伊藤孝恵の発言 (本会議)
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○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問いたします。
性暴力の被害者には一片の落ち度もありません。ただの一片もありません。まだ恋も知らない子供たちが性被害者になっている現実を私たちは決して許さず、行動に移さなければなりません。
国民民主党は、二〇二一年五月、子どもの性被害防止法を議員立法いたしました。性犯罪の前科を有する者は子供に日常的に接する職業には就けないようにするため、保育士や教職員等の国家資格における欠格事由を厳格化するとともに、資格で分類できない塾講師やベビーシッター等については無犯罪証明書を厳格に運用する旨を提案いたしました。資格者は現行法でも網を掛けることができます。しかし、資格で分類できない者はそれができないからこそ、DBSが必要だったのです。
加藤大臣に伺います。
本案において、学習塾など民間教育保育等事業者を義務でなく認定制とした理由について、政府は、事業者の対象範囲が不明確で監督や制裁の仕組みが必ずしも整っていないためと御説明されましたが、それは単に行政側の都合の解説であって、子供たちのいる場所を押しなべて安全にする有意味性とは比ぶべくもありません。
昨年成立したフリーランス・事業者間取引適正化等法においては、それまで対象範囲が不明確で、行政の監督等の仕組みが整っていなかったフリーランスを法律の中で定義し、取引適正化のための規制を新設しました。
本案においても、網掛けすべき事業者を定義し、新たに監督や制裁の仕組みを構築すれば、義務化も可能だったはずです。立法の意味はまさにそこにあります。フリーランス法ではできて、DBS法案ではできなかった理由を教えてください。
実際に盗撮や性暴力の事案が表出した学習塾や大規模な性加害事案が発生した芸能事務所ですら義務化の対象でないのなら、本案には重大なブラックホールがあると言わざるを得ません。この黒い穴から意図を持って子供たちににじり寄る者は必ず現れます。
加藤大臣は、衆議院での審議の中で、犯罪事実の確認義務を負う要件を、継続性、閉鎖性、支配性とし、学校のクラブや部活動におけるボランティアのコーチ等についても対象となる旨、明言されました。では、学童や塾の送り迎えをする子育てタクシーのドライバーはいかがでしょうか。スクールバスや日本版ライドシェアのドライバーは対象になるのでしょうか。車内は閉鎖性、ハンドルは支配性そのままです。
今後、マッチングプラットフォームの責任はどのように問い、雇用と請負の労働者性をいかに整理し、どこに網を掛けていくのか。犯罪事実の確認義務を負う職種の拡大については、誰がどのように判断していくのか。加藤大臣、お答えください。
特定性犯罪に公然わいせつ罪やわいせつ目的略取及び誘拐罪、下着などの性的欲求を満たすための窃盗罪等の犯罪類型が含まれなかったことに加え、特定性犯罪に該当する犯罪であっても、逮捕後に示談をして不起訴となった事例や、行政による懲戒処分、民事訴訟で性加害が認定された者については、本案では調査対象に含まれていないことも大きな穴です。
犯罪事実の確認結果は事実上の就業制限の根拠となるとされていますが、あくまで事業者側が安全確保措置を講じるかどうかの判断材料であって、欠格事由ではありません。加害者の職業選択の自由を尊重しつつ、子供たちを性暴力から守ることの比較考量を最優先に考えるならば、おそれがあるかどうかを判断するに足る材料を最大限、抜け漏れなく事業者側に提供する必要があります。加藤大臣のお考えをお聞かせください。
画像生成AIによるCSAM、性的児童虐待コンテンツの問題が世界的に広がっています。ダークウェブのCSAMフォーラムでは一か月で二万件以上の画像が検出され、日本ではガバナンスが未整備のため、ダークウェブに潜らずとも容易にコンテンツにアクセスできます。
実在児童が特定不可能な生成AIによるCSAMは、児童買春、児童ポルノ禁止法での立件が困難です。また、AIには制作者がいないので、著作権法でも逮捕できません。恐ろしいことに、実在の児童に酷似したCSAMを生成できる追加学習用データが当たり前のようにネット上で販売されていますが、こういったファインチューニングと呼ばれる手法は、我が国の法律のいずれもが想定していないため、太刀打ちできない状態です。
