玉木雄一郎の発言 (憲法審査会)

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○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
 憲法審査会は、本日、事実上、今国会の最終回だと思います。来週は不信任案も出るかもしれませんので、今日、最後だと思って発言をいたします。
 結局、今国会では条文案どころか起草委員会も設置されず、岸田総理の今の総裁任期中の発議は不可能となりました。今、猛烈な徒労感を覚えています。これは岸田総理の政治責任が問われる事態だと思います。
 また、条文案を出したらほかの法案審議を止めると言う立憲民主党さん、そのことに唯々諾々と従う自民党にも苦言を申し上げたいと思います。憲法審査会は本来、政局を持ち込まないという理念だったと思いますが、それが形骸化しています。この停滞する憲法議論は、停滞する日本、決められない日本を象徴しているように感じるのは私だけではないと思います。
 他方、先ほど自民党の中谷幹事から御説明をいただいた内容にはおおむね賛成です。自民党に少しでもやる気があるなら、せめて起草委員会の設置だけでも今国会中に決めて、閉会中も憲法審査会を開き、本日御提出をいただいたメモや我々三会派の条文案を踏まえた条文化作業を進めることを求めます。
 なお、篠原委員が緊急政令をここに加えたいのであれば、是非条文化作業に加わっていただきたいというふうに思います。
 これまでの議論で、選挙困難事態に対応するには憲法改正が必要であることはもう明らかになったと思います。
 本日も、前回の審査会で立憲民主党の本庄幹事の繰延べ投票で対応できるという発言に今日は反論しようと思ったんですが、いらっしゃらないので残念なんですけれども、反論したいと思います。あわせて、自民党の山田委員の質問にも答えたいと思います。
 まず、本庄委員が提起した幾つかの論点について反論いたします。
 まず、東日本大震災の発災の六日後の平成二十三年三月十七日、地方議員の任期延長特例法を審議した国会において、任期満了時に選挙を適正に行うことが困難な場合に、繰延べ投票の適用の可否が問われました。このことに対して、当時の片山総務大臣は次のように答弁しています。「御指摘の繰り延べ投票というのは、これはちょっと趣旨が異なりまして、告示をして既に選挙が走っている間に、その選挙期間中に何か不測の事態が生じて投票できないといったときに投票日を延ばすということであります。」と。
 これは公選法を所管する総務大臣の答弁でありますけれども、まず、繰延べ投票は原則、総選挙の公示後や参議院通常選挙の告示後に緊急事態が発生した場合にしか適用できません。もし公示や告示の直前に大規模災害等が発生したときに繰延べ投票をあえて適用する場合は、選挙実施困難だと分かっているのに、いわばダミーの選挙期日を公示又は告示した上で投票を繰延べすることになります。しかし、これは、選挙や繰延べ投票の在り方の本来の制度趣旨に反するものだと言わざるを得ません。
 その上で、前回の最初の答弁について反論したいと思います。
 本庄委員は、公選法第三十三条の二によって、衆議院議員の補欠選挙では、任期満了に係る場合では最長約一年間、任期満了に係らない場合でも最長で七か月、欠員が生じ得ることを想定している、だから、憲法上も、少なくとも七か月強ないし一年は繰延べ投票が認められると答弁されましたが、しかし、数選挙区のみで行われる補欠選挙と、全ての衆議院議員や半数の参議院議員が対象となる総選挙や参議院通常選挙において広範かつ長期に繰延べ投票を実施することを同列に論ずることは不適切です。
 そもそも、繰延べ投票は、ごく限られた投票所で投票ができない場合に短期間投票を、選挙期日を繰り延べるものであって、多くの、まさに一体性が損なわれるような形で選挙ができないときに繰り延べるということを想定しておりません。また、総選挙や参議院通常選挙で長期にわたって順次繰延べ投票が行われると、比例代表選出議員の選出がなされず、議席数が長期間確定しません。それに対して、補欠選挙では、先般も行われましたが、比例がございませんので、そのようなことは生じない点でも状況は大きく異なります。当てはめるべきではない事案に無理やり繰延べ選挙を当てはめていると言わざるを得ません。
 次に、選挙困難事態において、繰延べ期間中の選挙運動に関して、本庄幹事から法律改正で対応できるという反論がありましたが、これは先ほど北側幹事からもありましたが、長期間にわたって投票を繰り延べる場合、選挙運動期間を制限あるいは短縮する旨の法律改正を行うとすれば、それはもはや繰延べ投票ではなくて、事実上、国政選挙そのものを延期する制度になります。そのような法律による国政選挙の延期は、衆議院の解散から四十日以内に総選挙を行わなければならないと定めた憲法五十四条に違反します。
