新田秀司の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(新田秀司君) 経団連労働政策本部の新田と申します。本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
今回の改正法案につきましては、非常に多岐にわたる内容というふうに承知をしておりますので、私からは大きく四点に絞って、特にこの改正法案の審議に携わった使用者側の委員として賛成の立場で発言をさせていただければと思います。加えて、最後に、雇用保険財政の状況に関しましてもコメントさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず一点目として、教育訓練やあるいはリスキリング支援の充実について申し上げます。
御案内のとおり、政府では、三位一体の労働市場改革の柱の一つとしてリスキリングによる能力向上支援の推進を掲げ、その一環として在職者個人の学び直しに対する直接支援の拡充を打ち出しておられます。
そうした中、多くの企業では、イノベーション創出を担う人材の確保と育成、社員のエンゲージメント向上に資する人への投資を推進する観点から、リスキリングを含むリカレント教育などの学び及び学び直しに力を入れております。
今回の改正法案につきましては、こうした実態も踏まえながら、政府として制度面からしっかりと支えていく姿勢を明確に示されたものというふうに受け止めております。
具体的には、デジタルトランスフォーメーションやグリーントランスフォーメーションのこういった推進に伴って我が国の産業構造が大きく変化している中で、高い賃金が獲得できる分野、あるいは雇用され得る能力であるエンプロイアビリティーの向上が期待される分野に対して、働き手個人の主体的なリスキリングを更に支援すべく、専門実践と特定一般の教育訓練給付の給付率を引き上げることにしたというふうに理解をしているところでございます。
教育訓練給付の充実は、在職者の主体的な能力開発やスキルアップ、これを直接的に支援する給付として、失業の予防や雇用保険被保険者の生活の安定だけではなくて、離職者の再就職支援にもつながる大事な施策というふうに考えております。更に申せば、経団連が主張しております労働移動推進型の雇用のセーフティーネットへの移行にも資するものというふうに受け止めております。
加えて、今回の改正法案に盛り込まれております長期にわたる教育訓練期間中の生活を支えるための新たな給付、教育訓練休暇給付と融資制度の創設、これはいずれも、経済的な理由によって教育訓練の受講をちゅうちょしている、あるいはためらっている働き手の背中を押し、後押しし、安心して教育訓練に取り組めるようにするための新たな仕組みであるというふうに承知をしております。
特に、教育訓練期間中の生活を支えるためのこの新たな教育訓練休暇給付に関しましては、雇用保険制度上の教育訓練給付の一つとして明確に位置付けた上で一般財源を投入することによって、政府として人への投資、これにしっかりと取り組んでいくという姿勢を明確に示されたものと高く評価をしているところでございます。
この新たな給付制度の創設は、来年、令和七年十月からの予定であるというふうに承知をしております。改正法案成立後は、この教育訓練に関する休暇制度の好事例の収集と周知をしっかり行うなど、この新しい制度が有効に活用されていくことが非常に重要と考えております。経団連といたしましても周知等にしっかりと努めてまいりたいと、さように考えているところでございます。
次に、二点目といたしまして、基本手当の給付制限期間の見直しについて申し上げます。
御承知のように、現状は、基本手当の受給に当たって、自己都合離職者に対しては二か月間の給付制限が設けられております。これは、安易な離職を防止する観点から有効と考えられる一方で、転職などの労働移動を阻害している可能性が指摘されているということも承知をしております。
そこで、今回の改正法案においては、給付制限期間を原則一か月に短縮した上で、離職期間中や離職日前一年以内に教育訓練給付の対象講座でありますとか公共職業訓練などを自ら受講した場合には給付制限が解除される仕組みが設けられているというふうに承知をしております。
これは、まさに円滑な労働移動の推進を通じた日本全体の生産性の向上、これに資する、寄与する面があるほか、先ほども申し上げた、経団連が主張しております労働移動推進型の雇用のセーフティーネットへの移行にも資するものというふうに考えているところでございます。
次に、三点目といたしまして、雇用保険の適用拡大について申し上げたいと思います。
