吉良州司の発言 (憲法審査会)

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○吉良委員 有志の会、吉良州司です。
 まず冒頭、皆様にお礼を申し上げたいと思います。少数会派ゆえ、一度は本審査会枠を失うことになりましたが、各会派、各委員の御配慮により、このように再び本審査会への参加を許されることになりました。厚く御礼を申し上げます。
 本日、私は、憲法の「地方自治」について論じたいと思います。
 我が国は、失われた三十年と言われる長期経済低迷により国力が大きく減衰していますが、その大きな原因の一つは、東京が機関車、地方は自動的に引っ張られる、自力走行できない客車という中央と地方の関係にもあったと認識しています。東京一極集中と地方の衰退がそのことを如実に物語っています。
 我が国が国力を回復するには、地方も自力走行できる新幹線型に変革する必要があります。そのためには、地方の自主自立、独立自尊が担保される憲法上の規定が必要であると考えています。
 二年前の二〇二二年五月二十六日、地方自治その他のテーマで開かれた本審査会の会議録を読むと、憲法九十二条の「地方自治の本旨」の文言の曖昧さを指摘し、そこから導かれる住民自治及び団体自治の理念の憲法への明記が必要とする意見が、我が会派の北神委員のほか、各会派から述べられております。また、補完性の原則並びに地方の課税自主権を明記すべきだという点も、おおむね同じ方向であります。
 私は、これら共通の方向性の先に、より具体的な地方の在り方を示し、それを憲法に明確に規定する必要があるという観点から、意見を述べます。
 私は、地域の課題は千差万別であり、これに対処していくためには、地方自治体は地方政府であるべきだと考えます。
 例えば、自治体において、学校、橋、道路、福祉施設など、関係省庁をまたぐ建設要望がある場合、本来なら、限られた財源の中で明確な優先順位をつけ、建設すべきもの、断念すべきものを取捨選択する政治判断が求められます。しかし、現実に自治体は、優先順位づけの政治判断を行っているでしょうか。所管省庁や族議員に対し陳情し、各省庁管轄内の予算づけが行われているだけで、省庁をまたぐ要望の優先順位づけや取捨選択などの政治判断は行われていません。これは、地方の抱える問題の解決に資さないのみならず、国の財政規律が緩み切っている現状にもつながっています。
 地方制度の歴史を見ると、明治憲法には地方自治に関する定めはなく、府県制、市制町村制といった地方制度の中で、特に府県は中央政府の出先の色彩が強かったと承知しています。
 日本国憲法制定の過程で、地方制度に関するGHQ案の章の名称は「地方政治」であり、現行九十四条に当たる部分について、自治体の権限は、その「財産、事務及政治ヲ処理」とされていました。これは、自己完結した統治権限の付与を意図したもので、私がさきに述べた地方政府に近いものです。これに対し、当時の日本政府は、GHQと折衝する過程で、新たに現行九十二条の規定を追加し、地方自治の制度を法律に委任することで、明治地方制度の大部分を温存することが可能になりました。その意思は、現行九十四条で、自治体の権限に関するGHQ案の「政治ヲ処理」を「行政を執行」に置き換えたことにも端的に表れていると思います。
 戦後復興から経済大国へと発展していった発展途上国時代に限れば、中央集権的仕組みを残したことは間違っていなかったかもしれません。しかし、国民の生活の一定水準のナショナルミニマムが整備されてからも、いまだ自治体は、会社で言うところの経営判断を行う取締役ではなく、方針に従った事業運営に責任を負う執行役員でしかない状況は変わっていません。これでは、地方が抱える様々な問題に抜本的な対応は望めません。
 では、自己完結型の地方政治を行う地方政府の単位とはどのようにあるべきか。ここからは様々な意見があると思います。
 私は、道州制については、三大都市圏を始めとする相当規模の経済的一体性がある地域には有効だと思っています。しかし、その他について言えば、例えば九州州や東北州を想定すれば、それぞれ福岡や仙台への一極集中が進むだけで、有効に機能しないと考えます。
 私の考える地方政府たる自治体の確定基準としては、一、生活圏、経済圏がほぼ同じであること、二、歴史的、文化的一体性があること、三、地域内に経済を牽引する中核都市があること、この三つを挙げたいと思います。この基準に従った具体的なイメージは、奈良時代の律令制時代の律令国のような領域です。例えば、中核都市浜松市がある静岡県の遠江、同じく静岡市がある駿河といった各領域が基礎自治体としての地方政府になるというイメージです。
 そして、これらの地域において、自治体が自己完結型の政治を行う地方政府としての権限、財源を備えた上、その独立性は江戸時代の藩のように高度である、いわばユナイテッド・藩ズ・オブ・ジャパン的体制が、私の考える新しい国と地方の姿です。
 このような地方制度の具体論に至ると、意見は様々あろうかと思います。しかし、強固に根づいている中央集権的明治地方制度の流れから脱却するためには、あるべき地方制度の具体論と、そのための国と地方の権限配分、財源配分を明確に憲法上規定するような、地方自治の在り方の再デザインが必要と考えます。
 最初に御紹介したとおり、審査会での地方自治に関する憲法改正の議論は、入口においては各会派の方向性は共通しています。今後、具体論を出し合った上で、更に集中的に討議する機会を設けることをお願いいたします。
 なお、これまで本会にて積極的に発言をしてきた我が会派の北神圭朗委員より、国会機能維持の条文起草委員会を早急に立ち上げるべしとの意見を言づかっておりますことも併せ報告させていただき、私の発言を終わります。
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発言情報

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発言者: 吉良州司

speaker_id: 8998

日付: 2024-05-16

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会