子供たちの権利侵害、特にオンライン上の保護を目的とした新たな法整備の必要について、加藤大臣の見解を伺います。
同時に、法整備前であっても、こういった行為を業として行った者については、司法手続に準じた適正な方法で子供に関わる仕事には就けないようにする必要があると思いますが、加藤大臣の認識を伺います。
声を上げられないのは子供たちだけではありません。障害者施設職員による性暴力や、高齢者施設職員や介護訪問スタッフによる性虐待も深刻化しています。今後、対象を子供に限らない犯罪事実確認のニーズが生まれることが考えられますが、武見厚労大臣の見解を伺います。
英国DBSに倣ったバリュー・フォー・マネー、価格に見合った価値について伺います。
英国DBSは、内務省に後援され、議会に対して直接説明責任は負うものの、省には属さない公的機関として、手数料を収入源に独立採算制で運営されています。戦略計画、年次報告書等の内容も、少ない経費で効率的に運営し、迅速な対応によって顧客満足度を上げるバリュー・フォー・マネーに重点が置かれています。
ただ、最初からそうだったわけではなく、二〇一八年に会計検査院の調査が入った際、年間二百八十万人の利用を見込んでいたにもかかわらず、実際は九十万人だったことや、デジタル化が計画より四十六か月遅れていたこと、当初見込み予算額に対し三五%も超過していたこと、何よりそれらの原因分析や対策が全く講じられていなかったことなどが判明し、議会から指摘を受け、改善を余儀なくされました。我が国のDBSは同じ轍を踏むわけにはまいりません。
加藤大臣に伺います。
DBSの当初予算、利用見込み者数、デジタル化のスケジュールや外部委託する際の責任、監視の在り方など、現在のプロジェクト概要及び監査の時期や内容について教えてください。
また、将来的に受益者に応分負担を求めることについての加藤大臣の見解を伺います。
この問いの趣旨は、今後、子供から大人に対象を拡大したり、開示される情報源を司法判断等から起訴猶予による不起訴処分や行政処分、通報情報へと拡大した場合、既存組織では到底賄い切れず、実行組織の拡大が不可避となります。その際、財源を国庫に求め続けるのは現実性に乏しいのではないかという問題意識です。先を行く英国DBSに経営視点、バリュー・フォー・マネー視点でも学ぶべきと考えますが、加藤大臣の見解を伺います。
自己情報コントロール権とプライバシー権についても伺います。
前科等は極めて高度のプライバシー情報であることから、その適正な開示に重大な利害を有する本人が確認申請の主体であるべきと考えます。しかし、個人情報保護法第百二十四条第一項では、個人の犯罪歴等については開示請求等の規定の適用除外とされており、その理由として、拡散、転々流通の弊害が挙げられています。これこそが日本のパターナリズムの典型、国民は正しい判断を下すことができないので国が介入してあげる、あなたのためにねという立て付けです。
加藤大臣に伺います。
昨年八月の有識者会議では、イギリスやドイツ、韓国など、十か国の犯罪歴照会制度について比較検討されたと承知しています。諸外国では、プライバシー情報に係る自己情報コントロール権の帰属はどうなっていますか。教えてください。
最後に、性暴力被害者の半数は心的外傷後ストレス障害、PTSDを発症すると報告されています。PTSDへの介入なしに子供たちを守る仕組みはできません。専門医療がどうしても必要ですが、現在の精神科医療ではPTSDに対する治療を行うと赤字になるため、導入が進んでおりません。加藤大臣に検証と取組を求めます。
被害者の小さな心に埋め込まれた地雷は何がきっかけで爆発するのか分かりません。進学、就職、恋愛、不安の中を私ははうように生きてきた、そんな胸のうちを教えてくれたのは、今もPTSDに苦しむ被害者の方です。諸外国に倣い、性犯罪者、特に小児性犯罪者に対する化学的去勢やGPS装着等の厳罰化の必要性を口にする私に、その方は、包括的性教育や加害者に対する再犯防止プログラム、保護観察終了後の孤立対策を求められました。社会にとってそれが一番安全への近道です、柔らかに諭す言葉はまるで道しるべのようでした。
ようやく生まれるDBSが我が国で生きる全ての子供たちの豊かな学びや育ちを支えるものとなるように、これからも果断に行動していくことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣加藤鮎子君登壇、拍手〕