山下貴司の発言 (憲法審査会)

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○山下委員 自由民主党の山下貴司です。
 私は、直ちに具体的な条文を起草するための協議を始めるべきという立場から発言いたします。
 我々が提案する四項目は、いずれも憲法が直面する緊急の課題であり、国民投票や関連法令の整備に必要な時間を考えると、今から具体的議論を始めなければならない問題です。
 まず、緊急事態はいつ起こるか分かりません。年明けに能登地震があり、先週も四国で震度六の大地震が、そして昨夜も震度四の地震がありました。被災された皆様には心からお見舞いを申し上げますが、首都直下型の大地震や南海トラフ地震などは、いつ起きてもおかしくありません。国会が機能不全となるような緊急事態においても憲法秩序に基づいて国民の生命、身体、財産を守るためにも、現行憲法に欠けている緊急事態条項の整備は喫緊の課題であると考えます。
 危機意識のない方は、そんなことは想定外、想定しなくてよいと言いますが、想定外のことが起きるのが現実です。現に、関東大震災が発生したのは、日本に正規の総理が存在しないときでした。前任の加藤首相が死去後、後任の内閣が発足していなかったからです。そのとき、日本の先人は、明治憲法の条文に基づいて、新しい山本権兵衛首相を任命し、国会が開会するまでの三か月の間、十数本の緊急勅令を出して乗り切ったのです。
 このように、日本には、緊急事態に憲法に基づいて対応した経験があります。ただ、明治憲法には緊急事態に対応する条項がありました。また、九割の国の憲法が緊急事態の条項を持っています。しかし、今の日本国憲法にはないのです。
 緊急時の国会機能の維持、特に選挙困難事態についてここで申し上げます。
 遅くとも来年秋までには衆参の任期が切れます。そのタイミングで大規模な首都直下型地震が発生し、長期にわたり国会が機能不全となる、任期満了後、国会議員が存在しなくなったのに、広範囲にわたって選挙もできず、国民の生命を守るための法律や予算を審議する国会も開けない。私たちは、そのような場合でも日本国憲法に基づいて国政を行うべきであり、だからこそ、憲法に緊急事態に関する条項を定めるのが立憲主義を守ることであると考えます。
 なお、国会議員の任期満了後の国会について、参議院の緊急集会条項の類推適用で対応すべきとする見解もあります。しかし、当審査会でも配付された「「参議院の緊急集会」に関する資料」によれば、緊急集会が任期満了の際に開けるかについて、従来の通説は、憲法に明文の根拠がないことなどを理由として否定的に解していたとされ、例えば、憲法学の権威として最高裁判事を務めた伊藤正己東大名誉教授は、衆議院の任期満了によって総選挙が行われるときにも起こり得る事態であるが、明文上このときは参議院の緊急集会は認められないと、否定説に立つことを明らかにしています。
 最近こそ緊急事態への類推適用を認める憲法学者が多くなってきたとはいえ、決めるのは、時として変わる憲法学者の多数決ではなく、最高裁です。伊藤正己最高裁判事のような文理を重んじる立場の最高裁判事が多数を占めれば、任期満了時の緊急集会の類推適用が最高裁で否定され、緊急集会で議決された措置が全て無効と判断される可能性は厳然として存在します。その場合の大混乱を考えると、安易な類推解釈にかけるより、緊急事態の対応については憲法上明記すべきであります。
 この方向性については、既に当審査会の与野党五会派が共有しています。改正のためにかかる議論の密度、国民投票期間、改正を踏まえた関係法律の整備とその周知期間を考えると、まさに今から具体的条文の在り方を協議する必要があります。
 同様に、自衛権の行使の明確化についても喫緊の課題と考えます。
 我が国をめぐる安全保障の環境の厳しさもさることながら、先ほど逢坂委員から芦部「憲法」の引用がありましたので、その芦部「憲法」の最新版の一ページには、この補訂をされた高橋和之教授が、芦部先生が最晩年に、憲法九条を法的拘束力のある規範ではない、むしろ政治的マニフェストと考える説を検討すべきかもしれないと、最近知って非常に悩んだということが書かれてあります。
 芦部先生は最晩年に、九条を法的に拘束する規範だと考えると、憲法を改正するか自衛隊を解消する方向で考えるかしない限り、憲法規範との矛盾を解くことができない、そうでなければ、第三の道として、政治的マニフェスト、つまり法的拘束力のない規範として憲法九条を考えるべきだ、そう再検討しなければならないと述べたということで、この高橋教授は、先ほど引用のあった芦部「憲法」の冒頭で、七割以上の国民が自衛隊の存在を支持すると答えるようになっている、こうした現実を前にして、憲法学は自衛隊の憲法適合性問題を棚上げした、立憲主義を守れという呼びかけは、憲法と現実の乖離を説明し指針を与える理論なくしては、うつろにしか響かないと書かれております。
 このように、憲法学の権威ですら指針を示さない中、国民の代表者から成る国会こそ、憲法に定められた責務、すなわち発議を国民に対して果たすべきであります。
 これまで丁寧に議論を重ねてきた当審査会の議論を踏まえ、喫緊の課題である項目について、与党のみならず野党の多くも求める条文起草のための協議会を求めることを求めて、私の発言といたします。
 以上です。

発言情報

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発言者: 山下貴司

speaker_id: 606

日付: 2024-04-25

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会