牧山ひろえの発言 (本会議)

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○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえです。
 私は、立憲民主・社民を代表し、出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして、反対の立場から討論を行います。
 まず冒頭、永住資格の取消しを始めとする今回の法案は、我が国が育もうとしている共生社会の芽を摘もうとする、岸田内閣の象徴ともいうべき完全なる人災です。目的ばかりではなく、その手段も虚偽、ごまかし、だましなどによってその場をやり過ごす、誠意のかけらもないお得意の手法ばかりです。まずはそのことを強く批判し、各論に移らせていただきます。
 外国人技能実習制度の導入から三十年。人権侵害などの問題から、同制度は国内外から現代の奴隷制度や実質的な人身売買との指摘を受ける有様でした。この状況に対して政府がまとめた各種提案は、抜本改革と程遠い、到底評価し得ないものであり、看板の掛け替えにすぎませんでした。この制度に関わるステークホルダーとの利権を中心とする関係性は見事なまでに温存され、制度の基本構造は全く変わりません。
 そもそも技能実習制度に対する真摯な反省と徹底した決別を出発点とせず、発展的解消などとごまかしたことから始まり、次から次へ改革が骨抜きになっていきました。
 我々立憲民主党は衆議院において、従来の制度とは決別した、労働者としての法的な保護を充実させ、人権を尊重した新しい仕組み、政府が責任を持って就労を望む外国人と産業分野をマッチングする制度を提案しましたが、議論が深まらずに事ここに至ったことは大変残念です。
 念のため、二法案に対しまして、以下、指摘をしておきます。
 まず、在留カード等とマイナンバーカードの一体化に関する入管法等改正案は、プライバシー保護の観点からの懸念を拭えません。
 育成就労法案に関しては、先ほどの批判のほかに、技能実習制度では認められていなかった派遣労働を農業、漁業分野で解禁するものです。ただでさえ低賃金が問題視されているのに、更に外国人労働者に不安定な収入を強いることになります。
 これらにも増して絶対許してはならないのが、突如議論の俎上に上ってきた永住権の剥奪条項です。
 何よりも大きな問題は、法的措置の必要性を裏付けるはずの立法事実が質疑の終局に至っても全く示されないという衝撃的な事実です。公租公課の滞納についての七自治体からの聞き取り調査を行ったとされましたが、具体的な規模については何の答えもありません。衆議院でようやく数字が出てきたと思ったら、逆に日本人より未納率が低かったという事実が判明し、法案のロジックが崩れました。立法事実について具体的なデータや裏付けを示さない政府のやり方ですと、根拠がないに等しい立法の前例ができてしまいます。
 新しい制度を導入するためには、国民の理解も必要です。実際、ここに至るまでの経緯を正当化する論拠の一つとして、二〇一九年十一月に行われた世論調査において、永住資格の取消しの必要について約七五%が賛成と答えたことを法務大臣は何度も挙げられていました。しかし、このアンケート自体が恣意的、誘導的な質問ということで、有識者などから問題が指摘されているものです。
 例えば、永住者の数についての質問において、増加傾向にある永住者数の推移の情報を記載してあります。上昇している数字が添えられていると、バランスを取るために抑制的な意識が働くからです。また、許可後に永住許可の要件を満たさなくなった場合に永住許可が取り消されることはありませんと記載されておりますが、退去強制事由や在留資格取消事由に該当すれば永住者でも在留資格を失うので、これは虚偽の説明です。しかも、露骨にも、誘導のための予断情報をあえてよく読んでもらってから質問を行うよう指示されており、このような世論調査を必要なステップと位置付けること自体、逆に立法事実のなさを感じます。
 永住資格の取消し制度については、立法事実が曖昧なことに加え、規定ぶりに顕著な特徴があります。制度の根幹である重要事項のほとんどが極めて幅広く解釈できる、言うなれば曖昧な文言で規定されていることです。
 これは、法文を曖昧に作っておけば、入管が更に巨大なフリーハンドともいうべき無制限の権力を得て、徹底的な支配管理体制を構築するため都合がいいからとしか思えません。これまで外国人に対する数々の重大な人権侵害を引き起こしてきた入管庁に無制限の権力を与えてしまって本当にいいのでしょうか。
 政府は、日本が外国人就労者に選ばれる国となるようにと繰り返しています。このことについて私は総理に、我が国が何を売りにするのかという日本の強みについて見解を求めました。そして、総理からの答弁に唖然としました。安心、安全に働くことができる共生社会だというのです。
 総理は意味を分かっているんでしょうか。誰がどう考えても、永住資格の取消し制度は数十万人の永住者の安心、安全を奪うものであり、共生社会の理想とは真逆の方向性です。きっと私の聞き違いで、総理は、共に生きる共生ならぬ、権力で人を強く制圧しようとする強制とおっしゃったのでしょう。
 それだけではありません。今回の政府案では、家族帯同まで八年、永住権取得までそれから更に五年、合計で十三年も掛かります。やっと永住権が取れたと思ったら、長年暮らした日本をささいな過失で家族まで巻き込んで追い出されるかもしれない。断言できます。そのような、外国人労働者を人とも思わず労働力としてしか扱わない、非人間的な扱いをする国が選ばれることはありません。
 小泉法務大臣はこうおっしゃいました。日本人と比べて不公平だという御議論も折々あるわけですが、日本人は元々スタートが違いますよ、永住者とは。こう語る大臣は、この法案の差別的意味合いを理解しておられない。元々日本にいる日本人は、外国籍永住者と同じ罰則を受ける必要はないと自然に思われているのです。
 自ら日本を選んで、日本社会で生きるため長い間様々な努力をしてきた方々には、我々と同じ国土と社会に住む親しい隣人として、やむを得ない必要最小限の事項以外は基本的には日本人と同様の処遇とするべきだと私は考えています。
 アメリカのバイデン大統領は日本について、ゼノフォビックだと、つまり、外国人嫌悪があり、ロシアや中国と並べて排外主義的な国家と評しました。必ずしもバイデン大統領の認識が正しいとは思いませんが、外からはこう見えてしまうわけです。
 芥川賞を受賞した永住者である李琴峰さんはこう言います。この法案が成立すれば、外国人に、日本はあなたを労働力としか見えていない、あなたがいかに日本社会に貢献しようと、日本はあなたの生活基盤を奪うことができるというメッセージを送ることになるというふうにおっしゃっていました。
 今私たちに突き付けられているのは、多種多様な要素を柔らかく包み込んだ持続可能な将来を選ぶか、それとも自分たちに都合のいい他者しか受け入れない閉鎖的で内向きな社会を選ぶのかという選択です。決して外国籍の永住者のみに関係する他人事ではありません。
 この点を御指摘申し上げて、私の反対討論とさせていただきます。(拍手)

発言情報

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発言者: 牧山ひろえ

speaker_id: 9631

日付: 2024-06-14

院: 参議院

会議名: 本会議