吉川元の発言 (本会議)

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○吉川元君 立憲民主党の吉川元です。
 会派を代表して、ただいま議題となりました地方自治法改正案に反対の立場で討論を行います。(拍手)
 想定されていない事態を想定した。およそ立法事実たり得ないものを根拠にこの法案が国会に提出されたときは、我が耳を疑いました。想定されていないものを対象に、どのように法律を作るのか。それこそ想定を超えた法案です。このような立法が許されるなら、どのような法律でも作ることが可能になってしまいます。このあり得ない立法過程が、委員会審議において政府答弁の混乱、自家撞着を度々引き起こしました。
 全部で三百六十二件の国から自治体への指示規定がある個別法について、まともな検討もしていない。特定の事態を排除しないと言いながら、事態対処法制では指示権は考えていない。事態対処で必要な規定を設けているのが理由というのなら、災害対策基本法、感染症法等でも同様の必要十分な規定を設けることができるのではないかとただしても、正面から答えることはありませんでした。大臣や政府参考人の答弁能力の問題ではなく、この法案そのものの欠陥が、矛盾した答弁として表出したと言うほかありません。
 そもそも、二〇〇〇年の分権改革によって、国と地方の関係は、中央省庁の通達行政がまかり通る上下主従の関係から対等、協力へと大きく変わりました。機関委任事務は廃止され、自治事務と法定受託事務が設けられ、自治事務については国の関与は是正の要求までとし、法的拘束力のある権力的な関与は原則行えなくなりました。当時、地方議員として地方自治の前線で奮闘した仲間は、雨雲が切れ、青空が目の前にぱっと広がった感覚だったと当時を振り返ります。今回の指示権の創設は、地方自治に再び暗雲を漂わせるものであり、分権改革に逆行するもので、到底容認できません。
 ダイヤモンド・プリンセス号の船内で新型コロナ感染が拡大した際、都道府県を越えて対応する個別法がなかった、これは、数少ない立法事実として政府が例示したものです。しかし、当時のこの想定外の事態に対して、神奈川県側がDMATの出動を要請し、厚労省と協議をして広域搬送を調整しました。ここに、国が何らかの指示を行う出番、必要性はみじんも存在しません。
 新型コロナ対策を例に国の指示権拡大を企図するのであれば、その前に、国が打ち出した数々の対策に誤りがなかったのか、真摯に検証することから始めるべきです。
 学校一斉休校。アベノマスク。四日間連続で三十七度五分以上でなければ検査もできない。地方を無視し、国の準備もできていなかったワクチン接種百万回の大号令。いずれも、現場の実情に全く合わず、自治体の行う対策の阻害要因となり、混乱を招いたのではないですか。こうしたことの反省を抜きに、指示さえできれば解決できたというのは、責任を自治体に押しつける、厚顔無恥も甚だしい行状と言わざるを得ません。
 全国知事会を始めとする多くの関係団体から、拡大された国の指示権の行使の際には、事前に関係自治体と十分な協議、調整を行うことが求められていました。しかし、改正案には、事前協議、調整を義務とする規定は存在しません。あるのは、国が地方自治体から資料や意見を提出するよう求める努力義務規定だけです。全国知事会を始めとする地方の要求に真正面から応えたものとは言えないことは明らかです。
 松本総務大臣は、国の指示権拡大が、現行法の国の関与の原則の下にあり、地方分権の原則にのっとったものとする答弁を繰り返しました。しかし、それを具体的に担保する条文は見当たりません。運用次第で、いかようにも、関与の原則から逸脱します。
 改正案は、さらに、国による応援の要求及び指示の規定を設けています。能登半島地震を始めとした大規模災害に際し、自治体間の応援はもはや必要不可欠のものとして様々な形で実施されています。そこに指示まで行う必要があるのか、審議を通じて明らかになることはありませんでした。
 立法事実に乏しく、どのような事態が対象となるのか、類型すら特定できず、何らの基準もないまま、おそれがあると担当大臣が判断すれば、閣議決定で地方に指示ができ、国会の事前関与もない。およそ、このような極めて曖昧な要件のままでは、時の内閣の恣意的な判断で地方自治体に指示を行う余地を残す、それが今回の改正案です。
 立憲民主党は、指示権行使を極めて限定的にするため、国の地方への関与の原則の維持などを柱とした修正を要求しましたが、残念ながら、与党の皆さんに顧みられることはありませんでした。
 この際、地制調についても一言申し上げます。
 今回の法案は、第三十三次地方制度調査会の答申を基に作られました。地制調は、そもそも、憲法の基本理念を具体化するために設置されたものです。憲法九十二条に規定された地方自治の本旨を具現化することを目的とした地制調が、国による指示権の創設を是認する答申を出したことは、驚きを禁じ得ません。百歩譲って、想定されていない事態への対応が必要だというのであれば、この地方制度調査会の目的に従った答申を行うべきでした。
 過去の災害やコロナ禍の経験が教えるものは、未曽有の事態に直面した自治体が、限られた権限と財源、不足する人員の中で、知恵を絞り創意工夫して事態対応を行ってきたということです。そして、国から出される通知や助言は、その多くが自治体を困惑させ、国の言うとおりに行えば更に被害が拡大するものでした。
 想定していない事態に対する的確な処方箋は、誰も持ち合わせていません。そのときに国が行うべきは、現場を抱える自治体の声を聞き、必要な支援を迅速に行うことであるはずです。そして、平時から想定していない事態に備えるというのであれば、事態が起こったときに自治体が自らの判断で柔軟に対応できるように、国の権限を移譲し、地方の自主財源を充実させる、つまり、更なる分権改革を強力に推し進めることです。
 今回の地制調専門小委員会の議論は、そうしたベクトルとは真逆の方向を向き、国の指示権創設ありきだったのではないでしょうか。残念でなりません。
 以上の理由から、改正案に反対します。
 国と地方の関係を対等、協力と規定した地方分権一括法の成立から、四半世紀が経過しました。しかし、国から地方への税財源の移譲を含め、分権改革は道半ばと言わざるを得ません。分権を強力に推し進め、地方からこの国を豊かにするため、立憲民主党は全力を傾注することをお誓い申し上げ、反対討論といたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 吉川元

speaker_id: 13429

日付: 2024-05-30

院: 衆議院

会議名: 本会議