稲垣照哉の発言 (農林水産委員会)

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○稲垣参考人 おはようございます。全国農業会議所の稲垣でございます。
 本日は、三つの法律案の審査のための参考人として御意見を申し述べさせていただく機会を頂戴し、本当にありがとうございます。
 日頃、いろいろ御指導を賜っている先生方が多数いらっしゃること、改めて御礼を申し上げます。
 私は、農業委員会の関係者でございますので、三つの法律案のうち、農振法などの改正をめぐる法律案についての御意見を申し述べさせていただきます。
 全国農業会議所は、御案内のことかと思いますが、全国に千六百九十六ございます農業委員会、そこに約四万人の委員さんがいらっしゃるわけでございますが、その方々を支援するために、全国段階の農業委員会ネットワーク機構として位置づけられている団体でございます。現在は、昨年四月に施行されました改正農業経営基盤強化促進法に基づく地域計画の策定に向けた目標地図の素案作りでありますとかに取り組まれている農業委員会及び市町村の皆様の御支援に取り組んでいるところでございます。
 今回の改正案は、食料・農業・農村基本法の改正案を踏まえた改正でございますので、まず、改正基本法案の評価について申し述べさせていただきたいと思います。
 いろいろな方面から御意見があることは承知しておりますが、法律制定時から四半世紀が経過する中で、農業委員会組織に身を置いております私といたしましては、農業、農村現場の実態と課題を踏まえていただいている点が多々あると思っております。それは、新自由主義、市場万能主義的な農政から、農政を地域に委ねるという、現場感覚にフィットしたものになったのかなと思っているわけでございます。
 平成二十五年に農地バンク法がスタートする際、農地は地域のものという考えを改め競争力のある者に活用させる、また、農業委員会を決定に関与させない、そして、十年間で担い手に農地を全国一律に八割集積等々の議論は、なかなかすんなりとのみ込み難い言説だったわけであります。
 それを、昨年の基盤法の改正で地域の話合いを地域計画として法定化いただき、担い手だけではないその他の経営体も農業を担う者に位置づけ、そして、今回の基本法改正案では第二十六条の第二項を新設いただき、「国は、望ましい農業構造の確立に当たっては、地域における協議に基づき」と、これは当然地域計画を指しているものと理解しております。
 そして何よりも、効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者により農業生産活動が行われているということを明記いただきましたことは、担い手に農地を八割集積したら残りの農地はどうするんですかとか、うちのように中山間地域が多くて、担い手というのは誰ですかという現場の素朴な疑問とか思いについて、極めて常識的に法律案は受け止めてくださっているのかなと思う次第でございます。それを農地と人の面で裏打ちするのが、今回の農地関連の改正法案と認識しております。
 農業委員会組織では、昨年の五月と十一月に政策提案を実施し、今回の改正案にはその内容が相当程度反映されていると認識しておりまして、その行方に重大な関心を持っているところでございます。昨年末に政府が農地法制の見直しの方向についてを取りまとめられ、令和六年の二月に入りまして法案提出により改正内容が明らかになる都度、お手元にあるような資料、お国の出した資料を単なる要約したものではございますが、そういうものを作成し、組織内への周知を図っているところでございます。
 以下、今回提出されました三つの法律案ごとに御意見を申し述べさせていただきます。
 まず、農振法についてでございます。
 目的規定に、農業生産に必要な農用地の確保、それと国民に対する食料の安定供給の確保を追加することは、今般の基本法改正法案を踏まえれば、当然の改正と認識しております。
 ただ、そうやって設定される全国の農地の総量確保の目標面積と、現在市町村段階で策定が進んでおります地域計画で明らかになる守るべき農地の面積との関係をつまびらかにする必要があると思っているところでございます。
 また、農用地区域の変更に国の関与を位置づけるということを評価しております。
 その上で、やむを得ず農地転用のために農用地区域等からの除外を行う際に、その除外面積に相当する荒廃農地の再生などにより農地総量の確保の徹底の視点が重要であると考えます。具体的には、都道府県知事が市町村からの農用地区域除外に係る協議を受けた際に目標面積達成への影響を緩和するための代替措置を求めるわけですが、その際、荒廃農地を再生し、農用地区域に編入することを強く求めることが必要ではないかと思う次第でございます。
 荒廃農地約二十五万ヘクタールのうち再生利用が可能ないわゆるA分類の荒廃農地九万ヘクタールを優先的に再生する働きかけを強め、あわせ、再生困難なB分類荒廃農地についても、地域計画の策定と併せて、該当荒廃農地を含めて機構関連圃場整備事業などを優先的に導入して、農用地区域農地面積の確保につなげる取組を強化する必要があると思っております。
 二番目は、農地法の改正でございます。
 農地の権利取得の許可要件の例示に法令遵守を明記すること、転用完了までの実施状況報告及び違反転用の公表を法定化することを評価しております。
 その際、その運用を行う農業委員会の確認事務などを簡便にすることが必須であると思っております。
