北神圭朗の発言 (憲法審査会)
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○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
先週も多くの問題提起がございましたので、幾つかについて、有志の考えを申し上げたいと思います。
まず、立憲民主党の本庄幹事さんより、国会機能維持について、肝腎の立法事実について、認識が共有されているとは思えませんとの発言がありました。また、東日本大震災では、直後の首長、地方議員選挙が数か月延期されたものの、それは東北地方の被災三県内に限られた措置でしたとの例も挙げられました。
この点については、公明党の北側幹事より何度か説明されていますが、私から繰り返しますと、一つは、東日本大震災のときは選挙が最大七か月延期されました。このとき延期されたのはたまたま自治体選挙でしたが、時期が時期であれば、衆議院の解散時などにもこうした選挙困難事態は起こり得たと考えるのが合理的ではないかと思います。二つ目には、この場合、選挙困難事態が発生した地域では、当該選挙区だけでなく、当該比例区の選挙結果も確定しません。したがって、国政全体で多数の議席が確定せず、選挙実施の同時性並びに一体性が害されます。被災された地域の衆議院議員が長期間存在しない状況も発生します。こうしたことが立法事実に当たるのではないかと認識しています。
この立法事実については、芦部説による、法律を制定する場合の基礎を形成し、かつその合理性を支える一般的事実、すなわち社会的、経済的、政治的若しくは科学的事実という定義がよく引用されます。ここで言う一般的事実とは、単純に、過去に生じた事実だと狭く捉えるべきではなく、科学的検証などにより、将来に生じ得る事態をも含めるべきだと考えます。そうでなければ、危機管理関連の法律は全て、一度痛い目に遭わなければ、立法事実がないという理由で対応できないことになってしまいます。
愚考はさておき、この点、専門家の橘法制局長の「立法学講義」という御著書を開くと、「「立法事実」とは、単なる「生のデータ」などではなく、そこから「抽象的な事実」を抽出・構成し、立法目的や立法手段の合理性を支えるものとして立案者において再構成された、理論的・規範的なものである。そうでなければ、現に生じていない、予測された将来の事象に対応するような立法などは、そもそも「立法事実」がない、ということになってしまいかねないではないか」との見解を示しています。衆議院法制局の神崎部長も、法律と条例の立案における立法事実の意味を論じた自治研究論文の中で同様のことを述べています。
立法関係者の間では共通認識と言えるでしょう。学界でも、西原博史元早稲田大学教授は、対策が必要な異常事態として、ある現実に着目するとき、それは徹頭徹尾規範的な決断であると、同趣旨のことを述べています。
確かに、これまでは国政選挙に係る選挙困難事態は発生していません。これは生の事実です。東日本大震災は、一つ、自治体選挙のみ、二つ、被災県三県にのみ、三つ、数か月間のみ延期されています。
しかし、生の事実と立法事実はおのずと異なります。南海トラフ、首都直下型地震に関する地震学の知見を踏まえ、東日本大震災の生の事実から、橘局長のおっしゃる抽象的な事実を抽出すれば、一つは、自治体以外の選挙に、二つは、三都道府県規模を超える領域に、三つ目は、数か月間を超える延期期間にも及び得るものとして、規範的に決断することができます。
加えて、新型コロナ感染を上回る感染症の蔓延に関する疫病学の予測、さらには、台湾有事に関する安全保障の専門家たちの予想などに考えを巡らせば、十分、立法事実として成立するのではないでしょうか。
それでも認識は共有されないのかもしれません。しかし、ここまで議論をしている以上、認識の違いは尊重しつつ、小野委員からもございましたが、どこかで審査会として結論を出さざるを得ないと思います。論じて決しないということでは、本審査会の責務は果たせません。
私としても、実際に選挙困難事態が発生した際に、いや、想定外でしたとならないためにも、早急に条文案の作成に入ることを求めたいと思います。
次に、自民党の稲田委員より、自民党のたたき台素案では、参議院の合区を解消すべく、参議院議員の選挙において、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも一人を選挙すべきものとしているなどを明記しているとの発言がございました。
我々も、参議院の合区は解消すべきだと考えています。ただ一方で、そのためには、憲法第四十三条一項にある、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」という条文をめぐり、衆参の役割を始めとする統治構造そのものの議論を深める必要があると考えます。引き続き検討すべき重要な課題でありますが、これまでの審議の流れに従うならば、国会機能の維持に絞って条文案作りを進めることを優先すべきだと思います。
最後に、同党の石破委員より、平成二十四年の自民党憲法改正草案には、内閣は要求があったときは二十日以内に臨時会の召集を決定しなければならないとの記載がある旨発言がありました。全く賛同します。実際、我々三会派の共同案にも、臨時会召集要求に係る召集期限を二十日以内と明記しています。
以上申し上げたことから、やはり早く起草委員会を立ち上げて、石破委員御指摘の第五十三条の改正を含む、国会機能の維持に絞った条文案作りを進めることを要請して、私の発言とします。
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