三輪泰史の発言 (農林水産委員会)
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○三輪参考人 皆さん、こんにちは。
本日は、食料・農業・農村基本法の改正に当たりまして、御意見いただく機会をいただきまして厚く御礼申し上げます。
私自身でございますが、食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会の委員として検証の現場の方に携わらせていただきました。また、あわせて、同審議会の畜産部会長や、甘味資源部会長及び農林水産省の食料安全保障アドバイザリーボードの委員でございましたり、農村デジタルトランスフォーメーション構想検討会の座長などを務めさせていただきまして、今回の基本法の改正に当たりまして様々な角度からこれまで参画をさせていただいてきた者でございます。
今日は、そのような立場から、基本法の改正に当たりまして私見をお伝え申し上げたいというふうに思っております。
まず、同審議会基本法検証部会での議論でございますが、先ほど、ほかの参考人の皆様からもお話がございましたように、現基本法が施行後二十年余りたちまして、農業関係の現場はかなり厳しい状況に置かれているということは御案内のとおりかというふうに思います。その中で、今回まさに適切なタイミングで基本法の改正に対するアクションが取られるということを、私自身、非常にすばらしいことだというふうに理解しております。
審議会の中では、答申まで十七回ですか、私の記憶だと十七回の審議会が開かれまして、その中では、我々審議会委員のみならず、全国の農業者であったり、食品関連の事業者、若しくは自治体の方々など様々な方にお越しいただき、御意見をいただき、議論をさせていただきました。
また、全国十一か所、地方意見交換会というものが開催されまして、私も帯広と仙台と高松の三か所で座長をさせていただきまして、やはり各地それぞれ御意見が違うなと思いながら、現場からの御意見、御要望、若しくは我々に対する厳しい御意見もいただきながら議論をしてきたというふうに思っております。
審議会の中では、それぞれお考えであったりお立場が違う中で様々な議論が闘わされた、意見がぶつかることもあったと思いますが、そのようなことが公開の場でしっかりとなされてきたということがやはり法改正のプロセスとしては重要なのではないかと、委員を務めた立場からは考えておるところでございます。各委員は、今回、これからの二十年、三十年先の日本の農業を見据えた上での議論をしてきたというふうにそれぞれおっしゃっておったのが記憶として持っております。
今回の基本法でございますが、やはり産業政策と農村政策の両輪としてのバランスというのが非常に重要だというふうに思っております。その中で、様々な現場の農業者の声をお聞きする中で聞くと、是非、農業者が誇りを持ってこれからも農業を続けられる、そのような法改正にしてほしいということをかなりストレートに御表現いただいたことが何度もございました。
農業者の方々は、様々な創意工夫をされ、努力をされ、御苦労をされながら所得向上に励んでおられます。そのような取組が今後より一層伸ばせるような法改正であるべきだと私自身も思っております。他産業と農業の所得水準に大きな差がなく、職業として私は農業をやりたいんだというふうに若い方が今後も手を挙げていただけるような、そのような状況をつくるべきだと思っております。
また、そのような魅力的でもうかる農業ができたときには、若い方の就農が今後増えるということが期待されますし、魅力的な農業を核にした地域特有のローカルビジネスの創出などにも貢献が期待されます。
なお、このとき、もうかる農業というのは、必ずしも規模の大小とか、専業、兼業という区分ではないというふうに思っております。農業を本気で取り組んで、農業で生計を成り立たせていく、そのような思いを持った方々が農業の中心にあるべきだと思いますので、そこのところは私の御意見として申し上げたいというふうに思います。
ここから三点、食料安全保障、スマート農業、サステーナビリティーについて御意見を申し上げたいというふうに思います。
初めに、食料安全保障でございます。
先ほど申し上げましたように、農水省のアドバイザリーボードの委員として、今の食料安全保障の状況についてのモニタリング等にも関与させていただいております。御案内のとおり、非常に厳しい状況だというふうに感じております。
気候変動、新興国の需要増加に伴う国際的な需給の逼迫、特に、プロテインクライシスと言われるように、たんぱく質の需要増加に基づく国際的な緊張は高まっております。また、国際情勢は非常に不安定化しておりますし、新型コロナを始めとしたパンデミック、家畜の伝染病、若しくは日本固有の事情ではございますが、為替レート、円安による輸入資材の高騰等もございました。
