江島潔の発言 (政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)

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○江島潔君 ODA調査班第四班について御報告いたします。
 当班は、昨年八月二十二日から九月一日までの十一日間、ブラジル連邦共和国及びパラグアイ共和国に派遣されました。
 派遣議員は、大塚耕平議員、倉林明子議員、そして、団長を務めました私、江島潔の三名でございます。
 今般訪問したブラジルとパラグアイは、日本から三十時間以上掛けてようやく到達する南米の国で、地理的には極めて遠い国でありながら、長年にわたる日本人の移住の歴史を通じて親日的な感情を有する国であり、心理的には極めて近い国であることを実感する派遣となりました。この両国について、現地における視察や関係者との意見交換等を通じて得られた議員団としての所見を中心に御報告申し上げます。
 第一に、昨年六月、八年ぶりに改定された開発協力大綱において我が国の外交の最も重要なツールの一つであるとされたODAの戦略的活用の可能性について指摘をいたします。
 まず、ブラジルについて、国際秩序が大きく揺らぐ中、民主主義、法の支配、自由といった我が国と同じ価値観を共有しており、ODAを戦略的に活用し、グローバルサウスと呼ばれる新興国、途上国の中心的存在であるブラジルとの外交関係を強化することは極めて重要であります。
 現地においては、ブラジルは既に大国でありODAはもう必要ないと考えてはならないという意見を伺いました。ブラジルが特に力を入れている環境保全の取組、防災対策等において日本が協力できる分野はいまだ多いほか、今般訪問したサンパウロは、急速に発展する新興国特有の都市問題を抱えており、ODAによる交通渋滞対策等の支援が必要とされています。
 また、日本の交番システムを定着させる地域警察活動普及プロジェクトを視察しましたが、地域の犯罪発生率が劇的に改善されており、非常に大きな効果を目の当たりにしました。改定大綱でも明示されたような民間資金と連携する上で安心して投資ができる環境整備を行う観点から、治安状況を改善するODA事業も大変重要であります。
 さらに、白身魚の養殖水産業にビジネスチャンスがある一方、その技術については後れを取っているとの話も伺いました。改定大綱の目玉としてオファー型協力が明記されましたが、今般視察した河川や海の環境を改善する事業は養殖水産業とも直結しており、ブラジルが力を入れる環境分野でも協力しつつ、日本の得意分野である養殖水産業の技術協力も同時に提案していくことも一案と考えます。
 次に、パラグアイは、南米で唯一の台湾承認国であるとともに、ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議を始めとした一連の国連決議に関し一貫して賛成を続けており、民主主義、法の支配、自由といった基本的価値観を我が国と共有しております。
 また、今般、就任直後のペニャ大統領に表敬訪問する機会を得ましたが、大統領は、日本の奨学金プログラムを通じて米国の大学で学ぶなど、大変親日家であり、ODAによる更なる関係強化も期待できます。
 円借款事業である東部輸出回廊整備計画は、一義的には輸出農産物のために道路を整備する案件でしたが、道路という基本インフラが整備されることにより、地域住民の生活が向上するとともに、投資家からの投資によって産業が興り、雇用が創出されるといった副次的な効果も生じたことについて、地元関係者から大変感謝されました。
 このように、ODA事業を投資の呼び水とし、民間投資が更に進んでいくことが重要であります。豊富なグリーンエネルギーを活用した半導体生産やアンモニアの製造など、パラグアイは様々な分野で大きな可能性を秘めており、更なる開発協力が求められています。
 また、現在建設中の両大洋間横断回廊が完成すれば、内陸国のパラグアイが太平洋ともつながり、我が国が掲げる外交政策の一つである自由で開かれたインド太平洋、FOIPの関係国として重要性も一層増すほか、パラグアイが求めるパラナ水路の整備や管理ノウハウの提供を支援していければ、両国の更なる関係強化につながると考えます。
 第二に、日系人、日系社会への継続的支援の必要性について指摘をします。
 改定大綱では、開発途上国を対等なパートナーとし、開発途上国との対話と協働を通じた社会的価値の創出である共創が新たに基本方針の一つとして掲げられ、日系人及び日系社会が共創のための重要なパートナーとして位置付けられました。
