大塚耕平の発言 (憲法審査会)

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○大塚耕平君 国民民主党・新緑風会会派の大塚耕平です。
 現在の日本国憲法についての基本的論点について意見を申し述べます。
 日本国憲法は、規範憲法ではなく成文憲法です。英国は、単一憲法典は存在せず、規範憲法又は不成文憲法と言われます。英国のような規範憲法であれば、それを構成する法律の改正等によって合意を醸成することが可能ですが、成文憲法ではそれができません。したがって、国家及び国民を取り巻く環境や諸情勢の変化によって成文内容が現実に適合しなくなった場合にどのように対応すべきかということが憲法についての基本的論点です。その場合、憲法改正、憲法解釈又は解釈改憲という手段を取るのか、別の手段があり得るのか、そうした点について、国権の最高機関である国会は不断の議論と検討の責務を負っていると考えます。
 その際、日本国憲法が硬性憲法か軟性憲法かという論点も関わってきます。硬性憲法であれば憲法解釈や解釈改憲に依存する傾向が相対的に高くなる一方、軟性憲法であれば憲法改正という手段を用いる傾向が強くなります。その場合、日本国憲法の規範性の強さとも関係します。日本国憲法が硬性憲法だという立場に立てば、憲法改正ではなく、憲法解釈や解釈改憲によって変化に対応することになります。日本国憲法をめぐるこれまでの経過はまさしくそういう状況です。しかし、憲法解釈あるいは解釈改憲に依存すればするほど憲法の規範性は脆弱化し、日本国憲法が硬性憲法であると主張することと矛盾します。
 一方、日本国憲法は軟性憲法だという立場に立てば、憲法改正は相対的に容易になり、頻繁に憲法改正を行うと憲法の規範性を損ないます。そこで、憲法改正に極めて慎重に対応すれば、結局、硬性憲法的な状態になり、日本国憲法が軟性憲法であるとする当初の主張と矛盾します。
 以上、日本国憲法の性質をどのように定義するかという論点が重要であることを申し述べました。
 次に、憲法改正、憲法解釈、解釈改憲の必要性、つまり、国民及び国家を取り巻く環境や諸情勢の変化が現在の日本国憲法の内容と整合的であるか、あるいはその内容で変化に対応し得るのかという観点から意見を申し述べます。
 日本国憲法が国民の自由を守る基礎法、国家に対する制限規範、そして最高法規であるという三つの要素、及び、日本国憲法の三つの基本原理が国民主権、基本的人権の尊重、平和主義であることを共有した上で申し述べます。
 新しい人権論としては、環境権、プライバシー権、知る権利等が検討課題です。これらの人権保護に関して、現在の日本国憲法でどこまで対応可能で、どこまで時代的要請に応じ得ているかということです。人権と公益の関係に関しては、気候変動や自然災害の深刻さが増す中、被害防止や復旧負担の観点から、人権保護と公益保護のための人権制限をどのようにバランスさせるかは、古くて新しい課題です。公益保護のための人権制限、つまり国民の協力は国民の義務とする考えは行き過ぎ感を免れないでしょう。この辺りのバランスが憲法論における重要な論点です。
 狭義の安全保障及び憲法九条については、国会内外で議論の視座が変遷してきました。憲法制定から一九八〇年代頃までは自衛隊の存在根拠が議論の中心でしたが、一九九〇年代前半には湾岸戦争の影響から国連中心主義と国際貢献の文脈に変化し、二〇〇〇年代は九・一一米国同時多発テロの影響を受けて多国籍軍参加と集団的自衛権という切り口に変わり、さらに二〇一〇年代は日米同盟強化と集団的自衛権の関係が議論されました。二〇二〇年代の現在は、日本を取り巻く極東、東シナ海、南シナ海、台湾海峡、北方領土等の情勢が緊張感を増す中、自衛権の在り方及び人権と公益の関係に焦点が当たっていると感じます。
 この間、憲法九条に関しては、国会のみならず、政府も裁判所も憲法解釈によって対応し続けています。このようなある意味弾力的過ぎる対応は、憲法九条の規範性が強いと言えるのか、逆に弱いと言えるのか、曖昧かつ不明瞭な状況を生み出しています。
 国の安全保障は、狭義の安全保障にとどまりません。サイバー、エネルギー、食料、教育、文化に至るまで、国の存立を危うくする事態が様々な分野で懸念されます。そうした総合的な安全保障について、憲法は明確に規定していません。食料安全保障という言葉が今国会提出法案に初めて登場しますが、そうした法律レベルの対応でいいのか否か議論が必要です。
 冒頭申し述べたとおり、英国憲法は不成文憲法として、法律、議会決議、裁判所判例、国際条約、慣習等の集合体です。日本国憲法を現代の環境下で国民に対する責務を果たす内容に立法及び司法が昇華させられないならば、英国憲法的な構造に転換することも一考の余地があります。
 統治機構の問題もあります。人口減少が深刻度を増す中、国と地方の関係、地方分権推進、道州制、一極集中是正等についても議論が必要でしょう。
 最後に、憲法係争事案の合憲、違憲の判断を通常の裁判所が行っていますが、果たしてそれでいいのでしょうか。憲法裁判所の必要性も議論が必要です。憲法裁判所が存在しないことが違憲状態の放置、過度の憲法解釈、判断留保等の司法の怠慢と司法の越権を生んでいると考えます。
 以上申し述べて、意見とします。

発言情報

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発言者: 大塚耕平

speaker_id: 4047

日付: 2024-05-08

院: 参議院

会議名: 憲法審査会