特に、気候変動と新興国の需要の急増につきましては、これからの中期的な期間において、なかなかそのようなリスクが減少するというのは見込めない状況だというふうに理解しております。
つきましては、今回、基本法改正を踏まえまして、国内の農業生産の基盤を更に強くし、農業生産、やはり自分たちの食料を極力自分たちで賄っていくということを進めていくのが、もう大前提として重要になっていく。安くて良質な農産物を海外から集められるというふうな状況は、もはや、しばらくの間は残念ながら来ないと理解をすべきだというふうに理解をしております。
一方で、需要については、人口が減少局面にありますし、高齢化が進んでおりますので、一人当たりの食料消費量も減少傾向にございます。今後の食料需給を見ていく際には、中長期のきちっとしたサイエンティフィックな予測も含めて、冷静な分析と、そこからの政策立案が必要かというふうに考えております。
特に、需要に基づく生産の拡大というのが不可欠だと思っております。最近は、小売店であったり外食店におきましても、国産小麦を使ったパンでございましたり、国産の大豆を使ったしょうゆとか納豆とか、そういうようなものが消費者から非常に高く評価されておりますし、メーカーもそのような消費者の声に応えて国産原材料を使った食品や外食メニューなんかもどんどん出していただいています。そのような、消費者が欲しい、農業者が作りたいと言っているものをより自由に後押しできるような、そのような政策が必要かというふうに考えております。
二点目、スマート農業でございます。
農業就業人口の減少は、残念ながら、これから先もしばらくは、下げ止まりというのはもう少し先の時期になると思います。なぜなら、現在の農業者の年齢構成を見ますと、高齢者の方が、大ベテランの先輩方が圧倒的多数でございます。
十年前の議論であれば、その方々にいかに農業をこれからも続けていただくかといったことが重要なファクターでございましたが、私の親戚も高齢で農業を続けて頑張っておるんですが、そのような高齢の農業者に、これから更に十年、十五年というのは難しい状況に残念ながらなってきております。いよいよ日本の農業も代替わりをスムーズに進めていく必要があるというふうに思っております。
一方、外国人材をこれまでは低いコストでうまく現場で活用させていただく、若しくは研修として御一緒させていただくということがございましたが、海外の人件費単価も向上しておるというところを踏まえますと、低コストな人材をふんだんに投入するという農業モデルは限界を迎えているということを私自身は考えております。
一方で、食料安全保障の観点、農村振興の観点でいきますと、少なくとも今の農業政策の規模というのをしっかりと今後も維持していくというのがまずはもう基本線となるかというふうに思っておりますので、その中でいきますと、より少ない農業者が今の農業の規模を維持するということを考えますと、劇的な生産性向上が必要になります。
それについて、今の二倍働きましょう、三倍働きましょうというのは非現実的ですので、その差を埋めるためには、スマート農業であったり、農業のDX、デジタルトランスフォーメーションというのが避けては通れない状況になっているというふうに思っております。
私自身、DX構想の検討会の座長やスマート農業検討会の委員、若しくは農研機構のアドバイザリーボード座長等を務めておりますが、近年、スマート農業については、いよいよ現場の農業者の方々が使いやすいものが出てきた、普及がし始めたというふうに理解しております。今いろいろな現場に行くと、この機械があってよかった、このシステムを使ってすごくいいよというふうな声が徐々に出てきているというところでございます。やはり、このような普及をより加速させていくということが、これからの日本の農業にとっては重要になると思っております。
そのためには、これからも、農研機構であったり、公設試であったり、大学であったり、民間企業、スマート農業の研究開発だったり、普及に向けての取組を積極的に政策として支援していくことが重要だというふうにお伝えしたいと思います。
また、スマート農業、いろいろな使いやすい技術が出てきておりますが、それでも、正直申し上げると、全員が使える技術ではないというふうに思います。
一方で、スマート農業なしにはこれからの日本の農業を維持するというのは難しいということを考えますと、今農水省が進めております農業支援サービスのように、自ら例えばドローンを買うことができない、ドローンを飛ばすトレーニングは受けていないけれども、地域の専門の事業者、例えば今、滋賀県ではJAがそのような役割を担っていますし、ほかの地域では民間企業が担っております。そこにドローンでのモニタリングのサービス、ドローンでの農薬散布のサービスを頼む、いわゆるアウトソーシングをすることによって、投資であったりITに対するスキルがなくてもスマート農業の恩恵を受けられる、このような状況をつくっていくというのが、これからのスマート農業の普及の一つの絵姿だというふうに思っております。