 両国の日系人は、現地社会の信頼を勝ち得て、両国の発展に寄与するとともに、日本への関心や好感度の向上に大きく貢献しており、今回の派遣でも随所でその親日的感情や関係者からの感謝に触れましたが、両国における日系人の好意的な印象と日本における認知度には乖離があることも実感をしました。これは、日本の教育の中で中南米における日系人の歴史を学ぶ機会がほとんどないことが原因であり、開発協力の場面で連帯していく上では、このギャップをどのように埋めたらよいか検討する必要があると考えます。
 また、現地では、日系人による日本語教育の優先順位が下がっているとの話を伺いました。言語はアイデンティティーであり、日本語教育への関心の低下は日本や日系人への関心の低下に直接結び付くものであります。日本語教育への支援にとどまらず、日系コミュニティーの安定的な維持に向け、日系人への継続的な支援の重要性はますます高まっています。
 日系人が築いてきた信頼やそれに基づく両国の親日的感情は、何物にも代え難い外交上の貴重な財産であることは言うまでもありません。日本のODAはアジアが中心となっていますが、中南米における日系人ネットワークの財産を今後も戦略的にODA予算によって支援し、外交上のアセットとして有効活用していくことが求められています。
 第三に、その他の諸課題について言及します。
 まずは、新型コロナウイルス感染症の影響とその後の支援についてです。
 今般視察した中で、特にコロナ禍の影響が色濃く現れていたのは日系団体でした。ブラジルの日系団体は、コロナ禍によってイベントの実施ができず収入が激減し、パラグアイの日本人会が経営する日本語学校では休校時の講師への謝金支払が重い負担になるなど、大きな影響があったと伺いました。
 日系団体の活動が低調になることで日系社会を軸とした中南米外交にも支障が生じるおそれがあることから、各日系団体に対して中長期的にどのような形で支援していけるのか、その在り方を検討する必要があると考えます。
 次に、無償資金協力後のフォローアップの在り方についてです。
 パラグアイのアスンシオン大学病院や職業訓練センターを訪問した際、無償資金協力時に引き渡された機材が二十年以上経過し、故障時に交換部品が入手できず、せっかくの機材が修理できないまま使用されていない状態にあるとの説明を受けました。
 無償資金協力から一定期間が経過すれば最新の技術に対応した機材が必要になりますが、こうした機材の更新や経年劣化への対応を供与先が自らの努力でできない場合に、日本として、フォローアップ協力の枠組みを通じて維持管理支援を強化する必要があると考えます。
 次に、女性活躍の視点に基づいた支援の必要についてです。
 両国のJICA海外協力隊員の多くが女性であり、今般の派遣では七十歳を過ぎてシニアで活躍する隊員の方にも複数名お会いし、海外での日本人女性の活躍ぶりを目の当たりにしました。現地での苦労は性別を問わずありますが、女性が異国の地で生活しながらボランティア活動を行うことは大きな不安が伴います。特に女性隊員の不安が少しでも解消され一層活躍の場が広がるよう、現地における安心、安全や生活環境の確保等に引き続き取り組むことを求めます。
 次に、開発協力に関わる国民の理解促進の必要についてです。
 国内では物価高騰が続いており、開発協力に関わる税金の使途についてより一層説明が求められる中、開発協力の意義や効果等を効果的に国民に伝えていくことが課題となっています。
 国際秩序が揺らぐ中、また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て世界的なサプライチェーンの重要性が認識された今こそ、開発協力を通じた途上国との友好関係の構築が日本経済の安定に重要であること、すなわち開発協力によってもたらされる大きなベネフィットを実感しやすく、この機会を捉えた丁寧な説明が求められると考えます。
 最後に、ODA調査派遣を現地視察で実施する意義について指摘をします。
 コロナ禍においてオンライン会議等のツールも発達しましたが、現地を訪問し、実際にインフラ施設や資機材を見ながら説明を受けることで理解が進みやすくなる点では、やはりオンラインには代え難いものがあると感じました。また、現地の方々と顔を合わせ、直接話してみて初めて分かる空気感や、移動中の町並み等を見て両国国民の生活実態をかいま見ることができた点は、現場視察でしか得ることのできない利点であったと考えます。
 最後になりますが、今般の調査に当たり多大な御協力をいただきました視察先の関係者、外務省及び在外公館、JICAを始め、JICA専門家及び海外協力隊員、日本企業関係者の方々に改めて感謝を申し上げます。
 以上でございます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 江島潔

speaker_id: 19303

日付: 2024-04-12

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会