伊藤孝恵の発言 (本会議)

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○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました令和六年度予算三案に対し、反対の立場から討論を行います。
 私が就職活動で百社もの会社に落ちた一九九七年、北海道拓殖銀行や山一証券が相次いで経営破綻しました。バブル崩壊後の日本経済を襲った金融不安は、消費を鈍らせ、融資を衰えさせ、企業の設備投資を凍らせました。
 長引くデフレと実質賃金の低下、経済成長力を失った社会の中で雇用は不安定化し、若者は奨学金という名の借金返済に追われ、はびこる性別役割分担意識が働く女性をせめぐ中、いつしか我が国の少子化の底は抜けました。
 二〇二三年の日本の出生数は七十五・八万人、一九九〇年は百二十二・一万人。あの年、一・五七ショックに対して正しい危機感を持ち、対策を打てたのは一体誰だったのでしょうか。二〇二三年の日本の一人当たりGDPランキングは三十四位、一九九〇年は八位。あの頃、どんどん貧しくなっていく国民の所得を守れたのは一体誰だったのでしょうか。二〇二三年の日本の世界競争力ランキングは三十五位、一九九〇年は一位。あの瞬間、競争力を失わないための人的資本投資やデジタル革命を決断できたのは一体誰だったのでしょうか。二〇二二年の日本の過疎化率は五一・五%、一九九〇年は三八・三%。あの時代、東京一極集中以外の選択肢をつくれたのは一体誰だったのでしょうか。
 失われた三十年をつくったのは、言うまでもなく政治であり、これらの検証と反省の下に国家の予算は編成されるべきです。
 今般、春闘の賃上げ率は二年連続で前年を大きく上回り、一九九一年以来、三十三年ぶりに五%台を達成しました。
 まさにここからが正念場です。中小・小規模事業者の価格転嫁対策を徹底し、ガソリン代、電気代などエネルギーコストを抑え、そうして生まれた企業の利益を労働者の賃上げの原資とする。日本社会の構造的、根本的な課題である賃金デフレの脱却に向け、千載一遇の好機が今目の前にあります。しかしながら、本予算にはこの危機感が通底せず、何ともちぐはぐな施策が並び、到底賛成することはできません。
 以下、本予算に反対する主な理由を申し述べます。
 反対の第一の理由は、賃上げの機運を中小企業や非正規雇用労働者、地方に波及させる内容になっていない点です。
 この十年間、企業の営業収益は年率一・六%しか増えていないにもかかわらず、社会保険料負担は年率三%で伸びています。
 子ども・子育て支援金制度は、現役世代に重くのしかかるステルス増税であることや、保険料の目的外使用が問題であることのみならず、企業にとっても社会保険料の更なる負担増となり、賃上げ抑制要因になりかねません。言わずもがな、社会保険料は総人件費であることから、雇用抑制と非正規化を進める原因にもなります。
 加えて、ガソリン価格高騰対策についても、会計検査院があれほど補助金が消費者ではなくガソリンスタンドの利益に回っている可能性を指摘していたにもかかわらず、燃料油価格激変緩和対策事業を継続することは到底看過できません。
 二〇二二年一月から補助金が始まり、既に二年以上が経過しました。総理は近く七度目の延長を表明されるそうですが、延長幅は六月末で調整に入ったとのこと。まず、五月以降も補助金を続けられるのであれば、予算案を組み替える必要があります。予備費の中で中途半端な延長をするなど、おためごかし以外の何物でもありません。
 また、企業の経営者が、たった二か月の補助金延長をよりどころとして安心して従業員の給料を上げられると思われますか。リッター百七十五円前後で高止まりするガソリン価格に今日も頭を抱える生活者を支えることができますか。
 トリガー条項凍結解除とともに、暫定税率、二重課税を見直すことでガソリン価格を引き下げ、再エネ賦課金の一時徴収停止によって電気代の負担軽減を図る。さらには、安定的に賃金上昇率が物価上昇率プラス二%になるまでの間、消費税率を一〇%から五%に引き下げ、伴ってインボイス制度を廃止する。賃金と物価の好循環のためには、総理が拘泥する一度きりの所得税の定額減税より国民民主党の提案の方がよほど効果をまみえるはずです。
 反対の第二の理由は、異次元の少子化対策が家族政策先進国であるスウェーデン並みになったと事実を歪曲されている点です。