最後、三つ目のサステーナビリティーの部分でございます。
今、農業の現場では、SDGsに配慮するというのが、もう多くの農業者の方々が異口同音におっしゃられることでございます。
先ほど、参考人の方からお話がありましたように、みどりの食料システム戦略のように、国としての大きな目標も出てきました。非常に意欲的な目標でございますので、すぐにこれが達成できるかとか、今のままこれが達成できるかというと、難しい面がたくさんあると思います。一方で、国際的には日本がこのような目標を立てたということに対しては高い評価がなされていますので、様々な政策をもって、農業者の方々が無理なくこのような戦略の目標を達成できるような体制をつくる、それに対しての必要な予算を講じていくということが不可欠かと思っております。
その際に、一点重要な視点を申し上げたいと思います。
少し前までは、環境対策というのは、コスト増、農業者の方々の利益を押し下げる要因でございました。一方で、近年は、環境配慮をすることによってもうかる農業を実現するという、二つのベクトルが、真逆ではなくて、同じ方向を向くようなものが出てまいりました。これは、まさに大きなパラダイムシフトだというふうに思っております。
背景には、肥料や飼料、農薬などの資材の高騰がございます。
一例を申し上げますと、今スマート農業によって、可変施肥という、生育状況や土壌の状態を見て肥料をその場で混ぜて、適量、最低限の適量を与える技術がございます。元々は環境負荷、例えば地下水だったり土壌に対する負荷を下げるという環境面の技術として出てきたものでございますが、今農業者の方にお話を聞きますと、これによって肥料代が下がったということで、非常に喜んでおられます。つまり、環境に優しい農業をすることが収益を引き上げる要因につながってくるわけです。同じようなものは、例えば農薬のピンポイント散布なども同じような効果が得られます。
また、このような仕組みは、食料安全保障にとってもプラスの効果をもたらします。御案内のとおり、リンやカリなど、肥料原料について輸入面でリスクを抱えている状況でございます。その中で、輸入肥料の使用量を極力下げる、若しくは輸入の飼料の消費量を下げるような効率的なことをやることによって、環境、収益、食料安保、この三つを一石三鳥のような形で実現できる。
やはり、先ほどの御意見にもありましたが、環境対策が農業の振興の逆風になってはいけないものだと思っておりますので、このように、農業者の方々が自ら前向きに取り組んでいただけるような環境対策、環境配慮というのを実現すべきだと思っております。
また、その中では、そのような環境若しくは地域に貢献するような農産物の価値を消費者の方にきちんと伝えて、消費者の方々から評価いただくということが重要だというふうに思っております。
今、農林水産省の方は、温室効果ガスの見える化であったり生物多様性配慮の見える化の実証などをやっておるというふうに伺っております。なかなか消費者の方々にプラスアルファの価格を払っていただくというのは難しいというのは、これまでもそのような壁に何度も当たってきたわけですが、まずは、コストがどのようなことがかかっているのか、若しくはどのような付加価値が生まれているのか、どのように社会に貢献しているのかということを伝える。それに対して、まずは、少ない消費者からかもしれませんが、エシカル消費など、意識を持っておられる消費者の方からプラスアルファを、その価値に応じた価格を払っていただくということから始めていただくことによって、農業者の方々が収益を上げて、更にそのような取組を増やしていきたいというふうに思っていただけるのではないかというふうに思っております。
最後となりますが、基本法の改正というのは日本の農業の新たな第一歩だというふうに思っております。まさにスタートなだけでございますので、これから先、ここに書いてあることを実現する、その中で、農業者、消費者、国民全体が、日本の農業がすばらしいと、これだけ再浮上してよかったというふうに思っていただけるためには、ここから先の具体的なアクションが重要だというふうに思っております。
そんな中、是非、先生方には、農業者そして消費者の後押しになるような施策を講じていただければというふうに思っております。
私の方からの意見は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)