渡部俊也の発言 (内閣委員会)

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○渡部参考人 おはようございます。
 本日は、お招きいただきまして誠にありがとうございます。
 私からは、実証分析系の政策研究を行っている立場から、重要経済安保情報の保全制度の必要性、及びその方法としての人的クリアランスが必要であること、そして、本制度の運用における留意点の三点についてお話を申し上げたいと存じます。
 お手元の資料の表に要点、裏に参考文献をつけさせていただきましたので、御参照いただければと思います。
 本制度整備については、かねてから産業界の強い要望があるところであります。背景としましては、制度がないことが原因で、海外の情報共有から締め出されているのではないかという懸念があります。もとより、日本国民が米国等のセキュリティークリアランスを取得することはできませんが、我が国が他国と同等の制度を整備していないため、政府間で情報共有されたものが民間には提供されないということが問題になります。
 例えば、米国で、何社かちょっと現地で調査をいたしましたが、サイバー技術開発に従事する日本企業の米国現地法人は、米国人を採用してセキュリティークリアランスを取得しておりましたが、日本に同等の制度がないため、例えばサイバー攻撃に関する致命的な情報を得たとしても、その情報を日本の本社には提供できない、また、本社の技術がその対策として使えたとしても、そのことを本社に伝えることができないということを伺いました。
 先端的な技術開発においては、官民協力が不可欠であり、政府だけが重要情報を持っていても、対応には限界があると思います。英国との関係でも、同様の問題を抱えている企業がありました。
 本制度を有するG7各国ではお互い官民協力が可能であるのに、我が国だけ制度を有していないということが重大な問題であるということは想像に難くないと思います。
 では、そのような機密情報を民間に提供する場合の問題点について述べたいと思います。
 情報が提供される相手は民間企業ですから、そこからの漏えいが問題になるわけであります。これを検討するには、企業の保有する営業秘密が現在どの程度漏えいしているかというような実態を踏まえるべきであります。
 以前から、企業の営業秘密漏えいに関する調査はしばしば行われてきましたけれども、おおよそ五%から一〇%程度の企業が営業秘密の漏えいを経験したという回答をしております。この数字自身は大変大きいと思いますけれども、更に深刻なのは、これは全体のごく一部、氷山の一角であり、実際は、その何倍、さらには一桁多い漏えいが疑われるということです。
 私が二〇一四年当時に行った研究でありますけれども、漏えいしていても全く気がついていない企業が極めて多いことが分かりました。
 これを踏まえ、政府に営業秘密保護の強化を提言し、二〇一五年の不競法改正、これは海外重課、非親告罪、未遂罪などを設けていただいた経緯がございます。ちなみに、罰則は、十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金、海外重課は三千万円ということで、当然、単純な比較はできないですけれども、今回の法案より罰則は厳しいものです。
 その結果、以前は営業秘密の事件はほとんどなかったんですけれども、この制度整備後は徐々に摘発件数が増えてきました。ただ、他国と比べてまだ件数は少ないです。氷山の全貌は、まだ姿を現していないと思われます。
 その漏えいの原因がポイントなんですけれども、重要なものはほとんど人を通じた漏えいで、現職従業員又は退職者によるものということが分かっています。この状態で政府さらに他国の機密情報の提供が行われたら、諜報活動は常に弱いところが狙われるということになりますので、大変深刻なことになるというふうに想像されます。少なくとも、他国と同等の保護制度、人を通じた漏えいを防止する適性評価を行わなければ、情報共有を行う相手国にとって信頼できるものにはならないというふうに考えます。
 その点、今回の法案にある適性評価制度も、運用実績や諸外国の動向などを踏まえ、リスクが残っていないかどうかは検証していく必要があるものと思います。
 他方、今後法案が成立した際の運用については、幾つか留意点があると思います。
 まず、プライバシー、労働法制との関係。そして、本人の意思に反する適性評価を決して行ってはいけないこと。機密情報の提供が真に必須であり、任意の了解の下で行われること、これは本制度の根幹であると思います。個人情報を含む調査結果についての目的外利用の禁止。そして、何より重要なのは、クリアランスホルダーの民間人は、今回、我が国にとって極めて大事な人材であるということだと思います。
 参考文献三に示しておりますけれども、我が国は、バブル崩壊後の経済低迷の間、多くの貴重な技術者が海外に職を求めて移籍したことで、日本は技術を失ってきたという苦い経験があると思っています。今回は、特に政府の制度を支える貴重な人材の話になりますので、その処遇や雇用に不具合があってはならないと思います。罰則だけで健全な官民協力体制は形成されません。経済安全保障政策全体として考えるべきことですけれども、施策を担う民間人を大切に扱う制度であるべきだと思います。
 また、個人のクリアランスだけでなく、施設や組織のクリアランスについて運用を定めていくことが重要であります。米国では、個人のセキュリティークリアランスと同等に、組織や施設のクリアランスがしっかり行われていまして、特に研究開発を行う場合はこれが非常に重要になる。
 他方、その組織の経営者を含む指揮命令系統にある人物、これは監査などとか、いろいろな形でそれをチェックするという機構があるわけですけれども、全ての個人に機械的にクリアランスを必須としてしまいますと、現実的には対応できないということも懸念されます。その点を考慮し、産業界とは適切な運用方法を検討していくことが重要だと思います。
 いろいろ課題はあるわけですけれども、これらに取り組みつつ、今回このセキュリティークリアランスの運用が始まるということになれば、我が国の経済安全保障に係るエコシステムを発展させる上で、まさに大きな一歩になると思います。それは、単にクリアランスの適用対象に限って政府の機密情報の活用が進むということだけではなく、その外側にある、いわゆるデュアルユース技術の研究開発の規範、これを確立させていくためにも重要と考えられます。
 例えば、防衛技術との境目が曖昧な民間のデュアルユース技術について、やっていらっしゃる方は、どこから機密性の高い研究開発とすべきかということについて、深刻な問題を抱えています。
 これは米国の調査結果からの私見でありますけれども、我が国では、セキュリティークリアランスを必要とする機密研究が今まで存在しなかった、そのために、セキュリティークリアランスを必要とするそういうような機密研究とそうでないものの境目があって、境目が認識されるということがなかったということで、結局その境目が分からない、だから全体としてグレーみたいに捉えられてしまうというような傾向もあったんじゃないかと思います。
 今後、本制度の運用が始まることで、その境目がはっきりする、認識ができるということで、それが判断しやすくなるということを期待しますし、同時に、機密研究でない基礎研究における管理についても、そこの制度を整備していくという課題がはっきりしてくる。
 今回の法案の次の課題になりますけれども、最近G7で合意された人や組織に関するデューデリジェンスの徹底、さらに、米国で言う、CUIと言っていますけれども、管理された非機密情報に相当する情報管理、こういうものについては、ガイドラインを整備するというようなことが次のステップでは重要になると思います。これらが整備されれば、クリアランスの外と内が組み合わされた経済安全保障のエコシステムが形成されていくということが期待できます。
 もっとも、このようなエコシステムは、制度をつくればすぐに機能するというものではありません。制度を運用しながら人材も育て、徐々に形成されるものと考えられます。逆に、できるだけ早くこのプロセスをスタートさせなければ、既に大きく劣後している可能性の高い、我が国の戦略的自律性を補う時期が更に遅れるということになるかと思います。
 そのような観点から、本法案の早期の成立を強く望むものでございます。
 私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 渡部俊也

speaker_id: 15568

日付: 2024-03-28

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会