 御案内のように、近年、農業委員会の業務は毎年のように増加しており、それに対応する事務局は、約四割で専任職員がいないなどの人員不足に加え、人事異動のスパンが短い中で、もういっぱいいっぱいの対応をしております。更なる業務の付加に際しては、事務の簡素化とセットで御検討をいただきたいと存じ上げます。
 また、原状回復命令に従わない場合の公表は、違反転用を是正する上で当然の改正と認識しておりますが、それ以前に、原状回復措置の徹底が必要でないかとも認識しております。
 我々農業委員会組織としても、農地法第五十二条の四の、農業委員会が知事へ原状回復命令を出すことを要請できるの規定の活用について踏み込む必要があると認識しております。そのためにも、原状回復命令を都道府県が実施し、それを受け止める農業委員会段階が対応できるためのマニュアルというかガイドライン的なものの精緻なものの整備が必要と認識しております。
 三番目は、基盤法についてでございます。
 農業経営発展計画制度を基盤法に措置し、農地法第二条の農地所有適格法人の規制緩和、要件緩和で対応しなかったことについて評価をしております。
 このことは、一昨年末から今年の年初まで開催されました農水省の農地法制の在り方検討会で、会議所、たしか全中さんも、委員が力説した点でございます。
 この改正案は、農業者、地域の懸念に相当程度踏み込む内容、すなわち、法律案では、十四項目ものファイアウォールを設けていただいております。ただ一方で、昭和三十七年の農業生産法人制度発足以来の原則に踏み込む内容であることも認識しております。
 制度発足当初と農業を取り巻く環境がここまで異なってきたことを踏まえての改正でありますが、今のところ、農業現場から表立った反対、反論に我々は接しておりませんが、ただ、折に触れ現場の農業経営者の方々と意見交換をすると、今回の改正を歓迎する声がある一方で、慎重な意見もあることは事実でございます。
 これはやはり、数の上では農業関係者の決定権を担保いただいても、圧倒的なバイイングパワーを持つ食品事業者等に対して本当に反対票を投ずることができるかとの不安の証左であるかと思うわけでございます。
 でありますので、この発展計画制度を基盤法に措置し、農地法第二条の適格法人制度の規制緩和で対応しなかったこと、これすなわち、お国が現場の懸念を受けて立つという決意表明であると私は認識しておりますので、改めて、お国の指導等の実効性を確保することに特に特に注力いただきたいと思うわけであります。
 そのためにも、地元の食品事業者や農地所有適格法人の連携による地域振興の観点からの取組を前提とし、食品事業者、地域ファンドのニーズを掘り起こすことが重要であろうかと思っております。
 最後に、法律のこととは離れまして、総合的な意見として、今般の法律改正案を着実なものとする上での視点を二点申し述べさせていただきます。
 一つは、今回の改正の射程には当然入っていないわけですが、今後の基本計画策定等で議論するべきことと認識しているものでございます。
 それは、農振法、農地法、基盤法の農地管理は農地の地片の管理についてフォーカスしている法律なわけでありまして、一方、日本の農地、特に水田では畦畔、水路、のり面、この三点セットが漏れなくついているわけであります。この管理は、従来、集落、地域の共同活動で行われてきたわけでございますが、現在、言うまでもなく、地域における農業の比率の低下、人口の減少、高齢化でそのような活動が成り立たなくなっている地域が増加しているわけでございます。
 これらの問題については、現在、集落総出の賦役、共同作業、また制度、財政支援としての多面的機能支払い、サービス事業体の形成、農村RMOなどの地域運営組織の設立など、多様なアプローチがなされておりますが、要は、これに要するコストをどうするかという問題についての重要性が増しているとの認識でございます。
 今後、基本計画を議論する際に詰めねばならない問題ではないでしょうか。その際、土地改良区の准組合員制度の活用や不在村地主の関係人口への取り込み等がポイントになってくると思っております。
 二つ目は、今回の改正に直結する問題であり、是非、国会の先生にお願いするしかない問題として認識していることでございます。
 それは、先ほども申し述べましたが、市町村農政の推進体制の問題。市町村農政部署と農業委員会の事務局職員の抜本的強化についてであります。全国千六百九十六農業委員会の職員の平均は四・八人、中央値は四・〇人。うち四割の委員会には専任職員が一人もいないという状態、兼務で回しております。平成の市町村合併以降、市町村における農政セクションは独り負け状態ではないか。兼務の職員さんは、農林関係だけではなく建設、商工、観光なども担当し、一人霞が関状態になっているところも少なくございません。
 令和四年の基盤法改正の際にも参考人としてお呼びいただいた際にも、この意見は陳述ではなく陳情ですと申し述べさせていただきました。
 市町村段階の農政担当と農業委員会事務局職員の増員について、政治の力で何とぞ解決に向けて注力いただきますことを改めて申し上げて、意見の陳述を終わらせていただきます。
 本日はどうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 稲垣照哉

speaker_id: 9532

日付: 2024-05-09

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会