寺川彰の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(寺川彰君) おはようございます。丸紅の寺川でございます。
 食料の輸入業務を担当する民間業者の観点で、実務面を中心にいたしまして食料供給困難事態対策法案についての意見を述べさせていただきたいと思います。適宜、お手元の資料を御参考にしていただければと思います。
 本法案で、不測の事態となりますが、食料供給困難事態の定義が明確化されておりますが、その兆候を把握する上でも、国民生活の安定、国民経済に大きな影響を与える特定食料として米穀、米、小麦、大豆等が今後政令指定されるものと了解しています。
 どの国におきましても、まず必要不可欠なものとして最初に立ち上がる食品事業は、粉、製粉、そして油、搾油、そして砂糖事業だと理解しております。また、不測時に必要なカロリー、そして、炭水化物、たんぱく、脂質という三大栄養素を考えた場合、穀物、油に加えまして畜産物が国民生活にとって重要な役割を果たすものであり、特定食料として検討すべきではないかと考えます。
 その中でも、我が国が自給できる米を除きますと、主食となる小麦、国内生産のための畜産飼料、油脂原料にもなる穀物が最重要であります。国内農業の生産資材に必須であります肥料ですが、資源の偏在がありまして、地政学的なリスクも大きく、肥料につきましては経済安全保障推進法でも対応していくものだと理解しています。
 お手元の資料では穀物における日本の現状をお示ししておりますが、主要穀物の輸入先は米国、カナダ、豪州、ブラジル、この四か国が大宗を占めております。各国の生産量、また輸出能力、政治、経済の安定性、ロジスティックス、こういう観点で考えましても、我が国が頼れる生産国はこの四か国が中心にならざるを得ないと思います。
 一方で、我が国のプレゼンスですが、小麦、大豆におきましては存在感が小さく、穀物では中国がプライスリーダーとして大きな位置を占めており、年々その地位は強くなっております。中国の穀物買い付けの動向は穀物相場に大きなインパクトを与えています。
 昨今の状況を踏まえまして、食料自給率の低い各国におきましても食料安全保障問題が提起されている模様で、様々な国で食料の安定供給対策に乗り出してきたのではないかとビジネスを通じても感じているところであります。
 過去、穀物におきましては、輸出余力のある国が北半球、南半球に存在し、生産時期の違いもあるため、同時に連続して大不作に陥ることはまれではありましたが、異常気象の頻度やその規模、年々増加しておりまして、これら自然災害により穀物相場が非常にボラタイルな状態となり、食料ビジネスをめぐる情勢が不安定化しているということは事実であります。
 食料供給を不安定化させる具体的リスクとして、今述べました異常気象、自然災害、それらの大規模化、これが最大の要因ではありますが、そのほかに、感染症発生による物流の混乱、家畜伝染病の多発化、脱炭素の流れを受けまして、コーン、大豆などにおいて燃料需要の増加、これが顕著になっていること、そしてロシア、ウクライナで経験したような地政学リスクが挙げられます。
 また、食料が国家間の戦略物資として用いられることにより、需給バランスの崩れも近年では見られます。究極的には、世界人口の増加に対しまして温暖化、地球環境問題を加味した上での耕作可能面積はどの程度あるのか、またその食料供給量はいかほどか、そしてその供給量が世界需要にバランスするかということになろうかと思います。まさしく、人類は地球規模での大きな課題に直面しているように思います。
 現時点、穀物以外の様々な食料、農産物におきましても、先ほど述べましたようなリスクが毎年その品を変えるような形で具現化しております。また、複数のリスクが同時に起きて複雑化するという想定も必要になってまいりました。
 昨今の我が国の現状を見ましても、穀物においては、高値相場が続く中で、円安により輸入価格は上昇、エネルギーコストを含むもろもろの製造、物流のコストも増加する中で、加工食品、外食産業での値上げは不可避の状態にあります。
 また、飼料、搾油関連のみならず、各食品企業においても、コスト削減のため、従来利用していなかった産地、品質の原料の利用も今模索しているところだと承知しています。
 畜産業では、昨年、我が国で鳥インフルが多発し、突発的な鶏卵不足が起きたことは御理解のとおりです。家畜の疫病、伝染病関連は大変予測しづらく、供給不足が突然起きます。国内での鳥獣対策なども必要ですが、その囲い込みは難しく、現場は対応策に大変苦労していると理解しています。鳥は生育速度も比較的速く、そのリカバリーという点では早い畜種だと思いますが、万一、豚、牛という大動物になってくれば、母豚、母牛からの肥育期間が必要となってきますので、大規模な疫病が発生した場合は一定期間の供給不足が続くものだと考えられます。