 施政方針演説で岸田総理は、少子化対策が画期的に前進した根拠として、家族関係支出の水準がOECDトップのスウェーデンに並ぶGDP比一六%になったことを挙げられましたが、これは十八歳以下人口一人当たりの家族関係社会支出という日本独自の計算式によって昨年十一月に突然財政審で登場した物差しであり、国際比較可能なGDP比では二%が二・四%になっただけで、スウェーデンの三・四%にはいまだ至っておりません。スウェーデン並みではないのにスウェーデン並みと喧伝するのは国民を欺くトリックです。
 政府が本来見るべき数字は、例えば二〇二〇年の内閣府国際意識調査、自国は子供を産み育てやすい国だと思うかの問いに、とてもそう思うと答えたのは日本四・四%、スウェーデン八〇・四%、両国には七六%の開きがあります。この隔たりは何によって生じるかを考え、スウェーデンの制度に学ぶのが政治家であるはずが、机上の数字のみをスウェーデン並みにするために知恵を絞るなど言語道断です。
 ほかにも着目していただきたい数字があります。実質賃金の低下と出生数の低下の相関係数は〇・九三、強い相関関係があります。また、婚姻数の減少と出生数の低下の相関係数は〇・九五、こちらもかなり強い相関です。さらには、奨学金利用者の増加と出生数の低下の相関係数はマイナス〇・九〇、明確な相関が確認できます。
 これらを鑑みれば、異次元の少子化対策とは若者世代、子育て世代の異次元の可処分所得対策であり、一日も早く教育無償化を実現し、子供たちを奨学金返済から解放し、結婚や出産がリスクだと感じない社会をつくるのが、失われた三十年を失われた四十年にしないために今私たちが決断すべきことです。
 その意味で、扶養控除の維持拡充と年少扶養控除の復活については、検討するかしないかではなく、もはやそれは少子化対策の前提であることを改めて強く申し上げます。
 加えて、反対の第三の理由は、能登半島地震の復旧復興支援に必要な予算が盛り込まれていない点です。
 高齢化率四八・九%の奥能登を元日に巨大地震が襲いました。被災地の一日も早い復旧復興を願ってやみません。
 復旧、とりわけ生活支援となりわいの再建を急がないと、若い人の流出が止まらず、町の高齢化に更に拍車を掛けます。
 この間、政府は、令和五年度予算における予備費からおよそ二千八百億円を使用したのみで、本予算においては具体的な事業を提示しておりません。
 今すぐ被災者生活再建支援金の上限額と国庫補助率を引き上げ、臨時特例交付金を増額し、適用地域を拡大してください。復旧なくば復興もありません。本予算には、被災地に向けられた思いもスピードも足りないのです。
 最後に、反対の第四の理由は、平時への回帰を主張しながら、いまだに積算根拠が不明瞭な予備費や基金を積み増している点です。
 特に予備費については、昨年、会計検査院が、積算のずさんさや、繰越し、流用、目内融通など著しく規律を欠いた各府省の執行状況を明らかにしました。予備費は国会による事前議決原則の例外だからこそ、会計法令にのっとった適切な運営をしていることを積極的な情報開示によって証明しなければなりません。それが全くなされていない現状を黙認するわけにはまいりません。
 以上、本予算に反対する主な理由を申し述べました。
 昨夜、岸田総理による安倍派幹部への事情聴取の中で、キックバックの再開判断に森元総理が関与していた旨の報道がありました。
 自民党の組織的な裏金作りの背景には、閉鎖的な風土や長老支配、時代錯誤を時代錯誤と、間違っていることを間違っていると、それを断罪できないそんたくやなれ合いの弊害の結果であり、それが今や民主政治の機能不全を引き起こすバグになっています。
 結局、政治はそんなもの、政治家は変わらない、そんな諦め感や軽蔑が社会の閉塞感や生きづらさにも連なっています。果てなく広がる格差や孤独、孤立の中で政治の力が必要なのは、いつだって政治家の知り合いなどいない人たちです。
 国民民主党は、寄せられた一つ一つの声に社会課題の本質を見出し、建設的な提案に変えていく。そんないちずな決意を申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)

発言情報

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発言者: 伊藤孝恵

speaker_id: 17711

日付: 2024-03-28

院: 参議院

会議名: 本会議