野中和雄の発言 (農林水産委員会)
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○参考人(野中和雄君) 本日は、こうした意見陳述の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
私は、農村政策について、中心に御説明を、意見を述べさせていただきます。
といいますのも、今までの衆議院等の審議も通じましても、この食料、農業の部分につきましてはたくさんの議論が行われましたけれども、農村の部分につきましてはほとんどと言っていいほど議論が行われていなかったというふうに承知をしております。
そして同時に、私どもの、私どもというか、私の目から見れば、この農村政策の部分には、ある意味、ちょっと法案に誤解というか誤りがあるのではないかというような感じもいたします。この感じというのは、農村政策に対する誤りではないかというような感じ、あるいは違和感というのは、これは単に私がここで申し上げるだけではなくて、多くの農村政策に関わる専門家の方々も同じように意見を表明されたり、そういう感じを持っていらっしゃるということをここで私はまず申し上げたいというふうに思います。
それで、レジュメを作っておりますので、これを御覧をいただきたいと思います。
皆様方は農村政策というふうに言いますと、どういうイメージをお持ちになりますでしょうか。
農村政策というのは、もちろん農村に関する地域の政策、地域政策ということでございます。したがって、そこには地域に関するいろんなこと、仕事、暮らし、福祉とかですね、いろんなことがある。要するに、それを総合的に振興していくというのが地域政策であるわけでございまして、農村政策も同じでございます。
ところが、この農村政策は、今はこの農林水産省が主管をしているわけでございますけれども、かつては農林水産省の所管ではありませんでした。国土庁がこの所管をしておりまして、総合的な政策の企画推進等につきましては、国土庁の、まあ言ってみれば地方振興局というのがありまして、そこで所管をしていたわけでございます。
それが、一九九八年の中央省庁の改革の法案によりまして農林水産省に移ることになりました。その設置法によりますと、このレジュメにありますとおり、第四条の第三十七号に農山漁村及び中山間地域等の振興に関する総合的な政策の企画、立案、推進に関することというのが農林水産省の所管になりました。ちなみに、これと同じようなことが国土庁にあったわけでございます。それに伴いまして、農村振興局というのが設置をされました。
実は、私は、この直前まで構造改善局長というのをやっておりまして、いろいろあったんですけど、その施策を進めるに当たって農村のことをやろうと思ったら、ほかから言われました、他省庁から言われましたのは、いや、農林省は農村は所管していないんじゃないのと、農村は国土庁の所管じゃないのと言われて、大変悔しかった思いをよく覚えております。
ここで農林水産省が農村政策を所管をするということになったわけです。それに伴いまして、基本法でも、御存じのとおり、総合的な振興というのが書かれておりますし、それから基本法に、十七条に基づきます基本計画の中では、ここにも書いてありますように、農林水産省以外の府省の施策もみんな書き込んでいるわけで、農林省の政策が書いてあるだけじゃない、全部、だから総合的に書いてある。そして、その中で地域政策の総合化ということを新たにうたっております。
この地域政策の総合化につきましては、この資料の後ろの方にですね、この二枚目、三枚目、三枚目のところにこの基本計画が掲げてございまして、それを御覧いただくと分かりますけれども、関係省庁が連携をして総合的に進めるということが書いてございます。
そこで、その後、そういう状況から発足を、一九九九年発足したわけでございますけれども、その後、基本法、二十五年を経まして状況が大きく変わってきたわけでございますけれども、その変化というのは、皆さん御存じのとおりでございますが、一口に言ってこの地域政策の総合化というのを一層進めなければならないという状況に変化をしているというふうに考えます。
一つは、農村の価値、魅力の再評価が進んだということで、いろんな人が農村に入ってきて、今いろいろ活躍するようになったということで、農村も自信を取り戻していきつつあるという状況ですね。
