたインド太平洋の実現に貢献するとともに、ASEAN諸国との次なる半世紀を共に形作っていきます。
また、ロシアによるウクライナ侵略が継続する中、影響を受ける日本企業を引き続き適切に支援するとともに、官民が連携し、ウクライナ復興にも積極的に取り組んでいきます。
福島復興と東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策は、引き続き経済産業省の最重要課題です。
昨年八月に開始された、復興の大前提となるALPS処理水の海洋放出について、処分が完了するまで、政府として全責任を持って取り組むとともに、安全性の確保、風評対策、なりわい継続支援に全力で取り組みます。特に、漁業者の皆様が安心して漁業を継続できるよう、輸出減が顕著な品目の販路拡大や加工体制強化、加工業者等への資金繰り支援等を実施しているところ、今後も迅速かつ着実に実行していきます。
あわせて、着実な廃炉の進展に向け、燃料デブリの取り出し等のための技術的難易度の高い研究開発も支援します。
さらに、帰還困難区域の避難指示解除に向けた取組や、事業、なりわいの再建、新産業創出、交流人口の拡大、スタートアップエコシステムの構築、芸術文化を通じた新たな魅力づくり等を通じ、被災地の復興を着実に推進します。
加えて、福島以外の地域においても、文化芸術コンテンツ産業等の海外展開やロケ誘致によるインバウンド需要の取り込みを進め、地域経済の活性化、地域における文化の再創造を支援します。
こうした取組を通じ、インバウンドとソフトパワーのかけ合わせによる価値の創出を図ります。
最後に、大阪・関西万博の開催まで、残すところあと一年となりました。新型コロナを乗り越え、能登半島地震に見舞われた今、そして緊迫の度を増す国際情勢の中にあって、改めて、命の重み、社会の在り方が強く意識されています。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる大阪・関西万博は、世界の英知を集約し、イノべーションにより諸課題を乗り越え、未来を切り開く道筋を示していく場です。引き続き、万博関連の工事、調達等によって能登復興に支障が生じないように留意しつつ、万博を必ずや成功に導いてまいります。
以上、申し述べましたとおり、経済産業行政は多くの課題に直面しております。様々な御意見に耳を傾けながら、経済産業大臣として全身全霊で職務に取り組んでまいります。
岡本委員長を始め、理事、委員各位の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)