高橋博之の発言 (農林水産委員会)
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○高橋参考人 株式会社雨風太陽代表の高橋博之でございます。
我々の会社は、東日本大震災をきっかけに生まれた会社で、自然災害というのはその時代の社会の課題を浮き彫りにしますが、当時、東北の沿岸で浮き彫りになったのは都市と地方の分断という課題で、それをビジネスの力で解決していこうということで始まった会社です。
具体的に何をやっているかというと、ポケットマルシェという産直アプリですね。生産者が価格決定権を持って自分で値段を決めて、その値段の説明をして、お客さんに直接売る。
もう一つは、おやこ地方留学といいまして、今、帰るふるさとがないという都市住民が増えているので、僕は半分皮肉を込めてふるさと難民と言っていますけれども、夏休みに一週間地方に来てもらって、親は昼間ワーケーションしていてください、その間、子供が農家や漁師のところで様々な自然体験を行うみたいな、そういう都市と地方をつなぐ取組をしております。
ですから、専門家ではないので、この法案に対して細かい指摘はできませんけれども、この十年間、実業家として、日本全国八周をしてきて多くの生産者と消費者の声に触れてきた立場として、感じているところをお話しさせていただければなと思います。
まず、スマート農業法についてですけれども、スマート農業の振興は、あるべき農村の姿とやはりセットで考えないと意味がないんじゃないのかなと思っていまして。すなわち、人手不足を単に解消するためにスマート農業を導入するというのでは、ただの延命措置というか、対症療法というか、根本的な解決にならないのではないのかな。つまり、スマート農業を何のために使うのかということが大切だと思っています。要は、スマート農業をすることによって浮いた人手を一体何に使うのか、そこが大事だと思っています。
かつて、民俗学者の柳田国男さんがこんなことを言っていますけれども、明治の政府から始まって、戦後加速していった日本の農業政策ですけれども、農業生産の生産性というのが飛躍的に高まった。つまり、十人でやっていた仕事を機械化することによって一人でできるようになったので、残り九人は農村から出ていったわけですね。つまり、生産性は飛躍的に高まったけれども、農村は寂れたというふうにおっしゃっています。
つまり、農業政策と農村政策というのはセット、車の両輪であって、農村政策の方も考えなきゃいけないんだという話をしています。農業のみならず、農業に関わる加工業、手工業、金融並びに流通、そういった仕事を農村から出して都市に持っていって、農村は単に原料を生産するだけの寂れたところになってしまった。なので、もう一度それらを、元々、協同組合というのは農業に関わる様々な仕事の人々のネットワークとして形成されてきたわけですけれども、そういうのをちゃんとやらなきゃ駄目だよという話をしています。
今回、スマート農業と言いますけれども、戦後、農業の機械化というのは、言ってしまえばスマート農業じゃないですか。くわでやっていたのを、機械を投入することによって、省力化で、十人でやっていた仕事を一人でできるようになった。それも当時のスマート農業だったと思うんですけれども。その結果、今こうやって過疎になっているんですね。今回またスマート農業をやって、では、浮いた人手がどこに行くのかというところが非常に大事だと思っています。
そのときに、今回、基本法の方で、第四十五条の方ですけれども、地域の資源を活用した事業活動の促進というのが新たに新設されました。つまり、農業以外のなりわい、仕事をやはり農村の中で生み出していかなければならないんだということが新たに新設されたことは、非常に意義深いと思っています。
ただし、今、つまり、お父さんとお母さんでやっていた仕事を、スマート農業を通じてお父さんだけでできるようになりました。お母さんは何をやるかということなんですが、今農村にいる人だけでは新しいビジネスは生まれません。だって、そうじゃないですか。同じ人たちと顔を合わせていても新しいアイデアというのは生まれてこないし、やりたいことがあっても、それを実現するためのやり方が分からないんですね。
そのときに、第四十五条の中で、「農村との関わりを持つ者の増加を図るため、」と書いているんですが、これがいわば農的関係人口と言われているものだと思うんですけれども、外の、農村に関わろうとしている人たちをどう巻き込んでいくのかというのは極めて重要だと思っています。
それから、四十九条に、事実上の二地域居住の話を書いているんですね、農村と都市との双方に居どころを有する生活をすることのできる環境整備と。これも同じでして、都市の人が二地域居住をするときに、自分の興味、関心と農村の課題が重なるところがあれば、それが生きるかいになっていくわけで、マーケティングだとかブランディングだとかを農家の人にやれと言っても難しい話で、その人たちがやることで、いわば柳田先生がおっしゃっていた、現代版の新しい協同組合の形というのができる可能性、地平が今開かれていると思っています。
なので、今国会に国交省から二地域居住を推進する関連法案が出ていますけれども、霞が関でいうと縦割りになってしまいますが、横串にして、ビジョンというか全体観を持って、あるべきこれからの地域の姿というのをお示ししていくのが先生方のお仕事だと思うので、是非、スマート農業を何のためにやるのか、あるべき農村の姿とセットで推進していっていただけるとうれしいなと思っています。
それからもう一つ、食料供給困難事態対策法案についてお話しさせていただきます。
これは、危機対応ということですから、あくまで最後の一手というのが食料供給困難事態対策法だと思うんですが、参考人の先生方からもありましたけれども、最後の一手を打つ前の、やはり平時が非常に重要だと思っています。