 我が国におきまして食料供給困難な兆候が認められた場合ですが、まず想定しておかねばならないこととして、我が国だけが何も特別に困難になるという状況ではなくて、他国も同様の状況に置かれる可能性が非常に高いということです。市場経済の中で大きく国際価格が高騰する、その可能性があります。穀物を緊急に買い付ける場合、他国も同様の動きになること、輸出国側でも、自国優先の立場から輸出の制限、また輸出国の生産者自身が国際相場をにらんで売惜しみをするなども十分に想定されます。迅速に商品を確保することが大切で、待ったなしの対応が必要となります。
 民間業者としては、過去より、契約に基づく安定供給をとにかく果たすことに専念しています。過去において、タイミング次第でも起きたことがありますが、経済合理性に合わない状況も当然生まれるかと思います。代替産地を含めました商品のみならず、サイロを含む保管場所の確保、輸出ターミナル、船腹、ロジの融通、また従来とは異なる品種の原料、品質の調整なども必要になってくるかと思います。
 特に、日本向けは、非遺伝子組換え品、分別生産物流管理など、他国に比べまして従来より非常にきめ細かな対応が要求されております。当社でも、産地の集荷能力を上げ、米国、ブラジルにおいては自前の輸出ターミナルを保有し、品質管理なども行っていますが、これら対応も、緊急事態で輸入量を増やす中、どのように調整していくのか、民間企業だけの判断では難しい側面もあり、官民で十分に意見のすり合わせが必要になってくるものだと思います。
 また、何よりも大切な備えですが、民間の緊急買い付けなどで対応する前に、平時の時点から、穀物の輸出能力がある国々、また現在の主力の輸出国については、政府間ベースでの大きな食料確保の枠組み、協力関係などを構築していただくことが大変重要であると考えます。緊急時の円滑なオペレーションのためにも、是非これはお願いしたいところであります。
 本来的には、我が国の自給率ですが、この我が国の自給率を上げ、食料安全保障を確保することが第一義だと思います。米以外の穀物のために水田から畑地への転用なども進めていくべきですが、現実的には、湿地改良は大変難しく、農家側の採算も考えますと、穀物の生産は収益性の点では魅力に乏しいものだと思います。穀物で収益を上げるためには、大規模化、機械化、DXなど含めまして、効率、収率を徹底して上げる必要がありまして、これら大きな負担を考えますと、法人化のような大規模経営、経営管理能力を持った農家の育成、これが必要になるかと思います。
 また、農業が若者にとって他産業に比べて魅力の乏しい産業になっているのではないかと思います。まず、もうかる農業に変革しない限り、担い手を大きく増やすことはできませんし、輸入依存の構造はなかなか変わらないのかなと私は思います。
 本法案では、不測の事態における政府意思決定の体制が明確化したこと、兆候段階からの具体的な措置の流れ、また食料供給困難事態のトリガーとして特定した食料供給量の大幅な減少、その目安が明確化になっており、民間から見れば少し分かりやすくなったなという感じはしています。
 一方で、不幸にして食料供給困難事態に陥った場合、計画経済への移行期間だとも言えますが、原料を使用する各食品加工業者、企業にとっては、自分の属する業界の優先順位はどうなるかなど、企業経営にとっては死活問題になることもあります。その時点になってみないとどんな混乱が生じるかは今の時点では分からないと思います。
 不測時の兆候を正確に確認するためには情報収集しかないわけですが、市場経済の中で、顧客、契約、在庫などについては、各企業にとっては相当センシティブな情報でありまして、本来、開示のハードルが高いものであります。正確な判断、予測のためにも、国際市場の情報も含めまして、かなりの情報収集が平時から必要と思いますが、具体的な情報収集の内容、その方法につきましては今後検討すべき点であると思います。
 そして、国民生活の混乱を生じさせないためにも、食料供給困難な兆候が出た場合、農業生産者、企業、民間側の自主的な取組の具体的な運用、さらには計画変更が要請した場合の実際の運用、これをどうするのか、また財政の支援を含めまして、その負担、そして手間を最小限にするにはどうすべきなのか、これらにつきましては種々検討が必要になるかと思います。官民で平時の今から意見交換を行いながら可能な限り準備をしていくことがまず第一歩ではないかと思います。
 また、食料供給困難の兆候が認められ、本部の実施方針が出た場合ですが、国民がパニックに陥る可能性も十分に検討しておく必要があります。SNSなどを通じて様々な情報が拡散する可能性があります。現時点から、国民には、我が国の食料構造の現状、そして国内農業の重要性を理解してもらい、産業としての農業にもっと関心を持ってもらう必要があるかと思います。そして、職業としても魅力ある農業にしていくことが何よりも重要でないかと私は思います。
 民間企業の実務中心の意見となりましたが、以上であります。

発言情報

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発言者: 寺川彰

speaker_id: 31011

日付: 2024-06-06

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会