 三つ目に、長期間にわたって議員が不在となるような判断を選挙管理委員会に委ねても問題ないと主張されましたが、であれば、東日本大震災の際に、民主党政権は繰延べ投票ではなく、なぜ特例法で対応したんでしょうか。しかも、前回紹介したように、特例法は再延長されましたが、それは発災後四か月たっても選管業務に人が割けないとする福島県選挙管理委員会等の要請によって行われています。広範な地域において長期間選挙の適正な実施が困難な、統治機構の根幹に関わるような事態の判断を選挙管理委員会に委ねるのは適切ではなく、内閣と国会で責任を持って選挙の適正実施についての判断を行うべきであります。
 最後に、スーパー緊急集会を認めても憲法上の制約がないと主張されましたが、それは明らかに立憲主義をないがしろにする発言であります。
 まず、解散に起因する衆議院の不在期間が最長七十日であることは、文言上、一義的に明白です。次に、参議院の緊急集会は、憲法が定める両院同時活動の原則に対する例外であって、厳格に解釈すべきであります。さらに、七十日を超えた場合にどこまでが限度かが分からず、その濫用を止める手だてが憲法上用意されていません。
 以上を踏まえると、参議院の緊急集会はあくまで、最大七十日程度の期間に次の国会が召集されることを前提とした一時的、暫定的、限定的な制度であって、これを超えて対応することは憲法違反であり、権力の濫用の危険を否定できません。
 以上のことから、選挙困難事態に繰延べ投票で対応することはできず、憲法違反のおそれすらあることを改めて指摘したいと思います。やはり、七十日を超える長期にわたり選挙の一体性を害するほど広範に選挙実施が困難な場合に備えて、選挙期日の延期とその間の議員任期の延長を可能とする憲法改正が不可欠であります。
 次に、自民党の山田委員の質問に答えたいと思います。
 七十日を超えないが、四十日を超えて選挙実施が困難なケースでは選挙困難事態にならず、任期延長はできないのではないかとの質問をいただきましたが、この場合はむしろ緊急集会で対応すべき射程だと考えます。
 ただし、解散から四十日を超えて選挙を実施することは現行憲法の条文上は認められませんので、憲法五十四条一項を改正し、解散から四十日以内に総選挙を実施できないときは、七十日以内に総選挙を行い、その後速やかに国会を召集する旨の規定を新たに新設すべきだと考えます。その上で、さらに、七十日を超えて選挙が困難な場合については議員任期の延長の特例を認めるといったすみ分けを憲法上明確にすることが適切だと考えます。
 次に、解散で一旦失職した衆議院議員が自らの身分を復活させる決議に加わるべきではなく、参議院の緊急集会で身分復活手続を踏むべきだとの意見をいただきました。
 これは一案だと思いますが、解散によって衆議員の身分を失わしめた内閣自身が選挙困難を認定する以上、自ら行った行為を撤回したと理論構成できるので、内閣の認定をもって身分が復活するとしても、民主的統制に問題はないと考えます。そもそも、議員任期の延長のような統治機構に関わる事柄は、衆参のできるだけ多くの議員が決することが適切だと考えます。
 最後に、解散の禁止と内閣不信任案の禁止はセットではないかとの質問ですが、平時におけるチェック・アンド・バランスとして、解散と内閣不信任をセットで考えるのは当然だと思います。
 他方で、緊急時においてこそ、立法府が一義的に責任を持ち、行政府はその権限の範囲内で対応するという国会中心主義を徹底することで国民の権利保護に万全を期すとの考えもあり得ると思います。緊急時において、与党も含めた大半の議員がどうしてもこの総理大臣やこの内閣は緊急時の対応を任せられないと考える場合もあり得ることから、最終手段として内閣不信任案を残しておくべきだと考えます。
 以上、立憲民主党及び自民党の委員からの質問に返答させていただきましたが、もう論点は出尽くしていると思いますので、閉会中も憲法審査会を開いて条文化作業を進めることを求めたいと思います。もし九月までに条文化作業が全く進まないのであれば、それは岸田総理の約束違反であって、総裁の職を辞すべきではないかと思います。
 このことを最後に申し上げ、今国会最後の発言といたします。

発言情報

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発言者: 玉木雄一郎

speaker_id: 29596

日付: 2024-06-13

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会