これまで、戦後、自動車や家電製品を外国に売ってもうかったお金で食料は外から輸入すればよかった時代が終わって、今、日本の国力も低下する中で、買い負けてしまっている。そうすると、当然国内で生産基盤を強化する以外に選択肢はないわけで、では、今、生産地はどうなっているのか。高齢化が進んで、あと十年たったらこの人たちは農業をやっているんだっけという事態に今直面しているわけですよね。その生産基盤をどう強化していくのかというのは非常に重要だと思っています。
今回、基本法の中で、すごく意義深いなと思ったのが、第十四条の中で消費者の役割というところが、前回の基本法よりも更に踏み込んで書かれたところは非常に意義深いと思っています。それから、二十三条には適正な価格形成の話も盛り込まれていますけれども、やはり、ここは非常に大事だと思うんですよね。生産者だけがずっと変われと言われ続けてきましたが、食べる人は変わらなくていいのかということが問われていると思っています。
今回、基本法の中で食料安全保障の話が出てきましたけれども、食料安全保障は平たく言うと、緊急事態が起きたときに我々はどうやって食べていくんだっけ、これは全ての国民に関わる話であるにもかかわらず、僕の感覚からすると、一部の消費者団体を除いて、ほとんどの人が無関心だなと。自分の命の根源、あるいは孫、子の命の根元に関わる話が国会で審議されているにもかかわらず、ほとんどの人が人ごとになってしまっている。ここをやはり考えていかないといけないと思っています。
なぜこれだけ多くの国民が、これだけ生産地あるいは生産者の窮状が様々国会で審議されたり、あるいはメディアで報じられている中で人ごとであり続けるのかというのは、僕は、都市と地方の分断ということだと思っているんです。
過疎が始まったのは、一九五四年です。集団就職列車です。日本は敗戦国で、この国を経済で立て直していくために、地方の若年の労働力を、いわば当時の労働省から要請を受けた県と国鉄が協力をして、臨時列車を走らせました。運賃免除、片道切符、途中の停車駅なし。東京、大阪、名古屋の三大都市圏に、二十二年間、ベルトコンベヤーのように地方の若者たちを都市に供給し続けたわけです。それが終わるのが一九七五年の三月二十五日、我が岩手県の三百七十四人の中学生を乗せた臨時列車が上野駅に着いて、これで終わるわけですが、二十二年間ですよ。
いわば国家的プロジェクトとして、地方の若い人たちを都市圏に連れていって、重化学工業でこの国を発展させると。当時は合理的な選択で、ゆえにジャパン・アズ・ナンバーワンと言われる経済復興を成し遂げたのは事実ですけれども、帰ってこなかったわけですよ。帰ってこなかったんです。で、過疎が進んでいくわけです。
地方から出ていった、都市をつくっていった地方の移民一世が、今、二世、三世、四世になって、今度は帰るふるさとがないという人たちが非常に増えています。つまり、地方に関わりがないんですよ。食べ物を作るということがどういう世界か、見たこともないんですよ。見たこともないものにお金を払えますか。価値を感じられますか。
今、工業的食事、車のガソリン給油のように十秒チャージ、そういう食事のマーケットが広がっていますけれども、都市と地方の分断を解消していく役割というのは、国家的プロジェクトとして。世界に古今東西ありませんからね、国家的プロジェクトとして二十二年間、そうやって地方の若者を吸収し続けていったということは。つまり、それを解消するのも国家的プロジェクトとして、ある意味国策としてやらなければいけないことだというふうに思っています。
いろいろやらなければいけないことがあると思うんですが、一つだけ。
既に、毎回国会に提出されておりますけれども、青少年自然体験活動等の推進に関する法律案、これは非常にすばらしい法律だと思っています。やはり、子供たちですよ。今、都会の子供に魚の絵を描かせたら半分は切り身の絵を描いてしまうというぐらい、自分の命が何に依存して成り立っているのかということが全く分からないという子供たちが、この社会の未来を担う人間としてどんどん量産されているんですよ。その人たちが将来、食料の安全保障のために適正な価格で買おうという消費者になりますか。
そのときに、僕は、この法律の第一条に感動しているんですよ。あえて読ませてください。目的、第一条。
この法律は、人々の生活が便利になる一方、人と自然や社会とのつながりを実感することが難しくなっている近年の状況において、青少年自然体験活動等が、農山漁村その他の豊かな自然環境を有する地域における様々な体験活動を通じ、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養い、人と人とのつながりの大切さを認識し、農林漁業の意義を理解すること等により、青少年が生きる力を育むことに資し、並びにその実施を受け入れる農山漁村等の活性化及び都市と農山漁村等相互の共感の醸成に寄与するものであることに鑑み、青少年自然体験活動等の推進に関し、基本理念を定め、及び国の責務等を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、青少年自然体験活動等を推進し、もって我が国の活力の向上に寄与することを目的とする。
すばらしいじゃないですか。なぜ、この法案が毎回国会に提案されているのに通らないのか。一刻も早く、これは僕は反対する人がいるのが不思議なんですけれども、是非通していただいて、日本の小学五年生が年間に一週間、地方の農村、漁村に行って農漁業の体験に触れる。これを十年やったら、日本の未来は変わりますよ。食料安全保障も変わりますよ。日本の生産基盤も強化されると思います。
なので、是非そのことも併せて、緊急事態の最後の一手が意味ある一手になるためには、平時の理解が必要なんですよ。緊急時だけ消費者に理解してくれと言われても多分無理なので、やはり平時からそういう生産基盤を強化するための消費者の理解を促進するようなことも、併せて、先生方には是非進めていっていただきたいなと切に願っております。
済みません。以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)