それからもう一つは、農村の経済力ですね。これは、前は六次産業化というぐらいしかなかったんですけれども、今や再生可能エネルギーとかデジ活もありますけれども、いろんなことがありまして、農村でも経済が回っていくと、そしてその経済の実を中で循環していけば皆さんの所得につながるというような状況になったわけでございまして、地域政策の総合化というのは一層重要になっているということでございます。
それでは、そういうことを受けまして、基本法というのも当然変わってくる、きてしかるべきでありますけれども、それにつきましては、どういう点が変わるべきかということにつきましては二枚目の資料で御説明をいたしたいと思います。
食料・農業・農村基本法改正案に対する問題点というふうに書いておりまして、冒頭申し上げましたように、この法案に誤りがあるんじゃないかと私ちょっと申し上げましたけれども、そのことをちょっと具体的に申し上げて、皆さんに御審議をお願いしたいと思います。
一番目は、第六条の規定でございます。これは、農村振興の目的として農業の持続的な発展ということを掲げているわけでございます。これだけを掲げているわけですね。しかしながら、現状の農村というのは、農業の基盤であることはもちろんではございますけれども、いわゆる多面的機能が発揮される場ということで、国民もいろいろ、福祉、教育の場、その他国民にとっても非常に重要な場になっているわけでございまして、言わば国民の資産、財産といったような状況になっていると思うわけでございまして、これが農村の方々はある意味自信を付けてこれからやっていこうということで、非常に重要なことになっているわけですよね。これは、したがって、私は基本理念にしっかり書くべきだと。何でこれが基本理念から落ちているのかということは理解できないところでございます。
ちなみに、同じような地域振興立法でございます過疎法とか山村振興法とかは、棚田地域振興法も同様でございますけれども、昔の、以前の法律では非常に過疎地域、山村地域、ある意味遅れた地域というような規定が書いてございましたけれども、最近の、これが全部改正をされまして、最近に改正されました地域振興立法では全部、例えば過疎地域なり山村地域がその多面的機能を有して非常に国民にとってもかけがえのない価値のある地域だという規定をしっかり書き込んでいるわけでございますね。そういう意味では、農村についてなぜ書けないのかということを非常に疑問に持つ次第でございます。これが一点目でございますね。
それから第二番目に、同じく第六条、それから第四十三条二項も同様でございます。農村振興の手段として、農業生産条件の整備と生活環境の整備その他福祉の向上ということが書いてございまして、これだけであります。しかしながら、農村振興には、先ほども申し上げましたように、最近いろいろ可能性が開けてまいりました。再生可能エネルギーだとか、地域で経済循環していけば所得が上がっていってみんなのこの農村地域経済全体が向上すると、で、それによって農家の方も副業所得が入る、それ以外の方々も副業所得が入る、地域全体が豊かになると。そういうことであれば、当然、まあ農業所得がちょっと足りなくてもそれで補ってみんながそこに住むということが可能になるわけでございまして、これは非常に重要な項目でございます。したがいまして、当然この地域資源を活用した所得と雇用の確保というのを農村振興施策として位置付けるべきであるというふうに考えております。
ちなみに、これ三枚目を御覧いただきますと、現行の基本計画でも一番最初に、施策の一番重要項目として、地域の資源を活用した所得と雇用機会の確保というのを掲げているわけでございます。また同時に、EUの共通農業政策なんかでもこの地域経済の振興というのを掲げているわけでございまして、どうして日本の基本法ではこういうことを掲げないのかということは非常に疑問に思っておりまして、これも誤りではないかと思う第二点目でございます。
それから第三番目に、第四十三条第二項と第四十五条に、農村と関わりを持つ者の増加を図るための施策として、産業の振興とか地域の資源を活用した事業活動の促進という規定をわざわざ新設してございます。ところが、今申し上げておりますように、農村におきましては、農業者であっても、あるいは既にもう住んでいる住民の方であっても、みんな農業を、例の水路整備とかで手伝ってくれたりしてやっているわけですね、一緒にね。そういう人たちの、農業者も含めて、そういう方々のために地域で産業を起こしたり、当然、地域資源を活用したいろんなその活動ですね、経済活動、例えば再生エネルギーを生産して経済力を高めてそこからみんな副業収入を得るとかということは、まさに農業者とかそこに住んでいる地域住民の方のために必要なので、どうしてこの関係人口の方、あるいはこれに企業も入ると思いますけど、関係人口、企業のためにだけにこういう規定を新設するのか、こういう活動を推進するのかということは、ここの部分なんかは私は特に間違いじゃないかというふうな気もするわけでございまして、十分な御議論をお願いしたいと思います。
