小林鷹之の発言 (憲法審査会)
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○小林(鷹)委員 自由民主党の小林鷹之です。
私は、いついかなるときも国家機能を維持し、国民の生命財産を守り抜くために、憲法に緊急政令制度を設ける必要があると考えています。
緊急政令制度とは、国会が立法機能を行使することができない状況に陥ったり、立法措置を講ずる時間的余裕さえないような極限的な状況において、一時的、暫定的に内閣が政令によって必要な措置を講ずる制度であります。あくまでも一時的、暫定的に必要な限度で内閣が措置を行うものであって、国会が事後的に民主的統制を果たすことは当然であります。
本日は、この緊急政令制度創設の議論に資するものとして、諸外国の憲法典における緊急命令規定と明治憲法下の緊急勅令制度について述べたいと思います。
まず、諸外国の憲法典におきましてどのように位置づけられているかを確認したいと思います。
昨年九月に国立国会図書館が発表した、OECDに加盟している三十八か国についての緊急事態条項に関する調査によりますと、緊急事態条項の発動の効果としては、憲法上の機関の権限配分の変更を規定するものが多いです。その中でも最も多く見られるものは、行政府への例外的な権限付与、つまり、法律の効力を有する緊急命令を発する権限の付与であります。
具体的には、緊急事態条項がある三十か国のうち過半数の十六か国に、緊急命令に関する規定があります。例えばイタリアでは、緊急の必要がある非常の場合には政府が法律の効力を有する暫定措置を取ることができるとされており、この暫定措置、すなわち緊急命令に基づきまして、今般、コロナ対策が行われております。また、スペインでは、特別かつ緊急の必要がある場合には内閣は代行命令の形式を取る暫定法を発することができるとされております。さらに、このような緊急命令の規定がなくとも、例えばフランス憲法の大統領の非常措置権のように、類似する法的効果を有する規定がある場合もございます。
こうした調査結果に鑑みますと、約六割の国が、国会機能が維持できなくなるような緊急事態をも見据えて万全の体制を整えているとも言えます。
昨年の憲法審査会の海外調査報告書にも、フランスの憲法学者の方が、たとえ実際にはほとんど使われなかったとしても、緊急事態に関する憲法規定は有用であり、万が一例外的事態が発生したときに、これに対処するためには必要不可欠なものという説明をしたことが記録されております。
他方、フランスのように大統領の広範な裁量権を認める条文には懸念も示されているところでありまして、直ちにこれに倣うことには正直ちゅうちょも覚えます。
そうしますと、より要件を具体化した、個別的な緊急政令制度の明文化の道を模索するのが適切ではないかと考えます。我が党が条文イメージとして示している緊急政令制度は、そのような条文化の一つの形となっていると考えます。
次に、明治憲法に規定されていた緊急勅令について取り上げたいと思います。
日本国憲法に緊急政令制度を設けることには、明治憲法下における緊急勅令を持ち出して、その濫用のおそれを指摘する声も少なくありません。確かに、緊急勅令の手続によって治安維持法が改正されるなど、濫用としか評価することができない例もあります。
しかし、関東大震災の際に発せられた緊急勅令は十六件ありますが、その内容を見ますと、被災者の金銭債務の支払い延期、いわゆるモラトリアムや、生活必需品の買占めや売惜しみなどへの対応、さらには府県会議員の任期延長などでありまして、緊急事態対応として必要不可欠なものであったことが分かります。
さらに、これらの措置は、現在の災対法などにおける緊急政令規定におおむね取り込まれておりまして、緊急政令の必要性は、むしろ歴史的に証明されているとも考えてよいと私は思います。
現在、緊急事態における国会機能維持に関する議論が進展しているところでございますが、私は、更に一歩進んで、緊急政令の議論も深めていくべきであると考えます。
以上で私の発言を終わります。