川合孝典の発言 (本会議)
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○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
会派を代表して、賛成の立場から討論をいたします。
まず、永住資格の取消し規定について指摘をします。
改正法案に故意に公租公課の支払をしないことを理由とした永住資格の取消し規定が加わったことで、大きな議論が巻き起こりました。
実際、うっかり税金や保険料を滞納しただけで永住資格を取り消すことができると読み取れる条文であり、永住資格者が不安と懸念を持たれるのは当然のことであります。永住資格の取得に十年もの期間を要することを踏まえると、著しく相当性を欠いているとの指摘は的を射ていますし、そもそも長年にわたり日本に住み、社会に貢献してこられた方々に対して配慮を欠いていると言わざるを得ません。
法案審議でも故意という言葉の解釈をめぐって質疑が行われましたが、解釈上、故意という言葉には幾つかの異なる意味があります。刑法三十八条に規定する故意が、罪を犯す意思、つまり罪となる事実を認識した上で、その事実を意図又は容認することを意味している一方で、民法七百九条の故意は、自己の行為から一定の結果が生じることを知りながらあえてその行為をなすことを意味し、過失であっても不法行為の成立要件となります。つまり、改正条文上の故意が民法規定に基づいて解釈されると過失責任をも問われることとなり、そこに恣意的判断の余地が生じることとなります。
したがって、法案審議では、入管法上の故意は民法上の故意ではないことの確認を行った上で、幾つかの明快な答弁を得ています。
まず、過失や支払能力の欠如による公租公課の未払は一切永住資格取消しの対象とはならないこと、特別永住資格は日韓法的地位協定と入管特例法に基づき付与されたものであり、今次法改正の対象からは除外されること、過失による交通違反など根拠法令の異なる事案はその対象から除外されることなどを法務大臣答弁によって確認しております。
今後、法施行までの間に、答弁内容に基づき、法律条文の恣意的解釈が生じないよう、詳細な運用指針やガイドラインの整備を政府には求めます。
景気変動リスクを踏まえた国内労働市場との調整について指摘します。
外国人労働者の受入れ拡大に当たっては、事前に景気変動リスクを織り込んで国内労働市場との調整を行う必要があります。
今後、景気が悪化した際、日本人労働者との雇用の奪い合いが生じることも想定されます。実際に欧米諸国では景気後退時に移民排斥運動が生じている事例も踏まえると、中長期的な労働需給の観点から国内の産業別労働市場との調整が極めて重要であり、そのためには技能実習制度における分野別協議会や地域協議会の機能強化と意思決定プロセスの透明化が極めて重要となります。
また、特定技能産業分野の選定プロセスの透明化も必要です。
これまでの特定技能制度では、今後の国内労働市場に大きな影響をもたらすものであるにもかかわらず、特定技能対象分野の選定プロセスの透明性が欠けておりました。今回の法改正によって新たに特定技能産業分野の選定を行うことになりますが、特定の産業が直面している労働不足への場当たり的な対策としてではなく、有識者や労使等で構成される会議体を設置し、公開の場で議論を行うこと等を通じて選定プロセスを透明化する必要があることを指摘しておきます。
技能実習実施者による労働基準関係法令違反を踏まえた対処も急務であります。
これまでも原則として労働基準法、最低賃金法等の労働基準関係法令は適用されることとなっていましたが、実習実施者による労働基準関係法令違反は後を絶ちませんでした。
今回の法案審議を通じて、法務大臣から、国籍を問わず同一労働同一賃金を遵守させる旨の明快な答弁はありましたが、その具体的な手法は今後の検討に委ねられております。したがって、特に労働基準関係法令違反の多い安全基準違反、長時間労働、割増し賃金の未払などに焦点を当てた具体的な法令違反対策を法施行までの間に講じることを政府には求めます。
日本語教育の在り方についても今後速やかに検討の必要があります。
言語教育の不足は雇用の門戸を狭くします。言葉の壁のある在留外国人は労働市場から排除されがちとなり、低賃金、不安定な就労を強いられることで新たな貧困層を形成することとなります。貧困に陥った在留外国人は、必然的に社会保障制度への依存度を高めることとなりますが、これが自国民であれば当然の権利とみなされても、外国人の場合は、自国民が支払う税金によって生活する寄生者とみなされ、排除の対象となることは西欧諸国の事例からも明らかであります。
こうした過去の苦い経験から、西欧の移民受入れ国の対移民言語政策は、既に一九九〇年代以降、受入れ国の言語の習得を求めようとする方向に明確にシフトしております。
例えば、オランダでは、既に国内に定住している移民だけでなく、家族呼び寄せによって入国しようとする移民にまで、事前に母国でオランダ語のテストに合格することを義務付けております。また、永住権の取得にはより高いレベルのテストへの合格が条件とされており、社会保障の負担となる可能性のある移民の入国拒否を意図した言語政策を採用しています。また、ドイツやフランスでも、教育プログラムの受講を義務付けた上で、試験の難易度にその差はあるものの、制限期間内に言語試験に合格して言語を習得できるだけの素養のある移民のみが永住権を取得できることとなっています。
これらの言語政策は、いずれも労働力不足対策からではなく、雇用機会の拡大を通じて移民が福祉制度に依存することなく自立した生活を促すとともに、言葉の壁をなくすことを通じて地域社会との共生を図ることを目的としています。
残念ながら、こうした観点からの議論が日本ではまだ行われておりません。今後、労働移民に等しい外国人労働者の大量受入れが見通される中、社会の安定を図るためには、国費を投じてでも一定水準まで日本語力を高める取組を推進する必要があります。政府には、中長期的な視点から速やかに日本語教育の在り方を検討することを強く求めます。
一年を超える転籍制限について指摘します。
転籍制限について、法文上は、当分の間、受入れ対象分野ごとに一年から二年までの範囲内で設定すると極めて曖昧な表現となっていたことで大きな論点の一つとなりましたが、法案審議の中で、育成就労実施者による雇用契約違反が明らかになった場合は例外なく転籍要件を満たす旨の法務大臣答弁がありました。これにより、育成就労実施者への配慮を理由とした転籍制限の懸念は軽減されましたが、それでも一年を超えての拘束が労働基準関係法令との整合性を欠いている事実に変わりはありません。そもそも外国人労働者が働き続けたいと思える雇用労働環境を整えることが育成就労実施者には求められており、その実現に向けて関係省庁は取組を進める必要があることを指摘しておきます。
最後に、悪質な送り出し機関の規制の在り方について指摘します。
技能実習生が母国の送り出し機関に多額の借金をしている問題について、これまで日本政府の対応はせいぜい悪質ブローカーからの受入れを停止する程度にとどまっております。今回、最終報告書や政府方針において、監理団体等がより質の高い送り出し機関を選択できるように手数料等の情報公開を求めるとされているものの、手数料そのものを抜本的に見直す取組にはなっておりません。送り出し機関が実習生から徴収できる手数料の上限が定められているにもかかわらず、定められた上限額を守らず、様々な名目を付けて実習生に負担を上乗せしている送り出し機関が今も多く見受けられます。
こうした送り出し機関からの受入れを一切排除するなど、厳格な二国間協定を締結することを強く政府に求めて、討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)