働き手の就労ニーズの変化に伴いまして、働き方ですとか雇用形態も非常に多様化してきております。こうした中で、働き方に中立的な制度、これの構築を視野に置きながら雇用のセーフティーネットを拡充するという今回の改正法案の意義は非常に大きく、現時点で雇用保険が適用されていない短時間労働者の方々が安心して働くことのできる環境整備にも資するものというふうに評価をしているところでございます。
他方で、今回の適用拡大によって新たに約五百万人の雇用保険の適用対象者が増えるというふうな試算がなされている、その影響は極めて大きいというふうに考えているところでございます。したがいまして、今回の適用拡大に当たっては、その十分な周知と併せて、企業やハローワーク等における準備期間をしっかりと確保して、現場において混乱を招かないようにする必要性が非常に高いと、こうしたことから令和十年十月の施行になっているというふうに承知をしているところでございます。
政府、厚生労働省におきましては、施行までの間、適用拡大の意義ですとかメリット等について、全国のハローワーク等を通じてしっかりと周知活動を展開していただくとともに、申請手続の簡素化等も進めていただくようお願いしたいというふうに思っております。加えて、経団連としても、様々な機会を捉えて、会員企業を始め、広く周知を図っていく所存であります。
最後、四点目といたしましては、育児休業給付の財政基盤強化について申し上げたいと思います。
少子化対策の必要性ですとか、あるいは男性の育児休業取得促進という観点から、これまでも育児休業給付に対する数度にわたる拡充が行われて、労働者の育児休業の取得ですとか雇用継続に一定の役割を果たしてきたというふうに受け止めているところでございます。
他方で、育児休業の取得者数はここ十年間で男女共に増加しておりまして、とりわけ、政府あるいは企業の取組などによりまして男性の取得者が大幅に増えてきているというふうに承知をしております。今後、更なる増加が見込まれることから、財政基盤の強化に向けて、今回の改正によって、八十分の一に暫定的に引き下げられている国庫負担割合を、一年前倒しして、今年度から本則であります八分の一に復帰させることは適切な判断であるというふうに考えております。
以上、ここまで、今回の改正法案に関しまして大きく四点申し上げてきましたが、最後に、雇用保険全体の財政状況に関する考え方もお聞きいただければというふうに思います。
御案内のとおり、コロナ禍で大幅に活用された雇用調整助成金を含む雇用保険二事業は、事業主のみで全額負担している保険料と、それを単年度で剰余金を積み立てた雇用安定資金によって賄われております。こうした中、雇調金の二〇二〇年度の当初予算は三十五億円でありましたけれども、コロナ禍によって、それの特例措置等々によって、この三年間ほどで六兆円を超える支出が行われました。こうした結果、失業等給付の積立金からの借入額、要はすなわち借金というふうに申し上げますが、この借金額が二・九兆円にまで膨れ上がっておりまして、とりわけこの雇用保険二事業に関する財政は危機的な状況に置かれているというふうに考えているところでございます。
このように当初の想定を大きく上回った支出あるいは借入れをどのように取り扱うのか、誰が負担するのか。すなわち、多額の累積債務に関する返済の在り方につきましては、二年前の改正法の附則で、令和六年度、つまり今年度までを目途に検討を加えるというふうにされているところでございます。
コロナ禍における雇調金の大幅活用が感染症対策として国や地方自治体の要請によって休業を余儀なくされた結果生じたことに鑑みれば、雇用保険二事業とはいえ、その借入金の全額を事業主だけで負担することはやはり慎重に検討すべきというふうに考えております。雇調金の本来の役割であります急激な景気変動に対する一時的な雇用維持という範疇を大きく超えて今回長期間にわたって行われたこの特例措置とその活用の結果、あるいは、本来は失業給付を受給していたはずの部分までを雇調金でカバーをして、失業給付に係る負担を実質的に軽減したという見方も成り立ち得るのではないかというふうに考えているところでございます。
こうした見方に立ちますれば、雇調金の特例措置が、新型コロナウイルス感染症拡大というまさに未曽有の国難ともいうべき有事に際して失業予防に一定の機能を果たしたことを踏まえて、その費用の全額を事業主のみで負担している雇用保険二事業だけで賄うことが適切なのか、事業主に加え、その従業員も受益者として考えられるのではないかというふうに思っているところでございます。
こうした観点も踏まえながら、返済の在り方を議論し、雇用保険財政の早期健全化に向けた道筋を明確にしていく必要があるというふうに考えております。こうした点につきましても、先生方に御理解を賜れれば幸いに存じます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。