ちなみに、山村振興法では、基本理念に当然この産業の育成による就業機会の創出というのも掲げているわけでございます。当然でございますけどね。
それから、第四番目でございますけれども、まあこれは間違いというほどではないとは思いますけれども、現在農村で一番問題なのは人口減少、それから過疎化の加速化ということでございますけれども、これは何が原因かというと、農業で食べていけないことが原因です。食べていけないことが原因ですね。
それで、農業白書を見ると、農業白書を見ますと、個人経営体の農業所得の項目を見てください。百三万円ですよ、年間。年間百三万円の農業所得で食べていけるはずがないんですね、どんな施策を講じても。ですから、食べていけないということが人口が減って過疎化を進めている原因なんですね。であれば、やっぱり所得の確保というのを基本法としては中長期的な目標に絶対掲げるべきなんですね。何でこれを掲げないのかと思うわけでございます。
ちなみに、これ国際的に引いてもあれですけれども、EUの共通農業政策、これは、今のお渡しをしております資料の後ろから二番目を御覧いただきたいと思いますけれども、CAPの政策目標というのはここに十個出てまいりますけれども、そのトップですね、第一に農業者の公正な所得の確保というのが掲げてあるわけでございまして、最重要項目に所得の確保というのが掲げられている。ですから、日本もやっぱりこの所得の確保というのが大事。
それから、先ほど申し上げました基本計画ですね。基本計画の目次を先ほど御覧いただきましたけど、三ページです、もう一回御覧いただきますと、基本計画でも一番重要な項目として、地域資源を活用した所得及び雇用の確保と。ですから、所得が一番重要であるということは基本計画でも認識をしている。
これを、もし所得を、多分政府が嫌がるのは、この所得と書いたら、何か農業所得、そこまで所得補償しなきゃいけないというふうに思うからいけないんです。そういうふうに思う必要はないわけですね。これ、基本法というのは、どなたかからもありましたように、宣言法でありますから、政府の姿勢を示すものであります。だから、政府の姿勢として、農業者を確保していくためには所得が大事なんだと、ただ、それは今すぐに何か予算で全部カバーするとか、それはできないから中長期的に頑張るけれども、所得の確保ということを目標に掲げて頑張ろうというこの姿勢を示すことが基本法の一番大事な点でありまして、当然そこには、農業所得だけではなくて、先ほど申し上げました地域の経済力全体を高めて、そこから副業収入でもってカバーしていくということがあってもいいわけなんで、所得の目標を掲げた以上、農業政策も頑張るけれども、農村施策のその全体的な経済力の向上でも頑張るということに当然つながってくるわけでございまして、所得の確保、持続可能な所得の確保というのを排除する理由というのは全くないというふうに私は考えているわけでございます。
それから第五番目に、中山間地域政策でございますけれども、これ、残念ながら、現在、直接支払というようないい制度がこの基本法で入りましたけれども、成果を必ずしも十分に上げておりません。限界に来ているというふうに言われているわけでございまして、これはもう刷新をしていく必要があるのではないかというふうに考えます。
この今回の法案を見てみますと、食料安全保障、都市住民の方から見れば食料安全保障というのは非常に重要な項目でございます。ただ、農業者とか農村に住んでいらっしゃる方から見れば、食料安全保障、もちろん重要ではありますけれども、その前に自分たちの仕事、暮らし、農業を続けてやっていけるのか、住み続けていけるのかということがもう一番重要でございまして、そういう意味では農村政策というのは非常に重要なんですね。
そうすると、今回の法案を見ますと、食料、農業の部分は大変改正されて、立派に改正されて、いろんな規定が充実をされておりますけれども、農村の部分ではそうなっていないという、大変不十分な古いままの、時代遅れのままの基本法のままというのは大変残念でございまして、これでは農業者あるいは農村現場の方の失望を招くし、将来に禍根を残すものではないかと思いますので、皆様方の十分な御審議をお願いして、私の意見陳述を終わりたいと思います。
ありがとうございました。